ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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す・ん・ご・い…
遅れましたァアアアア!!
申し訳ない!
つーか一対多の戦いむずっ!
しかも書いてる途中で何度か辻褄合わず書き直しになるし!
途中でシリアス書けない病に陥って新しいSS始めるし!
学校の行事がはっちゃめちゃだし!
学校の先生にミレディ並みにウザいやつがいるし!
…とゆーわけで二週間ほど空きました。
申し訳ない。
VSミレディ・オルタは次の話で完結します。
…しゃあないねん。今回だけでも八千超えやったから、区切っとこうとなりましてん。
次は早めに投稿できたら…いいなぁ〜(願望)


花弁の嫁衣装

 ──ハジメside

 

「ミレディ・オルタの核は人間の心臓の位置と同様だ! アンザチウム製かつミレディ・オルタの“聖絶”が付与されてやがる! 楽には貫けねぇぞ!」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

 ミレディ・オルタとの戦闘が始まると瞬時にハジメが魔眼石と“解析”の複合技により、ゴーレムの核の位置を特定。その報告を聞くと同時に全員が散開。ミレディ・オルタの上級魔法に全員が巻き込まれないようにするための判断だ。

 

『炎に抱かれて死ね、“蒼天”』

 

 先手はミレディ・オルタ。曇天から現れるは蒼の太陽。狙われたのはハジメだ。恐らくはハジメ達の迷宮攻略中にモニタリングでもして、リーダー的な存在を炙り出したのだろう。

 

 先程の“星落とし”にこそ劣るものの、最上級魔法である故に威力は本物。

 

 だがハジメはその攻撃に銃口を向けるどころか無視。その理由は直ぐに分かった。

 

「“氾禍浪”」

「“誉れ堅き雪花の壁”」

 

 それに対しユエが津波を発生させ、炎の威力を半減し、マシュが生み出す防御壁で完全に熱を断絶。

 

 ユエが魔法でマシュの負担を減らすという連携に、ミレディ・オルタは少し関心の声を上げ、ターゲットを二人に変更。すぐ様に攻撃を再開する。

 

『へぇ…“白牢”、“天灼”、“神威”』

「“嵐帝”、“崩岩”、“聖絶”」

 

 石化の白煙には竜巻を、鳴り響く雷には大地の礫を、光の奔流には同質の光の壁を、相性を見分けた上で最善をぶつけ、威力を殺すユエ。言うは易いが、行うには難し。

 

 恐ろしいのはミレディ・オルタの発動とはワンテンポ、ズラしているにも関わらず一寸の狂いもなく、かつミレディの魔法と拮抗させられるという点だろう。更には指輪により魔力の分解は減っているものの、完全では無い状況で、上級魔法の使用を楽々とこなしているのもまた異常だ。

 

 ユエとマシュの今回の戦いにおける役割りはミレディ・オルタが発動する魔法の防御。かつての魔王にさえも優ったとされる魔法ならば、いくらマシュと言えど長くは持たない。例えばマシュの知名度補正が完全であれば、マシュ一人で対応可能であっただろうが、今は五分保つのでやっとだ。

 

 そこで急遽防御役の白羽の矢が立ったのがユエだ。ミレディから見ても天才と言える魔法の技術による魔法と魔法のぶつけ合い。これにより急激にマシュの負担は減少した。

 

 一方でユエの方も完全な格好でなく、あくまでも魔法の力を削ぐ事をメインとするため、魔力の温存は十分。神結晶による魔力貯蔵も大量にあるため、持久戦には打ってつけなわけだ。

 

「……ニセモノ、覚悟はいい?」

『うざいね? でも死ね』

 

 ユエが中指を立てると、思いの外ミレディ・オルタは煽りに乗った。恐らくゴーレムでなく生身ならば額に青筋を立てているだろう。どうやらミレディ・オルタは本物ほど精神耐性が高くは無いらしい。

 

 するとユエとマシュの周囲にインクのような液体がボトボトと滴り、急激に波を立てて形を形成していく。

 

『宝具、『集え、汝らは解放を求めし者(ベフライウング・ヴォン・エヒト)』。…今度は斬首刑と行こう』

 

 ミレディ・オルタの宝具解放の合図と共に、シャドウサーヴァントが急激にその身体を手にし、現れる。当然のように装備されているのは恐らくはオスカー製の宝具。

 

 産まれたシャドウサーヴァント達は、ミレディ・オルタの『やれ』と言う命令を聞くと、一目散にユエとマシュの方へと駆け出した。

 

 ユエとマシュは作戦の要。流石に魔王とやりあえる魔法の技量に正面突破はハジメ達でも難しいだろう。そんなミレディ・オルタの武器を減らすには二人の力が何としても必要となる。そう言った面ではミレディ・オルタの判断は正しい。

 

 しかしその前に雷が爆ぜた。一つはマシュの側で紫苑色の稲光が。更にはユエの側で真紅の稲妻が逆巻き、轟いた。

 

「さて…それでは誅伐と参りましょう」

「ああ。合わせろ、頼光」

「ええ、勿論」

 

 源頼光と南雲ハジメ。頼光は己を五人に分身。そして各々に宝具を持たせた。ハジメは宝物庫を輝かせると、メツェライを出現。“強化”によりなお一層紅を輝かせ、頼光はマシュを背に、ハジメはユエを背にして魔力を解き放った。

 

「死ね」

「“牛王招雷・天網恢々(ごおうしょうらい・てんもうかいかい)”!」

 

 紅の鉄の牙と紫苑の神鳴り。互いを背に放たれた暴力の濁流は影の英霊に抵抗を許す事なく、吹き飛ばす。二色の稲妻が迸った後には塵しか残りはしなかった。

 

 黒い影は直ぐにまたもや現れる。しかし先程の霊基とは明らかに違い、あくまでも再生ではなく再召喚であることが分かる。

 

「ま、魔力も裂ける上に意識も少しは逸らせるだろうな。ユエ、魔法の対処は任せたぞ?」

「気持ちの悪い有象無象は任せる、私の魔王様」

「…待て、ユエ。俺は魔人族じゃないんだが?」

「……?」

「…この戦いが終わったら、俺のイメージについてトコトン話す必要がありそうだな」

 

 そんな会話を交わす二人。しかしその姿は正しくヒロインを背に守り抜く漢と優雅にも指を振るう姫。これ以上ないほど二人の姿はしっくりきていた。

 

 一方でミレディ・オルタの横で咲き乱れる向日葵の花。曇天を撒き散らし、宝具の再展開を行おうとしていたミレディ・オルタは慌てて、己の機体を『落とす』ことにより、緊急の回避を行った。

 

 ──ズドォオオンッ!!

 

 行われたのは槍による刺突という何ともシンプルな動き。だがそれ故の最速、最適解の攻撃。ミレディ・オルタの右腕は粉々に砕かれる。

 

 だが流石と言うべきか。腕を破壊されてすぐに、ミレディ・オルタは向日葵の魔力を纏う女王に“重力魔法”を仕掛けた。行うのは重力操作による衝撃波。彼女のベースとなる“重力魔法”の中でも簡易的な技である。

 

 だが腕に付けたブレスレットが輝くと同時に衝撃波は霧散。獅子王が僅かに後方にズレた程度まで弱体化された。

 

『ッ!?』

 

 ミレディ・オルタが知る由も無い。まさか一度の交戦で己の“重力魔法”にある程度の対策を立てていたなど。しかもその対策方法が錬成士の最高峰にある男の手により、複製されているなど思いたくもないだろう。

 

 故に生じる一瞬。その間はある者の精神統一に要された。

 

 同時にミレディ・オルタがその気配を捉えた。その位置は己の遥か真上。ミレディ・オルタは近づいて来る気配に、反射的にまたもや“重力魔法”による反発を行う。

 

 だが起きたのは先程と同様の結果。チョーカーの神結晶が淡青白色を宿し、曇天を晴らす。あまりにも澄んだ魔力の光であったが故、ミレディ・オルタの意識が一時的に逸れる。

 

 その間に空よりゲシュヴィントの“空力”による助走を乗せ現れたシアは振り下ろしを、獅子王は愛馬ドゥン・スタリオンと共にミレディ・オルタに更なる一撃を入れる為に聖槍を再び構え、解き放った。

 

 しかし長年の経験は流石と言えよう。意識をせずとも上からの刺客に対し、宝具による英霊の即席の盾を召喚。サーヴァント級の防御を貫きかつミレディ・オルタを破壊するのはシアの槌でも困難。ギリギリの地点でシアの槌も獅子王の聖槍も勢いを失った。

 

 すぐにミレディ・オルタは横に『落ちる』ことにより、二人から距離を取る。そして一種の苛立ちを乗せ、ミレディ・オルタは叫ぶ。

 

『邪魔だ!』

 

 二度も有れば気づくというもの。今度は攻撃を“重力魔法”では無く、炎の槍を持って獅子王とシアを迎撃。至近距離故に、ユエやマシュの防御も間に合わない。

 

 獅子王はドゥン・スタリオンと共に直ぐにその場から離脱。同時に聖槍を振るい、炎の槍を振り払った。

 

 しかしシアはドリュッケンでぶつけ直撃こそは免れたものの、その反動により、シアごと吹き飛ばされた。

 

「くぅっ!」

 

 シアは吹き飛ばされつつも、ドリュッケンを振るい体を回転。そして壁に見事に着地。そして壁を再び蹴り、ミレディ・オルタへとまたもや強襲しにかかる。

 

 ミレディ・オルタはその間に周辺の壁を一部剥落させ、その材料を用いて、破壊された腕を再生。シアの攻撃を“聖絶”を纏った腕で防御し、それと同時に“聖絶”を爆発させ、シアを吹き飛ばす。

 

 だが今度は空を蹴り、勢いを殺してからまたもやミレディ・オルタへと迫る。恐ろしいのはその対応の速度。明らかに攻撃を受けるのに順応した動きだ。

 

「おおっ、シアの奴上手く動くな」

「……私がよく魔法滅多打ちにしたから」

「なるほど、それでか」

 

 ユエの言葉にハジメが納得したように頷く。気やドリュッケンを上手く盾として使い、魔法の直撃を許さないのはユエの魔法を何度も食い続けてきたというならば納得できる。事実、吹き飛ばされていてもシアは無傷を保っている。

 

 なおその間にもシアが突撃し、ミレディ・オルタが魔法を放ち、また吹き飛ばされるということが何度も何度も繰り返されている。

 

『しつこい! 怖い!』

「一回殴らねぇと気が済まねぇんですよ! 一発殴られろや! ですぅ! あと人に怖いって失礼じゃないですか!?」

『くっ! “凍柩”!』

 

 何度吹き飛ばしてもなお迫って来るシア。正直に言ってホラーそのもの。ハジメ的には仕方がないと思えるが、シア的には不本意らしい。なおその原動力は半分ミレディ・オルタが原因なので、因果応報とも言える。もう半分? ミレディである。

 

 そんなホラーな光景にミレディ・オルタは遂に耐えきれず、シアを氷の牢屋へと閉じ込めようとする。シアの体に氷が張り付き、どんどん肥大化していく。

 

 だが、シアは『気』を練ると、一言。

 

「うざってぇ! ですぅ!」

 

 なんと気を膨れ上がらせ、爆発。その勢いで氷を砕いてみせた。

 

『はぁ!?』

 

 ミレディ・オルタが驚くのも束の間。シアはドリュッケンを構え、今までと同様に振るった。動揺したとは言え、ミレディ・オルタは今まで同様、ドリュッケンへ風の爆風を放った。

 

 ──ドパンッ

 

 だがミレディ・オルタは見た。己の直前を通った紅の稲妻が、風の魔法を無に還した所を。

 

 魔法の核を打ち砕くという神業。それを為せる男などこの場には一人しかいない。しかも紅の稲妻となれば尚更だ。

 

 ミレディ・オルタは弾丸を放った男に怒り狂おうとした。再び暴走仕掛けている感情の歯車をいっそのこと、壊してしまおうとした。感情のありったけをぶつけ、灰塵へと還そうとした。

 

 だがそれらは戦闘中においては、全て無駄な雑音に過ぎない。

 

 しかもミレディ・オルタは忘れていた。己の前にいる兎の存在を。それが龍をも喰らう獰猛さを持っていることを。

 

「ハァッ!!」

 

 裂帛の呼吸。それと共にシアの『気』は洗練され、ドリュッケンに纏わりつくと、ミレディ・オルタの腹部に直撃。一点に研ぎ澄まされた気による一撃は、ミレディ・オルタの体を粉砕とまでは言わずとも、吹き飛ばし、ヒビを入れた。

 

『──ッ』

 

 上がる苦悶の響き。されどミレディ・オルタはそれでもなお直ぐに反応。更なる連撃を行おうと構えたシアに数十もの英霊を召喚。それらを肉壁とし、“天灼”を発動。

 

 サーヴァントにより、動きを止められたシアは避けることも防御をすることも許されなかった。

 

「“時に煙る白亜の壁”」

 

 マシュが防御壁を展開するものの、一瞬遅れた。結果、英霊達が灰へとなる中、シアは左腕に深い火傷を負った。また痺れもあるのか、ドリュッケンを握る両腕が痙攣している。

 

 そこでシャドウサーヴァントがシアを覆うように召喚される。先程までのシアであれば瞬殺であっただろうが、今のシアでは魔力操作が思うように行かず、『気』も乱れている。戦うには非常に困難な状況である。

 

 立ち上がろうとするも、目眩が不意に起こり足元が覚束なかった。そして目の前には黒い影のシェルエット。

 

(まずっ)

 

 思わずシアが目を瞑りかける。

 

 だが彼女の肩にそっと温もりが感じられた。それは絶望に瀕した時、彼女をその底から救い出してくれたものと同じ。

 

 ──ドパァアアンッ

 

 間延びした発砲音。一発の弾丸が何体もの英霊の急所を抉り飛ばし、戦闘不能へと追い込む。それが計六発となれば、蹂躙と言わずにはいられないだろう。

 

「いい動きだったぞ、シア。一旦休め」

「…あれ? このハジメさん、本物ですぅ? 優しいですし」

「…テメェ、マジ殺すぞ?」

 

 ハジメからすればただの労いの言葉だったと言うのに、まさかそんな返信が来るとは思っていなかったらしい。とはいえ日頃の扱いを考えれば割と正当性はある。

 

 ただ貴重な神水をわざやざ取り出し、シアに躊躇うことなく渡すのを見て思わずシアの頰は緩む。ハジメもそれに気が付き、己の単純さに呆れていた。

 

 そしてシアが神水を飲み切り、ハジメと共に再び戦いに出ようとした時、それは聞こえた。

 

 ──花よ、開け

「…来たか」

「え? え? 何です!? この魔力!?」

 

 遂に純白の魔術師が、魔術回路と共に戦場へと降り立つ。それを指し示す詠唱の声が。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ──立香side

 

「よし、霊脈感知。これなら…行けるな」

 

 少し時は遡る。ハジメ達が戦闘開始して間もない頃、立香だけは戦闘に参加せず、一人霊脈を探し出していた。

 

 霊脈は魔力が流れる場の事を指し、立香がかつて魔術回路を持たなかった頃、英霊の召喚のために使用をしていたこともある。

 

 だが今となっては英霊召喚をノーリスクで行えるようになった立香にとっては霊脈はほぼ無意味と化している。一応、『工房』を作る時には便利なのだろうが、立香はそういったタイプの魔術師ではない為、どちらにせよあまり意味はない。

 

 では何故、立香がわざわざ霊脈を探し出しているのか。その回答はただ一つ。

 

 あまりにも今からすることに使う魔力が多過ぎる(・・・・)為だ。

 

 かつて知名度補正が確実だった頃でもそれをするには令呪一画を代償とした。故に相当に薄れている今では更なる魔力を必要とし、下手すれば一瞬で立香が魔力の枯渇により倒れる可能性もあり得なくない。

 

 だからこそ立香は霊脈を探し出し、そこを起点に魔力を利用することにしたのだ。お陰でハジメにアイコンタクトで時間を稼ぐように言ったのだが、上手くいったようだ。

 

 ミレディ・オルタは未だに立香の存在を捉えていない。正確には認識自体はしているのだが、それ以上に他のメンバーへの対処を重要視している為、立香を無視しているだけである。

 

 だがそれでも十分。立香は己の腕を捲り上げ、純白の輝きを宿した。

 

「──花よ開け」

 

 急激に高まる魔力。鳴動する魔術回路に対応し、地面に魔法陣を描かれた。ただの魔法と言うにはあまりにも高すぎる魔力の丈にミレディ・オルタが反応した。

 

『ッ!? 貴様っ!?』

 

 同時にミレディ・オルタが目的を変えた瞬間だった。立香に向けられる魔法の槍の数々。立香が行なっているのは儀式であり、急性のものでもない。

 

 だが立香の周囲に完成される城の壁。白百合の魔力で彩られた盾はミレディ・オルタの魔法を粉砕し、それでも尚もヒビが入ることは無い。

 

「根を広げ、空を仰ぎ、風を魅せよ」

 

 ここで更に立香の魔力は出力を上げる。純白を彩る十三の花の色。まるでそれは花弁のように広がり、華々しく立香を包み込む。

 

 更なる攻撃を加えようと、ミレディ・オルタは周囲の空間を歪ませると鉄球を召喚。そして立香へと『落とし』た。鉄球は最初から急スピードで放たれ、尚も加速を見せる。

 

「芽ぶけ、我が愛しき者達よ」

 

 やがてそれらの魔力は二色に転換される。紫苑と向日葵の花の色。それは言わずもがな立香の花嫁が二騎。

 

 立香に迫っていた鉄球は獅子王の槍により砕かれる。またミレディ・オルタ本体も弾丸、槌、稲妻により強襲される。宝具によりそれらの攻撃を無傷で済ませ、最小限で三人を対処しようとするがユエの魔法の援護により、そうは行かない。

 

「光を遮るものは有らず。故に希望を宿せ」

 

 立香が右の手の甲を空へと高々と上げる。そして途端に赤い光が弾ける。弾けた回数は二度。令呪の二画が今、彼の花嫁へと捧げられる。

 

 同時に頼光と獅子王から際限ない程までに魔力が溢れ出す。ミレディ・オルタが放った鉄球が瞬く間に獅子王の刺突により砕かれ、頼光の稲妻にミレディ・オルタ本体がその体を削り取られて行く。

 

(己の英霊の強化! それがあの力の本質か!)

 

 ミレディ・オルタは急激に動きのキレと威力が増した二騎の英霊に驚愕しつつも、逆に立香の魔術の底が知れたと安堵を見せる。

 

 だがまだ完成ではない。魔法陣が更に連結、そして二騎の英霊の魔力が更なる唸りを上げた。

 

 未だなお、高まる魔力にミレディ・オルタは困惑を隠せない。その合間に立香の詠唱は完結する。

 

「『幻想の花の嫁衣装(カルデアス・ウェディング・クイーンズ)』」

 

 その瞬間、頼光と獅子王は魔力が弾けたかと思うと、繭のようなもので包まれた。繭の間からは光が差し込み、時間が経つ度に繭は中の光に耐え切れず、光を新たに発した。

 

 そして産まれるのは新たなる霊衣を纏い、現れる二人の女性。神秘的なまでに高められた魔力。だがそれ以上に変わったのはやはり服装だ。

 

 頼光は全身を春紫苑の柄が入った着物で多い、紫を基調としている。握られる剣は魔力と同じ紫苑の色。長く垂れていた髪も結ばれており、簪により束ねられていた。

 

 一方で獅子王もまた薄っすらと向日葵色の入った、胸を強調するようなドレスで着飾っている。本来の聖槍もブーケのような花の模様が彫られており、彼女の魅力を引き立てるような構造となっていた。

 

 いきなり場違いな服装になったことにミレディ・オルタどころかハジメ達も唖然とする。特に立香の頭に響くオスカーの『今乳繰り合うとか言うのかい、君は!?』という批判半分、驚愕半分の叫びに立香は僅かに泣いた。

 

 だが途端にだ。

 

「“牛王招雷・天雷剛鐘”」

「“真・最果てにて輝ける槍(ロンゴミニアド)”」

 

 ミレディ・オルタが咄嗟にシャドウサーヴァントによる即席の肉壁を生み出し、かつ“絶禍”による魔法の威力の半減を行う力を発動できたのは彼女の警鐘の賜物であった。

 

 ミレディ・オルタの周辺に雲が出来上がる。だがその雲は古い日本の絵画に出てくるような雲。少なからず既知の魔法による雷魔法には該当できない風貌だ。

 

 また獅子王の槍からは向日葵の光が太陽の如く眩く輝く。今までの獅子王の刺突の威力も馬鹿げていたが、今度は話が違う。何故ならばそれは『真の』彼女の聖槍の姿なのだから。

 

 そして四方八方から吹き荒れる紫電と極大の光の柱。

 

『があっ!?』

 

 シャドウサーヴァントは稲妻により凄まじい勢いで数を減らし、獅子王の為に使われた“絶禍”は本来の魔法の吸収能力を発揮することなく、光の柱に掻き消された。ミレディ・オルタは体を全力で上に落とすことにより脚部のみを破損させるまでに留まった。

 

 ミレディ・オルタの胸中は今、驚愕に満ちていた。たった二騎の英霊の一回の宝具の使用。にも関わらず失われた英霊の数と消費した魔力の量は馬鹿げている。

 

 原因は言わずもがな、霊衣の変化による作用。しかもこの攻撃が暫くの間続くというオマケ付き。ミレディ・オルタをしても防ぎ切るのは困難に等しい。

 

 立香の発動したのは『十三の花の盟約』の権能の一つ。名を『幻想の花の嫁衣装(カルデアス・ウェディング・クイーンズ)』。立香の花嫁十三騎にのみ許された霊基のランク上昇という極まったチート。代償としては巨量の魔力と時間、そして一騎の英霊に対して令呪一画を使用せねばならないという点である。

 

 そして霊基のランクアップに応じ、各サーヴァントには特殊な強化が付与されている。今回で言えば頼光は本来の『牛鬼』としての力を高め、天候をも操るほどの規格外の力を得る。また獅子王ならば本来の槍に掛けられた十三の封印を獅子王の意思でどれだけでも解除できるというもの。なお今回は五つの封印を解き、ミレディ・オルタに放っている。

 

 本来ならばマシュも使用可能では有るのだが、今は霊基が他の立香のサーヴァントよりも不完全であるが為に、使用することができない。

 

 なお規格外の魔力量ではあるが、この霊衣変換は行えても三分が限界となる。つまりは短期決戦用の権能であり、令呪の消費も考えると慎重に行う必要性がある。

 

 立香はそれでもなおミレディ・オルタとの戦いは長引かせるほど不利になると判断した。事実ミレディ・オルタのゴーレムには高速魔力回復のシステムが付与されており、長期間でも魔力切れを起こさずに戦闘を行うことができる。それを理解した上で立香はこの力を解き放った。

 

「令呪を持って我が身に命ずる…」

 

 同時に最後の一画を解き放った。対象は己。純白の魔術回路が色濃く浮き立ち、立香自身の体の魔力を覚醒させた。

 

(未だに…魔力を!?)

 

 立香が保有する魔力の丈に驚愕を隠せないミレディ・オルタ。妨害をしようとしても二騎の英霊の上に、ハジメとシアが攻撃に出ており、防戦に徹する他ない。

 

 何者にも邪魔されることなく、立香は目を見開き叫ぶ。彼が告げる命令はただ一つ。

 

「死んでも勝て…黒薔薇の魔女と共に」

 

 ──英霊憑依。

 

 瞬間、立香の魔術回路に黒薔薇の魔力色が混ざったかと思うと、立香の全身を覆い隠し、闇へと立香を誘う。

 

 ベールの如き魔力がやがて晴れるとそこにはいた。

 

「へぇ、私と同種がここにいるなんて。ま、尤も土のガラクタと同格ではないでしょうけど」

 

 立香は旗を持っていた。そこに刻まれているのは竜の紋。憑依させている恋人の象徴とも言えるもの。

 

 立香は炎に晒されていた。ただしそれらは憎悪から噴き出る黒き炎。その炎が捉えるのは彼女が憎いと感じた者のみ。

 

 立香は金の瞳でミレディ・オルタを見た。炎により生み出された上昇気流が白髪を揺らし、塵を舞い上がらせた。

 

復讐者(アヴェンジャー)』、ジャンヌダルク・オルタ。立香の中に宿った彼女は憎悪の炎を燃やし、戦場に踏み込んだ。

 

「さあ、アンタの憎悪が私に勝るか…見てあげるわ」

 

 反転した異端なる迷宮の中、反転者と反転者が相対する形で戦いは再び苛烈の炎を上げた。




なおこれをFGOのゲーム風に描写するとすると…
・1ウェーブ
・『ボス』ミレディ・オルタ(アルターエゴ+2ゲージ)
・シャドウサーヴァント二体(七クラス全部該当)
・シャドウサーヴァントに空きが空き次第、ミレディ・オルタのスキルでシャドウサーヴァント追加のシステム。
こんな風になります。
そしてシャドウサーヴァントは塵を落とす。
…こんなステージがワイトは欲しいです。

あとミレディの宝具でオスカーやナイズを召喚しないのは彼らの場合、魔力量が規格外になってしまうからです。
流石にグランドクラスを一気呼びするのはミレディちゃんでも不可能。
せめてラウスとセットで発動すれば二、三人は可能かも、程度です。
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