ブラック・ジャックをよろしく   作:ぱちぱち

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クロオに治してほしいと思ってる人ってどんな人がいるか?
という質問があったので答えて見ました。統合軍系統は今回除いてあるのはどっかでチラ見せしたいからです。
明らかな悪役っぽいのは入ってませんのであんまり読み応えは無いかもしれませんが、話の補填くらいにお読みください。

誤字修正。カランカ様、竜人機様、日向@様、五武蓮様、佐藤東沙様、オカムー様ありがとうございました!


ブラック・ジャックを求める人々

『ええ、こちらは問題ありません。先生からも良くして頂いてます』

「それならよかった。貴方から寄せられている医療コラム、とても評判が良いわ→レオリオ」

『ええ? いえ、そんな。先生が行った手術の様子とかを書いてるだけなんですが』

 

 電話越しに聞く青年の声は、以前よりも幾分落ち着きが増している気がする。初めて見た時は青さが残っていた彼も大分成長したらしく、話をしているだけで驚かされる事もある。特に医療関係の知識は、どれだけの戦場を潜り抜ければそうなるのか、実践経験に裏打ちされた内容の物が多い。彼が将来この世界に帰って来る事があるのなら、きっと医師として大成するだろう予感がある。だが、彼は恐らく帰ってこない気がする。

 自分が逆の立場なら恐らく帰ってこないからだ。

 

「謙遜しなくていいわ→レオリオ」

『いや、謙遜というか、まだまだ目指す頂はまるで見えないので……この間の手術の時なんか、その病院にあった機材だけで難しい手術を成功させてまして』

「へぇ? 例のメスは使わなかったのね→BJ」

 

 チラリと本音を混ぜて会話を誘導する。彼の言葉に対して自分が抱いている感情は本物だ。ただ、少しだけ方向を変える。軽い誘導だが、レオリオにはこの手の話し方が一番効果がある。

 

『最後に見たのはなのはちゃんの手術の時位ですねぇ。普通のメスじゃ切れないからって言ってましたが、あれから結構経つなぁ』

「魔法の組織を切るのに使ったのね→BJ どんな素材で出来ているのかしら」

『さぁ? 先生も知らないみたいですが、オリハルコンかもしれませんねぇ』

 

 レオリオの言葉に相槌を打ちながら、チードルはメモに『魔法組織を切る オリハルコン』と書き込んだ。そのまま二言三言会話を交わしてまたの連絡を約束し、チードルは電話を切る。彼との会話はチードルにとっても楽しいものだった。彼がこの世界を離れると言った際には思わず止めてしまった位には将来を切望していた若者だ。度々送ってくれる外の世界の医療関係の本や手術の内容などは非常に為になるものが多く、また本人の医療知識もどんどん磨かれている。彼が見つけた病気や見かけた難病に対する所見などは、医療に身を置くものでも思わず唸らされる物があり、今現在世界を離れているというのに一つ星ハンターにしてはとの声が上がっている位だ。

 

 そんな人物に間諜のような真似をさせてしまっている事に申し訳なさを感じながら、チードルは再び電話をかける。今手に入れた情報を報告する為に。

 

『――』

「失礼します、チードルです。BJの手術について新しい情報が入りまして」

 

 BJの医療は眩し過ぎた。彼が『ゴン・フリークス』に対して行った手術の映像は、この世界の力を持つ人間達にある幻想(不老不死)を抱かせてしまうほどに。彼の確保に失敗した権力者たちはアプローチを変え、彼の手術技術の秘密を盗む事に執着するようになった。つまり彼女がしているのもそんなアプローチの一つで、そして彼女はその立場を利用している人間でもある。彼の手術に魅せられたのは何も権力者だけではない。彼女もまた、あのメスの輝きに心を奪われたのだから。

 

 医学を少しでも齧ったものならばあれに心を奪われないわけが無いのだ。眩しい光を放つメスがゴンの体に入るたび、蝕まれたゴンの体が息を吹き返すように生命力を取り戻し、蝕む念が削り取られていく様を見せられれば。自身のようになりふり構わずアレを求めるに決まっている。アレが念ではないのは分かっている。伝え聞く魔法に近い気がするが、彼が魔法を学んだエリアにもそんな魔法は存在しなかったのは確認している。秘密はメスにあるはずだ。

 

 別にチードルは彼に対して悪意があるわけではないし、彼のメスを盗み出すようなつもりもない。ただ同じものを手に入れたいし、彼の医療技術を何とかして身につけたいと思っているだけだ。その為に手段を選ぶつもりは無いが、彼女にだって医療現場の第一人者としての誇りはある。法律学者としても犯罪行為に手を染めるつもりは無かった。

 まずは、オリハルコンだ。新しい情報も入ったことだし、一つずつ潰していくのが重要だ。その行動が報われるかは兎も角として、彼女は己の目的の為に今日も動き出した。

 

 

【悪魔の証明 完】

 

 

 

「おらぁ!」

 

 気合を入れた一撃が一つ目の何かを切り裂く。その気合に呼応するようにデルフリンガー(相棒)は輝きを増して煌く。

 

「かっこいー!」

「サイトすごーい!」

「はっはっはっは! まかせろー!」

 

 背に受ける声援に顔を緩ませて才人は彼女達に手を振り返す。彼からの攻撃がやんだ事を隙と見たのか一つ目の何かが近寄ってくるが、彼は即座に振り返って敵を切り伏せた。その様子に歓声を上げるフレンズ達にだらしない顔で応える。単身赴任の形でこの世界にやってきたが、この世界は彼にとって天国とも言える場所だった。

 

 まず、住人たちが可愛い。動物から変身したフレンズという存在らしいが、才人にとっては見た目ちょっと動物の特徴を持った可愛い女の子達にしか見えないし、衣装も露出が多くて素晴らしい。そして何よりも、彼女たちがとても良い子な事がサイトを喜ばせた。ちょっとエッチな目線で見ても「?」で済まされたのには正直罪悪感があるが、健康な哺乳類男子であるので致し方ないことだろう。少なくとも少し前まで居たマカイエリアに比べれば、ここは天と地ほどの差がある。あっちのそういう格好をした連中の危険度は洒落にならないからだ。

 

「でも対魔なんちゃらとかいう連中のがタイプなんだろ?」

「そらお前、あんなピッチピチの全身タイツとか見てくださいって言ってるようなもんじゃねーか。胸がすごいのが多かったし」

「ふーん」

 

 バスに乗って次のセルリアン出現地へと移動しながら、才人はかつて出会った存在自体がエロゲとしか思えない連中の姿を思い出して、思わず鼻の下を伸ばす。腰に差しているデルフが「あっ」と呟いたが、才人はそれに気付かず、かつての任地に思いを馳せる。

 

 とある目的の為とは言え防衛機構に志願した事を本気で悔やむ位に何時死んでもおかしくないエリアだったが、その分手当ても良かったしコネも出来た。あと視覚的な意味でも非常に素晴らしい場所だった。まずバルンバルンが当たり前である。大事な事なので繰り返すがバルンバルンだ。ティファニア並のサイズのお山が激しい動きに合わせて乱れ動くのを間近で見ると言う、大変股間に悪い職場だった。あの時はルイズの機嫌を取るのが本当に大変だったのと、正直いつ死んでもおかしくないと思ったので何とか任地を変えてもらったが、時たま思い返してしまうのは男として仕方が無い事だと思う。

 

「その割にはさっきもフレンズの子達に随分とまぁ鼻の下伸ばしてたじゃない」

「いやぁ、ああいう純粋な子達に応援されるとさ。何と言うか自分がカッコいいんじゃな……いかなって思い上がった犬をお許しください」

「おすわり♪」

 

 背後に空いた空間の穴に気付いた才人はすかさずバスの床に猛虎落地勢を行い、全ての生殺与奪権を穴からこちらを覗き見るピンクの髪をした少女に委ねる。笑顔でゲートの中から姿を現した少女が彼の頭を優しく撫でた後、バスの中には十分ほどの間、断続的に悲鳴が響き渡った。

 

 

「長い事放置した恋人に何か言う事はないの?」

「もうひわけありまへんでひた」

 

 顔中をパンパンに腫らした才人に横から抱きつきながらルイズはそう尋ね、死に体ながらも才人はそれに応えた。非常に美しい恋人同士の逢瀬のひと時である。才人は支給品のポーション(劣化する為消耗期限付きの物)を飲み込み、半分は頭から振り掛ける。少し濡れてしまったルイズが不満そうに才人を見るも、見る見る傷がいえていく姿に若干の驚きをこめてため息をついた。

 

「それで、どうしたんだよ急に。今は移動中だから良いけど、連絡もらえればちゃんと空けといたのに」

 

 言外に仕事中であることを匂わせる才人の言葉に、少し目を伏せてルイズが応える。

 

「ごめんなさい、大事なお仕事中なのに。お父様がね、お姉さまの件について詳しく聞きたいって。あと、一週間もサイトの顔を見てなかったから会いたかったの」

「許す超許す。ごめん、中々連絡が出来なくて」

 

 ルイズの肩に手を回して抱き寄せ、才人は謝罪の言葉を口にした。発生条件が余り良く分かっていないセルリアンの除去作業はいきなり忙しくなることもある上、現地の住民とトラブル無く対応できるコミュ能力を持つ才人には色々と仕事が振り分けられている。決して暇な訳ではないのだが、それは彼女を放置する理由にはならない。少なくとも才人にとっては。

 

「良いのよ。サイトのお陰で、ヴァリエール家(ウチ)は防衛機構とも関係をもててるし、お姉さまの件でも沢山苦労を」

「カトレアさんの件は俺だって治したいって思ってるんだ。全然苦労なんかじゃないさ」

 

 俯くルイズの額にキスをして、才人は彼女を抱き寄せる。防衛機構に所属して二年。各地を転戦する事でコネと情報を得ていき、そこそこ名前の通る存在になった彼はようやく当初の目的を達成する機会を得た。

 

「雁夜さんに頼み込んで、紹介してもらう約束も取り付けたんだ。大丈夫、きっとブラック・ジャックならカトレアさんを治せるよ」

「サイト……ありがとう」

 

 次の仕事場まで少し遅くなるかもしれないが、休憩時間は好きに取っても良いと言われている。多少は上役も目を瞑ってくれるだろう。才人は恋人の涙を指で払って、口付けを交わした。

 

 

【キミが突然現れた(空中から) 完】

 

 

 

229:名無しさんニュース:20××/○○/△△

 結局良く似たコスプレでFA?

 

 

230:名無しさんニュース:20××/○○/△△

 と思われ

 続報もないしあの画像以外はそれっぽい人も居なかったしね

 

 

231:名無しさんニュース:20××/○○/△△

 画像が偽物だったって可能性はないの?

 

 

232:名無しさんニュース:20××/○○/△△

 

 【画像】http:~~

 

 

 

「ダメか」

 

 PCの画面を落として椅子にもたれかかる。自作自演を含めて幾つかのスレを立てて情報を集めてみたが、個人で出来る範疇ではここが限界だろう。残念な事に知り合いにスーパーハッカーが居るわけでもない自分にはこの位が関の山だろう。そこそこ顔の広い知り合いに尋ねても大体が噂以上の情報を持っているわけではない。

 

 メガネを外して瞼を揉みながら椅子から立ち上がる。もう夜の2時を過ぎている。健全な中学生としてはさっさと眠るべきだろうが、幸いな事に明日は休日で予定も入っていない。いや、予定なら入っているか。いま正に行っている調べ物が自身の余暇の使いどころなのだから。

 

「ゆーちゃんの言っていた場所をもう一度調べなおすしかないか」

 

 従妹のゆたかが彼と出会ったのは随分と前の事。偉い人たちが地球の自転がどうだのと騒ぎ始め、衛星が無くなっただの地球一周が出来なくなっただのと言った明らかな異常が世に認知されてから、一年と少し経った頃だ。

 

 その当時、国連が非常事態宣言とやらを出して世界中が何が起きているのかも分からないのにパニックに陥っている中、唐突に空を飛ぶ船にのって防衛機構(連中)は現れ、私達の住んでいる場所(地球)を第8地球型世界と呼称し「科学力はそれほどでもないが十分に文化的な世界である為保護する」と一方的に宣言してきたのだ。

 

 勿論多くの人間や国家がそんな話を飲み込めるわけがないと立ち上がった。いきなりやってきて訳も話さずに、そんな状況に防衛機構(連中)は必要が無いならばしょうがない。もし必要があるのならばこの連絡機を使いなさいと言い残して空を飛ぶ船にのって去っていった。唐突にやってきて、唐突に去っていった明らかな超文明の存在に学者たちが喧々囂々とTVで持論を展開しては他の学者と喧嘩する様は当時のTVを大いに賑やかしていた。

 

 彼らが何をしに来ていたのかはその数ヵ月後、統合軍と名乗る連中がやってきた事で明らかになった。足りない戦力の補充と称した彼らの行動により国一つが消えた事で、私達の住むこの世界は自分たちが思っていた以上に危険で救いが無くて、残酷だという事に気づいた。いささか以上に遅すぎたが。

 

「……寝よう」

 

 頭が回らなくなっているせいで余計な考えばかりが思い浮かんでしまう。明日は起きたら分かっている事を整理しなおしてみよう。情報を集めるだけ集めきった感がある為、現状で取れる手は現場検証と情報の分析しか無くなっている事もある。

 最近、ゆたかの体調が良いという事から発覚したこの切り口を逃す事は出来ない。彼女の体調回復の原因である黒い男、恐らくその容姿からしてブラック・ジャックを探し出すのが、防衛機構の情報を得る最も手っ取り早い方法だろう。

 

 ブラック・ジャック。伝説の漫画家の書いたとある作品の主人公。そう彼は現実にいる人物ではなく、漫画の中に居る人物なのだ。彼のほかにも調べられる範囲では、救援に来てくれたバスク大佐はガンダムに出てくる悪役だという事がわかっている。と言ってもその作品と違ってバイザーではなくメガネをかけていた為、もしかしたら別人ではないかと思っていたのだが。ゆたかからの情報のお陰で彼女は確信を持つことが出来た。二次元の存在が、現実に存在しているという事を。

 

「ドラゴンボール……」

 

 きっとどこかにそれは存在するのだろう。そして、それはこの世界ではない。彼らの船に乗り込む必要がある。出来れば正式な一員として。

 もしかしたら彼らの規模ならすでにその所在も行方も、もしかしたら所持さえしているかもしれない。上空がいきなり暗闇になった事はないのだが、世界が違えば影響が出ないといった事もあるだろう。どんなファンタジーな設定が来たって驚く事はもうない。もし所持しているのなら、その使用を許可させるだけの働きが必要になるだろう。運動神経自体は良いがその程度は掃いて捨てるほど居るだろうし、得意としているコンピュータの技術とファンタジーなどの造詣を深める位しか役に立つ分野は思いつかない。やはり彼らの組織を知り、何が必要とされているのか。自分をどう適応させれば良いのか調べる必要がある。

 

 ブラック・ジャック。もし、彼が私が、泉こなたが生まれていた時に居てくれればお母さん(泉かなた)は助かったのだろうか。

 そんなどうしようもない仮定を考えながら、限界を超えて酷使された頭は休息を求めて意識を手放した。

 

 

【中学はむしろ黒く染めてた説 完】

 




チードル=ヨークシャー:出展・HUNTER×HUNTER
 現在はハンター協会の会長。ゴンの手術の映像を見てしまった人の1人。他の人は彼に対して治してもらう、施術してもらいたいと願っている中1人だけ「あの技術、身につけたい」と頑張っている人。レオリオとは文通友達。

平賀才人:出展・ゼロの使い魔
 現在は防衛機構に相棒(デルフリンガー)と共所属。恋人兼主人の姉を治す手段を探して防衛機構に入り、恐らく一番望ましい形での回復はBJに頼る事だと結論。モモンガ様? 初手アンデッド化の提案でした(しかも超善意)多分他の手段でも何とかなると思っているが、一番後が怖くないのがBJと判断した辺りかなり危険に対する嗅覚が良い。現状はケモノエリアでエリア内のゴミ処理係。

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール:出展・ゼロの使い魔
 ルイズ!ルイズ!ルイズ!ルイズぅぅうううわぁあああ(ry
 平賀才人の恋人にして主人。かわいい。

泉こなた(黒):出展・らき☆すた
 今回の登場人物で唯一の完全一般人。BJを糸口に防衛機構への所属を画策している。目的は龍球の確保と母親の復活。そうじろうは生きてますし特に原作より不幸という訳ではありません。細かい話は長くなったので別記しました。

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