ありふれた錬成士は最期のマスターと共に 作:見た目は子供、素顔は厨二
──立香side
休憩終了から一時間少し。最早何度も見て来て、相当に飽きつつある部屋の前に立香達は立っていた。
「また…ここか」
「だな。チッ、強化手榴弾また使うか」
「すまんが頼む」
例のゴーレム部屋である。何度も何度もハジメがゴーレムを再起不能としているにも関わらず、この部屋に訪れる度にゴーレムは復活しているのだ。奥の部屋もずっとリスタート地点となっており、正直この部屋は立香達にとっては忌々しいミレディの象徴となり得ている。
とりあえずハジメが今まで同様、強化手榴弾を放り投げる。ゴーレム兵を例の如く全滅させるためだ。開幕爆殺と言えなくもない。
もうこの迷宮では呆れるほどに聞いて来た爆発音が轟き、入り口から炎が吹き荒れた。
そしてハジメがゴーレムの再生の核を潰しに行こうと脚部に赤い筋を走らせたところだった。
「ッ!? 新手か!?」
目を剥いてバックステップを踏んだ。
瞬時に手に取られるのは宝物庫から取り出されたドンナー・シュラーク。紅の稲妻が鳴り響くと同時に、弾丸が射出された。単純な魔物であれば、確実に葬れる凄まじい速さで軌道を描く。
だがそれに伴い響いたのは硬質な金属同士がぶつかったような衝突音。ゴーレム如きでは弾丸には耐えられるはずもないというのに、だ。
故に炎の奥から現れたのは本来の岩により造られた尖兵ではない。むしろ影が人の姿をして現れたかのような黒を纏った兵士達が十体ほど現れた。形態こそ違えど、それら全てから歴戦の強者の気配が漂う。
しかも決して十体で終わり、という都合の良い話は無いようだ。炎の立ち込める部屋から更に人影が見える。軽く見ても三十は優に超えている。
ハジメ達は初めて見ることとなったその姿に困惑を大なり小なりしているようだが、立香にはそれが何なのか、すぐに理解することができた。
「シャドウサーヴァント…」
シャドウサーヴァント。それは単純明解に言うならば不完全な霊基から作り上げられた英霊の事を指す。召喚者の失敗や召喚者の不在などが主な理由とされており、その英霊の怨念などを糧として残された残留思念でもある。
だがその霊基自体は立香自体には分からない。ここは地球ではないのだから当然だ。地球上の英霊ならばすべてと繋がりうる立香であれど、他世界の英霊のことまではごく少数しか知り得ない。
『マーシャル!? しかもシュシュ…他のみんなまで!?』
しかしその回答はミレディにより判明した。人魂のようになっているオスカーも息を飲んでいる。どうやら現れた霊基の全ては『解放者』だった者達の物のようだ。
だが確かに【ライセン大峡谷】が『解放者』の基地として利用されていたことと、ここの主が仮にもミレディであることを考えると『解放者』を召喚する縁は容易に発生する。ミレディ・オルタが何らかの力を使ったにせよ、ただの召喚にせよ頷けるだけの根拠はあると言うものだ。
なお見るからにハジメの弾丸を止めたのはハジメの技能である“金剛”をかつて所持していたマーシャルだろう。右腕が折れてはいるが、原型は留めている。その傷もすぐに首元にあったネックレスにより回復したが。
「今のってアーティーファクトですよね!?」
「ん……明らかにアーティーファクト」
ギクッ! と人魂状態のとある眼鏡がビクついた。
「オスカー…お前とこんな短い間柄になるとは…残念だよ(ガチャッ)」
『殺すつもりかい!? 僕を殺すつもりかい!?』
「落ち着けハジメ。…オスカー、あとで校舎裏(ジャキンッ)」
『何処だ、そこっ!?』
立香とハジメは容赦なくオスカーを睨みつける。両名共に武器のスタンバイは完了している。
「そもそもここ最近、『解放者』の方々が役に立ったことはありましたでしょうか? 母の勘違いでしょうか?」
「「「「「「「ない(です)」」」」」」」
『『ぐふぅ!!』』
頼光のセリフに一行全員が同調した。『解放者』の主要メンバーたる二人が呻き声を上げる。しかし反論は不可能。だって事実だし。
胸に突き刺さった言葉という矢に二人が沈黙するが、立香達はサラッと無視。今も襲い掛かってくる英霊達に反撃を仕掛ける。
「さぁーて、殲滅するぞう!」
「立香…さてはテメェ、余裕だな?」
「なんでハジメさんも立香さんも余裕なんです?」
割とボケに入る立香。それに対し、サラッとツッコミを入れるハジメ。結局の所二人とも余裕である。少なくともシアが思わずツッコミを入れるぐらいには。
シアは二人とは違い経験が浅い。本格的な『怪物の領域』での戦闘はこれが初めて。嫌でも緊張を解くことはできないだろう。
するとハジメが腕を掲げたかと思えば、シアの背中を割と強めに叩いた。殴った手が義手であったという点もあり、シアが「ひぅ!?」と涙目になる。
いきなりぶたれるという乙女的には…というか人間的にアウトな行動。シアはハジメをキッとつり目で睨みつけた。言葉にせずとも不満満々なのが恐ろしく分かる。目が口程ものを言うと言うのはこう言うことだろう。
「安心しろ。これぐらいの相手、テメェの足元にも及ばん」
「……それとも私達の助け、まだ必要?」
ハジメもユエも、シアの方は一切見ていない。見つめるのは敵だけだ。つまりシアには背中を向けている。本当に二人が伝えたいことは、言わずとも分かるだろう。
──背中は任せた
それに気づいたようだ。シアの目が見開かれ、ドリュッケンを握る力が一層強くなる。ウサミミはピコピコと元気に上下し、シアの心模様を表現していた。
「はいっ! お守りなんていりません! やってやりますぅ〜! …ふっふ〜、お二人ともデレて来ましたね〜。既成事実を作るのももうじき…」
「「調子に乗るな。ウザウサギ」」
「んなぁ!?」
だがハジメもユエも何だかんだとストレートで好意をぶつけられるのは慣れていないため、ツンデレるのである。
「あっはははは。やーい、やーい。ハジメさんが照れてやがんの〜」『ハッち〜ん! ここからなるんだよね! 獣の如く、狼の如くそこの子ウサギちゃんを襲うんだよね! 分かってるよ〜! ミレディちゃん、そこの辺り理解できるから!』
「うっせぇえええ! 立香! ミレディぃいい!」
「うう…すみません、香織さん。ハジメさんのジゴロ癖がどんどん悪化していっています…」
「……これは、由々しき事態」
「(ブンブンブンブンブン)」
結果、一瞬の合間シリアスは死んだ。一行は平常運転もとい全力疾走で和やかな雰囲気と成り果てている。
だがそんな急にほんわか空間を展開されて焦ったのだろう。立香の両側面から剣が迫る。
だがそこは立香クオリティ。油断は無い。すぐ様にアイゼンを双剣形態と変形させ、その場でターンするかのように流動的に剣の軌道を逸らした。
シャドウサーヴァントは接触による反動がほとんどない為、前に倒れ込む。それが僅かであったのは流石ではあるが、ここでは致命的なミス。双剣が荒れくるいながらも襲いかかる。
それでも英霊の為せる技か、両方共、擦りはしたものの物の見事に避けてみせる。
そして僅かに立香へ嘲笑を浮かべた、そんな気がした。顔が無いので実際は分からないが。
だが気がつくべきであった。攻防の一瞬の合間に立香の髪の色が藍色へと変質し、肌は褐色、果てには骸骨の仮面を頭に付けていることに。立香が戦いの僅かな合間に『英霊憑依』を行なっていたことに。
普段立香が浮かべる事の無い、慈悲なき瞳。彼はそんな中、告げた。
「さあ、熱く、熱く、貴方の身体を、心を焼き尽くす…」
──静謐のハサン。『十三の花の盟約』を結び合った英霊の中でも特に暗殺、毒殺に秀でた英霊。身体が余すことなく強力な毒により構成されたとされており、『アサシン』クラスの中でも屈指の毒殺者。
そして彼女を憑依させた立香が握るその刃には滴り落ちる雫が落ちていた。
故に結果は必然。
「「っ!?」」
影の英霊に耐え切れるはずなどなかった。肌が焼けたように爛れていき、切口を中心として鳳仙花の色が広がり、ひび割れていく。そしてやがて崩壊を招いた。
「『
急いでシャドウサーヴァント達は毒に抗おうとアーティファクトを使用する。淡い陽光の魔力が輝き、傷口が閉じていく。
されど回復魔法と言えども体内にある強力な毒までは取り除けない。だからこそ行われるのは毒により開く傷をただ閉じる事のみ。毒消しの作用もあったのかもしれないが、立香には知らない事。あっさり塵へと還った。
瞬殺された同胞。それに困惑せざるを得ないのか、シャドウサーヴァント達が近寄ろうとする気配は消えた。代わりに魔力の粒子がシャドウサーヴァント達を中心に振りまかれる。
近寄れないならば遠くから仕留める。成る程、道理である。事実静謐のハサンは遠くにいる相手ならばクナイなどを用いて攻撃するのが常套手段。
だがシャドウサーヴァント達は勘違いをしている。あくまでもそれは静謐のハサンを憑依している立香の話だ。
立香の服装が瞬く間に変化する。髪と瞳は紅となり、服装もまた同色の王衣。本来ならばドレスが展開されるがそこは性別に合わせたらしい。背中にはマントを背負って、タクトを振るう。
そして展開されるのは一切の敵を凍らせる絶対零度。本来ライセンの地では拝む事の無い雪が舞った。
「震え、凍てつき、砕け散るが良い」
彼が瞬く間に宿したのはケルト神話の絶対的女王、スカサハ=スカディ。スカディとの融合を果たした立香は氷河の王として君臨する。そしてシャドウサーヴァントに下された判断は、『敵』という簡素なもの。
ただしその判断はスカサハ=スカディにとっては大きなもの。そしてシャドウサーヴァント等にとっては命の是非に関わるものであった。
「儂が良いと許すまで、貴様らは何一つの絶叫も許されぬのだから」
そして展開されるのは蹂躙と地獄。その開始の合図は立香が告げる冷酷な宣言と牡丹色の魔力の高鳴りであった。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
──シアside
(ああ、身体が軽い。まるで羽みたいです)
あまりにも駆け抜ける速度が尋常に無く速い。走る度に『気』が脚に収斂し、爆発的な速度を生み出した。いつもに無く息切れも一切無い上に、思考がクリアだ。
シアの“気闘術”は精神の影響を多大に受ける。精神を水辺の如く凪ぎ、己の意識を戦いに没入させる。
これにはハジメの“集中”レベルの雑念の放棄が必要不可欠であり、少しでも乱すものならば“気闘術”はシアに歯を剥く。それほどの諸刃の剣なのだ。
代わりに得る力は絶大。ただえさえ高い身体能力が割増し、気を放つ事による中距離攻撃を可能とする。果てには気を用いた防御を可能とし、より精度が高ければ高いほど応用性が増す。
以前ユエとの一騎打ちでシアが魔法を素手で逸らすことが出来たのもこの技によるもの。極度の集中の中にあったシアが気を収斂し、魔法を弾いた。これが真実である。
そして今、シアはシャドウサーヴァント達と互角どころか圧倒的な差を持って敵を沈めている。
剣で襲いかかってきたものには白刃どりを行ってから、正拳突きにより腹部、頭部、アーティファクトをほぼ同時のタイミングで破壊。回復する暇も無く、葬り去った。
また魔法を使おうとこれまた攻撃性のアーティファクトを使おうとしたが、ドリュッケンが槌の部分をロケットパンチの要領で発射。アーティファクト諸共吹き飛ばした。
槌の部分がワイヤーで戻ってきている間に敵がナイフで首筋を斬ろうとしたが、気により防御。同時にブレッヒェンで地面に叩きつけ、地上のシミとした。
視認、知覚、移動、打撃、防御、打撃。それだけの簡素な攻撃手段。しかしシアの攻撃の数々を止められる者はいない。
つまりはシアの精神はそれほど戦いに没頭できていた。攻撃の一つ一つを絶対必殺の領域へと昇華する、武術の極致を一時的に会得していた。
戦いの前には不安や恐怖があった。本当に戦えるのかどうか。少なからずそう悩む程度にはシアはマトモだった。
しかしハジメとユエの激励がそれら全てを払拭した。シアの心中にあった負の感情を打ち消し、気を高める事を可能とした。
まだまだ敵が尽きる様子は見られない。されど横には常に彼らがいる。
金色に輝きながら、極大の魔法陣を生み出し、黒き影を駆逐する姉貴分の様な人が。
あらゆる英霊を従え、純白の魔術回路を発生させる誰よりも強靭な心を持つ人が。
白百合の盾を構え、場の致命傷の全てを遮ってしまう優しい守護者が。
紫電の雷鳴が渦巻く中、勇ましく戦場に飛び込む紫苑の花嫁が。
太陽の如き聖槍と愛馬と共に駆け抜け、突貫する向日葵の花嫁が。
そして真紅の魔力を迸らせ、数多の武器を取り出しては爆砕する誰よりも愛しき人が。
彼らがいるから、シアは戦える。迷う事なく堂々と死に抗える。
「かかってこいや! ですぅ!」
シア・ハウリアは淡青白色の魔力を荒ぶらせ、中指を突き立て、上等をかます。シアの瞳はかつて憧れた人達の隣に相応しい、何とも勇猛な光が差し込んでいた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
──ハジメside
爆炎の中、とある人間がまるで羅刹の如く辺りを蹂躙していた。
「ふん…他愛もねぇな」
『いや、人体って大概中からの爆散には耐えられないと思うのだけれどね、僕は』
勿論ハジメである。なおここはシャドウサーヴァント発生の元となっている部屋の内部だ。ハジメはつい先程から壁などを一通り破壊し、シャドウサーヴァントの発生の元を潰そうとしている。
なお話の内容はハジメが先程まで相手をしていた最高峰の防御固有魔法“金剛”の所持者、マーシャルだ。解放者の中でも生粋の戦士であり、かつては軍団長を務めていただけの実力がある。
マーシャルの“金剛”はハジメの“強化”を受けた弾丸でさえも貫き切るこは難しかった。破壊自体は可能なのだが、その後すぐに回復魔法のアーティファクトが展開される仕組みだ。
メツェライなどで押し切ることも考えたハジメだが、ここで妙案が思いついた。それが何ともひどい作戦だったのだ。
まずはハジメが弾丸などで脚を潰し、時間の隙間を作る。その合間で“身体変化”と“縮地”を用いてマーシャルとの間合いを詰めた。案の定、マーシャルがすぐに回復魔法のアーティファクトを使用。そしてそのまま再び“金剛”を用いてハジメの蹴りに耐えてみせた。
しかしハジメの本命はそこではない。ヘルメスに仕込んである極小の針レベルの魔剣が本命。それをマーシャルの体内へと打ち込んだ。
オスカーに倣ってとりあえずと仕込んでおいた爆発系統の魔剣。しかし効果は抜群だった。
結果は…グロテスクなのであまり言えないのだが、とりあえずもんじゃ焼き、もしくはそぼろ美味しい。その旨を伝えておく。オスカーの言うことはハジメのした事を考えれば、尤もなものであった。
しかし理不尽が権化化したような男にそれは通じない。現にオルカンのミサイルを壁にぶっ込んでは“解析”を行い、少しでもシャドウサーヴァントの大元を探ろうとしていた。
だがハジメがいくら“解析”を行えど、その核が見えてくる気配は無い。ただただシャドウサーヴァントを蹂躙している、というのが現在の結果だ。
「チッ。どう言う事だ? こりゃあ迷宮のシステムじゃないってか?」
『少なくとも『解放者』がこんなものを仕込んだ覚えはないけれどね』
「本気で『解放者』、役にたたねぇな」
『…いずれその汚名、返上するとしよう』
ハジメが一向に事態が進まないことに苛立ちを見せ、オスカーがその八つ当たりを受ける現状。他のメンバーも蹂躙を進める一方で何も事態は進んでいない。
どうしたものか、とハジメが頭を悩ませたその寸前。シアが急に目を見開いたかと思えば、叫んだ。
「ハジメさん! 上です!」
「っ!?」
シアの助言に乗じ、ハジメが“気配感知”の範囲を広げると同時に、義手を盾へと変形。上に向かって防御態勢を取った。
視線の先にいたのは、突き抜けの天井から落ちてきた反転した土塊の人形、ミレディ・オルタ。以前と違い、漆黒の機種となっており、派手な武器は見当たらない。代わりに身体中に魔法陣が描かれており、その機体そのものがアーティファクトであることが伺える。
『“全天”』
浮かぶミレディ・オルタのゴーレムは流暢な口調で鍵言を告げる。そして彼女を中心として浮かぶ幾多もの太陽の如き光玉。軽く百にも及ぶその魔弾は全てが最上級クラス。
かつてミレディが辿り着いた魔法の究極地点の一つ。それは三つの最上級魔法の複合技。
『“星落とし”』
“天灼”、“神威”、“蒼天”。威力だけならば魔法の中で最高と呼ばれ高い魔法の弾丸がハジメただ一人に向けて放たれた。
「ッ!? “錬成”! “強化”!」
義手の盾だけでは足りないと、ハジメは己に“金剛”、“獣鎧”を掛けると同時に、周囲の壁などを“錬成”により即席の盾と為す。更に“強化”を施したならば、堅牢なる城壁となり得る。
だが、それがどうか。“星落とし”の魔弾達は光の破裂と同時に暴虐の限りを尽くす。ハジメの“錬成”、“投影”による全力の防御修正でさえも遅れを取るほどに破壊が上回る。
半数の魔弾が使用された時、遂にハジメの防御壁が完全に砕け散った。“投影”による防御も間に合うかどうか。しかもしたところで時間稼ぎにしかなりはしないだろう。
(だがっ! それでもっ!)
しかしハジメは“投影”を実行する。物質はアンザチウム鉱石の簡易的な盾。本来ならば砕け散る事なき盾であるが、この場においては時間稼ぎ。
この盾をかざすと同時にハジメは“縮地”により、その場から瞬時に離れる。目の前に来る魔弾を、ドンナー・シュラークが発射する弾丸を“
だがそれらの迎撃を潜り抜け、懐に魔弾が一つ滑り込んだ。そして生み出される眩いまでの光。
(まず──)
ハジメは金属糸により編まれた黒外套の防御力を“強化”することにより対応しようとするが、その程度では致命傷を免れる程度だろう。しかもその後にも魔弾が二、三十を超える数存在する時点で、致命傷にならないという思考はあまりにも甘いだろう。
光がハジメを包み込む、その瞬間。
「“時に煙る白亜の壁”!」
一行最強の
ハジメは防壁を確認するとすぐにその場から離脱。マシュもすぐに防御壁を解除した。
「すまねぇ。助かった、シア、キリエライト」
「えへへ、“未来視”が発動して良かったです。代わりに魔力をごっそり持って行かれましたけど…」
「ご無事で何よりです。魔力は…」
「ああ。シア、お前も今のうちに回復薬を飲め」
「は、はい!」
どうやら、ハジメの感知より早く気がついたのはシアの固有魔法“未来視”が発動したからのようだ。“未来視”は、シア自身が任意に発動する場合、シアが仮定した選択の結果としての未来が見えるというものだが、もう一つ、自動発動する場合がある。今回のように死を伴うような大きな危険に対しては直接・間接を問わず見えるのだ。気による技能自体の強化もあってか、今回はハジメの死に対しても反応したようだが。
つまり、直撃を受けていれば少なくともハジメが死ぬような未来があった、ということだ。改めてミレディ・オルタの実力に戦慄せざるを得ない。
その当のミレディ・オルタは体の魔法陣を輝かせる。曇天の魔力が機体の周囲を包み込み、やがて影の形をした英霊、シャドウサーヴァントを生み出した。先程までハジメ達が戦っていたものと正しく同じものだ。
「なるほど。ハジメが拠点を見つけ出せなかったのに合点がいった。スキル…いや、宝具の一種か。『解放者』のリーダーのミレディならそんな馬鹿げた宝具も頷ける」
『大当たりだ。褒めてやろうか? 尤も、お前達はすぐに死ぬのだが?』
ミレディ・オルタはあっさり言うが、地球の英霊の中でもそう言った宝具はイスカンダルやイヴァン大帝クラスの馬鹿げた存在しか持っていない。
以前よりも数段流暢になったミレディ・オルタの口調。思考も明瞭になっているようで、狂い出すような気配はない。
『しかしお前達は愚かな事だ。先程の“星落とし”でその命を落としていれば楽であったものを…尤も、この迷宮に訪れた時点でお前達の未来に変化は何一つ有りはしない』
そしてミレディ・オルタを中心として魔法陣が虚空に浮かび、曇天の中煌めいた。彼女の周囲に並び立ち、曇天の中に紛れる黒色の『解放者』達はまるで悪魔の兵士が如く。
泡立つような死の気配。ミレディ・オルタはそんな中で淡々と告げる。それはライセンに伝わる処刑の合図。
『ミレディ・ライセンが告げる。
一方で一行は目の前の濃厚な死に折れる者はいない。彼らの魔力は迷いが無いと言うかのように、澄んでいた。ハジメと立香は魔術回路を迸らせて、叫ぶ。
「「上等だ!」」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
──おまけ
ハジメ「で、テメェのあのムカつく文章の数々は何だったんだゴラ」
オルタ『ああ…精神トラップを仕掛けようと思ったのだが…こう…自然と頭の中に出てきたと言うか…天啓が下ってだな…』
立香「それって…ミレディのウザさが反転しても染み付いてたってことか?」
オルタ『そうとも言えるだろうな』
ハジメ「…つまりは大体、ミレディのせいか」
シア「…ですぅ」
ミレディ『二人ともぉー!? ミレディちゃんはそこまで責任持てないんですけど──!!?』
オスカー『ミレディ、もう諦めなよ』
ミレディ『オーくん!? 慰めに一切なってないよ!?』
立香「なるほど…あくまでも思い付きだったから、魂がこもってないウザ文章だったのか…」
アルトリアが霊基が変わろうと腹ペコなのと同じ原理だってこと。
なお回復用アーティファクトは“再生魔法”は使っていない設定です。
この時点でそれやったら、割と攻略法が少ないからな〜(汗)
二章も遂にラストスパートだ!
頑張れ! 私!
三章は楽しいぞ!(オリキャラ然り。原作ヒロインズ然り。キャラの更なる実力開花然り)