ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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ヘイ!
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次回でネタ的なライセン大迷宮は終了!(だと俺が信じてる)

文化祭の台本書いたりと大変で、こっち進められず申し訳ない。
分身、出来たらいいのに…。


ミレディ・ライセンェ 〜オルタを添えて〜(中編)

 ──立香side

 

 シアが、精神状態を頼光ママンにより安静させた後。ついでに言えばハジメが、壁を一通り壁に八つ当たりを終えた後。立香達は道なりに通路を進み、とある広大な空間に出た。

 

 そこは、階段や通路、奥へと続く入口が何の規則性もなくごちゃごちゃにつながり合っており、まるでレゴブロックを無造作に組み合わせてできたような場所だった。一階から伸びる階段が三階の通路に繋がっているかと思えば、その三階の通路は緩やかなスロープとなって一階の通路に繋がっていたり、二階から伸びる階段の先が、何もない唯の壁だったり、本当にめちゃくちゃだった。

 

「お〜! めちゃくちゃ迷宮っぽいな! テンション上がるわ〜!」

「そうですね! アステリオスさんの宝具も素晴らしかったですが…罠はありませんでしたからね! ドキドキワクワクです!」

『そー言って貰えると、ミレディちゃんのテンションも上がるよ〜! 奉れ〜!!』

 

 そんな中、テンションを上げながら目をキラキラさせるのは立香とマシュだ。流石は地球最後のマスターとその正妻か。強靭なメンタリティが過ぎると思われる。

 

 一応、きちんと周囲に警戒を行なっているあたりも流石だ。ハジメが“解析”を終えていない場所にも近寄らないようにしている。だが、その目はキラッキラッだ。予想外の反応ではあるが、ミレディもワイワイ。

 

「…立香。テメェどういう心理状態だ、お前?」

「…意味分かんねぇですぅ」

 

 未だ怒り心頭のハジメとシア。それに対し、立香はキラッキラッの笑顔を二人にぶつける。

 

「ハジメ、考えてみろって! 人がマジモンの迷宮見れる機会って少ないんだぞ!」

「…俺は出来れば味わいたくなかったよ、こんな陰湿な迷宮なんかな。あとお前なら何度かは迷宮探索してんだろ?」

「ああ、十…いや二十?」

「うん、やっぱお前異常」

 

 といいつつもハジメは壁に“マーキング”を施しながら、“解析”を行う。“解析”をする度に壁の奥にあるハジメ対策の煽り文があるのか、どんどんアウトローな目に変化していく。

 

 なお、ハジメのいう“マーキング”とは、ハジメの“追跡”の固有魔法のことだ。この固有魔法は、自分の触れた場所に魔力で“マーキング”することで、その痕跡を追う事ができるというものだ。生物に“マーキング”した場合、ハジメにはその生物の移動した痕跡が見えるのである。今回の場合は、壁などに“マーキング”することで通った場所の目印にする。“マーキング”は可視化することもできるのでユエやシアにもわかる。魔力を直接添付しているので、分解作用も及ばず効果があるようだ。

 

 通路は幅二メートル程で、レンガ造りの建築物のように無数のブロックが組み合わさって出来ていた。やはり壁そのものが薄ら発光しているので視界には困らない。緑光石とは異なる鉱物のようで薄青い光を放っている。

 

 ハジメによると、『リン鉱石』と言うらしい。どうやら空気と触れることで発光する性質をもっているとのこと。最初の部屋は、おそらく何かの処置をすることで最初は発光しないようにしてあったのだろう。

 

 立香のイメージとしてはラピュ○に出てくる飛○石の洞窟。石の声が聞けるおじいさんがいた、あの場所である。もっとも、リン鉱石は空気に触れても発光を止めることはないようだが。

 

 と、立香がジ○リな世界観を堪能しつつ、暫く。急にハジメが静止の合図を出した。

 

 そしてハジメがゴソゴソと宝物庫を探る。途中ミレディの頭の部分が出かけていたが、シアの殺意が溢れ出した瞬間、ハジメは引っ込めた。一応、まだハジメに理性がありそうでホッとする立香である。

 

 ハジメが取り出したのはヘルメット一体式のゴーグルだ。

 

「…赤外線だ。こいつを付けて全部躱すぞ。無駄な体力の消費は避けたいしな。英霊組は霊体化を頼む」

「……ハジメ、赤外線って?」

「なんです?」

「太陽の光の一種の事ですよ、ユエさん、シアさん。ライブラリで閲覧した知識にあります」

 

 雰囲気が、いきなりライセン大迷宮の外観から出る『昔ながらの迷宮』感が薄れ、代わりにスパイ大○戦らしい感じに豹変する。

 

 全員が漏れなく装着。すると確かにそこにはいくつもの光の線が描かれていた。ユエやシアも「これが……」と少し不思議が解けて満足気だ。

 

 そして全員が装着を完了させ、遂に第一歩を踏み出そうとして…。

 

 ──ガコンッ

「「「「「!!?」」」」」

 

 入り口で聞いたのと同様の音が聞こえた。

 

 なお、今度はブロック一つだけではない。事実、部屋全体が起動音を上げた。それと同時に立香の体が浮く。他のメンバーも地面から空中に身を投げ飛ばされている。

 

 どうやらこの廊下ごと、回転しているらしい。先程まで進行先であったはずの場所が、立香達の真下となっていた。

 

 重力に従い、立香達は底に落ちていく。その進行先にはつい先程、ハジメが言っていた赤外線式のトラップがあり、

 

「チッ! 全員、横から槍が来る! 気を付けろ!」

 

 ──ガガガッ!

 

 レンガの様な重厚な壁をいとも簡単に貫き、幾多もの槍が現れた。勢いも凄まじく、威力の弱まる気配はない。

 

「ッ! “天翔閃”」

「シャオラァアア、ですぅ!!」

 

 そこで立香が純白を放つアイゼンで、シアが『気』を纏ったドリュッケンで吹き飛ばしていく。互いの側面を粉砕し、強襲を妨げた。ユエやマシュは魔法特化のため、ミレディに対する対策としてここでは動かない。

 

 なお、立香の“天翔閃”は極小規模に展開されたもので、刃に宿らせているため、霧散する魔力量は割と少ない。シアの『気』も衝撃波を伝播させ、触れてもいない槍ごと破壊していく。互いにこの迷宮には適合した技と言えた。

 

「よし! よくやった!」

 

 その間に、ハジメが義手から感応石付きのワイヤーを飛ばし、近くの壁に“錬成”を発動。ハジメはユエの体を抱え、急ごしらえの地面に着地した。

 

「すまん! 助かった、ハジメ!」

「というか、ユエさんだけズルイです!」

「フッ、お前にはまだ早い」

「!?」

「いや…つーか、マジで魔法無しじゃ無理だろ。アーティファクト、作っといて良か──」

 

 った、と言い掛けたところで立香達の横にあった壁から光が露わとなった。深く掘られた文字が照り輝いているようで、少し薄暗いこの場所でもよく見る事が出来た。

 

 “やーい、やーい。トラップ全部見破ったと思った? ざんね〜ん! この堕天美少女魔法師たるミレディ・オルタちゃんには敵わないのでした!”

「「「「……」」」」

 

 やけにデコられた文字が浮かび上がった。オルタが片言からこんな流暢になっている、とか今はどうでも良いらしい。ハジメ達的にはただ腹が立つだけのようだ。

 

 つい先程、主な被害を受けたハジメとシアは言わずもがな。ユエとマシュも無表情だ。心の中では青筋を立てているに違いない。

 

 一方で立香は、

 

「オスカー。これは偽物だよね? 凄まじく形だけ感があるんだけど…」

『ああ、限りなく本物に近いウザさだけれどね。ただし字面だけだ。魂がこもっていない。本物のミレディならばこの五割増しで相手を苛立たせられるに違いない』

「うん、俺もそう思う」

『マスター、オスカー卿。貴公等は一体、何の専門家なのだ?』

 

 ウザさの評論を、オスカーと共に行なっていた。両名共にウザさを柳に風と受け流している。流石は精神メンタル怪物の立香か。

 

 なお二人のウザさ耐性は、立香の場合はメフィストフェレスやとあるプロフェッサーMによる悪戯(・・)を日頃からやんわりと受け止めているため、オスカーに関しては言わずもがな生前本物ミレディと共に居過ぎたのが原因となる。

 

 獅子王のツッコミなど何処へやら。立香とオスカーは目を背けた。すると不意に僅かながらも突くような臭いが、立香の鼻孔をくすぐった。

 

「…ん? 何か臭わない?」

『マスター、何か下から漂ってくる気配が御座いますが」

「え? 本当に、頼光? どれどれ…」

 

 頼光の進言に従い、プルプルして怒りを堪えている四人をスルーしながら立香は下を覗いた。ハジメが作ってくれたゴーグルには“夜目”、“遠目”なども付与されているようで、お陰で索敵には問題は無かった。

 

 最初に見えたのは黒い何かの塊。しかし何か蠢いているようだったので、魔物かと訝しみつつも更にゴーグルの精度を上げて、再度覗いた。

 

 ──カサカサカサ、ワシャワシャワシャ、キィキィ、カサカサカサ

 

 そんな音を立てながらおびただしい数のサソリが群れを成し、まるで一匹の生物であるかのように蠢いていたのだ。体長はどれも十センチくらいだろう。強さはそこまでだろうが、生理的嫌悪感が凄まじい。ハジメの“錬成”で落下を防がなければ、サソリの海に飛び込んでいたというわけだ。

 

 恐らく臭ったのも、彼らが尾から噴き出している、即ち毒だろう。立香やハジメ、マシュには効果は薄いが、ユエやシアには時間が経てば何かしらあるかもしれない。

 

 なのでとりあえずナイチンゲールの『我はすべて毒あるもの、害あるものを絶つ(ナイチンゲールブレッジ)』で毒性と凶暴性を奪い、行動不能に陥らせる。

 

 そして下の方でワシャワシャ蠢くサソリに、流石の立香もこれには少し引き立つも、

 

「…なるほど。アラフィフ並みだ」

 

 と同時に敬意を表した。これは恐らくは本物ミレディの仕掛けだろう。実際に横に出来た新たな文章は、色々と凄まじかった。

 

 “彼等に致死性の毒はありません”

 “でも麻痺はします”

 “存分に可愛いこの子達との添い寝を堪能して下さい、プギャー!!”

 

「…チッ」

『なっ!? マスターが…やさぐれた!?』

『そんな!? マスターの精神耐性は究極的! カルデアのどの様な御方でも不可能だったというのに!?』

『お、流石の立香君もアウトだね。流石は本物のミレディの文章だ。込められているウザさの桁が違う』

『オーくん、オーくん。ウザさで私かオルタ(偽物)か判断しないで貰えないかな?』

 

 本物(マジ)のミレディのウザにかける魂は本物と言うべきか。遂に立香さえもマジミレディのウザさに舌打ちをかました。

 

 たとえアラフィフの悪属性付与でさえも、普通に弾き無効化するはずの立香の精神防御力を貫いたことに、ブライズは驚愕を隠せない。一方で、オスカーはむしろ当然の事とばかりに頷いた。ミレディは不本意そうであったが、あえて無視する。

 

 するとハジメが“錬成”を行なっていないにも関わらず、文章の横に扉が現れた。明らかに誘導しているが、それでも行かねばならない事に変わりはない。

 

 立香は掌を叩き、全員の正気を取り戻させる。

 

「はいっ、全員戻って来い! とっとと次行くぞ!」

「…ま、ここで立ち止まってても意味ねぇしな」

「絶対に……負けられない」

「ミレディ・オルタ…潰すですぅ!」

「はい、マシュ・キリエライトも全力で参ります!」

 

 扉を開くと再度、リン鉱石の輝きが廊下を満たしている。

 

 ハジメも一応、“解析”を使っているとはいえ、先程のようなこともある。今後もいやらしい罠は続く事となるだろう。

 

 立香は偽物の文章ならば何らダメージは喰らわないが、他のメンバーは違う。割と奈落に落ちたら、長年閉じ込められてもそこの辺りは普通なのだとハジメとユエに関しては意外に思ったが。

 

「頼光、獅子王。霊体化を解いてくれ」

『了解致しました』

『承った』

 

 立香の少し斜め後ろの両サイドに頼光と獅子王が同時に姿を現した。声こそは冷静であるが、二人の表情には「立香(マスター)のお願いだぁ、ヒャッホウ!」的な喜びが伺える。

 

 ニマニマする二人の英霊に、少しハジメが不思議そうに眉を寄せた。

 

「あん? 人数増えてもあんま意味ねぇとは思うんだが…ミレディ戦までに温存しておいた方が良くねぇか?」

「二人とも手練れだから、トラップに反応できる人間はいた方がいいと思う。出し惜しみをして死んだら意味がない。場数だったらハジメは当然の事、俺やマシュも敵わないぐらいだし。直感にも頼っていくべきだ」

「ふっ。この母、良い所をお見せしましょう」

「マスターの期待にお応えするとしよう」

「そうか。ならいい」

 

 立香の話と立香ブライズ二人のセリフを聞き、ハジメも流石に首を横に振ることは無かった。簡素に言葉を返し、“解析”を続行する。

 

「ユエさん、ユエさん。ハジメさんって本当に立香さんに甘くないですか!? 相当、デレ入ってませんか!?」

「……ん。立香は要注意人物」

「(コクコク)」

 

 ハジメの耳には当然のようにシア、ユエ、マフラーの話は入ってきていないらしい。当然、立香の耳にも入ってきてはいない。もし、入って来たならば、戦争(クリーク)の必要があるだろう。

 

 すると再びハジメが反応した。

 

「おっと。なんか今度はよくわからねぇ探知機の罠だな…。生成魔法と他の神代魔法を組み合わせた特殊な探知機って所か」

「今度は躱すのは無理か?」

「メカニズムがわかんねぇからな。ま、トラップのタイミングが分かるだけマシだろ。つーわけで…」

「ああ、勿論…」

 

 ハジメがヘルメスを、シアがゲシュヴィント、その他のメンバーも“身体強化”やハジメの配布したアーティファクトを起動させる。

 

 そして足を踏みしめて、叫ぶ。

 

「「正面突破だ!」」

「ん!」

「上等ですぅ!!」

「行きます!」

「ふふっ、単純な分良いですね」

「行くぞ!」

 

 先ず飛び出すのは立香とハジメ。それに続いて一行が走り抜ける形となっている。それぞれがチートであるためか、違いはあれど全員が非凡なる速度で廊下を駆けていく。

 

 そして遂に立香とハジメが罠の領域内と思われる場所まで辿り着き…そのまま何も起こらず通り過ぎた。

 

「「…は?」」

 

 思わず目が点となる男子二名。領域外で着地し、ハジメにアイコンタクトで「ハジメ? こりゃ、ダミー系の罠か?」と聞くが、「知るか、コラ」と返ってきた。ハジメも先程から“解析”があまり通じず、不満な模様だ。

 

 何も無かったと言う事実に少しイラつきを覚えつつも、逆にここではウザさ極まりないトラップが無いのか、と安堵する立香とハジメ。

 

 しかし、だ。

 

 ──ガコン

 

 馴染みのある稼働音が背後(・・)で鳴った。

 

 時間差の罠か、と踵を返してアイゼンを構える。ハジメもドンナー・シュラークをホルスターから取り出し、引き金に指を掛け、停止した。

 

 まず二人の目の前に飛び込んできたのは呆然とするユエ。彼女は立香達と同じく、無傷で罠の領域を潜り抜けていた。

 

 そしてその背後で事件は発生していた。

 

「なななな、何なんですか! これぇ! 助けて下さ〜〜い!! って、何か白い液体が壁からぁ〜〜!!」

「罠が何重にも連鎖して…防御が追いつきません!」

「くっ! はぁっ! せぇいっ!」

「邪魔だ! そもそも何故マスター達はここを潜り抜けられるのだ!?」

 

 シア、マシュ、頼光、獅子王に四方関係無く、物理トラップが夥しく起動していたからだ。四人は追撃や防御で手一杯であり、傷こそは服に傷が出来る程度であれ、根本的に罠を破壊はできていなかった。

 

 罠の内容はバラエティに富んでおり、チェインソーから爆弾、矢の雨にただの粘液性のある白い液体、Gの卵と何でもござれ。殺意満々かつ嫌がらせ満々である。

 

 粉砕される罠の金属片が吹き飛ぶ中、立香達は罠の待遇の違いに呆然とする。

 

「…おい、オスカー。ミレディ。これはどういう罠なんだ?」

『知らないよ。オルタが付けたんじゃないかい?』

『ミレディちゃんの記憶にも残念ながらありませ〜ん』

「何て無責任なんだろう、解放者」

「そんな事よりもお助け〜ですぅ!!」

「ああ、そうだったなっと」

 

 ──ドパン、ドパン、ドパン

 

 兎も角、流石に鯨波の如く連鎖する罠の数々に苦戦しているのを見逃すわけにはいかないので、壁ごとハジメの弾丸が抉っていく。それだけで罠は破壊され、四人への集中攻撃も解除された。

 

 罠が解除された後の、四人の顔はそれはもう疲れきった顔だった。立香もすぐにマシュを始めとするブライズに駆け寄った。

 

「三人共、無事?」

「はい、先輩…無事ではあるのですが…その…」

「ミレディさんを天網恢々したい気分です、マスター」

「同感だ、頼光卿。然るべき罰を与えるべきだ」

「はいはい、落ち着いて。俺の体なら幾らでも貸すから」

 

 そう言うとマシュは立香の胸に体を預け、獅子王は立香の右腕を抱きしめ、頼光は立香を後ろから抱きしめ始める。風が吹くかの様な自然な動作で、吸い寄せられるかの様にそうなった。

 

 立香を中心に甘ったるい空気が流れ始める。心なしか迷宮の配色は桃色風になっている。

 

「…チッ、リア充が」

『爆ぜろ、リッカくん』

「ハジメさ〜ん! 構ってくださ〜い! ユエさんとマフラーさん、今回ノーダメなのにちょいちょいイチャイチャするくせに、何で命の危機に会った私には構ってくれないんですか〜!! あとこの白い液体、拭きたいですぅ!!」

 

 立香とは反対方面でも色々起きている様だが、今は嫁を落ち着かせることに全神経を傾ける立香。

 

 だが、立香の集中を妨げる光が立香のちょうど前あたりに発生した。その位置は今回罠に会った少女達には良く見える位置。

 

 この迷宮に入ってからよく見るその光の色に、立香が嫌な予感をしつつ、目を向けると。

 

 “死ね、駄肉共”

 

 純粋な殺害予告が書かれていた。

 

「「「「………」」」」

 

 被害に会った女性達が、何かしら思い当たる節があるのか目を背ける。何から? 当然それは…

 

「「『………』」」

 

 ユエさんとマフラーさんとミレディさんの虚無的な目線からだ。ハイライトなど無く、動くことさえもない。実際にその場にいるのはユエだけなのだが、虚ろな殺意の陰は三つ。次元を乗り越えた凄まじき怖気さがそこにはあった。

 

「あー、これは俺にも分かる。オルタの方だな」

「だと思うぞ、ハジメ。ミレディなら、感情的になることもなく、ウザいことを一貫すると思う」

『その認識で間違い無いだろう。…ただ、ある種の精神トラップではある様だがね』

 

 そして野郎三人組は、乙女な話題から目を背けて、語り合うので会った。

 

 なおこれらは迷宮探索開始から、おおよそ十五分足らずのお話である事を考えると、ただえさえストレスフルなこの迷宮はまだまだ終わらない。

 

 それを理解して、立香は己を鼓舞する様に瞑目するのであった。




にしても作者は最近、マフラーが動くことに疑問さえも覚えなくなってるんだ。
まるで登場人物に『マフラー』が加えられたが如く…。
これも全て私が「ユエと香織対等にするにはどうすれば…そやっ! マフラーでハジメの貞操を守護ろう!」という思考に至ったせいか、畜生め!

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