7.20 ちょろっと修正。
誤字修正。路徳様、灰汁人様、酒井悠人様、竜人機様、椦紋様ありがとうございます!
「死…柄木……ッ!」
ボロボロと崩れる体。自分を攻撃しただけで失血し震える手。
――――許せるハズがない。
「また……会おう」
大勢を殺して、皆を傷つけた相手。
だというのに。許してはいけない、そんな
「待て……!」
右手を伸ばす。届かない。このちっぽけな右手は力を、想いを受け継いだというのに届くことはない。
「お前を、必ず……!」
――あの時。僕の体の中でオール・フォー・ワンに飲まれたお前が……救けを求めたように、見えたというのに。
僕は――まだッ!!
グングンと遠くなる死柄木の姿。黒鞭、浮遊どれも間に合わない――背中に感触。地面? まさか、早すぎる! 衝撃が来る。身構え、いや、違う。この感触、これは、地面じゃない。
ガシリと体を掴む誰かの腕。アレ程の勢いで飛ばされたというのに、なんの衝撃も感じることなく受け止められた。力の反動に悩まされている身だからこそ分かるその凄さにこそ衝撃を受けながら、咄嗟に振り返り。
「良く頑張った。緑谷少年」
ふわりと耳に届く声。何度も聞いた、低く力強い声。
「……あ」
「――本当に、良く頑張った。君は私の誇りだ」
ポン、と頭の上に置かれた手。大きくゴツゴツとした手のひらと、かつて知る姿からは少し細いけれど、筋骨隆々とした肉体に抱きとめられた感触。
「もう大丈夫」
いつだってこの人は笑顔を浮かべていた。誰かを不安にさせないために。ヒーローの重圧と、そして内に湧く恐怖から己を欺く為に。
「何故って?」
そんな貴方に憧れて。貴方のようなヒーローになりたくて。貴方のような、誰かを安心させる事のできるような。
「私が、来た!!」
「オールマイト……」
――この胸を満たす安心感を、誰かに与えられる
僕は、なりたい。
「…………何故だ」
「……」
唖然としたような声を上げるAFOを無視し、力を失う緑谷少年の体をそっと地面に横たえる。限界を迎えたのだろう。体はどこもかしこもボロボロ。気力だけでここまで動き続けたのだ。
君は、私の誇りだ。
もう一度、事実を確認するようにそう思考し、緑谷少年の頭を撫で――視線を前へと向ける。死柄木弔。知っている姿とは随分と様相が違っている。倒したと思っていた
「オールマイト……! あいつは……死柄木は」
「無理をするな、少年。わかっている」
許せる筈がない存在だ。多くの人間を傷つけ、そして殺してきた存在。たとえ師の係累であろうともそれは変わることのない事実。
だからこそ。
「捕える。ここで、確実に」
メキリ、と音を立てて右拳を握りしめる。爆肉鋼体。新たに得たその力を全身に漲らせ、私はかつての姿を取り戻す。OFAを扱っていた頃の
ふぅ、と息をつき周囲に視線を向ける。エンデヴァーは茫然自失。ベストジーニストは巨人の確保。暴れる脳無を各ヒーローたちが抑えている。爆豪少年、無茶を……いや、轟少年もそうか。学生を戦場に出してしまった事実に胸が締め付けられるのを感じる。
「――それも、これまでだがな」
「…………君は確かに、OFAを失ったはずだ」
「ああ、私の中にはもうOFAはない」
AFOの言葉に頷き、トン、と自分の胸を叩く。あの日、AFOの顔に渾身の一撃を打ち込んだ時、たしかに私の中に残っていたOFAの残り火は消えた。全てを燃やし尽くして、消え去った。
死柄木弔に寄生したAFOから視線を外し周囲を再度見渡す。死柄木弔に向かって駆け寄るヴィラン連合の残党。それを追うジーニストの繊維。ジーニストはまだ余裕がありそうだが、このままでは敵の集結を許してしまう。短期決戦が望ましい、か。
急速に暗くなる空にニィ、と口元を歪ませ、AFOに視線を戻す。
「ならば何をしにここへ来た? 個性を失った君がここへ来て、どうなる? 何が出来る?」
「…………」
死柄木弔の口から漏れ出るAFOの言葉に肯定も否定も返さず、ゆっくりと歩みを進めていく。万が一にも逃してはいけない。その為の準備だったが、どうやら上手く行ったらしい。
ならば、これ以上
「何も出来やしない。どうやって体を癒やしたかは知らないが……力を失った君は、何も出来ずにただそこで」
「……ずっと、考えていたんだ」
――――ない。
「どう言えば、お前が嫌がるだろうか、と」
「……何を」
得意げな、あの胸糞の悪いニヤケ面を浮かべながら言葉を続けるAFOの言葉を遮り、かつて自身が言われた言葉を言った本人に向かって放つ。師匠の孫を守れなかった。敵に渡してしまった。その事実にあの時、どれほどの衝撃を覚えたことか。どれほど悔やんだか。
貴様には分からないだろう。例え言葉にしたところで、他者を思いやるという心を持たない貴様には決してこの感情は理解できないだろう。
「――なぁ、知ってるかい、AFO。この世界のどこかには、
だから、もうお前に向けて放つ言葉はない。この言葉は、私がただ自分の気持ちに折り合いをつけるための言葉だ。
「何をしにきたのか、と尋ねたな?」
全身に力を滾らせながら。ニヤケ面を歪めた宿敵を笑いながら。己を見る生徒に背を見せながら。
「ちゃぶ台をひっくり返しにきた」
私の言葉を合図に、私とAFOの戦いは幕を開けた。
【ちゃぶ台返し 完】
「初めてお前を見た時、彼はアレを連想したそうだ」
遠見の水晶を操り、戦場を遥か遠くから眺めながら、その青年は傍らに立つ白髪の執事にそう声をかけた。
日本人らしい顔立ちの青年だった。上質な和服に身を包んだ彼は、明らかにそれと分かるほどに洗練された執事とメイドを引き連れ、この国を代表する人物たちを傍らに控えさせながら彼らとともに戦いの顛末を眺めていた。
「それはそれは――光栄な話でございます」
「彼にとっての物差しがその宿敵だった、という事だろうが。この戦いを見るに中々評価されていたようだね。レベルやクラススキルもなく、只人がここまで強くなるとは……個性、というのは本当に素晴らしい可能性を持っている。もっとも――」
そう口にしながら、満足げに一つ頷いて青年、モモンガは視線を遠見の水晶に戻した。
体を崩壊させながら数多の個性を駆使して戦う死柄木弔と、全てを失った後に身に着けた技術でもって互角以上の勝負をするオールマイト。個性至上主義のこの世界ではなんとも皮肉な光景ではないか、と愉快げにモモンガは笑みを浮かべる。
「それでは総理。今回の騒動における死傷者は全てお約束どおりに。契約の履行はそれを確認してからでも構いません」
「は、はい…………」
「別にとって食いやしませんよ? 我々のエリア群に加入する上での決まりごとみたいなものです。そう遠くない将来国連を通して世界自体がAOG傘下になるでしょうし、少し早いか遅いかの違いですよ」
青ざめた表情を浮かべて書類にサインする首相にそう答え、上機嫌な表情を浮かべたままモモンガは席を立つ。
「セバス、後は任せる」
「かしこまりましてございます。ユリ、供を」
「かしこまりました。モモンガ様、僭越でありますが供を務めさせていただきます」
「ああ」
ユリの言葉に小さく頷いて、モモンガは自身と彼女に
では、なぜほとんどの状況が終わった段階で彼が動いたのか、というと――
「(先生、羨ましがるかなぁ。自慢できるよう活躍しないと)」
最大限職務をこなしながら個人的欲求も満たす。それがAOGエリア群代表、モモンガの日常である。
【到着した瞬間にオールマイトの右拳が死柄木を捕らえました 完】
『――――鉄華団』
舞台上に立つ女性の言葉に、ヒュッと口から空気が漏れる。
周りを囲む同業者たちの阿鼻叫喚の声。笑顔を浮かべているもの、嫉妬に視線を尖らせるもの、そして圧倒的に多い悲嘆にくれるもの達の喧々囂々とした騒ぎの中、彼は呆然としたまま壇上に立つ女性――ホシノ・ルリに視線を送り続けていた。
クイクイっと袖を引っ張られる感触。固まったままの表情でそちらに視線を送ると、長年の相棒がいつもの仏頂面をしたまま彼を見ている。
その事を理解した瞬間。現実感を伴った望外の喜びが、彼――オルガ・イツカを駆け巡った。
「ッッッシャアアアアアア!!!」
「オルガ、うるさい」
苦言を呈する相棒、三日月の言葉も耳に入らない程に喜びを表すオルガに、周囲の厳しい視線が向く。だが、そんな視線も今のオルガには全く気にならないものだった。
なにせ、ついに。
「これで……! これでイサリビにフォールドシステムが積み込める!!」
グッと拳を握りしめ、オルガは小さくそう叫んだ。
惑星間にも匹敵する距離があるエリア間では物のやり取りが非常に限られてしまう。これまでは防衛機構側の艦船が空いた荷室を使って細々と物のやり取りをしていたが、防衛機構側の必要な物資に限られてしまうため必然、物品は偏り、物流と呼ばれるような物が形成されることはなかった。
しかし不穏分子であった統合軍残党の勢力が”チキュウエリアで”摘発され弱まった事と、エリア間での物と人のやり取りを活発化させようという上層部の思惑が密接に絡まり、防衛機構側の審査を突破したある程度以上の自衛能力を持ち、ある程度以上の積載能力のある艦船がある民間業者にワープ技術の提供を、というお題目で会合が持たれる事となったのだ。
モクセイエリアとのあれこれでエリア間の物流に噛むことが出来た現状、次に鉄華団が目指すべき目標は大量に一度に物資を運べる積載量の有る移動手段の確保。それこそ新たな艦船の入手を、と考えて動いていたオルガにとって、この会合は渡りに船だった。なにせ移動時間が大幅に短縮できるということは、一度に運べなくても複数回の運輸が可能になるという事なのだから。
新しい艦船の購入資金、船員の育成を考えれば。既存の船の改修は必要であろうとも、それだけで済むと考えればどれほどありがたいことか。
まぁ、それは自分たちだけではなく他のライバル企業にとっても同じこと。故に十数社という限られた枠に、数百名は入りそうなこの会場が埋まり切るほどの企業が集まって会合に望んでいたのだ。
そして、自分たちはその限られた枠を、手に入れた。
飛躍の時。頭の中を過った言葉に、オルガが身を震わせた――その時。
ズガンッと頭を抜ける衝撃。「あーあ……」という三日月の声が耳に入る。
なんだ、いきなり、襲撃? まさか防衛機構の施設で?
ぐるぐると答えにならない考えが頭をよぎる中、膝をついたオルガに向かって
「やぁ、オルガの坊や」
その声が耳に入った瞬間、オルガの体は跳ね起きるように直立不動の体勢になった。ダラダラと流れる汗、冷や汗と呼ばれるそれを感じながら、声のした方角に体を向ける。
「自制も出来ずにはしゃぐほど嬉しかったようだな」
「ソソソソソソーフィヤ姐さん!!! ご、ご無沙汰してます!!!」
「ああ、元気そうでなによりだ。選ばれた企業は打ち合わせがあると、事前に伝えていた筈なんだが」
ソーフィヤは終始ご機嫌な様子だった。青を通り越して白くなったオルガを見ながらニコニコとした笑顔を浮かべて、彼女は――普段より2段階ほど低い声音で、オルガに向かって言葉を放つ。
「後で、じっくりと話そう。積もる話もあるしな」
「ひゃい」
笑顔とは本来攻撃的なものである。傍から見ていた三日月の頭を何故かそんな言葉が過り――まぁいいか。と三日月は引きずられるように去っていくオルガ達を見送って、おやつ代わりに持ってきたりんごをかじり始めた。
【精神的に止まるんじゃねぇぞされました 完】
緑谷出久:出典・僕のヒーローアカデミア
僕アカの主人公にしてオールマイトの後継者。ライバル
自分の発想だとAFOに嫌がらせできそうにないからAFOに言われたことをアレンジして返した。ラストは勿論ユナイテッド・ステイツ・オブ・スマッシュ。
僕アカの宿敵。ちゃぶ台ひっくり返された上に自分が言った言葉で煽り返された。仮にオールマイトに勝っても転移が封じられている上にどっかの魔王ロールの人と戦う事になったので実は詰んでた。
勢力拡大エンジョイ勢。こんな感じで本人は楽しみながら仕事してます。
ちなみに例の球に願った内容は『遡れる範囲で
セバス・チャン:出典・オーバーロード
基本善性な彼はこういう人間主体の世界でよく名代を努めてたり。
ユリ・アルファ:出典・オーバーロード
基本善性なのでこういう人間主体の(ry
オルガ・イツカ:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
(精神的に)止まるんじゃねぇぞ……した人
ソーフィヤ・イリーノスカヤ・パブロヴナ:出展・BLACK LAGOON
終始ニッコニコ。タイヨウ系エリア群の物流は彼女とホテルモスクワ(運輸業)が主体になって構築されます。
三日月・オーガス・ミクスタ・バーンスタイン:出典・機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ
最近出来た特産品・マリネラりんご(のうかりんお手製)がお気に入り。