うしろのうえはらさん   作:羽沢ちゅぐみ

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きっと青春が聞こえる


おひるやすみとうえはらさん

4月 2週目

 

「ふぅ......やっと終わった」

 

今日も嫌いな古典の授業が終わり待望の昼休み。本日のお昼はコンビニでサンドイッチとおにぎりを買ったので小説でも読みながら食す。

入学から1週間が過ぎたがすぐに学校には慣れた。特別仲の良い友達がいるわけでは無いがクラスにもそこそこ馴染めてはいる方だろう。

 

「ねねね、あかぎ!一緒にご飯食べよっ!」

 

あぁ、そういや特別俺に喋りかけてくる女子なら居た、ひまりだ。いつもなら幼馴染達と食堂で弁当買って食べてるのに今日は珍しく1人で教室にいる。

 

「いつものメンツで食べないのか?」

「今日は赤城と話したくてみんなとは別行動だよ〜、お弁当も作ってきたんだ〜」

 

そう言って取り出したのは女の子らしく黄色いひまわりのロゴがプリントされたプラスチックのお弁当箱。中は春巻きや卵焼きといった普通のメニューだ。

 

「なんだ、ハブられたのか?」

「ちーがーうー!みんながそんな酷いことするわけないもん!」

 

ぷんぷんと怒るひまりだが女の子だし黙ってれば可愛い顔をしてるので特に怖くはない。

 

「はいはい、そんな般若みたいな顔するな、可愛い顔が台無しだぞ」

 

8割冗談交じりな言葉を吐きながらひまりの頭を撫でる。ひまりは顔を赤くして照れながら、

 

「わ、わかればいいのよわかれば......」

 

なんて事を言ってる。チョロいやつだ。

 

「そんな事より私とお話しようよー!赤城いっつも無視するんだもん!」

「当たり前だ、授業中に後ろから構ってほしそうにシャーペンで背中をつんつんすんな。制服に穴が空いたらどうすんだ」

「そんなことで穴なんて空かないよ〜!」

 

ひまりは嫌いな授業の時や暇な時など、ことある事に俺の背中を軽く叩いたりつんつんしたりして遊んでいる。正直集中出来ないからやめてほしいが多分言っても聞かないんだろうな。

 

「そんなことよりもさっさと食べないと時間無くなっちまうぜ、あ、卵焼き貰うな」

「えっ、ちょっとぉ!?」

 

油断しているうちにひまりの卵焼きを1つ取って頬張る。若干甘過ぎるような気もするが味は普通に美味しい。

 

「ふむふむ、美味いなこれ」

「ちょっとー!勝手に取ったんだから私にも何かちょーだい!」

「ほれ」

 

俺は手に持ってた食べかけのサンドイッチを近づけるとなんの躊躇いもなくひまりはパクッとひと口食べた。しかもその一口が割とでかい。

 

「ん〜!美味しい〜!」

「そうかそうか、ならハンバーグ貰うな」

 

次はハンバーグを割り箸で一口サイズに切り取って食べる。ふむ、これまた柔らかくハンバーグにしてはふわふわとしていて美味しい。これは、

 

「豆腐ハンバーグ?」

「正解!ってそうじゃなくて勝手に取らないでぇー!」

「悪い悪い、もう取らないから」

 

箸を自分の机に置くと自分のサンドイッチを食べ進める。こうして食べ比べてみるとひまりの弁当の方が美味しく感じるな。

 

「そういえばさ、赤城は部活入らないの?」

 

もしゃもしゃと弁当のレタスを食べながらひまりは聞いてくる。せめて物を飲み込んでから話せよと思う。

 

「俺は入らねーよ、部活とか興味無いしめんどい」

「えー、入ってみたら楽しいかもしれないよ?」

「この高校の野球部が強けりゃ入ったかもしれないけどここ公立だからそこまで強くないんだよな、勝てるとこじゃねーとやらない」

「赤城野球やってたの?」

「ああ、小学生の時からやってた」

 

プロ野球選手に憧れて、というありふれた理由で中学までずっと頑張ってきた。ただ親に私立には行かせられないと言われたので俺の野球人生は短くも終了した。ちなみにキャッチャーで3番を打っていたので実力はそこそこあったと自負している。

 

「えー、入りなよー勿体ない」

「いいんだよ、それにお前だって入ってないじゃねーか」

「私は......だってほら、不器用だし運動苦手だから入れそうな所がないっていうか......」

「入ってみたら楽しーかもしれないぜ?」

「心がこもってないー!」

 

わーわーと騒がしい奴だ。リアクションがいちいちオーバーなので余計うるさく感じるが特に悪い気はしない。むしろもうちょっと弄りたくなる。しかし緩急というのは大事なのでたまにはいいことを言ってご機嫌をとるとしよう。

 

「まあ、自分が楽しいって思うことをやればいいんじゃないか?」

 

ポンッとひまりの頭に手を置いてそのまま撫でる。ちょうどいい位置に頭があるためかなり撫でやすい。みるみるうちにひまりの顔が真っ赤に染まっていき、そのまま顔を隠すようにうつ伏せになってしまった。

 

「そんなの反則だよ......」

 

何かひまりが呟いたような気がしたが俺の耳には届かなかった。ただひまりが照れ隠しで何か言ったのだろうと勝手に判断して俺はひまりの頭を撫でつつおにぎりを食べ続けた。

 

<<10分後>>

 

昼ごはんを食べ終えて一息つく。時間はまだもう15分くらい残っていてもうちょいゆっくりできそうだ。

後ろのひまりさんはというと弁当箱も片付けずに俺に頭を撫で続けられたまま、すやすやと寝息をたてて寝ている。

 

「仕方ないな......」

 

流石に弁当箱が落ちそうになっているので蓋をしてひまりのバッグの中にしまっておく。中身を見ると怒られそうなので特に何も見ていない。そもそも何が入ってるかなんて興味も無い。

無防備にも顔を横にして寝ているので寝顔が俺には丸見えだ。幸いにも窓際で窓は開けてないので廊下の外には見えていない。

こうして見ると本当に黙ってれば可愛いと思う。騒がしい奴だが寝顔を眺めているとその可愛さに少し胸が高鳴る。

 

(ほっぺたが饅頭みたいで柔らかそうだな)

 

試しに優しくつまんでみる。ぷにぷにとしていてとても柔らかい。そのまま揉んだり撫で回したりしてその柔らかいほっぺたで時間を潰す。よほど鈍いのか、単に昨夜寝ていないだけなのかわからないがひまりは起きる様子もなくむしろ気持ちよさそうに寝ている。

 

 

ひまりが目を覚ますとその傍には学校一顔が怖いと評判の数学の教師。

 

「上原ァ〜、最後に何か言うことは?」

「あぅ......お、おはようございます......?ふにゃあ!?」

 

教科書の硬い部分が頭にクリーンヒットしてひまりのお昼休みは終わりを告げた。




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