ブラック・ジャックをよろしく   作:ぱちぱち

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最近BJ(偽)の話を書こうとすると非常に手が重くて動かないので、出来るだけ軽い話を書きました。


誤字修正。五武蓮様、日向@様、名無しの通りすがり様、不死蓬莱様、オカムー様ありがとうございました!


サイタマ(旧題:かみのはなし)

「よし、これで大丈夫だ。そのテープを外さなければ直ぐに治る」

 

 手を怪我した、と子供達が駆け込んできたのは夕方に差し掛かる頃合いだった。

 モビルワーカーの運転訓練中に操作を誤って横転。体はベルトで固定していた為問題なかったが、横転の際に咄嗟に右手で体を庇おうとしてしまったらしく、右腕を強く打ち付けてしまったらしい。

 

「ありがとうございます、先生。たく、気をつけろよ?」

「はい、タカキさん」

 

 監督をしていたユージンは彼に簡単な手当てをした後、念の為に俺に診せて来いと年少組を二人つけてこの少年を送り出したそうだ。

 手当てされた右腕を見るに鉄華団の青年達は、何度か教え込んだ応急処置の心得をしっかりと身に着けているらしい。最終的な判断を医師に任せるのも正しい。素人判断って奴はどんな分野でも悪化の原因になるものだからな。

 それに付き人として付いてきた二人も、患者に無理をさせないようにしっかりとフォローを行っているようだし、この様子なら実際に仕事場で問題が起きても対処できる確率は高いだろう。

 

「あの、先生」

「うん?」

 

 俺が処置された右手に満足そうに頷いていると、タカキと一緒にフォロー役でついてきた少年……ヤマギという、確か整備にいる子だったか、が話しかけてきた。年少組のリーダー格であるタカキと違って余り言葉を交わしたことは無いが、控えめだが率直な物言いをする子だった筈だ。

 だが、今日は少し様子がおかしい。自分から話し掛けてきたというのに何故かビックリしたような、どうすればいいのか分からないという表情をしている。何か悩み事でもあるのだろうか。気分を入れ替えて、俺は彼に向き直る。

 

「どうした。何か聞きたい事や、話したい事があるのか? もし職場の人間に話すのが難しいというなら……タカキ、すまんが」

「はい……ヤマギ、大丈夫か? 俺席外すぜ?」

「あ、いや。そうじゃなくて、その。先生に少し聞きたい事があるだけなんです」

「俺が答えられる事なら答えよう。どんな質問だ? 医学関連ならありがたいんだがな」

 

 そう冗談めかして3人を座らせる。怪我をした子には少し悪いが、フォロー役なしで帰すのもまた気が引けるからな。場合によってはタカキと二人で帰す事も考えたが、それは話の内容で考えるとしよう。

 レオリオに何か甘いものを持ってくるように言って、3人のカップにお茶を注ぐ。話をする際は出来るだけ落ち着ける環境を作った方が良い。難しい年代の子が多い鉄華団の精神的なケアについては前々からオルガと話し合っていたし、もし少しでも問題があるのなら報告も上げた方が良いだろう。

 

「それで?」

 

 安心させるように笑顔を浮かべてヤマギに先を尋ねると、彼は少し躊躇したようにタカキと年少の子を見た後に、意を決したように俺の顔を見る。

 

「……あの。先生は、どんな手術でも成功する事が出来るって、本当ですか?」

「難しいな。実を言うと、私も何度か失敗はしているんだよ」

「ええっ!?」

 

 ヤマギの言葉に何故かタカキが驚きの声を上げた。

 

「い、いやいや嘘でしょう!? 阿頼耶識のヒゲを、あんな短時間で全部抜いちまった先生が出来ないって」

「……ううむ。あれは正直それほど難しい手術じゃなかったからなぁ」

 

 学園都市の先生も、長時間連続でするのは難しいが、手術自体はそれほどの難易度じゃないって同意してくれたし。正直一方通行君の脳再生の方が、時間も手間もかかるから何倍も難しいと思っている。あちらはまだ終わっていないしな……そのせいで暫く秘蔵のメスが使えないのも痛い。

 

「あの。それは、どんな手術なんですか?」

「ん、うむ。何というか……本来はあんまり難しいものではないはずなんだがな」

 

 興味津々、といった様子のヤマギにこれもケアに繋がるなら、と俺は自身の失敗の記憶を語り始めた。

 そう、あれは自身の技術向上と諸事情……の為に世話になっていたAOGの元を離れ、『最適解(チート)』の勧めのままに八雲紫を頼った時の話だ。

 

 

 

 竹林の中にぽつんと建つこの屋敷に逗留してから1週間が経過している。家屋敷の形から見るに、恐らく日本と関わりのある土地なのだと推察するが、この体になる前は聞いたことのない地名なので、恐らくは似たような世界か並行世界のような場所なのかもしれない。

 そんな意味のない事を縁側に座って考えていると、ギシリ、と床を歩く音が聞こえる。ちらりと音のした方向を見ると、この屋敷の主人の従者……と名乗る女性の姿があった。長い銀髪を三つ編みにして纏めて、ツートンカラーの看護服に似た衣装を身に纏った彼女の名は、八意永琳。

 

 この世界に落ちて様々な医術や魔法を目にしてきたが、その全てを網羅しているのではと思わされるほどの知識と医療技術を持つ、神医と呼ばれるに相応しい人物だ。私の理想とするブラック・ジャック先生すらも或いは上回っているかもしれない。

 

「間さん、お加減は如何ですか?」

「もうすっかり良くなりました。1週間も逗留させて頂きありがとうございます」

 

 俺は彼女の患者としてこの場所に居る。1週間前、この世界に渡ってきてすぐに大怪我を負ってしまい、止む無く治療に専念する事になった為だ。その時の事を思い出してつい脇腹を摩るも、すでにそこに穴はない。少し前に診たボクサーが「腹に穴が開いたと思った」と言っていたが、成程。こんな感じの衝撃を受けていたのか。あのアメリカ人にももう少し優しく接してやればよかったかもしれない。

 

「いえいえ、同じ医の道を行くものとしても色々と勉強になりましたから。所で今日はどうされますか?」

「まだまだ未熟なこの身で八意先生にそう言われるのはこそばゆいですな。それでは今日も甘えさせていただいてもよろしいでしょうか」

 

 この療養期間中、俺は目の前に居る八意先生から薬学についての基礎を教えて貰っている。代わりにこちらからは異世界の医療技術や魔法についての知識を伝えているのだが、彼女の知識量は膨大で、正直に言ってこちらから返せる物が少なすぎる状況だ。その点を指摘しても「後進の手助けをするのは存外面白いのだ」と返されてしまった。こう言われると、教えを受けるこちら側としてはもう言う事がない。

 今日もこれから薬学について、実際に薬を作りながら知識を分け与えてもらう予定だ。本職は外科医ではあるが、小さな医院では駆け込みで色々な患者が訪れる為、内科の勉強も欠かすことは出来ない。この体になる前から内科の知識も少しは持ち合わせていたが、彼女の前では素人も同然にしか見えないだろう。学べる機会がある内にしっかり学ぶ。これは非常に大切な事だ。

 

 だが、俺のその日の予定は、慌てたように駆け込んできた鈴仙さん……一応姉弟子にあたる女性の登場により、予定していた物とは若干違う物に変わる事になった。

 鈴仙さんでは対処できないような患者が、幻想郷の外からやってきたそうだ。

 

 

 その人物を一言で表現するのなら、眩しい、だろうか。

 

「先生、この人物がこの近隣世界で一番の医者だという女性です」

「おお、そうなのか。よろしく」

 

 客を通すために作られたものだろう和室には、金髪の全身を機械化した青年と、彼に先生と言われた黄色いタイツスーツのような物を着た、頭を丸くした男が座っていた。彼らは胡坐を組んで鈴仙が煎れたものだろうお茶を飲みながら談笑していたようで、鈴仙さんが慌てて駆け込むような重篤な患者とは思えない。

 

「急な患者と言われたので慌てて来たのですが……鈴仙?」

「あ、そのぉ、とても私では対応できない物でしたので」

 

 ジト目で鈴仙さんを見る八意先生。気まずそうに頭を掻く彼女は、少しおっちょこちょいな印象を受けるが、彼女は八意先生の弟子だ。外科ならそうそう劣る気はしないが、内科、薬学に関しては優秀な人物である。そんな彼女がそのまま師に話を持ってきたという事は、相当な難題があるという事になる。

 もしかしたらこの青年を生身の体に、とでも言われたかな。それならば確かに八意先生を頼るのは良い手だ。彼女の医療技術は多岐に渡るが、あの暴力巫女に腸をえぐられた俺を、魔法を使ったとはいえこれほどの短期間で快復させられるのだから。或いは全身の再生手術も行う事が出来るかもしれない。

 

「それで、お前さん方は一体どういう症状でこの永遠亭に? 見る限り外界の方だと思うが」

「そういうお前は?」

「ああ、すまない。私も最近外から流れてきた医者でね。間 黒夫と言う」

 

 鈴仙さんと八意先生の話し合いはまだ終わりそうにない。患者をただ待たせるのも悪いだろうと俺は彼らに話しかけた。どうやら応対はこちらの全身を機械化したサイボーグの青年が行うらしい。『最適解(チート)』が先程から彼を治せ治せと表に出たがっているから、もしかしたら本当に彼の全身再生手術が目的なのだろうか。

 

「そうか。私はジェノス。近隣の世界でヒーローという職業についている者だ。こちらは私の師の」

「サイタマだ。趣味でヒーローをやっている」

 

 自身も医師であると告げると、ジェノスと名乗る青年はペコリ、と頭を下げてきた。ヒーローか……最近よく聞く職業の名前だな。師という程に年齢差はないようだが、もしかしたらこのサイタマという青年もどこぞのNO.1ヒーローのように、年齢が分かりにくい老い方をしているのかもしれない。

 

「それで、そちらの青年を人の体に戻す目的で来られたのかな? 流石に一朝一夕で出来るような話ではないと思うが」

「……それがもし出来るのならばいつかお願いする可能性はあるが、今回はまた別件になる。出来れば八意女史とだけ相談したいのだが」

「いや、出来れば男の間、先生にもこの場にいて欲しい。その、やっぱり女には、分かり辛い悩みかもしれないし」

 

 少しづつ声が小さくなっていくサイタマに首を傾げていると、鈴仙さんから話を細かく聞き出していた八意先生の深いため息が耳に入った。ため息? 何故?

 そちらを見ようとする前にガバリ、とサイタマが頭を下げた。

 

「なあ、間、先生。八意先生も。頼む、俺のハゲを治してくれ!」

「お、おう」

 

 顔を真っ赤にして頭を下げるサイタマ。確かにその内容は女性には言いづらいわな。というか鈴仙さんには一度言ったのか。

 

「ウドンゲェ……」

「ご、御免なさいお師匠様。この人、すっごく必死だったんで」

「八意先生……これは仕方がありません。男にとってはそれこそ死活問題ですから」

 

 頭が痛いと額を抑える八意先生に鈴仙さんが必死になって言い募る。同じ男としても気持ちがわかる為、俺は鈴仙さんを援護するように声をかける。俺の援護に再度八意先生はため息をついて、「少しお待ちを」と言って部屋から出て行った。

 

「すまん」

「なぁに構わん。同じ男として当然だ」

 

 俺達はそれ以上語らずに右手を差し出しあい、握手を交わした。実を言うと父方も代々髪が薄くなる家系で、俺としても他人事ではないのだ。この体になってからはむしろ毛量が多くて若干悩んでいるが、油断することは出来ない。奴らはいつ何時その身に降りかかるのかわからないのだから。

 そんな俺とサイタマのやり取りを、先ほどのお礼でも言うつもりだったのか口を開けたままきょろきょろと見回す鈴仙さんに「気にしないでください」と告げると、彼女はにこっと笑ってお茶を淹れてくれた。俺としても今のやり取りは若干恥ずかしかったから、出来れば本当に気にしないでほしい。

 

「お待たせしました。こちら、毛生え薬になります」

「「おおおおおおおお!?」」

「あの……間さんまで何故?」

「あ、失礼。男にとってはいつか訪れる悩みな物でして」

「はぁ……そういえば月の方でも内密なお願いと聞いた覚えが……」

 

 その事は忘れてあげた方が相手の為になると思います。八意先生。

 

「ああ、その薬は全身の毛量も増やしてしまうので、出来れば外で行ってくださいね。鈴仙」

「はい。剃刀を持ってきます!」

 

 八意先生の言葉に鈴仙さんがパッと立ち上がってパタパタと部屋から出ていく。その後を追って俺達も部屋を出て、そのまま廊下を通ってから庭先に出る。

 

「す、すまんジェノス。力んで瓶が割れそうだから持っていてくれ!」

「はい! お任せください!」

 

 庭先に出るまでガタガタと震えるサイタマを宥めすかして俺達は鈴仙を待つ。全身の、となるとそれこそ服を脱がないといけないからな。パタパタと駆けてきた鈴仙に礼を言って剃刀を受け取り、屋敷方面から間違って見えないように立ってからサイタマに服を脱いでもらう。パンツ一丁になったサイタマが震える手で瓶を開け、ごくり、と一息にその薬を飲み込む。

 

「まっず! あ、あれ、おおおお!?」

 

 効果は劇的だった。まず顕著なのが眉毛だろう。あっという間に長くなった眉毛は目元を覆うような長さになった。そして胸や腕、それに股間といった毛量の多い場所もふさっとした毛に覆われて、日本人風だったサイタマは、あっという間に欧米人のような毛深い毛に覆われた状態になった。

 頭以外は。

 

「………どういう事?」

「うーん。毛根が死んでしまっている場合は効果がないみたいねぇ。失敗だわ」

「……もうこん……」

 

 いつの間にか庭先に現れた八意先生は、そう言ってサイタマの様子を冷静に判断している。先生、その言葉でサイタマが死にそうなんですが……仕方がないので一先ず、全身の毛を剃刀で切ろうとするも刃が通らず、結局メスを使って体毛処理をする事になった。サイタマから泣いて感謝されたが、流石にもう一度同じ状況になったらやらないので、こんな事はこれっきりにしてもらいたい。

 

 

 次のアプローチとしては外科的な毛髪の増加。つまり植毛を試みる事になった。幸いなことに先程サンプルとなる毛は大量に手に入ったし、これらを用いて髪の毛を培養。それを頭に直接植え付けるという物だった。

 

「自身の細胞を使うなら、確かに定着する可能性は高い、ですか」

「毛根が無事な皮膚があれば、そこから髪の毛自体を培養することは出来るんだけど、ね。次善の策としてはこの位でしょう」

「培養するとしたらどの位の日にちがかかるんですかね?」

 

 俺と八意先生、それに鈴仙さんの三名は、先程の失敗を踏まえて長期戦に移る覚悟を決めた。八意先生としても先程のサイタマから採取した毛……S毛と便宜上呼称している……に興味津々で、これほど強靭な毛髪組織はそうそう見る事がないと興奮気味だった。

 本人曰く、月から地球にジャンプしても燃え尽きなかったという事なので、この毛に代表されるように、サイタマの細胞は信じられない程の力を持っていることになる。この辺りに恐らく彼の髪の毛が生えない謎を解くカギがあると我々は結論付け、彼の細胞を用いた毛髪を取り付ける事で対応できるのではないかと考えた。

 

「植毛する髪の毛が培養できるまで時間がかかるから、暫くは足止めになっちまうか」

「まぁ、しょうがないな。すまんなぁジェノス、付き合わせちまって」

「いえ。先生の側で学ばせてもらうのが弟子の務めですから」

 

 準備が出来るまで数日かかる為、その間暇になったサイタマとジェノスは幻想郷を少し見回ってくると言って永遠亭を出て行った。そういえば数日連れに連絡もしていないことを思い出したために俺も付き合おうか迷ったのだが、流石に八意先生と鈴仙さんにだけ準備を押し付けるのも気が引けた。人里で待って居る筈のレオリオとそろそろスキマから戻ってきているはずの雁夜という連れに伝言をしてほしいと伝えて二人を見送り、俺は八意先生の小間使いのような形で彼女の仕事の補佐を行った。

 数日後、戻って来た二人は何故か服がボロボロで、ジェノスに至っては一部の体のパーツが入れ替わっていた。何があったのかと尋ねたら「河童が……」と言ったきり黙り込んだので、深く聞かない事にする。

 

「執刀は……植毛の場合は施術で良いか。俺が行う。毛穴を広げる為に麻酔を塗り込むが、シビれた感覚がしても気にしないでくれ」

「ああ、頼む……俺の()、お前に賭けるぜ」

「止めてくれ。失敗しそうだ」

 

 この時、確かに俺とサイタマの間には友情が芽生えていたと思う。同じ悩みを持てばそれだけ相手に親身になれるもんだからな。俺も気合を入れて、1時間のうちに手作業で何とか2000本、彼の頭に入れ込む事に成功した。

 といっても僅か2000本では本当に一部しか埋めることは出来ていない。だが、確かに今まで不毛の大地だったサイタマの頭部には、髪に覆われた森が出来上がったのだ。後は定着するかどうかだが、一先ずは喜ぶべきだろう。

 

「お、おおおおおお! 髪がある! 俺の、頭に!」

「まずは定着するかどうかがあるからこの状態が続くが、問題なく定着できたと判断したら少しずつ範囲を広げていく。しかし流石に2000本は疲れた

 

パンッ

 

ぞ……」

 

 目の前ではじけ飛ぶ、サイタマの頭にあった髪の毛達。呆然とする俺の視界を、ゆらりゆらりと髪だったものが風にまかれて飛んでいく。その光景に俺はこの1時間余りの作業が無駄だった事と、このアプローチが失敗したことを悟ったのだった。

 

 

side.現在

 

 かつて幻想郷で過ごした日々を思い返しながら、俺はカップに入ったお茶を口に含む。苦い、とても苦い味がする。あの光景は俺にとってある種の敗北の光景だった。誰が何と言おうとあれは俺の手術で、その結果がアレだったのは、つまり俺の手術が失敗したという事だ。

 事前に予測するべきだったのだ。奴の頭皮が信じられない程の強さを持っているのは分かっていたのだから、毛髪が耐えきれない可能性もあるという事を。

 

「……それは、その。辛いっすね」

「うん……心底同情する」

「かわいそうなサイタマさん」

 

 話を聞いていたタカキ達も暗い表情でサイタマに同情の言葉を投げかける。

 

「まぁ、その後何とかなる道筋は出来たんだがな……さすがは八意先生という所だった。俺が二番目に尊敬する医者だよ、彼女は」

「え、何とかなったんですか!?」

「またパーンってなるんじゃないの?」

 

 子供たちの声に俺も頷く。確かに今までの話を聞けばそういう感想になるだろう。だが、それに対して八意先生は、真っ向からのアプローチで持って答えたのだ。「耐えきれる毛髪を作ればいい」という至極真っ当で、非常に困難なアプローチを。

 結果は成功。莫大な時間とエネルギーを使うが、見事にサイタマの頭皮圧に耐えきる毛髪の開発に成功したのだ。

 

「すげぇ、普通の毛じゃ耐えきれなかったのに」

「八意先生ってすごいんですね!」

「それで、時間がかかるってどの位かかるんですか?」

 

 口々に八意先生を褒め称える彼らに、この後の流れをすでに知っている身としては非常に言い辛さを感じながら、俺は口を開く。

 

「……一本につき一月かな」

 

 口にした瞬間、三人の動きが止まった。

 最近目にしたサイタマの写真を三人に見せる。そこには頭部の天頂部分に生える数本の髪の毛を、大事そうにブラッシングするサイタマの姿があった。撮影者は雁夜だ。あの男、この間の才人の件での謝罪と言って頭を下げに来たのだが、こんな劇物を送り込んできやがった。

 勿論一発で許したさ。その場で笑い転げなかった自身を褒めたね。

 

 部屋の中を子供3人の爆笑が包む中、俺はそういえばヤマギの悩みは何だったのかと思い出した。まぁ、今大きく口を開けて笑っている姿を見るに深刻な悩みという訳ではないんだろうが……後で帰る前にこそっと聞いてみるとするか。

 しかし、うん。過去の失敗というのはやはり辛いものがある。この時は特に友情を感じていたサイタマだったからな……できれば自分で髪の毛を生やしてやりたかった。これがブラック・ジャック先生なら多少手間取っても治していたんだろうなぁ。俺ではやっぱりこの名前は力不足に過ぎる……

 神様、次の統合があるんなら何卒。何卒ブラック・ジャックをよろしく! 

 

 

 

 

 

 

今回の蛇足

 

「所で、結局相談事というのは何だったんだい?」

「あ、はい。その、実は同僚に好きな相手が居て……でも、彼は女性にしか興味がないんです。どうすれば良いのか分からなくて……女性になりたいと思って」

「……あ。うんええと……よし、少し落ち着こう。相手の事も考えないといけないしね」

 

 このあとめちゃくちゃオルガを呼んだ。




(頭が)軽い話、如何だったでしょうか。
いや、何というか本当にシリアスな話が書けなくなってるんですよねぇ(震え声)
何日かしたらサブタイはサイタマに変更予定です。ヤマギでもいいんですがね()




タカキ・ウノ:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
 鉄華団年少組のリーダ格

ヤマギ・ギルマトン:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
 鉄華団年少組の一人で整備班所属。割と公式でこんな感じ。相手は鉄華団幹部のノルバ・シノ

八意永琳:出典・東方シリーズ
 えーりん!えーりん!
 恐竜が生きてた時代から生きているらしい医者。東方シリーズの便利枠。

鈴仙・優曇華院・イナバ:出典・東方シリーズ
 可愛い

暴力巫女:出典・東方シリーズ?
 一体何代巫女なんだ……?

サイタマ:出典・ワンパンマン
 大好きなキャラなんです。正直BJ(偽)で始める前にこいつに憑依する没ネタが会った位に()
彼の強さを表現するのが出来なくてクソ時間かかったのでその部分がバッサリなくなるという愚挙に出たぱちぱちを許してください。

ジェノス:出典・ワンパンマン
 実は登場は2回目。雁夜が初めて彼と出会ったのはここです。

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