「ほんとにここなのかな?」
ここはロンドン。とある時計塔の前。長い髪を桜の模様のリボンで結んだ少女が首を傾げていた。
「でも…ほかにそれらしいものもないし…」
「どうかしたのかい?」
門番と思われるお腹の丸い中年男性が少女に話しかける。あだなはビッグベンというようだ。
「ここらへんに魔法使いの学校があると聞いたのですが」
少女はまるで物怖じもしないかのようにはきはきと喋る。
「ああ、風見鶏の新入生か。この中の廊下をまっすぐ行ったとこに入り口があるぜ。」
通称風見鶏。王立ロンドン魔法学校は上空から見た時、風車に見えたからそう呼ばれている…らしい。
「ありがとうございます。」
「元気そうな少女だったな。」
「いたなら案内してやればよかったのに。」
「まあ、大丈夫だろ。」
「せっかくの同郷の人なんだから優しくしてやれよ。」
「へいへい。わかってますよ。」
確かにここに来る日本人は少ない。科学が発展するにつれ日本からは魔法が信じられないようになってきている。
「まずはお手並み拝見といきますかね。」
俺は少女が通って行った廊下を行き止まりに向かって歩き出した。
風見鶏へと向かう長いエスカレーターを降りて通学路を進む。学校に来る新入生は基本ここで迷うのだ。特に異国から来た生徒は。案の定、少女もそこで立ち止まっていた。学校についても学園長室が分からない。
「何かお困りかな?」
「あ、はい。学園長室って何処にあるんですか?」
予想通りである。
「さぁ?何処にあるのでしょう?」
「いや、分からないから聞いてるんですが…」
「おっと自己紹介がまだだったね。俺は風見鶏の生徒会長の木乃花美鶴という。女っぽい名前だが歴とした男だ。」
「木乃花先輩って名前、コンプレックスなんですね…」
「それは言わないでくれ…で、朝倉さんを学園長室に連れて行けばいいんだよな。」
「お願いします。ってなんで名前を知ってるんですか?」
「同郷の人が来るとなると風の噂で覚えてしまうんだ。しかし、女の子が一人でよく来る気になったな。」
「高祖父母が通っていた学校なんです。」
「ほう。その二人の名前は?」
「えーっと…確か葛木清隆とリッカグリーンウッド、ですね。」
「…君はどんな名家の生まれなんだい?」
「極めて普通の家庭ですよ?」
「まぁ、いい。という事は予科の内容はもう簡単に感じるかもな。おっと、危うく通り過ぎるところだった。ここが学園長室だ。ちなみに生徒会室も兼ねてるからなにか困ったらここにくるといい。」
「ありがとうございました。」
葛木清隆とリッカグリーンウッドの子孫、朝倉音姫か。なかなかすごい事になるかもな。
「さてと、任務完了。って事でゆっくり昼寝しに帰りますか…」
その時、小型の携帯端末のようなもの、『シェル』が鳴った。