原作ウォッチャーの更新の時からこれ入れたいなと思ってた場面を作成。
誤字修正。佐藤東沙様、椦紋様、Backwheat様、オカムー様ありがとうございます!
消えていく。
絶望が、消えていく。
「うそ……」
その一撃は絶望の魔女を貫き。暗雲を吹き飛ばし。流星が夜闇を貫く様に空を奔り、そして消えていった。
雄たけびのような断末魔を上げて消える魔女――ワルプルギスの夜の姿を目にしながら、それが信じられなくて私はただ何度も目をこする。
「――バカな」
「言った筈だ。バカはテメェーだってな」
その光景を見ながらありえない物を見た、というインキュベーターの言葉に、私の傍らに立つ男が答える。
防衛機構と名乗る胡散臭い組織の人間。私と同じく時間停止の能力を持ち、そしていつも帽子を身に着けている変な男。
その男は、右手に持ったインキュベーターをポイっと上空に投げ――
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラッ!!
弾丸のような拳の嵐を浴びせかけた。
細切れになるほどの乱打。いつ終わるかもわからないその嵐は数分の間続き、そして唐突に止んだ。細切れの様にすり減ったインキュベーターの残骸に対し男は静かに口を開く。
「宇宙の為だとかあーだこーだ言ってたが」
細切れの残骸はふわりと風に乗り、宙へと消えていく。
私の絶望も、これまでの戦いも。呪いも怒りも何もかもが、消えていく。
「てめーの失敗はたった一つだぜ……インキュベーター。たった一つのシンプルな答えだ」
何故だろうか。嬉しい筈なのに……解放されたと思っているのに。
「
なんで私は今、涙を流しているんだろう。
瞳からあふれ出るように流れ出す涙に視界を塞がれ、私は慌てて涙をぬぐう。
こんなにも綺麗な空なのに。ずっとずっと。それこそ何千回も繰り返して見たかった空の筈なのに。
「ヒッ……グスッ」
「……ちっ」
どうしても涙が止まらないのだ。
「どしたん承太郎」
「泣かせたのか?」
「ちげーよ」
ドスンッ、という大きな音。続いてジェット機のようなエンジン音。
ワルプルギスの夜を倒した二人が――いや。一人が帰ってきたのだろう。
涙に濡れた視界の中。特徴的な黄色い人影に向かって、私は大きく頭を下げる。
「あ”の”っ! だ……たすけてくれて、ありがどうございます……っ!」
「おう」
涙と鼻水でぐずぐずになった声を何とか整えて、私が言った言葉に彼はなんでもない事の様に返事を返す。
きっと彼にとっては本当になんでもない事なんだろう。私の苦闘も、何度も行ったループすらも、彼にとってはただの一撃で片の付く事柄だったのだから。
心の中にささくれの様にその事実が突き刺さり、私は別の意味で瞳に涙をにじませた。
正にその時、ぽん、と私の肩に彼の手が置かれた。
「ずっと頑張ってたんだってな……お疲れさん」
「あっ……」
「じゃあな。またどっかで会おうぜ」
そう言って、彼は――ヒーローは去っていった。
後日またやってきた帽子の男、空条承太郎によると、彼は別世界でプロのヒーローとして活動している人物で、災害規模の脅威を力尽くで止める専門家のような人、らしい。
「力で止められる問題なら全部解決できる。波平みたいな頭してるが、すげー奴だ」
俺じゃああれは倒せなかったからな、と皮肉気に笑う空条さんの言葉。それは違う、貴方が居たから彼は間に合ったのだ。もしも貴方が居なければ、私は今頃アレに挑み、そして敗北していただろう。
その私の言葉に帽子のつばを押さえて空条さんはため息を吐く。その動作に少し照れ臭いのだろうか等と考えながら、私は彼から現状の説明を受ける。
この地域のインキュベーターは文字通り彼等の組織、防衛機構によって殲滅されたらしい。宇宙のエントロピーだどうだという話も今の世界では完全に意味のない話。
連中が行っているのはもはや何の意味もない人類の家畜化でしかなく、それは空条さん曰く「上層部にとって甚だ不愉快な」事なのだという。
「空条さんじゃなくて承太郎でいい。年も2、3しか変わらねーだろうが」
「……貴方、お幾つなんですか?」
「17だ」
「嘘……」
衝撃の事実に思わず言葉を失う私に、空条さん……承太郎はふんっ、と不愉快そうに鼻をならし、「で、だ」と言葉を続ける。
「本当に、入るのか。この胡散臭い組織に」
「……ええ。インキュベーターが駆逐されつつあるとはいえ、私たちも何かの拍子に魔女化する可能性があるもの」
「確かにそれが何とかできそうな奴に数名、心当たりはある。だが、俺達は人間相手に戦う場合もある」
「拒否権はあると貴方自身が言ったじゃない」
「……ちっ」
揚げ足を取る様な形になるのは心苦しいが、これは自分たちにとっても必要な事だ。尚も何か言いたそうに承太郎がこちらを見るが、それ以上は何も言わなかった。自身の発言を盾にされた以上、強く否定する事が出来なくなったようだ。
まぁ、どちらにしろ一度彼らの組織に魔法少女達を保護してもらう必要はあるのだ。ワルプルギスの夜、それにインキュベーターが消えたとはいえ、魔女の災厄自体が完全に消えたわけではない。
少なくとも魔法少女達……とりわけまどかが魔女化する可能性は消さなければいけない。この世界ではもう巻き戻しは使えないのだから。
まぁ防衛機構に所属するとはいえ、暫くは残っている魔女を退治して回る必要があるだろうが、それはそれ。かつてのように絶望的な状況ではない以上、やりようはいくらでもあるだろう。
それに、だ。
「いつかは、また会えるかもしれない」
口の中でだけ小さく呟き、彼女はあの時の情景を思い浮かべる。
何か、凄まじいエネルギーが迸ったのを感じた後。上半分を跡形もなく消し飛ばされ、光の粒子になって消えていくワルプルギスの夜。
雲が消え、青空が広がっていく光景。
涙のせいで綺麗に見えなかったあの景色を、もしかしたらもう一度。今度ははっきりと見れるかもしれない。
そんな小さな欲求を胸に仕舞い込んで、暁美ほむらは小さく微笑んだ。
【無敵のワンパンでなんとかなった話】
何時からだろうか。
「ほいっと」
「グギャアアアア!」
戦うという事がこんなにも単調でつまらないものになったのは。
「流石は先生!」
「おう。帰ろうぜ、ジェノス」
「はいっ!」
目の前ではじけ飛ぶ怪物の姿を無感動に見つめ、弟子を名乗るサイボーグに言葉をかけて踵を返す。
かつて足で悪を探していた頃と違い、今は事前に討伐対象の捜索や移動手段まで用意されている。かつてと比べれば数段ヒーローとしての活動は楽になったが、それに比例するように消えていく感動。
ただの作業と化した戦いは、サイタマのやる気と人間性をどんどん削っていく。
「間違ったかなぁ……」
「……どうかなさいましたか、先生」
「いんや、何でもない」
つい口に出た言葉を弟子に聞きとがめられるも、やる気なく首を横に振り、用意された戦闘機に乗り込む。
「サイタマさん、お疲れ様でした!」
「ああ、じゃあ今日もよろしく」
「はいっ!」
環境は、間違いなく良くなっている。以前のようにヒーローだとすら認識されず地道に活動していた頃と違い、現在の自分は超広範囲の対厄災級事件担当のヒーローとして様々なバックアップを受けてヒーロー活動に勤しんでいる。
以前の様に生活費に困る事もなく。
一日パトロールと称して何とも出会わずに帰る様な徒労もなく。
果ては彼に何かと突っかかってくるような程度の小さな問題は防衛機構側の付き人が対処してくれる。正に至れり尽くせりといった状況だった。
だが。
「…………」
時折、感じてしまうのだ。
虚しいと。
「そういえば、次はまたマカイエリアに戻るんでしたね! あちらはかなり厳しい状況だと言いますし、頑張ってくださいっ!」
「お、おお。ありがとう」
つい呆けていたが、どうやら戦闘機のパイロットは延々自分に語り掛けていたらしい。悪い事をしたな、と思いながら彼の話すマカイエリアについて思いをはせる。
マカイエリア。別に全体が魔界というわけではなく、いくつかの世界の中でも特徴的なモノが魔界という世界と暗黒大陸と呼ばれる地域だけのため、そう呼ばれているエリアの事だ。
あそこは確かに酷い場所だった。彼としては特に脅威を感じないが、やたらと攻撃的で凶悪な見た目の連中がやたらと凄い繁殖力で増えまくっているのだ。
魔界と暗黒大陸が隣り合う場所にあって本当に助かっている。あの二つが離れてしまうと明らかに現地の戦力だけでは手が回らなくなってしまうのだ。
「まぁ、あっちは今もオールマイトやらが頑張ってるだろうしな。早めに行ってやらんと」
「ああ、オールマイト! お噂は良く耳にしますが、何でもサイタマさんに匹敵するようなヒーローだとか!」
「うん、そうだな。凄いヒーローだよ」
この世界にやってきて。そして、防衛機構という組織に所属して良かったと思った3つの出来事の一つは彼との出会いだろう。
熱い男だった。ヒーローとしての在り方もそうだし、人としての在り方もそうだった。
『君ほどの力を持った人間が、空虚な心を持ったままではいけないよ』
彼はサイタマの考えるヒーローの理想のような存在だった。力では、正直な話負ける気はしない。だが、彼ならばなんとかしてくれるという安心感。そして、実際に何とかしてしまえるその底力にサイタマは自身がヒーローを志した瞬間を思い出せた。
こんな男になりたくて、自分はヒーローを志したのだ。
巨悪に立ち向かえる男に、自分はなりたくて体を鍛えたのだ。
そして……強くなりすぎてしまった。
パイロットの話を半分聞き流しながら、サイタマは思う。この空虚な心が満たされる日は来るのだろうか、と。
もうお別れだと思っていた髪は戻ってくる可能性を示された。あの日ばかりは彼女と彼を紹介してくれた防衛機構に心の底から感謝をしたものだ。
そう、もしかしたら髪と同じように、自分の空虚さを満たしてくれるまだ見ぬ強敵がどこかにいるかもしれない。そう考えて上層部、彼の場合は八雲紫に頼み込み、強者との戦いを優先的に回してもらうようにした。
だが、強いと言われている災害級の怪物と戦っても一向に心は満たされない。最近倒したワルプルなんちゃらという存在は少しだけ手ごたえを感じたが、それも一撃で終わってしまった。
自分に感謝の言葉を述べる少女の姿に、別の意味で心が満たされる事はあったが……何よりも求める強敵と遭遇する事は、この世界にやってきてから3年、終ぞ叶うことはなかった。
もしかしたら、この広い世界にすら自分を満たす強敵は存在しないのかもしれない。
そんな諦めにも似た心境の中、サイタマは毎日を過ごしている。
いや。
過ごして、居た。
頬をヒリヒリと走る”痛み”。はっきりとしたそれを感じるのは、何年ぶりだろうか。
「イッテぇ~!? 殴ったオラの手が痛くなっちまったぞ!」
「何を手間取っている、カカロット! そいつはサイヤ人でも何でもない、地球人だろう!?」
彼にとっては全力の一撃だったのだろう。光るオーラを纏ったその拳を無抵抗で受けたサイタマは、感じた痛みに思わず手加減を忘れて拳を出し――その一撃は対戦相手に避けられる事になる。
だが、サイタマの拳に脅威を感じたのだろう、対戦相手は距離を取り、そして殴りつけた右拳を痛そうにひらひらとさせる。
そんな様子を見ながら、サイタマは痛みを感じる頬にそっと手を添える。
「オラの全力でも全然堪えてねぇか。へへっ、オメェすっげー奴だな。オラワクワクしてきたぞ」
そんなサイタマの様子をこちらも見ながら、対戦相手……孫悟空は己の身に纏う金色のオーラを変化させ、青く輝くオーラを身に纏う。
強い。少なくとも、無防備に受けていい一撃ではない。それらの言葉がゆっくりとサイタマの頭の中で、彼の決して優れているとは言えない頭脳に染み渡っていく。
「俺も」
「ん?」
ふと小さく口に出した言葉に孫悟空が眉を顰める。その様子を気にすることもなくサイタマは――にやりと笑顔を浮かべて、再度口を開いた。
「俺も、楽しくなってきた」
「……おう!」
ゆっくりと構えを取る。誰かに構えるという事自体、強くなってからはしたことのない行為だった。
その事実に再度喜びの感情を抱きながら、サイタマは迫りくる孫悟空の右拳に拳を合わせた。
【ワンパン出来なかった相手の話】
暁美ほむら:出典・魔法少女まどか☆まぎか
残念ながらスペースほむらには成れなかったが別の進化パターンは残されている模様
空条承太郎:出典・ジョジョの奇妙な冒険
キュゥべえをオラオラするためにご登場いただいた方(17歳)
まどマギ初めて見た時にこれをやってほしかった。MAD技術があれば自分で行ったのに……(違)
日本人という理由だけで見滝原に派遣され、ちょっとした奇縁の影響でほむらに協力していた。
ワルプルギスの夜は自分では対処できないとサイタマを呼んだのも彼なのである意味MVP
サイタマ:出典・ワンパンマン
力で押せる相手には概念と化す。強敵と合わせてやると言われるが延々ワンパンで終わっていたので大分フラストレーションが溜まっていたが、最終的に大満足だったらしい。
ジェノス:出典・ワンパンマン
サイタマの弟子。サイタマが嬉しそうで嬉しいのとまだまだ自分は弱い事を自覚し更に修行の日々。最近、アラレという埒外の存在に目を付け彼女の技術を自身に適用できないか模索しているらしい。
孫悟空:出典・ドラゴンボール
とんでもなく強い奴がいると言われてホイホイ呼び出された男。大変満足したらしい。