ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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前回が半端な形で終わってしまったために大急ぎで書かせて頂きました。
補足回みたいな扱いになっております。


転生した私はコズミック・イラの立会人になろう。第3章

 ――カタカタ、カタカタ。

 キラ・ヤマトは連合が開発した新兵器モビルスーツ“G”の一機、《ストライク》のコクピットシートに座ってキーボードを高速で叩いていた。

 

「・・・ヤリブレーションを取りつつゼロ・モーメント・ポイントおよびCPGを再設定・・・ちっ、これじゃダメか。なら疑似皮質の分子イオンポンプに制御モジュールを直結させて・・・」

 

 独り言をつぶやきながら未完成だったOSを急速に形にしていく手腕に舌を巻かされながらマリュー・ラミアスは、忸怩たる念いに柳眉を曇らせていた。

 それはコーディネーターとナチュラルとの能力差に対するコンプレックスであり、民間人を戦争に巻き込んでしまった自分たち軍人の無能さを痛感するものであり、オーブが中立国でコーディネーターとナチュラルが平和裏に共存している国だと承知しているのに“敵国人だから”という偏見を完全に拭い去ることが出来ない自分自身の偏狭さに自己嫌悪したが故でもあった。

 

「・・・悪いわね、ここまでさせてしまって・・・」

「いえ・・・。僕としても助けてもらった恩はお返ししたいですから・・・」

 

 そう言って、顔を上げることなく言葉だけで返してくるキラ・ヤマト少年。その声は固く、決して彼の本意から来る行動ではないことを物語っていた。

 

「それに、僕としては一刻も早くあなた達にはヘリオポリスから出て行ってほしいですし、戦うなら巻き込んでほしくありません。

 そのためにアークエンジェルが武器を必要としているというなら、これくらいのことは手伝います。・・・早く終わらせて帰らせてほしいですから・・・」

「・・・・・・」

 

 マリューは答えず、手に持った飲み物に口をつけて黙り込む。

 民間人である彼には知らされていないが、今では艦長代行となっている彼女は知っていた。

 『先の戦闘で甚大な人的被害を被ったアークエンジェルに、戦える民間人を手放せる余裕は存在していない』という事実をだ・・・・・・。

 

 

 ――キラがマリューと合流してしまったのは、完全な偶然によるものだった。

 カレッジに到着して教授のラボに着いたのとほぼ同時に発せられた非常事態警報。

 それを耳にしたらしい、部屋の隅っこの方にいた『教授のお客さん』を自称していた金髪の少年(?)が「やはり、お父様は・・・!」とつぶやいて地下へと向かい走り出してしまったため、一緒に避難させようと後を追ってきたのだが、そこで運悪くマリューたちに退去を迫る暴徒化した群衆と、それに追われる“G”移送班と鉢合わせしてしまい、まとめて殺されないためには合流してアークエンジェルに逃げ込むしかなくなってしまったのである。

 

 

 その後、ヘリオポリスから脱出するための戦闘が始まり、パイロットたちが間に合った4機のGと、フラガ大尉の部下であるモビルアーマー部隊数機とが連携して敵一機を小破にまで追い込むが、代わりとして艦がダメージを負ったとき飛び散った破片に脇腹を貫かれた艦長が負傷し、残りの正規クルーのほとんどまでもが何らかの形と理由で負傷し戦闘続行不可能な容体に追い込まれてしまっていた。

 

 彼女たちのあずかり知らぬ事ではあったが、これは運命とも呼ぶべき世界の悪意による作為的な損耗によるものだった。

 

 『歴史の修正力』である。

 

 シロッコによってもたらされた激変に正史が細やかな抵抗をおこなった結果として、辻褄合わせのため艦長たちが犠牲の羊に供されてしまったのだ。

 

 これによりアークエンジェルは、多数の避難民を抱え込む必要性はなくなった代わりとして、多数の負傷兵を抱え込む羽目になり、ごく少数ながらも脱出時に暴徒たちから救助した民間人の少年少女たち数名を回収して処女航海に出航せざるを得ない窮状に追い込まれてしまったのだった。

 

「――そう言えば、この船って今どこに向かっているんですか?」

「・・・ああ、そう言えば伝えてなかったわね」

 

 思い出したように飲み物から口を離し、ラミアス大尉は先ほど副長たちと交わしたちょっとした口論を思い出しながら言葉を続ける。

 

「ユーラシア連邦が保有する軍事衛星“アルテミス”・・・“アルテミスの傘”よ。一応は同盟関係にある国が持つ拠点だから、補給は受けられるだろうってことでね。

 そこまで行き着けばひとまずは安心できるはずなんだけど、それを敵が知らないはずがない。必ず妨害するため動き出すと思われるの。だからその時、船を守れる力として“ストライク”はどうしても必要不可欠なのよ・・・」

「・・・・・・」

 

 キラは答えない。

 彼には、彼女の言ってることが正しいのか間違ってるのか判断して行動できるだけの自意識を未だ持ち合わせることが出来ていなかったから・・・・・・・。

 

 

 

 

 

「クルーゼ隊長へ、本国からであります」

 

 ブリッジクルーの一人が慇懃無礼な口調でプラント本国から届けられたばかりの命令書を差し出し下がっていった後、クルーゼは一瞥した命令書を私とアデスにも見るように無言で差し出してきた。

 

「評議会からの出頭命令ですか!? アレをここまで追い詰めて首を絞めている最中だというのに!?」

「中立国が所有するコロニー、ヘリオポリスに軍艦が接近しただけでも大事だからな。議会は今頃てんやわんやとなっているから沈静化させたい。そんなところだろう」

 

 クルーゼが至極冷静な口調で論評し、私もその意見に同意する。

 地球と宇宙とが争い合っている戦争の直中にあって、双方に利益をもたらすからと中立を尊重してもらっていた国のコロニーが、地球軍の新型兵器製造に関与していたことが露見したのだから、対オーブ政策を担当していた議会の一部は盛大に首が飛んでいることだろうし、市民たちとて今度ばかりは黙って公式発表を受け入れるわけにもいくまい。

 

 ロゴスの実在をテレビ中継で証明されたときの戯画を描かされるのは、誰だろうと真っ平ご免だからな。嫌でも現場責任者からの報告は聞いておいて証言してほしいに決まっているのだ。

 

 それに――――

 

 

「おそらくはその推測で間違っていまい。査問会に出席するようにとも、添えられていることだしな」

「査問会?」

「プラント憲章にもザフト軍基本法にも規定されていない、超法規的措置という奴だ。なんらの法的根拠も持たない恣意的な代物だよ。

 要するに命令を無視して独断専行した我々に釘を刺しておきたい。『今回だけは特別だからな?』と、秘密裁判ごっこでリンチにかけて上下関係をハッキリさせておく必要を感じた。そう言うことだよ、おそらくだがな?」

「・・・・・・」

 

 またもや呆れ果てたと言わんばかりのアデス艦長。

 まぁ、今回は気持ちは分かるが本国の言い分も分からなくはないものだからな。流石に今回のはやりすぎた。

 

 ここまでやった連中を、『結果良ければ』で不問に付してしまった場合、今後の大局に差し障りがある・・・そう考えるのは至極まっとうで正常な判断でしかない。避難する謂われは特にはないさ。

 

「無論、現場に立つ身としては迷惑でしかない、と言う艦長の気持ちも分かるがね?」

 

 そう言って、相手の肩をポンポンと叩いて労ってやりながら、私はクルーゼの隣へと向かう。

 

「さて、どうするクルーゼ? 如何に恣意的なものとはいえ、国防委員長が君に出頭命令を出すこと自体は立派に法的根拠を持つものである以上、無視するわけにはいかないだろうが・・・」

「まぁ、仕方がないさ。アレはガモフを残して引き続き追わせよう。・・・頼めるか? シロッコ」

「請け負わせてもらおう。これでも逃げる獲物を追いかけ回すのは得意なのでね」

 

 私は安請け合いして簡単に引き受けると、アデス艦長が懸念を示す。

 

「しかし、モビルスーツはどうされますか? 二艦に別けて追いかけるのは戦力分散の愚を犯すだけで、兵法の常道からは外れてしまいます。『兵力は集中して運用すべし』は戦術の基本中の基本でありますが・・・」

「問題ない。私の方は敵から鹵獲した分と、自分用にチューンしたジン一機だけがあれば十分だ。それ以外は持って帰ってくれて構わない」

「アレを投入されると!?」

「他にアレ以上の性能を持つ機体がない状況ではな」

 

 ローラシア級が搭載可能なモビルスーツ数の上限は5機だけなのだ。限られたペイロードを有効活用するためには、同じ数でも性能的にジンより勝るガンダムたちを選ぶのは当然の選択でしかない。

 

「データは先ほど私自身が取り終えた。もう実機が残っていようといるまいと大した影響はない。それよりかは実戦で使用させてデータ検証に役だってもらった方が都合がいい。

 ――宙域図を出してくれ! ガモフにも索敵範囲を広げるよう打電だ。直ぐに私も行くと申し添えた上でな」

「はっ!」

 

 先ほどの停戦に紛れて、敵は行方を眩ませたつもりになっているが、実際には逃げられるところも隠れられる条件に合った場所も限られている。そう易々と戦艦サイズの獲物が隠れられるポイントはない。

 厳密には広大な宇宙には無数にそう言う場所が存在しているが、航路図から外れてしまう恐れが発生してしまう。絶対に月へと帰還しなければならない船が取り得るギャンブルとしてはリスクが大きすぎる選択肢だ。

 本当の意味で追い詰められているならまだしも、そこまでは追い詰めすぎていない以上、連中は可能な限り安全策をとりたいはず。

 

 ならば妥当な線としてアルテミスへと逃げ込むのは間違っているとまでは言えないが・・・状況が状況だからな。

 ワッケイン指令と同様に頭が固いことで知られるナタル・バジルール少尉では、自分たちがもたらしてしまった状況の変化に柔軟に対処して考え方を改めることなど出来はすまいよ。

 

「奴らは我々が退くのに合わせて、既にこの宙域を離脱した可能性もありますが・・・」

「いや、それはないな。この近くのどこかでジッと息を殺して退いてくれるのを待っているのだろう」

 

 アデスが問い、クルーゼが答える。

 

「・・・網を張るかな・・・」

「網、でありますか?」

「ヴェサリウスは本国への帰路につくついでとして先行し、ここで速度を緩めて敵艦を待つ。シロッコにはガモフで軌道面交差のコースを索敵を密にしながら追尾してもらって、前と後ろから敵艦を討つ。

 本国も帰りがてらに土産を持ってくることぐらい許してもらっても罰は当たるまいと私は思うが、如何かなシロッコ?」

「悪くはない。――が、反対だ」

「シロッコ・・・?」

 

 クルーゼの不審げな響き。彼ほどの知謀の持ち主であっても、やはり今の段階ではGの登場によりもたらされた状況の変化を完全に理解するまでには至らないか。

 

「先の攻撃が始まるまでなら、その作戦が最善手だったと私も思う。だが、状況が変わった。

 敵は自らが、この戦争の趨勢を左右する力を有している事実を敵味方内外に知らしめてしまった。“あのクルーゼ隊を相手に一艦で生き延びた船”だからな。誰しも喉から手が出るほど欲しくなる存在に駆け上ってしまったのだよ。

 それこそ、『軍事同盟』などという損得勘定だけで結ばれた偽りの握手など振り払って、条約違反を犯してでも手に入れたいと願う禁断の箱にな・・・?」

「・・・ふ、ふふふ・・・君はつくづく性格が悪い男だな、シロッコ。敵の市民たちを利用した次は、敵の味方さえも利用して敵を噛みつきあわせる腹づもりか?」

「当然だ。その為にこそ先ほどは無理をせずに君を退かせた。最終的な勝利者になりたいだけの私にとって、あの場で無理をする必要性は微塵も感じられなかったからな」

 

 

「のんびり待つとしよう。読み通りに敵の交渉が決裂して分裂するのを。刻の運がこちらに傾く瞬間を焦ることなくゆっくりと、な・・・」

 

つづく

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