後半の方は国が違えば法律が違う、で流してもらえるとありがたいです。
誤字修正。KUKA様、Kimko様、洋上迷彩様、SERIO様、五武蓮様、亜蘭作務村様、名無しの通りすがり様、オカムー様ありがとうございました!
墓石に刻まれた名前をじっと見つめながら、ゆっくりと盃をあげる。生前、袂を分かってからは語らう言葉は少なかった。言いたい事は全て拳に乗せて語っていたからだ。拳を交えられなくなった後は、ただ報告だけを墓石に向かって話した。そして、再び舞い戻ってきた今は、最後の決着をつける事ができなかった自分を恥じながら、師父と兄の墓の前で静かに時を過ごしている。
何という様だトキ。そう言われているような気がして、トキは手に持った盃をクピリと傾ける。
兄の仇を討った筈だった。だが、その後に残ったのはただ只管の無力感だった。彼の旅路に付き合ってくれた仲間たちが居なければ、トキは衝動に任せて自棄になっていたかもしれない。その未熟を、物言わぬラオウに責められたような気がした。
「やぁ、トキ先生。お隣、いいかな」
「……これは、代表」
背後から声を掛けられ、それが思わぬ人物だった為にトキは少しの驚きを露にしながら頭を下げる。誰かがやってきているのは分かっていたが予想外の人物だった。彼とは余り接点がなく覚えがない気配だった為、声をかけられるまで彼だと気付かなかった。
立ち上がろうとしたトキを手で制しながら、のび太はトキの隣に腰を下ろす。その手にはグラスと一本の酒瓶が握られていた。
「どうですか、一杯」
「……では、ありがたく」
手に持った瓶をこちらに向けてそう尋ねるのび太にトキは軽く頭を下げて盃を空ける。そして盃を彼に差し出すと、のび太はゆっくりとした動きで盃に酒を注いだ。トキが頷いたのを見て彼は瓶を盃から離し、自分の持つグラスに酒を注ぐ。
「献杯」
「……献杯」
亡き人への敬意を込めて盃を交わし口に含む。舌を刺すような強い刺激の若い酒だった。不味くはない。しかし、のび太が手に持つには随分と……
「キツいでしょう?」
「ええ。どこの酒ですかな」
「……この世界の新酒ですよ」
そう言って、のび太はクイっとグラスを空ける。
「ジャギの努力の成果だ。ここに捧げるには一番の代物だとは思いませんか?」
「そこまで……復興しているのですか」
「コスモクリーナーとテキオー灯が無ければ難しかったでしょうがね。先生がコスモクリーナーの設計図を持っていて助かりました」
盃を再度傾ける。荒々しい味わいの若い酒だ。だが、しっかりとした旨味も確かに感じる。これが、この世界で。胸に熱い思いが込みあがってくる。すっと何も言わずに酒瓶を差し出すのび太に頭を下げ、トキは盃を差し出す。
「彼とは戦場でしか相見えた事はありませんが、心の強い男だった。彼は彼なりのやり方でこの世界を何とかしようとしていたんでしょうね」
静かに語り出したのび太の言葉を聞きながら、トキはかつての、統合軍を名乗る連中との戦場を思い出す。自身は治療のため中期からの参戦だったが、目の前の男は最初期から最後の最後まで戦い抜いた男だ。いや、その戦いは未だに続いているのだろう。途中で抜け出したトキには分からない戦いを、彼と弟は今も繰り広げている。
「兄とは直接……?」
「何度か。ただ、彼は僕には興味がなかったようですね。数回、時間稼ぎに相手をした事はありますが……彼の目線は先生とジャギを常に追っていた。貴方が復帰されてからは真っ直ぐ貴方しか見ていませんでしたがね」
結局最後の最後まで強敵とは見られなかったらしい、と呟いて、のび太は空になった自分のグラスに酒を継ぎ足した。
二人の男が静かに盃を交わしている姿を眺めながら、ジャギは踵を返した。今の怒気を孕んだ状態であの場に入る事が恥ずかしくなった為だ。
「兄さん、そろそろ離してくれ」
「やかましい。あの二人が戻ってきたらもう一度墓参りだ。オヤジの命日まですっぽかしやがって」
「すまない。日にちを間違えていたんだ」
首根っこを引きずられて歩いてきたケンシロウを解放すると、ジャギはため息をついて末弟を見る。明らかに鈍っている。1年前からこちら、晴耕雨読と言えば聞こえは良いが碌な修行を行っていなかったのだろう。
トキの兄者が戻ってきたらもう一度盛大に叱り飛ばしてやるか。ユリアにはアンナから言伝れば問題ないだろう。それまでは……七実の遊び相手でもしてもらうか。
そう頭の中で結論付けて、ジャギは北斗の寺院へ向かい歩き出した。
【献杯 完】
「うわー! とっても甘いってミサカはミサカは言ってみたり」
「たっぷり食っで大ぎぐなれよぉ」
ドサッ、と籠一杯に収穫されたリンゴを籠から下ろし、麦藁帽子を被った女性は特徴的な話し方の少女の頭を撫でる。常春という特殊な気温の上島国の為に耕作面積が少なく、このマリネラ王国は食料を自給できていない。
彼女はこの食料自給率を少しでも引き上げる為に、非常に土の肥えた森林の一部を使って農作業に従事している人物だ。このリンゴや他にはブドウ、それにカブやブロッコリー等の野菜を栽培してもいるらしい。
「んじゃ、あどの荷物さ取ってぐるがら子供達よろしく」
「はい! あの、手伝う事はありますか?」
「そいだば全部食われねよう見とってぐれ。オリエさん居ねがらラスちゃん止めらんね」
そう笑って農家の女性は腰をぽんぽんと軽く叩いて自身の畑へと戻っていった。彼女は収穫した食料のほぼ全てを、この村の台所であるテンカワ飯店に納入している。
そして余った分、特に果実などは自前で発酵させて果実酒を作ったり、こうして子供たちのおやつになっていたりする。視界の端では
「げほっ……あのガキ、洒落になンねぇぞ」
哀れ子供軍にりんごを口に詰め込まれて窒息する所だった一方通行は、
シャクリと詰め込まれかけたリンゴを口にして、予想以上の糖度と濃厚な果汁に思わず「うまっ」と口にしてしまう。異常に早い生育といい、絶対にまともな品種じゃないと思ったが、それを言葉にする事は無い。一方通行の中にある勘のようなものが「あの農家には逆らうと不味い」と警告を発しているのもある。それに基本的に面倒見のいい女で
「ちっ」
甘くなっている。自分でも分かる程に鈍っている自身に舌打ちをして、もう一口リンゴを齧る。口の中に広がる甘みと酸味を味わいながら一方通行は静かに空を仰ぐ。
「……甘ぇなぁ」
「そりゃリンゴだからね」
「うぉっ」
急に声をかけられて一方通行は思わず立ち上がった。そんな彼の様子を特に気にも留めず、声をかけた少年―三日月はテクテクと彼に近づき、先程まで一方通行が座っていた材木の上に腰掛けて、手に持ったリンゴをシャクシャクと齧り始めた。
「………」
「……何?」
「こっちの台詞だコラ!」
急な声掛けに身構えていた一方通行に対し、三日月は訝しそうにそう尋ねる。肩透かしを受けたような心境になった一方通行は抗議するように声を荒げたが、三日月は眉を寄せて首を傾げた。
「……ああ。空いてる所に座れば良いじゃん」
「……いや、もう良いわ。ったく」
ため息を一つついて、一方通行は材木の上に腰を下ろした。視線を戻すと
「ったく。英雄が聞いて呆れるぜ」
大して休憩も取れなかったか……と諦めて立ち上がろうとすると、隣に座った三日月が「ねぇ」と声を掛けてくる。今度はなんだ、とそちらに目をやると、ヒョイっと投げられたリンゴが視界に入った。咄嗟に反射しないように受け取ると、三日月はクイっと顎を動かしてある方を示す。
そこにはノシッ、ノシッ、と足音を立てるようにゆっくりと、肩を怒らせながら子供達に歩み寄る鉄華団参謀、ビスケットの姿があった。
「頭がガンガンするってミサカはミサカは悲鳴をあげてみたり!」
「うっせェぞクソガキ。自業自得だろうが」
バタバタと拳骨を貰った頭を押さえて呻く
そういやアイツも農家の跡取りかなんかだったな。といつぞやの歓迎の宴だかでへべれけになったビスケットに
途中までは良かった。狩りで仕入れた獲物や農家に譲ってもらった野菜を焼きながら、キャンプファイヤーのように炎を囲んで銘々がそれぞれ話を楽しんでいた。だが、偶に見かける妙にジジ臭い口調の少年がいきなり手品だとか言い出して飲み物に変な桃をぶち込んだのが全てのきっかけだった。
その飲み物を美味い美味いとオルガが口にして、奴に釣られるようになのはと七実がそれを飲み、そして酔った。アッという間の出来事だった。様子がおかしいと思ったビスケットが近づいていくと、酒に変わった飲み物を口にぶち込まれて犠牲者となり、そこからは地獄の始まりだ。
無駄にあるカリスマで酔っ払いを率いるオルガに、何度ぶっ飛ばしてもゾンビの様に寄ってくる酔っ払いども。そして抵抗する奴を無力化する七実と無力化された連中の口にガンガン酒を注ぎ込むなのは。一人、二人と抵抗虚しく敗れていき、自身も下手に反射等をやる訳にもいかず最後は女二人に抑え込まれ、無理やり酒を口に注ぎ込まれたのだ。
その後はよく覚えて居ないが、一緒になって馬鹿騒ぎに交じっていた覚えがある。ビスケットの身の上話もその時に聞いたもので、それほど耐性がなかった一方通行はあっという間に意識を失った為に、その他の行動はよく覚えていない。
ただある程度の時間がたち、アルコールの影響が抜けて一方通行が目覚めた時には世にも恐ろしい拳法家にその場に居た全員がボコられていた。余りの光景に思わず襲撃と勘違いして攻撃してしまったのだが、初撃はともかく2回目で何故か反射を無効化してきた時には、学園都市の第一位もどうやら大した名前では無かったようだ、と世の広さを思い知る事になる。あの拳骨は痛かった。
「嫌な事思い出しちまった……」
「一方通行はまた美少女二人にお酌させてた事を思い出してるの? とミサカはミサカはムッとしてみたり」
「止めろ。死にたくなる」
両腕を捻り上げられながら口に桃を詰め込むあれがお酌というなら、キャバクラとやらに行く連中はドMしか居ないことになる。あの光景を見ていたせいで
「でも一方通行のお歌が聞けたから、ミサカはミサカはまたやりたいかもって言ってみたり!」
「全っ然記憶にねェぞクソが」
「アラレ…? アラレちゃんだっけの歌をすっごいノリノリで」
一方通行の左手に右手を繋いで
ただ、どうやら自分はそれを悪くないと思っているらしい事に気づいて、一方通行は静かに天を仰いだ。
春の日差しはどこまでも心地よく、彼と彼女を照らしてながら静かに笑っている。
【ある晴れた日のとある村のお話】
トキ:出典北斗の拳(含あとがき)
七実をどこかの南斗聖拳の後継者にしようと考えていたが、ケンシロウの状態如何によっては北斗神拳の伝承候補者にしても良いかと思い始めた。ケンシロウはこの後盛大に叱り飛ばした模様。
野比のび太:出典・ドラえもんシリーズ(劇場版全て含む)
ジャギから兄が帰ってきたと聞いて公務の合間に顔を出した。ラオウとは3~4回戦場で遭遇しているが互いに時間稼ぎに徹して勝負にまで発展したことはなく、今思えば相手にされていなかったのか、と地味にプライドを傷つけられていたらしい。
ジャギ:出典・北斗の拳
ようやく山からケンシロウを引きずり下ろしてきた。
ケンシロウ:出典・北斗の拳
このまま静かにユリアと暮らそうと思っていたら血相を変えたジャギによって無理やり人里へと降ろされることになった。トキに全力で説教された後に紹介された2歳年下の女の子の才能に驚愕する。
男の多い村のガキ共でもムードメーカー兼トラブルメーカー。様々な人にしょっちゅう拳骨をもらっているが、それ以上に可愛がられているらしい。
高町なのは:出典・魔法少女リリカルなのはシリーズ
魔法の力を無事に取り戻した白き魔王。魔法が使えない期間にトキや七実から受けた手ほどきで近接戦まで対応するようになった。復職するつもりは一切ないらしくツキエリアの某えらいおんなのひとが涙を流した。
宴騒動では妖艶な笑みで少年たちの純真な心を惑わしながら彼らの口に酒をぶち込み、次の日には何も覚えていなかった。ある意味一番たちが悪いことをした人。
村の中でも1,2を争う位に酒に弱い。というか普段はアルコール成分だけ分解したりと対応するがこの酒はなぜか能力が効かなかった模様。酔うと終始上機嫌で何をされても怒らず歌を歌ったりと陽気になるが限界が早いため超陽気モードからいきなり寝落ちする。持ち歌はワイワイワールドらしい。
三日月・オーガス・ミクスタ・バーンスタイン:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
リンゴ美味しい。
オルガ・イツカ:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
宴騒動の副要因。トキ先生にぶっ飛ばされて次の日は清掃作業をさせられた模様。
鑢七実:出展・刀語(含あとがき)
宴騒動の副要因。こいつが酔わなければ被害は拡大しなかったためむしろ主要因かもしれない。トキ先生にぶっ飛ばされて次の日は清掃作業をさせられた模様。
何名か紹介が抜けてますがそちらはまた後日どっかで出るかもしれないかも(目そらし)
後人物紹介と結構文章が違ったりするのでそちらも見ると面白いかもしれません。