ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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先日お伝えした『クロスボーン・バンガード』×『ガンダムW』のコラボ作品です。
思い描くばっかりで書いたことがない作品でしたので、書き直す可能性もありますから一応、話数は書かないでおきますね。良ければお楽しみくださいませ。

注:故あってタイトル変更。詳しくはスーファミソフト『フォーミュラ戦記』のタイトルを参照してください。


ガンダムW戦記~クロスボーン・バンガードの旗のもとに~

 地球から巣立った人類は宇宙コロニーでの生活に新たな希望を求めていた。

 しかし、地球圏統一連合は正義と平和の名の下に圧倒的な軍事力を持って欠くコロニーを制圧していった。

 

 アフターコロニー・一九五年。

 作戦名『オペレーション・メテオ』

 

 連合に反目する一部のコロニー居住者たちは、流星に偽装した新兵器を地球に送り込む行動に出た。

 だが、この作戦は既に連合本部と、“もう一つの勢力”に察知されていたのである――。

 

 

『――こちら、L5コロニー群監視衛星4号。コロニーの一つからシャトルの発射を確認』

『――同じく、L4コロニーからもシャトルが発射された。大きさから見てモビルスーツ一機を搭載していると思われる』

『――L3コロニーも同様であります。巧妙に偽装されたコースを取っていますが、最終目的地は地球で間違いありません』

『――L2コロニーからも今、発射を確認しました。どのシャトルの形状にも誤差はありますが、基本コンセプトは同じものを採用していると思われます』

『――L1コロニー群からも射出されました。シャトルのように見えますが、偽装である可能性大。コンピューターに照合させたところ85%の確率で可変MSであると思われます』

 

 

「ふん・・・五つの異なるコロニーから、ほぼ同時に無許可でシャトルが射出され、その全てが同じく地球へ向けて発射された物だった・・・。

 これを各個に独立した反乱勢力が独自に行った偶然の一致だったと主張して信じる者がいるとしたら、腐りきった連合軍上層部の愚か者どもと、自らの意思で考えることを放棄したガンダムパイロットたちぐらいなものだろうな。

 ・・・少尉! マイッツァー閣下とクシュリナーダ特佐にご報告しろ! 大至急だ!」

「はっ! 承知しました!」

「モーリス・オバリー少尉。今更言うまでもないことだが、“今度は”独断専行を許すつもりはない。2度までも同じヘマをやらかすような者に“第二の人生を生きる権利”など神が与えても私が許さん。分かるな?」

「は、はい。その節は申し訳ありませんでした。シェフィールド大尉・・・」

「『焔の虎』の部下に、二度までもクロスボーン・バンガードの存在を許可なく世に出すような愚か者の居場所は無いとしれ。

 我々にとって新たな新天地たる、この世界での生と死は神が与えたもうた魂の修練場であることを忘れるな!」

「ははぁっ! 必ずや! 名誉あるコスモ貴族の名にかけて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼らが『新たな戦いの火種』が地球に放たれたのを観測したのと同じ頃。

 宇宙は今日も静かであり、平和そのものだった。

 

 地球圏統一連合が宇宙コロニーを掌握して二十年。小規模な反乱こそあったものの、おおよそにおいて平穏が保たれていた連合統治下の地球において軍は給料をもらって民間人を弾圧するためだけに存在するゴミ掃除のための組織と成り果ててしまっていた。

 

 そのような体たらくでは、流星に偽装して地球に落下する五つの物体を感知しても『隕石の落下、もしくは老朽化した大昔の人工衛星の破片か何かが落下したものと思われる』としか自分たちの眼下にいる守るべき立場の者たちへ報告してこなくなりもする。

 

 大気圏上層部を移動中だった極超音速輸送機にその報告がもたらされたとき、思わず“彼ら”は声をあげて笑ってしまった。

 

 普段は連合正規軍の無能怠惰に厳しい嫌悪の視線を向けている彼らをしてさえ、この報告には同情混じりに苦笑する以外の感情表現は思いつかなかったから。

 

「ゼクス特尉、上は隕石落下と報告しています」

「フッ・・・監視衛星の目は節穴だな」

 

 複数の隕石、もしくは衛星が同時に地球への落下を観測される。

 しかも、落下の際には大気圏突入のウェーブコースを通って・・・・・・まともな知識と正常な判断力をもっている者なら、素人でも『不満分子からの攻撃である可能性の方が高い』と判断するであろう、天文学的確率で起きる“かもしれない”奇跡的な現象を前にして『自然現象』と報告してくる、地球圏全体を武力によって支配・統治している地球圏統一連合から士官の地位を与えられた若手士官。

 

 そのような人物が、いざ地球に危機が迫ったときには命を賭して地球へと正確な情報を送らなければならない義務を負った地球軌道上の監視衛星で指揮を執らされている。

 

 これ程までに残忍で非人道的な人事がおこなわれていたというショッキングな事実を目にして、同情しない者は人として大切な感情が欠けていると言わざるをえない。可愛そうな監視衛星の指揮官くんには侮蔑ではなく哀れみを送るべきなのだ。それ以外の責任はすべて、このような残酷すぎる行為を黙認している責任者たちに取らせさえすればそれで良いのだから・・・。

 

「碌な想定敵国も存在しない状況で際限なく肥大化させ続けた軍組織内部に汚染されてしまえば、こうもなろうというものですか・・・」

「そう言うことだ」

 

 憐憫と侮蔑が半々にこもった微妙な声で副操縦士のブルーノ特士が評した感想に、彼と操縦士であるオットー特尉の上官『ライトニング・バロン』の異名を持ち、銀色のマスクで顔のほとんどを覆い隠したOZの上級特尉ゼクス・マーキスは重々しい声で短い返事を返してやる。

 

 もしかしたら以前までの自分たちなら、彼らに侮蔑の感情を抱いたかもしれない。だが、今の彼らはそうは思わない。

 今まで一色だけだった連合軍内部に存在する別組織《スペシャルズ》のOZは、新たな別方向からのアプローチに基づく教育が追加されたことにより組織を一新。

 今までより更に1ランク進んだ精神性を手にしているとの自負と自信が、彼らに選ばれし者としての寛容性を付与させていたからだ。今の彼らは、己に対する自信と自負は、他者を嫌悪し見下す心と同じでないことを理解していた。

 

 

「やはり、OZ本部の情報通り?」

「うむ・・・コロニーのM作戦に間違いないだろう。この輸送機で補足できるのは幾つだ?」

 

 輸送機の副操縦席に就いているOZの制服を着た若い兵士が、軽やかな声で訊いてくるのに答えてやりながら

 

「ユーラシア東部に落下すると思われる、ひとつだけです」

「ひとつでも充分とするか。前線の雇われ軍人は功を焦るものではない」

「ずいぶんと表向きな発言をなさいますな・・・」

 

 ゼクスの声にかすかな自嘲の色を感じ取ったブルーノ副操縦士のブルーノ特士が、眉をひそめる。

 OZの総帥から全幅の信頼を寄せられ、『志を同じくする同士』より彼専用のカスタム機を送らせて欲しいとの打診がくるほど高評価を得ている人物が言う台詞とは到底思えない。

 

 当のゼクスはフッと自嘲気味の笑いを口元に浮かべると、操縦席に座るオットー特尉に機のコースを変えるよう指示してから、ブルーノにはこう答えてやるだけだった。

 

「言っただろう? 私は軍人なのだよ」

 

 

 

「各部異常なし。七分で作戦を開始する」

 

 同じ頃、コロニーから発射されたシャトルのひとつは、地球に再突入しようとしていた。

 

「・・・! 民間シャトル!?」

 

 そして、作戦遂行の邪魔になる“障害物”を発見する・・・。

 

「目標相対速度0154光。オートロックオン、降下障害物を撃ち落とす」

 

 機首を開き、ビーム砲を露出させ、民間シャトルに狙いを定めさせるパイロットの声は若く、まだ少年と思しきものだったが奇妙に感情の起伏が乏しく、強い気負いが感じられた。

 

「! 地球の攻撃輸送機・・・?」 

 

 発砲のためトリガーを押そうとした寸前。突如として警告音が鳴り響き、機械のような少年パイロットにゼクスたちが乗る超音速ジェット機の存在と接近を報告した。

 

「連合に嗅ぎつけられている・・・当然か」

 

 

 

 

「補足しました。モニターに映します」

 

 そして、敵に発見される位置まで接近してきている以上は、近づいてきていた側もまた敵の存在を知覚していて当然である。

 

「やはり、そうか。あれが新たな戦を産み落とす『戦争の卵』と言う奴だ」

 

 ゼクスはモニターを指さす。

 

「目標の進路嬢に民間シャトルがいます」

「民間シャトルが前にいる以上、減速するしかあるまい。シャトルを撃墜して加速する可能性もないもないが・・・我々の見ている前でそんな派手な真似はできんと、相手の良識を信じたいところだな。あちらさんはアレでも隠密行動のつもりらしいからな」

 

 冷静に敵を分析する仮面の上官は、表情こそマスクに遮られてわからないものの、言うほど戦争好きな軍人のようには見えない。

 現に今も、民間シャトルとしては大きすぎて極秘任務を帯びてきている素性を、まるで隠せていない敵機パイロットの良識に信を置いて民間人を自分たちとの戦闘に巻き込む意思はないだろうと高をくくった判断をしてしまっている。

 

 本質的に育ちが良く、人が良いのだろう。他人を否定する戦争よりかは、互いに互いを尊重し合っておこなう決闘の方が相性が良さそうな貴公子的な長所を持つ人物だとブルーノたちは思っていたが、口に出したことはない。

 軍人としても文句なく優秀で尊敬に値する上官に対して不敬罪に類すべき失言だと自重しているからである。

 

 

 だが、この敵はゼクスの想定している者とは些か趣が異なっていた。

 

「偽装を破棄して加速すれば余裕で逃げ切れる・・・!? 任務変更、作戦開始前に連合の輸送機を撃墜しろだと・・・? そうか。追尾してくる敵はOZのモビルスーツ輸送機か。ならば――」

 

 少年はフットペダルを踏み込み、機体を加速させながら邪魔な擬装用の外装をパージして、機体を軽くした後、成層圏に到達した直後から攻撃が可能になるよう調整を始める。

 

 既に少年からは、任務変更前の最優先事項であった『作戦遂行』と、そのための障害物でしかなかった民間シャトルのことは頭から消えてなくなっている。与えられた任務を遂行するためなら自分の命も他人の命も捨てさせられると強い自己暗示のかかった少年パイロットには、その自己催眠故の強さと弱さが混同しており自我を殺そうと意識する余り物事の理非を判断する能力が著しく低下していたのである。

 

 少なくとも、今このとき地球に降りる前のヒイロ・ユイ少年には、『その程度の精神性』しか持ち合わせていない。『機械のように動く少年テロリストパイロット』ではなく、『機械になりたがっている未熟な心優しい少年』その程度の存在に過ぎなかったのである。

 

 

「!? カプセルがコースを変更しました!」

「大気圏突入中にか!? 敵は自殺願望でもあるのか!?」

「燃え尽きてしまえば秘密も守り切れる・・・まぁ、そんなところでしょう」

「いえ、カプセルはさらに水平方向に移動した後、当機に機首を向け直そうとしています。戦うつもりなのでは?」

「馬鹿な! あの高温に耐えられるわけがない!」

 

 オットーはブルーノに、モニターをもう一度確認するよう声を出そうとしたが、それは背後から届いた上官の声に遮られる。

 

「いや、そうではない。どうやら我々の敵はかなり高い技術を持っているようだ。

 ――リーオーは使えるか?」

「はい。しかし、モビルスーツであの戦闘機と戦うおつもりなのですか?

 でしたら、陸戦用のリーオーよりも、空戦用のエアリーズの方がよろしいのでは?」

「私のリーオーは充分速いさ。それに、私に挑んでくる相手を無碍にはできんだろう」

 

 ライトニング・バロンの口からそう言われて、返す言葉を持つ軍人などOZ広しと言えどもそうはいない。オットーは思わず手を額に当てて敬礼していた。

 

「では、エアリーズの準備が出来次第応援に向かわせま―――あ、少々お待ちくださいゼクス特尉。今し方、友軍機から特尉当ての電文を受領しました」

「電文? 今時ずいぶんと古典的な連絡手段を使う味方がいたものだな・・・誰からだ? それから電文の内容は?」

 

 マスクに隠されていない顔の下半分を思い切り不審さで彩らせて、ゼクスから訝しげに問いかけられたオットーだったが、むしろ彼は嬉しそうな表情と声で答えを返してくる。

 その表情はまるで、自分が忠誠を誓った主君を褒められて嬉しさと同時に誇らしさも感じている忠臣のようであった。

 

「『同士よ、ここは貴公の戦場だ。誰にも邪魔をさせはしない。後顧の憂いなく思う存分戦われよ』クロスボーン・バンガードのドレル・ロナ大尉からであります」

「彼、か・・・・・・」

 

 先日出会ったばかりで意気投合した若者の端正な顔を思いだし、ゼクスのこわばり欠けた顔は自然と柔らかいものへと変わる。

 大方、この近辺の海域を巡回していた連合の船が手柄ほしさに横入りしようとしているのを邪魔してくれているのだろう。

 彼の技量を持ってすれば手柄を横取りすることも、共同作戦ということにしてスペシャルズ全体の軍功にしてしまった後であらためて功績を独占してしまうことも可能だというのに・・・。

 

 お人好しと言えばそれまでだが、少なくともゼクス個人の心情としては、彼のような若者を嫌いになることは不可能だと高く評価し直していた。

 

 

「戦友の期待に応えられないのでは、男が廃ってしまいそうだな。

 それに、手柄を焦る軍隊によい未来はないが、傲慢は綻びを生むだけだと知る軍隊はよい未来を作れる可能性を持っている。嫌いではないな、そう言う気質は・・・」

 

 

 ――こうして、OZとコロニー連合のガンダムたちによる戦いの幕が切って落とされる。

 前世を持つ、別世界からの参戦者たちによる介入が生み出すのは更なる戦火か? それとも新たなる世界と時代を生み出すための不死鳥か?

 

 全ては歴史の“IF”だけが知っている未知の未来の出来事である・・・・・・。

 

 

 

今作のオリジナル設定紹介

 

『ロナ家』

 「ガダムF91」の世界から生まれ変わった転生者たちを中心に創設された集団。

 コスモ貴族主義の信望者だけが選別されて転生してきているため、桁外れに意識が高い。

 ロームフェラ財団を形成している軍需産業の一つで、伝統的貴族の家名を買収したばかりに新参貴族勢力。

 新規参入して間がないにも関わらず、連合とロームフェラ財団しか保有していないはずのモビルスーツ開発技術を有しているため特例として侯爵位を与えられている。

 既存のものとは異なる大系で造られた彼らの機体は、OZの物とも連合の物ともコンセプトからして別物であるため両組織ともに彼らを取り込もうと躍起になっている。

 が、どちらの勢力も興味があるのは彼らの技術力だけであり、全てを絞り尽くした後には恭順させるか、さもなくば粛正してしまうつもりでいるのは同じ。

 それらを承知しているロナ家総帥マイッツァーは、二つの組織の間で綱渡り外交をおこないながら、その実握手するに値する友人はトレーズただ一人と心に決めている。

 表向きはロームフェラ財団の一家であり、保有する私設軍隊『クロスボーン・バンガード』も《スペシャルズ》の一部隊として登録されているが、規模も権限も完全に同格な別組織であり同盟相手でもある。

 

 アニメ版を見ても分かるとおり、コクピット周りからしても宇宙世紀のモビルスーツとアフターコロニーの機体は開発技術が大きく異なっていたため、AC世界の技術でデッサ・タイプの機体を製造するためのテストベース機として『ゾンド・ゲー』を1号機として開発しており、連合とOZの双方に供与している。

 

 が、既にベルガタイプの機体まで開発が始まっているため、ゾンド・ゲーは型遅れ品の廃品処理として送られていることに気づかない辺りに、リーオーをいつまでも使い続けているアフターコロニー世界の支配者層が心理的に停滞していることが伺える。


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