ブラック・ジャックをよろしく   作:ぱちぱち

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色々考慮した末、更新できていなかったオマケを別枠にしました。
こちらは作中では諸事情あって使えない、けど思いついた小ネタを置いておきます。
実際にこんな事があったかは想像におまかせします。

現在4作品。基本くだらない話がメインです


小ネタ(11.1追加)

1.

 

「ドラえもん、と先生か。珍しい組み合わせだな」

 

 それは、とある日の午後。戦況も落ち着き、親友も取り戻し。長い……それこそ幼少の頃からの付き合いの友が戦場を去った、ある日。

 

 その全てに関わり、その全てで命をかけた青年と自らが命を賭して取り戻した親友が向かい合う場面にたまたま出くわした野比のび太は、声をかけようとし――いやいや、と考え直した。

 

 珍しい組み合わせということは、ある種の好機である。

 

 片や最近自由になったばかりで仲間内にもまだ馴染めていない親友。片や気安い会話もこなせるがどこか超然とした部分の有る青年。

 

 そんな二人が出会い、向かい合って座っている。願わくば、互いに打ち解けあってもらいたいものだが、さて。

 

 のび太の思惑を察したのか。無言で向かい合っていた二人の内の片方。間黒夫はじっとドラえもんを見つめながら口を開いた。

 

「俺の友人に、鈴木サトルという人物が居るのだが」

「うんうん」

「この友人が何かと人に頼るタイプでな」

「へぇ。子供の頃ののび太くんみたいだねぇ」

 

 ぽつりぽつりと話し始めた黒夫にドラえもんがうんうんと相槌を打つ。なんだか雲行きが怪しくなりそうな会話に頬を引きつらせるのび太を尻目に、黒夫はぽつりぽつりとした話し方で話を勧めていく。

 

「俺の世界にも『ドラえもん』という作品はあったから、その様子を見て連想してしまってな」

「はずかしいなぁ。そっちでもボクはネズミ退治に地球を吹き飛ばそうとするキチガイだって思われてるのかっ!」

「まぁ、間違ってはいないだろう。話を戻すが、そのサトルをからかう為によく、頼られている相手をキミになぞらえて『デミえもん』と呼んでいたんだが」

 

 それAWGエリア群の実務責任者の事だろうか。思わず口から出そうになった言葉を噛み殺してのび太は盗み聞きを続けた。

 

「いざ実際に当人……いや、当機?」

「どっちでもいいんじゃないかな」

「じゃあドラえもんでいいか。キミを見るとな」

「うんうん」

「全然似てないなぁ、って」

「なるほど」

 

 成程じゃないだろ。

 

 心の中でそう呟き、のび太は彼らの居る部屋の中に入っていく。びっくりするほどのストレスを味わったが、盗み聞きなどという趣味の悪い真似をしてしまった罰のようなものだと割り切ろう。

 

 ああ、いやしかし。

 

「やあのび太くん」

「よう」

「や。ドラえもんに先生、二人で話してたのか」

 

 のんびりとした様子の親友におなじく気の抜けた表情の先生を眺めながら、思う。

 

 こういう日も、たまには良いものだろうか。

 

 

~チキュウエリアのとある日 終~

 

 

 

2.

 

 

「……なぁ、ジェノス」

「? はい、先生。どうされました?」

 

 とあるエリアでの移動中。

 

 彼らの移動の為に用意されたマクロス級戦艦内部にある都市、そこにあるショッピングモールをぶらりと物色していたサイタマは、ふととあるブースの前で立ち止まり隣を歩く弟子に声をかけた。

 

 はて、購入する予定の買い物はすべて終わったはず。首をかしげるジェノスを尻目に、サイタマは真剣な表情を浮かべてとある本を指差した。

 

 彼の指差した先にある本。ドラゴンボールの文字にパチクリと瞬きするジェノスに、サイタマは数秒の為を作った後に振り返り。

 

「どんな願いでも叶うドラゴンボールなら、俺の髪の増加速度を」

「先生。その願いは神龍の力を越えているかと」

 

 並大抵の神魔と呼ばれる存在はワンパンしてしまう師の力と神龍の願いを叶える能力。そして必死に植毛したブラック・ジャックの努力が無に帰した瞬間を思い返し、ジェノスは抑揚のない声でその事実を師に伝えるのだった。

 

 

~むなしき努力 終~

 

 

 

3.

 

「相談事?」

 

 カチャリ、とティーカップを小皿の上に置き、質問者に向き直ってそう問い返す。見知った顔の女性、山に住まう忍の一族の一員、陽炎は彼の視線を受けながら、小さく戸惑いがちに頷きを帰した。

 

「はい。先生に以前ご相談した事の、続きと申しますか……」

「以前の相談といえば、君の――体質の件だったね」

 

 女性である相手を慮って、具体的な内容をぼやかしながらそう問いかけると、陽炎は顔を曇らせながらまた小さく頷きを帰した。

 

 彼女の所属する忍集団はそれぞれが特徴的な忍術を保持している。その中でも彼女は対男性に特化した術、色香の術と毒息という体質を駆使する忍びであり、以前受けた相談というのはこの内の体質。毒息に対しての事であった。

 

 彼女の体内で生成される毒は彼女が興奮する事により発生し、吐息となって現出する。これが制御できるなら問題ないのだが、彼女自身でもこの毒息の現出は制御することが出来ず、これが原因で彼女は一度恋を諦めるハメになる。

 

 愛した男を殺してしまう。それが彼女の一族に代々纏わり付く因果なのだと、最初に相談を受けた時に陽炎は寂しそうに語っていた。

 

 まぁ、もっとも。

 

「しかし、吐息に関してならばすでに解決策が出ているはずだが」

「はい。お陰様を持ちまして」

 

 以前のという言葉の通り。実を言うと彼女の体質に関してはすでに対応してある。

 

 彼女の毒性は全て感情が高ぶった際、吐息によって振りまかれる。これをヒントに感情というスイッチによって活性化する呼吸器系を機械を使って調べ上げ、毒の成分抽出により解毒剤の開発。そして彼女が望むならばその機能を司る器官を切除する事も提案し、彼女はこれを受け入れ手術を行った。

 

 という所までが前回の話であるのだが。

 

 必殺の忍術は失ったとはいえ彼女は未だに里でも上位の実力者。留守を預かる朧くんの代わりに弦之介くんの役目を補佐する女手として忙しい筈の彼女が、たった一人で訪れての相談である。

 

 自然、険しくなる眉を意識しながら、彼女の口が開くのを待つこと、しばし。

 

「実は……」

「実は?」

 

 数分の沈黙後。ぽつりとした様子で口を開く陽炎に頷きを帰して続きを促す。さてさて、鬼が出るか蛇が出るか。俺の手に負える話であれば良いのだが――

 

「長年、望んでいた好機が唐突に降ってわいたので、弦之介様にどう迫れば良いのか」

「七実くんにでも相談してくると良い」

 

 深刻そうな表情でつげる陽炎に眉一つ動かさず、そう答えて部屋から追い出した。もしかしたら彼ら、暇なのだろうか。

 

 

 

~暇ではありません 終~

 

 

 

4.

 

 

「うん?」

「どうしました、先生」

「ああ、いや」

 

 はた、と何かに気づいたかのように黒夫が足を止める。斜め後ろを歩くレオリオが怪訝そうな表情で声をかけるも、訝しげな表情を浮かべたまま黒夫は周囲を眺める。

 

 確かに聞き覚えのある声だった。この幻想郷で、しかも人里離れたこの辺りで聞き覚えのある声という事は紹介された事のある者でも妖怪、しかも人間にとって脅威度の高い者である可能性が高い。

 

 背後に控えるレオリオも戦闘能力を有する人物である。しかし、彼はサイタマのような人外もなにも関係のない埒外の力を有しているわけではない。

 

「……先生」

「ああ」

 

 最悪の場合を想定しながら周囲を警戒する黒夫とレオリオの耳に、風切り音が聞こえてくる。上、しかも高速。見上げるように上を向いた二人の目に、小さな点が映る。

 

 点は少しずつ近づいてくる。絶叫のように野太い声を発するそれから黒夫をかばうようにレオリオが立ちふさがり――目を丸くしてポカン、と口を開いた。

 

「――――ぁぁぁ”あああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!

 

 落ちいく人物、間桐雁夜の姿はやがて高速で地面へと衝突――せずにその場にパクリと開かれたスキマと呼ぶべき何かに消えていく。呆然とそれを見送った二人がその場に佇んでいると、数分ほど後にまた空の彼方から雁夜が落ちていき、そしてスキマに消えていった。

 

「……行くか」

「うす」

 

 今度は何をやったのだろうか。言葉を飲み込み、黒夫とレオリオは神社へと向かう道を歩き始めた。

 

 

~ラキスケの末路 終~


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