赤龍帝と青年〜真なる赤龍の魂を持ちし者〜   作:大熊猫シャンシャン

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夢?それとも…

どこかもわからない暗闇の中で、幼い少年が一人歩いていた。その少年はここがどこなのか、いつから歩き始めたのか、自分はどこに向かって歩いているのか、全く理解していなかった。ただ道があるから歩いている。そんな状態だった。

そこからどれくらい歩いたか分からないが、突如少年の目の前に一つの光景が映し出された。

「よし!今日は兄ちゃんが絵本読んでやる!」

「やったあ!お兄ちゃん大好き!」

 

少年にそっくりな顔立ちの人物、会話からうかがえるに少年の兄が、少年に絵本を読み聞かせている光景であった。

しかしそんな光景もすぐに消えてしまい、また暗闇に戻ってしまった。

仕方なく少年はまた歩いていく。

しばらく歩いていくと、また一つの光景が暗闇に映し出された。

 

「おい見てみろよ--面白いもの拾ったぜ」

「なに拾ったのお兄ちゃん?」

 

それは先ほどより少し成長した少年と、同じく少し成長した少年の兄だった。

 

「じゃじゃーん!見てみろよ河原で拾ってきたんだぜ」

「うえーなにこれ?気持ち悪い」

 

少年たちが見ていたのは、女性の裸の写真が載っている本であった。少年の兄は、興味津々で少年自身は気持ち悪がっていた。

 

そしてまた暗闇に戻り、仕方なく歩き出す。

次に現れたのは、青年になった2人だった。しかし今回見えたのは、2人だけでなく中年くらいの男女も一緒にいた。見ただけで深刻な雰囲気がうかがえるほど、中年の男女と青年になった少年は、暗い表情をしている。

「なんであんなことをしたんだ--」

男性の方が青年の兄に、絶望と怒りを込めた口調で問いただす。

「今回は、相手のご家族が大事にしたくないからと言う理由でなんとかなったが。分かっているのか--!自分がどれだけの悪事を行ったのか!お前は…お前は…分かっているのか!」

青年の兄は不愉快そうな表情で誰とも目を合わさず、何も話さない。

「おいこのクソ兄貴!てめぇなんとか」

青年が立ち上がり喋り始めた瞬間、時が止まったように全てが止まってしまった。そして空間全体に亀裂が入り…ガラスが割れるように砕け散ってしまった。

 

 そして次に目の前に現れた光景は、広大な大地に轟く怒号、金属がぶつかり合う音、爆発音、これだけの光景を見ればどんな人物だろうと瞬時に理解するだろう。ここが、今見えている光景が、戦場であると。

しかしこの戦場には異様な光景がいくつもあった。凍りついた場所があれば燃えている場所があり、草木一本生えていない土地があれば自然豊かな大地がある。そしてもっとも異様な光景は、戦っているものたちに黒白大小さまざまな翼が生えていることと、空中で巨大な赤と白のドラゴンが戦っていることだろう。

 

そんな光景をしばらく眺めていた青年の目の前が、またも突然暗くなった。いい加減めんどくさくなってきた青年だったが、そんな気持ちは目の前に新しい光景が現れた瞬間消えてしまった。

なんと先程まで空中で戦っていた赤いドラゴンが、目の前に現れたのだから。しかしその姿は薄く揺らめいていて、まるでそこに何もいないように錯覚してしまうほど奇妙な姿だった。

『俺は…ここに居る…早く…見つけてくれ』

 

突然声が聞こえ、戸惑ってしまった青年はどんな言葉を返せばいいのか考えていると、今までとは全く違う感覚に陥ってしまった。まるで眠りから覚めるような不思議な感覚。

「ン…ンン………夢か…」

青年…誠二は目を覚ました。そしてさっきまで見ていたものを思い出す。

まず、最初の3つの光景は明らかに昔の自分と兄だろうと言うことは、理解できた。しかし最後の2つの光景は全く理解できない。夢にしてはリアルだったが、最初の3つの光景のように自分自身が体験した事があるわけでもない。しかし夢だとも思えないと、それからしばらくさまざまな考えを巡らせた。しかしいくら考えても答えが見つからない。そのため、一旦落ち着くことにした誠二だったが、そこで重大な事実に気付く。

その重大な事実とは、

「ここ…どこだよ」

そこが自分が全く知らない部屋だったからだ。

 


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