そして、遅れてしまい申し訳ありませんでした(土下座)
これから、少しばかり更新頻度が下がるかもしれませんが、放り出すことだけはしないので、これからもよろしくお願いします。
⋯⋯後、急展開過ぎました。
浮上するかのような感覚。目が開く。
妙なカプセル越しに視界に入ったのは病室らしき天井。
⋯⋯なるほど。二課の最新設備⋯⋯かな?原作でも、絶唱した後に翼さんが入っていたアレだろうか。
目を開いた僕を見つけた看護婦らしき人が、慌てて病室を出ていく。
「⋯⋯まだ、死ぬわけにはいかない⋯⋯ってことかな」
喉が痛い。痛みに気が付けば、全身から思い出したかのように激痛が襲ってくる。だが、そんなものは気にならなかった。
夢の中で、僕は何かを聞いたんだ。大切な人の、声を。
何かを諦めるな、とその声は言っていた。その何かを思い出すことは出来ないが、戦姫絶唱シンフォギアシリーズにおいてとても重要な一言だった気がする。何故だろうか。思い出すことが出来ない。一期から四期まで二十周くらいしたのに忘れるなんて⋯⋯。情けないが、考えても出ないかもしれない。
若干諦めながらもしばらく思考に耽っていれば、先程の看護婦を伴って、白衣を着た医者らしき人物が駆け寄ってきた。
「不知火唄さん。聞こえていますか?」
「はい」
「それでは、いくつか報告と質問を⋯⋯」
そうか、僕があの人に刃を向けてから一ヶ月経ったのか。道理で体の調子がおかしいわけだ。だけど、一応身体は動きはする。リハビリなどしなくても動けるだろう。
医者の質問の一つ一つに答えていくその間も、僕は奏さんの言葉を思い出そうと必死に頭を捻っていた。
そんな折、医者が入ってきた扉の方がまた慌ただしくなったのを感じて、そちらに視線を向ける。
「唄っ!」
そこに居たのは貫頭衣に身を包んだ翼さん。
そうか。翼さんは、生きていたのか⋯⋯。良かった。これで翼さんも再起不能になってしまっていたなら、僕はこの場で命を絶つだろう。
護りたいとか言っておきながら、その護りたい人に自ら危害を加える転生者なんて死んだ方がマシだ。むしろ、本来ならば今すぐに自害するレベルだろうけど、僕にはまだ役目がある。こんなゴミみたいな命でも、果たすべき使命があるのだ。
「うっ⋯⋯翼⋯⋯さん」
「話さなくて良い! ⋯⋯良かった⋯⋯本当に⋯⋯」
泣きじゃくる翼さんの姿に胸が痛くなった。やっぱり、転生者だからと言ってもこの感覚だけは拭い去れないのだろう。結局は、特別な存在じゃなかったということか⋯⋯。
⋯⋯いや、そんなはずはない。
僕は、
それは、僕がこの世界に転生した小さな
翼さんに刃を向け、あまつさえその命を奪いかけたことで僕は理解した。理解することが出来た。
───僕に、誰かを守れるだけの力は無い。断言しよう。
だからこそ、それと同時に決めた。
僕は誰も護らない。護らなくても良い様に、全てを
甘えも何もかもを抹消して、僕は不安要素を消し去るだけの舞台装置に徹する。それこそが、僕がこれ以上罪を重ねずに済むただ一つの方法に違いないのだから。今までの僕が、甘え過ぎていたんだ。
この優しい世界に、僕はやっぱり必要ないんだよ。
───僕は、
僕としてじゃない。この世界を生きる護りたい人々が悲しむ展開に抗うことを、舞台装置として諦めるわけにはいかないんだ。
奏さんが言いたかったのは、こういうことだろう。じゃなくても、これこそが真理だが。
▽
不知火唄の雰囲気が変わった。
不知火唄が目を覚ましたという報せを聞いて急ぎ病室を訪れた櫻井了子ことフィーネは、病室のベッドから外を眺める不知火唄を見て漠然とした高揚感を感じた。
「⋯⋯一皮剥けた、か?」
「かも知れないですね。僕も、甘えたままじゃいけないな、なんて考えたので」
「甘えか⋯⋯くく。受け取れ、貴様のギアと腕だ。義手も完全な状態にしてある」
驚いた顔で受け取る不知火唄を見て、本質は変わっていないことを確認する。それでも、ある程度生きてきた人間なら、彼女に訪れた変化は大きいということは誰の目から見ても一目瞭然だろう。
どんな心境の変化があったのか。予想することは容易い。
大方、自分で護りたいと願う人間を自らの刃で傷付けたことに対する自責の念が、一周回って焦がれたのだろう。前までの煮え切らない感じもそれはそれで面白かったが、今の目的の為なら全てを捨てる覚悟すら雰囲気から見せるこちらの方が、フィーネからしてみればよほど魅力的に映った。
これなら、あと一年程度で動かす予定の計画もさらに確実性が増すに違いない。思わぬところでただの保険が強い手駒となったことに、フィーネは内心笑いを堪えるので必死であった。
そこでふと、フィーネは自らのもう一つの手駒である少女と、この少女が顔合わせすらしていないことを思い出す。
「不知火唄。貴様の傷であれば、早ければ来月には満足に身体を動かせるようになるだろう」
「⋯⋯はい」
「そろそろ、我々も動き始めようかと思っていてな。明日には貴様と、もう一人の協力者である雪音クリスの二人には顔合わせをしてもらう。特に何をしろというわけでもないが、一言二言くらい交わしておけ」
「⋯⋯了解」
頷いた少女を一瞥しフィーネは思考を張り巡らせる。
考えるのは、奇跡的な回復を見せた風鳴翼と、今も眠り続ける天羽奏についてだ。
「⋯⋯そろそろ、目覚めるか」
元より、天羽奏という少女が目覚めないという可能性は低かった。伊達にリィンカーネーションを駆使して生き続けているわけではない。
ああいう手合いの輩は完全に死なない限りは何度でも立ち上がれる。それのなんと恐ろしいことが。過去にも、自らの計画を台無しにしてきたのはそういう者達だ。理由がなんであれ、理屈が通っていようが通ってなかろうが、英雄と呼ばれる類の人間だけは侮り難い。あれは、死してなお誰かを支え続けることすらも有り得る。細心の注意を払わねばならない。
今回は、計画が成功させるのにかなりの好条件が揃っているだけあり、不安要素が要因となって失敗することはかなり拙い。またこれだけの好条件を揃えるのにどれだけかかるかも不透明であるからこそ、尚のこと失敗するわけにはいかないのだ。いざとなれば協力者の手を借りてでも、天羽奏を暗殺することを厭いはしない。
だが、風鳴弦十郎や緒川慎次といった別の不安要素もある中で急いてことを仕損じるのも馬鹿らしい。
「なに。時間はある。それに⋯⋯」
フィーネは、黄昏れる少女の姿をもう一度一瞥してほくそ笑んだ。
感動的ではないか。憧れる少女と憧れの少女の対面にはお誂え向けの舞台だ。
貴様の望み通り、死ぬまで使い潰してやろう、不知火唄。
焦がれる巫女フィーネの目論見は、誰にも悟られることなく動き出していた。
▽
フィーネが悪い顔をしている。
転生者でなければ気が付くことは無いだろう些細な変化ではあるが、生憎と僕は転生者だ。フィーネのやることを原作知識として持ち得ている。だから、それを理解している。
勿論、その目論見を、月の破壊を成功させるつもりはさらさらない。
だけど、今は円滑に物語を進めるためにフィーネの手駒となろう。そうすることで、僕は物語を大きく改変することなくイレギュラーを抹消する為に動くことが出来る。
そうして、最後には
───僕というイレギュラーすらも抹消するのだ。それこそが、僕の計画であり僕の使命そのもの。
それまで足掻き藻掻いて抗い続けようとも。あるべき未来を掴む為に。
そして、奏さんと翼さんの二人が、また楽しく歌を歌えるように。
▽
その後、不知火唄という少女は、目覚めてから一日足らずという短過ぎる期間で病室から姿を消した。
カメラは全てが何者かの干渉により機能しておらず、その時間帯に何があったのかはだれにも分からなかった。
不知火唄は、その所在が分かるまでは停学とし、特異災害対策機動部二課は一人のシンフォギア装者を、一人の少女を失うこととなるのであった。
そしてそれと同時に、二課の人間達はある想いを胸に、『今度こそ』と動き出した。
主人公以外のイレギュラー(オリジナルキャラクター)は基本的に出さない方針です。ただ、原作から逸れない程度にイレギュラーが発生します。
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