ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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シロッコSEED三話目。少し完成を焦りすぎたかもしれません。もしかしたら書き直す可能性もありますけど、一応は投稿しておこうと思います。


転生した私はコズミック・イラの立会人になろう。第2章

「艦長!」

 

 地球連合軍大尉、ムウ・ラ・フラガは本来着るべき軍服に着替えるまもなく、アークエンジェルの艦橋に飛び込んできて上官を求め声を張り上げる。

 

 民間船に偽装してヘリオポリスに入港していた彼の乗る船は本来、新造戦艦に配備されるモビルスーツのパイロットたちを運んでくるだけが任務であり、彼自身にしたところで船の護衛以外の任務は帯びていない。

 だから敵からの襲撃を受けること事態は予測された範囲内であったし、港に入った後に襲われるのは予定にはなくとも本来であれば有り得べきではない許されざる暴挙であったから想定しておくことそのものが難しい。

 

 

 ――が、今発生しているこの事態に限って言うなら予想できなかったのではなく、予測したくなかったと言う方が正しい窮状だったという方が正しかっただろう。

 

(まさか中立国であることを隠れ蓑に利用したことが裏目に出るとはねっ!)

 

「おお、フラガ大尉か! 良かった、無事だったのだな!」

「敵であるザフト艦の動きは!?」

「ここにくるまでにトレースした二隻の内、ナスカ級だけが警告を無視して接近し続けておる。・・・だが、巧妙にも領海内には一歩も入ってこないまま攻撃開始時刻だけを通達してきおった。

 “二十分待って連合艦を放逐しないなら、それを以てオーブと連合はザフトに対抗するため密約を結んだものと見なし、攻撃を開始する”・・・とな」

「・・・分かり易いブラフですね。ここまで条約を遵守して証拠を提示しておきながら、最後の部分だけは力押しの脅迫に出る必要性がない。明らかに本艦をヘリオポリス自身の手で追い出させにかかってきている・・・」

「同感だ。だが、既にヘリオポリスからは“一刻も早く出航してくれる”ように催促の雨が飛び交い続けている。まして二十分と明確な制限時間を指定されてしまったのではな・・・」

「パニックは、抑えようがありませんか・・・」

 

 無理もない、そう言わざるを得ない群集心理だとムウ個人は思うが、それでも悔しさに歯噛みせざるを得ないのもまた連合軍人として生きる彼の立場というものでもあった。

 

 誰だって自分はかわいいし、他人の都合に巻き込まれて死にたくはない。

 オーブは確かに表向きは中立を標榜しながら、裏では地球の一国家として自分たち連合の要請を受け入れて、こうして身分を偽り軍艦共々密入国させてくれている。

 

 ――とは言え、それらの事情はオーブの政治に深く関わっている一部要人たちのみが知る機密事項であって、ヘリオポリス全住民の内大半を占める民間人たちのほとんどには寝耳に水の出来事だったはず。驚き慌てて狼狽え騒がずに冷静な判断をと求める方が無理難題と言わざるを得ないのも確かな事実であったのだから・・・。

 

 

「とにかく、こうなってしまっては致し方がない。先手を打つ」

 

 民間貨物船の船長に偽装していた、アークエンジェルの艦長は作戦を決定した。

 

「敵の要請を受諾すると言って、二十分後に港を出た瞬間にローエングリン発砲。敵の意表を突き、その隙にフラガ大尉がナスカ級のエンジン部を奇襲して敵全体の足を止めて撤退に追い込ませる。

 数でも質でも敵より劣り、乗艦が乗り慣れていない新造艦とくれば、それしかあるまい」

「ですな・・・坊主共はどうされますか?」

「手が足りない以上は、出すしかない。――ただし、当艦の直援としてだ。対空機銃と副砲による援護射撃が受けられる中なら、OSが未完成なままでも弾除けぐらいには使えるはずだからな」

 

 艦長の言葉に、ムウはうなずく。

 搭載予定だった5機のモビルスーツ“G”と、それに搭乗予定だった若手のパイロットたち。

 本来なら軍事機密を預けられる関係上、彼らに安全な場所から戦争ゲームを見物させたやりつつ実戦経験を積ませてやりたいところであったが、現状においては望むべくもない贅沢でしかない以上、それら余裕を手にするためにも戦ってもらうより他道はない。

 

 冷酷なようだが、それが今の自分たちにしてやれる最大限彼らの安全を考慮した作戦案だったから・・・・・・。

 

「モビルスーツデッキ! 聞こえているな? 二十分後までに全ての機体を発進可能な状態にして待機させておくように。・・・なに?」

 

 艦長席に取り付けられていた受話器に手を伸ばし、命令を下した艦長の目が険しくなる。

 

「おい、それじゃ困るんだよ! なんとかならんのかなんとか! ・・・ええい、分かった! こちらで代理を探しておく! とにかくそちらは今使える分だけを確実に動かせる状態に持って行って待機させておいてくれ。分かったな!?」

 

 乱暴な手つきで受話器を置き、胸の前で腕組みしながら「まったく、なんと言うことだ・・・」と歯噛みしだす艦長。

 

 何が起きたのか気になったが、言い出しづらい空気を敏感に感じ取ったムウが沈黙していると、艦長の方が察してくれて口を開いた。

 

「上陸させてから艦に着くまでの間に、ヒヨッコ共の一人が暴徒化した民間人に襲われて怪我を負ったそうだ。利き腕にな。到底モビルスーツの操縦は不可能な状態だそうだ」

 

 思わず天を仰いでしまうムウ。踏んだり蹴ったり、泣きっ面に蜂とはこのことだろう。ただでさえ少ない持ち札が、戦う前にさらに減ってしまったというのだから彼でなくても絶望感に囚われそうになるのは致し方あるまい。

 

 艦長は指揮シートに座りながらブツブツ呟き何かを言っていたが、作戦時にかかる負担がより大きくなった責任重大なムウには聞いていてやる余裕がなく、どの様な戦術で攻めるべきかと頭の中でシミュレートするのに忙しい彼は聞き逃してしまっていた。

 

「・・・ラミアス大尉が工業カレッジの地下で移送中に保護した民間人が協力を申し出てきてくれているらしいのが、不幸中の幸いか・・・・・・。

 しかし一体誰なのだ? 民間人でありながらロボット工学の権威でもある教授の片腕的存在でもあるカレッジの学生というのは・・・」

 

 

 

 警告から二十分後。ヘリオポリス前方の宙域にて。

 

「時間であります」

 

 アデスが時計を確認してから声を発し、

 

「ヘリオポリスの港湾デッキが開き、奥に軍艦らしき艦影を視認いたしました」

 

 オペレーターが報告し、それに被さるようにして別の艦橋要員が大声で危機の到来を告げてくる。

 

「敵艦に高エネルギー反応感知! 攻撃してきます!」

「退避! 方向は右だ! 急げ!」

 

 アデスが指示し、艦橋のクルーたちは緊張しながらも落ち着いた調子で指示を実行して敵艦からの奇襲より母艦を守り抜いて見せた。

 

 だが、危機はそれだけでは終わらない。ここからが本番なのである。

 

「敵艦よりモビルアーマー部隊の出撃を確認しました! 急速に本艦へ向けて接近中!」

「全速後退! こちらも迎撃のためモビルスーツ隊を発進させろ!」

 

 敵艦の動きに呼応するように艦長が指示を出し、敵味方双方の動きを眺めながらシロッコは他人事のような口調で独りごちていた。

 

 

「ま、こんなものか」

 

 ―――と。

 

 

 

 

「よしっ! 先手を取った!」

 

 地球連合軍のモビルアーマー《メビウス・ゼロ》のコクピット内でムウ・ラ・フラガ大尉は快哉を上げていた。

 

 彼が艦長の立てた作戦を実行するに当たって取った手段は単純明快なものだった。

 未だ敵には存在しないはずの新兵器、高出力ビーム砲《ローエングリン》を撃ってみせることで驚かせ、自分が出撃する瞬間を敵に見つからないよう目眩ましとして用い、天頂方向からナスカ級へと回り込んで接近、奇襲をかけてエンジン部を直撃させて航行不能とし、敵全体を撤退に追い込むというものである。

 

「やはりヘリオポリスからナスカ級に至るまでの途上で、ローラシア級が伏せてありやがったか!」

 

 周囲に漂うデブリに紛れ込むことで巧妙に隠れ潜んでいた敵の随行艦ローラシア級だが、天頂方向から俯瞰してみれば一目瞭然。

 一度に二隻を同時に相手取りながら母艦を守るには手が足りず、とにかく敵艦隊旗艦のナスカ級を倒してしまうことを最優先事項に据えざるを得なかったアークエンジェルとしては今の自分たちが持ちうる最高戦力を切り札としての特攻役に当てる賭けに出たわけだが、どうやら自分たちは賭けに勝利したらしいと言うことをムウは確信していた。

 

(ナスカ級から出てこようとしているモビルスーツは本物だ! ダミーじゃない! 敵は本当にこちらの奇襲を受けて驚きながらも即時対応しようとしているということだ! これなら勝てる!)

 

 そう確信して、後退しながらも逃げようとはしていない敵ナスカ級との距離をさらに縮めて、もう少しで射程に捕らえられると言うとき。

 

 

 キュピィィィィッン!!!

 

 ―――ムウの脳裏を嫌な予感が走り抜けた。

 

「この感触・・・きさま! ラウ・ル・クルーゼか!?」

『久しぶりだな、ムウ・ラ・フラガ!」

 

 天頂方向からナスカ級に向かって逆落としをしようとしていた矢先、さらに自機の上方から小隕石の影に隠れていたモビルスーツが姿を現し、手に持つマシンガンを乱射して突っ込んできながらメビウス・ゼロのエンジン部近くを擦られてしまった!

 

「ちぃっ! しまった! 後ろを取られた上に、この速度では・・・っ」

『お前はいつでも私の邪魔をしてくれたな、ムウ・ラ・フラガ! もっとも、お前にとっては今の私こそが最大の邪魔者なのだろうがね!』

 

 ダダダッ! またしても乱射。しつこいほど執拗に、攻撃の邪魔をしてくるため撃ち続けてくる。

 背後を取られて、上も取られる。およそ飛行機乗りにとって最低最悪の位置関係に歯を食いしばって耐え忍びながら、それでもムウは進むのをやめない。

 今の自分の目標は宿敵を倒すことではなくて、敵旗艦の足を止めることだ。

 

 それさえ叶えば後は、アークエンジェルの圧倒的火力に晒させられるだけとなり、ナスカ級を守るためローラシア級は盾とならざるを得ないし、仮に旗艦を見捨てて単艦で向かってきたとしても練度の差を補いうるだけの性能差がアークエンジェルとローラシア級には存在している。

 モビルスーツ戦ほど兵士の能力が絶対的な差として現れにくい艦隊戦で勝負を決めるのがムウの目的だった。こんなところで足止めを食ってはいられない! 一刻も早くナスカ級に一撃を加えてやらなくては!!

 

 そう思い、ひた走るムウの執念が生きることを覚えた敵に勝ったのか、ムウの駆るメビウス・ゼロは火力の乏しい有線式ガンバレルだけでなく、装甲の厚い敵用に搭載されている『対装甲リニアガン』の射程にも敵艦を捉えることに成功した!

 

「よし! これでっ!!」

 

 叫んで、ロックオンした全ての武器の発射ボタンを押そうとしたまさにその瞬間。

 ――敵艦『ヴェサリウス』の全対空機銃が一斉にこちらへと向けられて、射的距離ギリギリの間合いでありながら正確無比な射撃精度によりしたたかなダメージを被らされてしまった。

 

 特に、メイン武装である『リニアガン』と、『ガンバレル』二基の損失は大きすぎた。残された火力だけではいくら装甲の薄いナスカ級だろうと落とすことは不可能に近い。

 

『ヴェサリウスを、やらせるわけにはいかんな!』

「!?」

 

 突如として聞こえてきた、聞き覚えのない男の声。

 相手の彼は“お肌の触れあい回線”を通じて、こう続けてくる。

 

『連合のフラガ大尉だな? 我々は貴官らが保有する5機のモビルスーツの内、4機までを手に入れた。

 そちらが攻撃をやめ、停戦を受け入れて母艦への帰投を受け入れない場合は、貴官らの母艦を全面破壊する用意がある。

 繰り返す、我々は貴官らが保有する5機のモビルスーツの内、4機までを――――』

 

『大尉! 今すぐ戻ってきてください! これは敵の罠です! 大尉とアークエンジェルとの距離を開いて通信も満足に行えなくさせるための!

 大尉が出撃されてから直ぐに背後から敵のパイロットスーツ隊による奇襲を受け、白兵戦で5機のGの内4機までもを奪われ、現在のアークエンジェルは裸城同然なんです! どうか敵からの停戦勧告を受け入れて即時撤退を! 大尉!』

「ちぃっ! わかったよ!!」

 

 信号弾と一緒に照明弾を放ち、撤退の補助を担わせながら逃げ帰っていくムウのメビウス・ゼロを黙って見逃してやり、クルーゼは友人といつも通りに会話を始める。

 

「これで良かったのかな? 我が最良の友にして、最高の参謀格殿?」

『十分だ。もとより最初の攻撃で全てを得ようなどと思っていたわけでもない。敵の数を減らすことができ、減った分は味方として吸収することができた。

 こちらの損害はジン小破一機のみ・・・十分すぎる戦果だ。今はこれで十分としておくべきだろう。あまり追い詰めすぎると連中は何をしでかすか分からんからな』

「確かに・・・『血のバレンタイン』の件もあることだしな。窮鼠猫を噛む挙に出させるのは時期尚早か」

『そう言うことだ。欲をかくと碌な目にあわんのは歴史が証明していることでもある。作戦目標は達成したのだ。今は大人しく帰還してきて次の作戦に備えてくれ。人質に使えそうな場所から遠ざかったら、もう一度出てもらうかもしれん』

「やれやれ、指揮官使いが荒い参謀殿だなまったく・・・フフフ」

 

 頼もしそうに笑顔を浮かべて後方を確認するクルーゼ。

 遠くから四つの光点を見いだして、潜入させていたイザークたちが無事に敵モビルスーツを出撃した直後に襲って奪い取るのに成功したのだという事実を確認した後、母艦へ帰投していく。

 

 

 この戦いでザフト軍が負った損害は、戦艦というものを甘く見たパイロットの一人、オロールのジンが敵艦に接近しすぎて機銃で撃たれ被弾。小破一機のみなのに対して連合側は、出撃させていた4機のG全てを敵に奪われ、戦闘のどさくさの中で艦長およびクルーの一部までもが重軽傷を負うという悲惨なものとなってしまっていた。

 

 シロッコの立てた作戦は、母艦を囮にして敵主力を誘い込み、実は一機だけを除いて全てのジンを移し終えていたローラシア級によって敵母艦を奇襲して、迎撃に出てきた不慣れなパイロットたちから機体を強奪してくるというものであり、母艦さえ落とせばいいと信じたムウとは丁度対極にある作戦内容だったのである。

 

 

 こうして、無意味な陽動作戦を行わされてしまったアークエンジェルは大きく数を減らし、乗員の定数割れを引き起こし、一部を偶然収容することになった避難民の少年少女たちに委ねざるを得なくなってしまったのだった。

 

 度重なる条約無視と条約違反の数々に頭を悩まされながら、それでもアークエンジェルは地球へ向けての航海に乗り出す。

 一刻も早く船と生き残ったGを計画の発案者であるハルバートン提督へ届けるために。

 

 

 大天使に名を持つ白い船の孤独な航海は、まだ始まったばかりであった―――――。

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