ありふれた錬成士は最期のマスターと共に   作:見た目は子供、素顔は厨二

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未熟ですいません(土下座)
難しいわ、こんな感じの恋愛パート。
少なくとも覚醒魔王様の方だったらまだ書きやすそうかなぁ…
それはともかく今回も始まるよ!


火花の誓い

 ーーハジメside

 

 ハジメは今、城の外にいる。ちなみに立香による“認識阻害”は今この場にはない。昨日の時点で本来は外に出る用事は無かったのだ。本来ならばハジメだって外にはいない。

 

 ならばハジメは何故外にいるのか。その理由たる張本人はハジメの横でアイスもどきを食べていた。

 

「…南雲くん。これあまり美味しくないね」

 

 そしてハジメも同じくアイスもどきを一口食べる。

 

「…どうしても日本のと比べると、美味しいとは言えないかな」

「だよね〜」

「あ、あっちのお店とかどう? 白崎さん」

「うん! 行ってみよう!」

 

 二人は笑い合いながら、アイスもどき屋のおじさんが地味にキレているのを気がつかずに食べ歩きをしていた。時間的には今は午後。もうじきに夕方になる時間帯だ。

 

 にも関わらずハジメと香織のいる大通りは大いに賑わっている。それは今日行われる花火大会のためだ。ハジメも香織に花火大会に誘われたため、今日ヤベー勇者などを筆頭とした『南雲、白崎さんに近づけるな委員会(非公認)』の目を盗んでまで抜け出してきたのだ。

 

 ここ最近、ハジメは自惚れではなく本当に香織と友好関係を築いている。でなければ光輝達を敵に回すと分かりながらここに来ることは考えもしなかっただろう。少なからず昔のハジメならばBダッシュばりの速さで逃げただろう。

 

 今でも光輝達に帰れば説教されると考えると頭が痛い。しかし…

 

「南雲くん! ここの店のは中々に美味しそうな香りしてるよ! 並んでみようよ!」

「うん、そうだね」

 

 少し前の方で笑いながらハジメを呼んでいる香織との時間はハジメにとっては後の説教を考えても余りあるものだと思える。

 

(…楽しいなぁ)

 

 こんな時間が続けばいい、そうハジメはふと思ったのだった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーマシュside

 

「あれは…香織さん。頑張ったんですね」

 

 今ここは商店街の大通り。“仮装”という立香やマシュだという認識を曖昧にし、その正体をバレづらくする魔法を使いながら情報収集を行っていた

 

 マシュは、楽しそうにハジメの横で露店に並ぶ香織の姿に微笑ましそうに笑った。同時に香織へと心の中で応援を送る。

 

 だが次の瞬間、深刻そうな唸り声がマシュの隣から聞こえてきた。

 

「なん…だと!?」

 

 驚愕に顔を染める立香。その様子に小さくない驚きを見せるマシュ。

 

 立香は本当に精神力チートと呼べる存在であり、大概のことを笑ってスルーする男。なんといってもカルデア三大悪夢を全て笑いながらクリアした男だ。そのチートぶりはもはやカンストレベルとも言えるだろう。

 

 そんな立香があろうことか目を見開いて、声を詰まらせたのだ。マシュからすれば天変地異でも起きたのか!? という状況である。だが次の言葉はなんとも拍子抜けな言葉であった。

 

「ハジメと白崎さんが…デート、だと!?」

「…先輩、驚くことでしょうか?」

「まさか白崎さんが誘ったのか!? それともハジメが!? …いや、ハジメは自分に凄くネガティブだからそれはないな。だが花火大会に誘うなんて下手すれば告白だぞ!? 白崎さん、恐るべし!」

「あ、先輩。私の話聞いてませんね」

 

 なんだか立香は戦慄していた。どうやら香織の大胆な行動に慄いているようだ。ふるふると僅かに震えている。

 

(先輩、びっくりしてますけど…先輩の場合無自覚でもっと大胆な行動に出るんですよ。…特に昔は)

 

 マシュからすればそれこそ立香の方が見事な天然ジゴロぶりを発揮し、それはありとあらゆるサーヴァントに誤解を生じさせてきた。実際にマシュ自身も何度か誤解をしたことがあった。今こそ立香は恋心を自覚して、ちゃんと周りの女性に気を配っているので頻度は少ない。

 

 マシュは溜息を珍しくも吐いた。立香は基本的に気遣いもよく、頼りになるのでほとんど文句の付けようがない彼氏だ。しかしたまーに、本当のたまーにマシュも頭を悩ませるようなセリフを言うのだ。本当に惜しいとマシュは思っていたりする。

 

「…よし、調査取り止め。二人に“仮装”、発動。…今から立香、二人の尾行を始めるぞ!」

 

 そして下世話な行動を開始する立香。なんというか…もの凄く楽しそうだ。

 

「…私も気になります! マシュ・キリエライト、行きます!」

 

 ただしマシュもまた生まれて初めての友人の恋の応援を応援するため、結果下世話な行為に走るのだった。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーーハジメside

 

 やがて空は赤から紫へと霞がかっていく。魔道具によるアナウンスがそこら一帯に広がり、もはや大通りは人だかりでいっぱいだった。

 

 一方でハジメと香織はその人だかりを既に抜けていて、城下街の公園にまで来ていた。ここのエリアは花火を見やすいのだがその反面登る必要があり非常に辛いという難点がある。そのためわざわざ来る人はいない。

 

 しかしハジメと香織は違う。ハジメこそステータス、能力ともに凡才ではあるが、香織の新たに覚えた魔術“身体強化”の補助があり、楽々と登ることができた。改めてハジメ自身の落ちこぼれぶりを思い知らされる結果となった。

 

「魔術ありがとうね、白崎さん。お陰で助かったよ」

「ううん。むしろ私が南雲くんと二人きりになりたかったからね」

「…へ?」

 

 ここ最近、香織はハジメに大胆とも取れるセリフをよく使う。地球の頃はそれでも「優しさですね、わかります」と断言できた。

 

 しかしこうも一緒に行動しているとそのセリフが思い違いであるはずなのにどうしても勘違いしてしまう。そうハジメは思っている。

 

 今日の香織の衣装は実にシンプルかつ大胆だ。着ているのは白くてふんわりとしたワンピースなのだが、どうも丈が短い。そのため腕や太ももなどを惜しげなく晒しており、大通りを歩いている途中も香織を見つめる目線は非常に多かった。何故か途中から不自然なくらいにパタリといなくなったが。あとは肩に片手で持てる大きさのカバンをかけているぐらいだ。余程大切なものであるらしく、一度も手放すことなく持ち歩いている。

 

 話を切り出したのは香織だった。

 

「南雲くん。どうか次の迷宮の探索に参加しないでくれないかな?」

「…僕なりに頑張ったつもりだったんだけどね。やっぱり戦力外だったかな?」

「そうじゃ、ないんだよ! 南雲くんがこれまで頑張ってきたのは誰よりも私が知ってる! けど…ただ怖いの」

「怖い? 何が?」

 

 香織の顔は真剣なものだった。真剣にハジメを思って、震えている。今にも泣きそうなほど香織は迷宮を恐れている。

 

「…夢を見るの。南雲くんが迷宮の奥に消えていく夢を。ただ一人、奥に消えていく夢を」

「…僕が、消える?」

 

 呆気に取られるハジメ。なお香織は懇願を続ける。

 

「うん。…夢だって分かってる! それでも…ハジメくんが心配で心配で仕方がないんだよ。だから…どうか…」

 

 一時の静寂がその場を満たした。その合間に香織は何を思ったのか、今のハジメには推し量ることができない。

 

 それでも香織の心配は痛いほどに分かった。今のハジメの心に揺らぎが出来たほどには。やがてハジメは答えた。

 

「ごめん。それは無理だよ」

 

 しかしそれでもハジメの決心は鈍らなかった。

 

「…理由を聞いてもいいかな?」

「これ以上僕の味方をしてくれる白崎さんの評判を落としたくないのもそうだし、なによりも…逃げたくないから、かな」

 

 上手くは言えなかった。しかしハジメの心はその覚悟があった。たとえ戦えずとも逃げないという覚悟だけはしていた。

 

 そんなハジメを見て香織は、笑った。そしてどこか安心したように言の葉をこぼした。

 

「…そっか。やっぱり南雲くんは、変わってないんだね」

「…?」

「知らなくても当然だよ。でも私の中では南雲くんは…誰よりも強い人だよ」

「強い…そうかなぁ。僕、喧嘩とか相当弱い自信があるんだけど」

「そんな強さじゃないんだよ。南雲くんは誰よりも心が強いんだ」

「心、が?」

「うん! 心が!」

 

 香織はまるで自分のことのようにハジメの強さを誇る。だがハジメからすれば思い当たる節がなく、頭の中でクエッションマークを大量に量産していた。

 

 すると香織はどこか懐かしそうに空を見上げた。既に空は紫一色。いくつもの星が瞬いている。

 

「あれは、私が中学生の頃だったの。あるおばあさんと男の子が悪い人達に絡まれてたの。その悪い人達、男の子にタコ焼きでズボン汚されたからってクリーニング代をおばあさんに要求してたんだよ。だけどその人達はクリーニング代どころかおばあさんの財布ごと取ってたの」

「…あ」

 

 それはハジメの記憶にもあるハプニングの一つだ。ハジメも思い出し始めた。

 

 男の子が不良連中にぶつかった際、持っていたタコ焼きをべっとりと付けてしまったのだ。男の子はワンワン泣くし、それにキレた不良がおばあさんにイチャもんつけるし、おばあさんは怯えて縮こまるし、中々大変な状況だった。

 

 偶然通りかかったハジメもスルーするつもりだったのだが、おばあさんが、おそらくクリーニング代だろう――お札を数枚取り出すも、それを受け取った後、不良達が、更に恫喝しながら最終的には財布まで取り上げた時点でつい体が動いてしまった。

 

 といっても喧嘩など無縁の生活だ。厨二的な必殺技など家の中でしか出せない。その時ハジメが仕方なく行ったのは…相手が引くくらいの土下座だ。公衆の面前での土下座はする方は当然だが、される方も意外に恥ずかしい。というか居た堪れない。目論見通り不良は帰っていった。

 

 その一部始終を思い返していると香織はハジメの顔を覗き込んで「思い出してくれた?」と嬉しそうに笑った。ハジメは「…見てたの?」と思わず聞いてしまった。勿論、香織は頷いた。

 

「私ね、あの時動けなかったんだ。警察に電話することも思いつかなかった。ただ誰かの助けを待って、ずっと見てただけ」

「白崎さん…」

「だから私の中では自分よりも強い人を相手に誰かを守ろうとした南雲くんは…誰よりも強いんだよ」

 

 ハジメはあんな所を見られていたのか、と恥ずかしく思うと同時に香織の過大評価ともいえるハジメへの思いに照れくさく思えた。そして今までハジメに香織が話しかけてきた理由がその一件にあったのかと理解した。

 

 すると香織は何かを決意したように頷く。そしておもむろにハジメへと近づいていく。

 

 ヒュルルルーと花火が上がるその時、香織は言った。

 

「だからね、私が守るよ。南雲くんを守るよ」

「えっ」

 

 花火が今、夜空を彩った。

 

 その時に香織はカバンからある物を取り出す。そして自然な動作でハジメの首元にそれをかけた。

 

「これはその約束の印。私が南雲くんを守るっていう覚悟の証。…元々は普通にプレゼントって思ってたんだけどね。ちなみにエミヤさんから教えてもらった強化繊維で作ってあるから丈夫さは折り紙つきだよ」

「…白崎さん」

 

 巻かれたのは綺麗な紅色のマフラー。薄く、されど丈夫に作られた魔術によるマフラーはハジメの首元を覆う。冬でもないのに、何という感想は出てこなかった。大事にしようと手をそのマフラーに触れさせる。

 

 花火は何度も上がり、夜空を瞬く。マフラーの色と花火の色はよく似ていた。

 

「あとその呼び方、やめようよ」

「じゃ、じゃあ。何て呼べば…」

「香織」

「…え゛?」

「香織って呼んでくれないかな? 私は南雲くんのことハジメくんって呼ぶから。…うん、それでいこう!」

「ま、待って白崎さ…」

「香織」

「えっ、でも…」

「香織」

「…香織さん」

「香織」

「今はこれで勘弁してください! 香織さん!」

「…うーん、まあいいか! あ、花火上がってるね! 見ようよ!」

「うん!」

 

 花火は何度も、何度も上がった。まるでハジメと香織の新たな決意を祝福するように。二人を何度も照らした。

 

 

「ーー絶対に守ってみせるからね、ハジメくん」

「ーーありがとう、香織さん」

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「ふざけるなふざけるな! なんでアイツと白崎が!!」

 

 そしてその二人の陰を見上げている者がいたこと、それはこの時点では誰も知らないことだった。




うむ、いずれかここ書き直そ!

それはともかく次からはオルクス迷宮ですな。
…楽しみやわぁ
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