後編は今修正中。22時頃には上げられ……ればいい、なぁ(白目)
誤字修正。路徳様、flugel様、見習い様、佐藤東沙様、たまごん様、竜人機様ありがとうございます!
どこまでも続く空。白い雲。そして、青く輝く海。
潮風にコートをたなびかせながら、果てなく続く海に視線を送る。
海には、男を虜にする魔力がある。この果てなき海の果てを見たくなるとでもいうのか。そんな、ロマンチシズムに走らせるような魔力が。
全ての母とさえ呼称される母なる海の姿に、ここ数時間のやさぐれた精神が癒やされるのを感じながら、ただぼんやりと俺は海を眺めていた。
いつまでみていても飽きない風景。代わり映えのないその光景こそが。
「あ、そーれ♪ あ、そーれ♪」
「やるじゃねぇか骨太郎! あ、そーれ♪」
「負けんじゃねぇぞ、サトル!」
「ドワッハハハハハハっ! おでん、ひっこめー!」
――背後の乱痴気騒ぎから、自身の精神を守ってくれるのだから。
ため息をつきそうな気持ちを抑えて背後にちらりと視線を向けると、そこにはいつもの黒いローブを脱ぎ去り、盆を両手にこれぞ裸踊りとばかりに
船べりに肘を起き、木製のカップに並々と注がれた酒をちびりと飲む。それほど強い酒精ではない。確認する限りこの世界はどうにも歪な科学発展をしているが、こと酒に関してはあまり発展していないらしい。
「おぉい、お医者先生よぅ! 酒も肉もまだあるんだ! こっちに来て一杯酌み交わそうぜぇ!」
そのまま宴が終わるまでのんびりと風景を肴に、とでも思っていたが、どうやらそうは問屋がおろさないらしい。
むさ苦しい男どもの中でもとりわけ迫力のある男の腕が俺の肩に回される。目の前に差し出されたコップにこちらのコップを合わせて乾杯を行い、コップを口に運びながら横目に男を見ながら、ふぅと息を吐く。
どうしてこうなったかはわかっている。が、やはりこの言葉を吐かずにはいられない。
「どうしてこうなった」
「あぁん?」
怪訝そうな顔を向けてくる男――ゴール・D・ロジャーの視線を受けながら、この場に降り立つまでの事を頭に思い浮かべる。
そう、アレはつい数時間前。
発端はいつもの通り。あちらで騒いでいる骨、
「透き通るような海。波の音、潮の香りを受けながら、晴れ渡った青空を行く。もちろん、気のおけない仲間たちと共に!」
アインズ・ウール・ゴウンの最重要拠点、ナザリック内は10層に位置する
なにいってだこいつ、とつい漁った文献にあった口調を思い浮かべるも、わざわざ人化してキラキラした瞳で語り続けるサトルには届かないようだ。
歴史書から視線をあげたジンが「どうするこいつ?」とばかりの視線を向けてくるがそんなのはこっちが聴きたいことだ。基本的にお前ら二人に付き合わされている俺が振り回してる側の制御法なんざ知るわけがない。
「いやー、最近発見した新しい世界と交渉中なんですがねー! そこが世界の殆どが海って珍しいタイプでして一度視察に行こうと思いまして! 最近休みも無かったしついでにバカンスを楽しもうとですね! もちろん、気のおけない仲間たちと共に!」
そんな仲間を連呼しなくても別に貴方の事は友人と思っているんだが、とは口に出さず。なんか変なこじらせ方をしている骨人間のウキウキした様子にもう一度ジンと目配せをし、「お前がやれ」「いやお前が」というやり取りを十数秒繰り返し。
仕方なく、本当に仕方なく。俺はひくつく頬を抑えながら、サトルに質問を向ける。
「御高説を遮るようで悪いんだが」
「潮風ってベタつくのかなぁ! ……うん? なんですか先生」
「バカンスを楽しむというのは、まぁ良い。そこは良いとして――それはアルベドやデミウルゴスも承知の話なんだな?」
一応確認だけはしておこう、というノリでそう尋ねると、にこにことした表情のサトルがピタリと止まり動かなくなった。
嫌な予感しかしない。
「……サトルさん?」
「デミウルゴスは了承をくれました」
「サトルさん?」
一番大事な者が抜けてるんじゃないかともう一度問いかけるも、サトルはすぅっと緩やかな動作でその視線を横に向ける。
「か、家族同伴だとハシャげないかなって」
「そっちじゃねぇだろ」
顔をしかめてそう口にするジンからも視線をそらし――サトルさんは人化を解いた。精神的に大分追い詰めすぎたようだ。
はぁ、とため息をつく。半年ほど行動を共にして、この人のパターンはなんとなくわかってきた。おそらく、支配者ロールに耐えられなくなったとか、そういった辺りだろう。
ジンに視線を向ける。仕方ねぇなぁ、と表情で語る奴の顔を見て、覚悟を決める。アルベドには恨まれるだろうが、今更か。
――それから二時間後。
奇声を上げる守護者統括を
そして、一面の海を視界に収めたと思ったら撃墜され今に至るというわけだ。
「そいつぁまた大変だったなぁ」
「撃墜した奴の言葉じゃなければ頷けたんだが」
「悪ぃ悪ぃ、いきなり上空にデッカい鳥が現れたからな! 面白そうな予感がぷんぷんしたからつい!」
結局ロジャーの誘いから逃げられず、宴の輪に連れ込まれることしばし。
何故上空に居たのか、というレイリーという副船長の言葉に事情を説明すると、原因その2ともいうべき男が自白と共に楽しそうな表情で謝罪の言葉を口にする。
いや、これは謝罪なのだろうか。つい、で撃墜された方はたまったものじゃないんだがな。
「すまんな、その馬鹿はそれで本当に謝ってるつもりなんだ」
「……なんというか、凄いな。お前らの船長」
「あんまり褒めるな、クロオくぅん!」
「「「褒めてない(ねぇよ)!!」」」
思わず正直な感想を口にすると、満面の笑みを浮かべてロジャーがそう答え、話に耳を傾けていた船員全てからのツッコミが船長に向かって放たれる。中身の入った酒瓶は投げるんじゃない、俺に当たる。
そんな仲間たちの心温まる言葉になにぉう!とばかりに立ち上がり、ロジャーは
その様子を幹部たちがゲラゲラと笑いながら酒や肉に舌鼓をうち、何故か
良い仲間たちだ。海賊であるという一事で無法なアウトローであると身構えていたが、予想に反して彼らは”楽しい”奴らであった。
「こっちの酒は薄いなぁ。いくらでも飲めそうだ」
「なにぃ、俺の注ぐ酒が不味いってかぁ?」
「ああ、そうさ。こんな物本当の酒じゃない。俺が本当の酒って奴を飲ませてやりますよ(キリッ)」
それは、向こうで物理的に飲めない酒を頭から浴びて歌舞伎役者風の男と騒いでいるサトルを見ても分かる。仲間という存在に過剰なまでの執着を持っている彼が、あそこまで格好を崩して騒いでいる。
このロジャー海賊団は彼にとって、かつての仲間たちを思い出す何かしらを感じさせてくれているのだろう。
「で、だ。ほら……さっきのアレをよ。もう一度見せてくれよ」
「さっき……ああ。続きで良いのか?」
「魔物ってのか? あいつらの軍団もいいけどよ。外の世界の冒険ってな感じのがあれば見てみてぇな」
サトルの様子を見ていると、横合いから
まさかジンを倒したのか、と視線を向けると、あちらもあちらで顔を膨らませてゲラゲラ笑いながら酒瓶を傾けている。心配して損をした、と意識をロジャーに向け、彼の要望である映像端末を懐から取り出した。
ここ最近使い慣れてきた端末を操作し、空中に映像を映し出す。オオ、と周囲から歓声が上がる。この世界にも電伝虫とかいう不思議生物が居るらしいが、テレビのように映像を映し出して楽しむ、という娯楽は未発達なのだろう。
映像の照射範囲を弄り、船の上空に映像が映るように設定し、寝転がる。
横に置いた端末から流れるさざなみのような音。やがて流れ出すオーケストラによる音楽。
ザワザワとざわめく船員たちはある者は上空に映る映像を、ある者は音を流す端末へとそれぞれに視線を向けている。そんな彼らを尻目に、隣に座っていたロジャーは喜々とした表情でドサッと俺の隣に寝っ転がった。
上空の画面では音楽に合わせるかのように光の波が画面を流れ、やがて画面いっぱいに巨大なドクロのマークが現れる。
宇宙の海は お~れ~のう~み~
ぎゃあぎゃあと上空を眺めて騒ぐ海賊たちの反応を見るに、どうやらこれで正解だったらしい。海賊なら宇宙海賊の話も気にいってくれるだろう。
酒精の薄い酒とはいえ随分と腹にいれてしまったし、今夜はこのまま眠ることにしよう。明日になればサトルも満足しているだろう。
「などと思っていた自分が恨めしい」
「アッハッハ! テンションが低いですよ先生!」
「すっかり馴染んでますねぇサトルさん。そんなにアルベドが怖いんですか?」
ロジャーの船に居候して7日め。もはや完全に船員として船に馴染んでしまったサトルに苦言を呈する。が、露骨に「あーきこえなーい」等と耳を塞いで聞く耳を持たない彼に、ふぅ、とため息を一つつく。
娘だと思いこんでいた存在に寝込みを襲われた事が、すっかりトラウマになっているようだ。
この点に関しては一度しっかり話し合ったほうが良いと思うんだがな。今回の件がなくても最近、アルベドの俺とジンを見る目がかなり、その。殺意が籠もった視線になってきているのだ。あれをこれ以上放置するのは良くないと思うんだがな。
まぁ、だからといってそれが理由でサトルとの付き合いを変えれるほど、俺もジンも器用な生き方は出来ん。結局、なるようにしかならん、か。
「所でジンの奴は」
「あっちです」
そういえば、と朝から姿を見ないもう一人のツレの話を尋ねると、サトルはついっと船べりから海の方を指差した。
怪訝に思ってそちらに視線を向けると――
ドッバーーン!
「うおっ」
「あ。また来た」
派手な音を立てて波の壁とも言えるしぶきがあがり、船が大きく揺れる。その白い飛沫の向こう側に、イルカなのかクジラなのか判断がつかない巨大な海棲哺乳類らしき存在が姿を現した。
船員達が言っていた海王類とやらだろうか。朝からやけに揺れると思ったらこんなバケモノが側にいたとはな。こちらに微塵も敵意を向けてこないし、人懐っこいタイプのやつがじゃれ付いて来ているのだろうか。
「いえ、その上です」
「上……」
物珍しさに注視していると、サトルが見るところが違う、と指をデカイルカの上に向ける。釣られるように視線を上げていくと、見覚えのある男と最近見覚えを持った男二人が、楽しそうにデカイルカの上でハシャいでいる姿が見えた。
――やたらと相性が良いんだ、
まぁ、ジンは元からこういうのが見たくて外の世界に出た経緯があるから分からんでもないが。たった1週間で順応しすぎだろう。
「先生もなんだかんだ楽しんでるじゃないですか。クロッカスさんと未知の病気について毎晩熱く語り合って」
「彼は良い医者だよ。それにこの世界固有の病気は中々興味深い物が多い」
ブンブンとこちらに手を振ってくるジンに片手で応え、サトルの言葉に頷きを返す。あ、デカイルカが潮を吹いて二人が――あいつクジラだったのか。まぁ連中なら生きているだろう。
この世界に来て1週間。サトルの魔法で風を吹かせているため船足こそ順調だが、向こうからトラブルがやってくるこの船は喧騒が絶えない。中には今みたいに自分からトラブルに突っ込む場合もある。
帆船で海に潜るなんて想像したこともない経験もした。多少心得がある程度の一般人ではとても安心できるとは言えない環境。激動に次ぐ激動の毎日。
一生分のスリルと興奮を味わってしまった、一週間の旅路。
「まぁ……」
どの時間も濃密な、一時の冒険。
「悪くはないバカンスだ」
振り返ればすぐに思い出せる一つ一つの出来事を思い浮かべ。ふっと小さく微笑んで、船べりから離れる。
たまにはこういう旅も良いもんだ。サトルには後で礼を言っておこう。
そして、物事には始まりもあれば終りもある。君主自身が範を示す、という名目で取られたつかの間の休暇も、気づけば今日で終わり、だそうだ。
だそうだ、というのはAOGに所属しているわけではない俺とジンはサトルに付き添っているだけで、AOG側の名目であるとかそういう代物は関係がない。
まぁ、予想以上に知見を増やすことが出来た今回の旅路は、俺としては非常に実りあるものだった。
しかし、だ。
「お世話になりました、クロッカスさん」
「こちらこそいい刺激になった。また会おう」
出会いもあれば別れもある。この数週間、毎日のように医学談義を行っていた人物との、恐らくは永の別れというのはやはり辛いものだ。
辛気臭くなりそうな表情を笑顔で隠し、クロッカスと握手を交わす。辛気臭いのはおでんとおいおい泣きながら「兄弟、お元気で!」「骨太郎もな! あ、お前は元気もくそもないか」などと別れを惜しんでいるサトルさんくらいで良い。
というかいつの間に兄弟分になったんだ。自由すぎるところがかつての仲間に似ている? お、おう。
なぜそんな面々が作成したNPC達がああもお固くなったのか疑問に首を傾げていると、ぐいっと肩に腕を回される。
「よぅ、クロオ! どうだ、飲んでるか?」
「酒くせぇ」
しっしと片手で顔を遠ざけるも、ゲラゲラと笑うヒゲ男――ロジャーの腕力には敵わず。ゆらゆらと前で揺れる木製のジョッキに、手に持ったジョッキを合わせる。
それを合図にグビリっと一気。酒精が喉を抜けていく感覚にふぅ、とため息をつくと、何が嬉しいのかロジャーは笑いながらバンバンと俺の背中を叩いた。痛い。
「たった数週間だが、お前らは俺達の仲間だ。仲間の門出を祝って、かんぱぁい!」
「今飲み干したろうが」
「なに! 酒がないだと!? そいつぁいけねぇ。さ、さ。もう一杯」
「おい、レイリー!
「船長じゃない! 私の事はキャプテン・ロジャーと呼んでくれ。宇宙~のう~み~は~」
ゲラゲラ笑いながらロジャーは下手くそな歌を歌い出し、俺を振り回しながら甲板の上で踊り始めた。俺を振り回しながら。
視線で助けを求めるも、止められそうなレイリーは酒の肴と言わんばかりにニヤついているし、その他の海賊たちはロジャーに釣られるようにキャプテンハーロックを歌い出した。こいつらハーロックにハマりすぎだろ。映像端末も取られたし。
最後の頼みの綱、ジンとサトルは……指差して爆笑してやがる。あいつら、後で覚えていろ。
そのまま数時間。浴びるほどに酒を飲み、腹がはちきれそうなほどに食い物を食わされ。気づけばハーロック上映会が始まって、映像が終わる頃にはほとんどの船員達も眠りにつき。
そして。
「――ま、一献」
俺とロジャーは差し向かいに座り、暗い海と波の音を肴に、ちびりちびりと酒を酌み交わしていた。
「随分とまぁ馬鹿騒ぎしたもんだ」
「それが海賊よ。自由に船を走らせ、自由に冒険し、自由に戦って自由に騒ぐ」
「そして自由に野垂れ死ぬ、か」
「それも海賊よな」
くくっと笑ってジョッキを傾け、ロジャーはごくりと喉を鳴らした。
「それで。話があるんだろう?」
「よく分かったな。見聞色を覚えたのか?」
「
「くっ。ちがいねぇ。クロッカスにはよく見透かされるよ」
「彼は良い医者だよ。腕も、心構えも」
俺の言葉にロジャーは無言で数回頷きを返し、グビリとまた一口、酒で喉を鳴らした。
「……胸、おそらく心臓だな」
「ああ。持って1年。そう言われてる」
ロジャーの言葉に首を縦に振る。この世界だと守秘義務がどうなっているか分からず口には出せないが、実を言うとこの船に乗った初期の頃からクロッカスにも相談を受けている。外の世界の技術でならロジャーの不治の病を治せるのではないか、と。
急な喀血。激痛。肺に血液が溜まり、それを吐き出しているのではないか、とクロッカスは言っていたが……恐らくは心臓のどこかに、もしくは大部分に異常がある。
今は心臓の働きを助ける薬の処方でなんとか誤魔化しているが、症状を遅らせるのが精一杯。
それこそ血を吐くような表情で自身の無力を嘆く彼の姿を脳裏に浮かべながら、ロジャーを見る。
「結論から言えば、治る」
「……そうか」
「時間はかかるだろう。設備も足りない。この世界の隅々まで回ったわけではないが、少なくともこの世界の医療設備では難しい手術が必要だ」
それこそ最悪、人工心臓への入れ替えすら視野に入れなければいけない。手術が成功したとして、場所が場所だ。経過を観察する必要もある。
それこそ数ヶ月は入院する事になる。
「だが、助かる。助けられる」
そう口にして、俺の話は終わった、とジョッキを傾ける。乾いた喉を酒で湿らせながらロジャーの反応を待つ。
ロジャーは俺の言葉に考え込むようなそぶりで口元に手を置き、うんうんと唸りながら暗い海に視線を向ける。
「それは、どのくらい時間がかかるんだ?」
「心臓ごと入れ替える必要があるかもしれん。そこからの経過も見なければいかんから、数カ月は」
「あ、じゃあ良いや。悪いな」
「「「「ええええええええぇぇぇ!?」」」」
治療期間を尋ねてきたロジャーに予想される日数を話すと、最後まで耳にすることなくロジャーは笑顔を浮かべて首を横に振り。
狸寝入りしていた船員たちがガバリッと起き上がって驚きの声を上げた。
「なんでだよ船長! せっかく治るのに」
「船長じゃない! 私のことはキャプテン」
「それはいいから!」
やいのやいのと騒ぎ出す船員達はロジャーへ詰め寄ると口々に翻意を促すが、ロジャーはそれら全てに首を横に振って答える。
勿論、それで諦めるような船員たちではない。ロジャーの命が救える可能性を、笑って流せるような。そんな奴はこの船には乗っていないのだろう。
それは、たった数週間の付き合いであるが、仲間と呼ばれた俺にも分かることだ。
「それが、お前さんの生き様なんだな?」
だから、俺は口を再び開いた。
ロジャーは折れない。船員たちも諦めない。ならば、一番付き合いが短く、どちらの事情も見えている俺が間に入るしかない。
「お前さんにとっては……たった数ヶ月の停滞すらも許せない程に、今の旅路が大切なんだな?」
俺の言葉に、ロジャーに詰め寄っていた船員たちの勢いが陰る。彼らにとっても、分からない感覚ではないのかもしれない。
この旅路にそれぞれ乗せている思いは違えど。この旅路を、誰しもが大切なものだと思っている。
そして、言葉を向けられたロジャーは。
自分に向けられた俺の一言に、彼は虚を突かれたようにこちらに視線を向けた後。少しずつ口元を歪め、そして獰猛さすら感じる笑みを型作った。
「そうだ。そうさ――それが、俺の
「……そうか」
身震いするほどの威圧感。ロジャーを中心に渦巻く、覇気としか呼べない圧力の塊。それを全方位にばら撒きながら、ロジャーは笑った。
その笑顔を。その言葉を耳にして、思う。
――こいつはきっと、笑って死ぬ。
そんな確信めいた予感。幻視すら出来るほどのそれを覚えながら。
けれど。
「なぁ、ロジャー。最後に賭けをしないか?」
医師の仕事に、”患者の命を諦めること”は含まれていないのだ。
話の時期としては胡蝶カナエやオールマイトの少し前。
ジン・フリークス:出典・HUNTER×HUNTER
黒夫・サトルとトリオを組んでまだ見ぬ未知のため暴れまわっていた。なお大概他の二人は巻き込まれる場合が多いため、今回は珍しいパターン
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たまに家族から離れて羽を伸ばしたくなるときだってある