ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

20 / 91
『戦記好きがキラ・ヤマトに』を始めとして複数の作品が思いついてはいるのですが、一度に沢山思いつきすぎてしまいましたので一先ずは思いついてた順番に書かせていただきました。クロボンWの2話目です。

正確には1話と併せて完全版と言う方が正しいです。本来ならトレーズがオペラ見てるシーンまで描く予定でしたから。
とは言えそのシーンだけ追加するわけにもいきませんので大幅加筆してあります。そのせいで逆にリアリティが損なわれたかもしれませんが、頭いっぱいいっぱいの状況ですので今だけはどうかご勘弁を…。


ガンダムW戦記~クロスボーン・バンガードの旗のもとに~2章(修正前)

「OZのゼクス・マーキス上級特尉が反乱分子を鎮圧する際、敵一機を落とすためにモビルスーツ三機を失い、2人の部下を戦死させられた」

 

 ・・・その報告が連合所属の空母から届けられたとき騒ぎ立てたのは、連合の古参将校たち“ではなく”、OZの隊員たちだったというのは皮肉と言いしかない。

 特に、入隊して日が浅い若く鋭気に満ちた若手士官たちの間でこの噂は瞬く間に拡散していった。

 

 若くして栄達し、正規軍よりも二階級上の待遇を受けられる身になった彼らにとって同僚と呼ばれる存在は、生死を共にする戦友としてより深刻な競争者としての色彩が強くならざるをえない。

 これは実力さえあれば年齢も出自にもこだわらないとしたOZの実力主義が持つ悪意的な側面であり、人が人で在り続ける限り捨てることの叶わない業が成させることでもある。

 

 若くして上級特尉の地位を与えられ、総帥自ら軍務の最中であろうとマスクを外さなくて良いことを明言された特別待遇を受けている存在ゼクス・マーキス。

 

 彼がいなくなれば、その後継者に指名されるのは自分かもしれない・・・そう言う希望を抱いてしまう程度には彼らは自らの技量と才幹に自信を有しており、根拠となる実績も充分に持っているつもりであったが、その心理は同時にベテランたちから見て『経験の浅い怖い物知らずな猟犬の群れが見境なく猛虎に噛みついている光景』を幻視させ、これからの新人育成を思い煩い溜息をつかせるに充分すぎる醜態をさらす結果にも直結していた。

 

 新興勢力クロスボーン・バンガードが加わったことにより、コスモクルス教を軸とした精神鍛錬の教えを教練カリキュラムに追加して尚、この手の悪感情を永久追放することは叶わないのが人の造る社会の弊害というものであるだろう。

 

 『選ばれし高貴なる者には、高貴であるが故に凡俗以上に身を律して規範を示さなければならない』と言うのがクロスボーンの掲げる理念であるが、言うは易だ。実行するのは容易ではない。

 

 

 ――だが、少なくとも“この男”は、ごく自然にそれらを実行できていた。

 

「モビルスーツを、三機も撃ち落とされたらしいが?」

 

 彼は、脇のテーブルに置かれた端末に映る部下からの報告を受けるより先に口を開いた。

 

「君ほどの男がとんだ不始末をしたな。連合のうるさ方を黙らせるのが一苦労だ」

 

 愁いを帯びた声で続けられる言葉とは裏腹に、彼の表情には部下の後始末をさせられる上司特有の煩わしさなど微塵も見受けられない。

 彼にとってモビルスーツの損害は所詮、換えの訊く機械が失われただけであり、数の問題でしかない。むしろ、作戦中に死なせてしまったOZの隊員たち二人の命の方が遙かに重い価値を有していたと信じてやまない彼は心の中で彼らに対して哀悼の意を表す。

 

 OZの制服を身にまとい、貴族としての格がなければ買うことを許されぬボックス席から古典的なイタリア戯曲を観劇していた若い男。

 輝く黄金の髪を短くまとめて広い額に数本の前髪を垂らし、鋭い目と鼻筋の通った整った顔立ちを持ち、高貴な育ちであることを全身で表現した青年。

 

 彼の名は『トレーズ・クシュリナーダ』。

 OZ総帥にして、OZの母体でもあるロームフェラ財団の若き幹部である。

 

 

『相手は、ガンダニウム製のモビルスーツでした』

「なるほど」

 

 その一言だけで彼はうなずき、すべての事情を納得した。

 画面に映し出された彼の部下、OZの上級特尉ゼクス・マーキスは親友でもあり上官でもあるトレーズの性格をよく心得ていたから、相手の発言を過たずに理解して正しい正答を報告したのだ。

 

 最初からトレーズにゼクスを責める気など少しもなく、ライトニング・バロンがそれほどの損害を被らされるほどの敵とは一体何者なのか、部下の犠牲により手に入れられた情報から推測される友の意見を聞かせて欲しいと求めていたのである。

 

『もし、あれがコロニーで造られた物だとしたら――』

 

 機内の壁に肘を預けて、微笑みを浮かべながら失態についての報告を続けるゼクスだが、その内容は問題定義しているように見せかけているだけで答えなど最初から分かり切っていることなど出題者の側にとっても明白すぎることである。

 

「十五年前、このOZに私と君、そして“彼ら”がいてくれたら、こんな不手際にならなかっただろうがな」

『やはりあれはガンダム?』

「他に考えられまい? 連合の宇宙に対するチェックが甘すぎたと言うことだ」

 

 口元にかすかな苦笑を浮かべながら断言するトレーズの言い様は手厳しい。

 

 ――十五年前、OZで戦闘用モビルスーツを研究・設計させていた科学者チームがあった。それぞれの専門分野から集められた専門家たちのチームだったが、あるとき彼らは一機の高性能モビルスーツを試作し、あまりの高性能さと付随する巨大さから当時のOZ情報部より『不必要』の烙印を押されてしまい放棄されることが決定されてしまった。

 

 この後、さらに性能を極限まで高めた新型が設計されたのだが、それはOZ上層部の決定は間違いであると行動で示したようなものであり、面子を重んじる伝統的貴族階級を中心として創設されたOZ内部にあっては許される行為では決してない。

 

 結果として、白眼視されるようになった科学者たちは出奔し、その二機は設計図さえ発見されないまま今日へと至っている。

 

 ただし、残されていたわずかな資料からこの二機のモビルスーツは、宇宙でしか精製できない特殊金属ガンダニウム合金の使用を前提として設計されていたことだけは判明している。

 その資料に記されていた開発コードネーム、その名は『ガンダム』といった・・・・・・。

 

 

「所詮、功績のあった科学者チームを殺す決定を下すことが出来ぬまま、公職から追放するだけで済ませようなどとと虫のいい考え方で人から何かを奪おうとすること自体に無理があったのだ・・・・・・。無理もないことだがね。

 戦いに勝つための戦争をしなくなり、政治行為の延長線上で軍を派遣するのが当たり前の発想となってしまっていた当時の連合上層部に求められる能力など、その程度の物だろう・・・。

 人の能力は自らの意思でのみ振るわれるべき物なのだからな」

 

 断定する彼の口調はやや苦い。

 地球圏統一連合が発足してから二十年が経つが、その成り立ちは成立の時点から軍事色の強いものであった。

 

 連合は元々、コロニー開発のために疲弊して国力が弱まり度重なる紛争がさらなる弱体化が続いていた諸国から、それら内的問題を一挙に解決させるため各国から資金と軍備を提供しあい《地球圏統一連合》と《連合軍》を創設させたものが大本にある組織だ。

 だが、軍の勢力が拡大していき、連合政府の閣僚の地位を軍高官が兼任し始めた頃には、軍事力によって地球と宇宙の人々を支配する軍事政権へと変貌し尽くしてしまっていたのである。

 

『連合のマリーナが、あの機体を回収しようとしていますが?』

「それはこちらに任せてもらっていい。君には海中探査の特別隊を送るから、後は頼んだぞ」

『ハッ!』

 

「――わかっているだろうが、今は大事の前だ。連合を刺激するような真似はしたくない」『了解しております」

 

 そして通信は終えたトレーズは席を立ち、連合本部ビルの建物で開かれる定例会議の議場へと足を向ける。

 正しい判断と行動をおこなった部下の正当な権利と立場を擁護できると思えば、会議の後に開かれる特権の分配について話し合う重要な晩餐会への参加も苦痛ではなかった。

 

 

 

「トレーズ特佐、君の部下が大気圏突入の際にモビルスーツ三機を失ったという報告を受けたが?」

 

 それが、会議場に遅れて到着したことを詫びたトレーズに対して、参加者の一人から送られた歓迎の挨拶だった。

 

「はい、それが何か?」

 

 ごく普通の口調で応じるトレーズの反応に、他意はない。

 "当たり前のことだから"である。

 

 モビルスーツとは兵器であり、兵士とは守るべきモノのため、敵と戦い命を賭ける者たちのことを指す言葉であるからだ。

 

 悼みはする。哀悼の意も表す。だが、決して彼らの死は無駄ではないと彼は信じる。無駄にはしないと固く決意してもいる。それ以上、死者にしてやれることが死なせてしまった側にあるだろうか?

 

「貴様は、たかが反乱分子の制圧に三機も無駄にしたのだぞ!?」

 

 最初の発言者とは別の将軍が横から割って入り、声を出す。

 

「その結果、反乱分子の謀反を未然に防ぐことが出来ました」

「私が言っているのは結果ではない! 貴様は、連合軍の貴重な戦力をなんと考えているんだ!?」

 

 将軍が声を荒げるが、トレーズは微動だにしない。

 ・・・ただ、思うところはあったので今の彼の発言に対して僅かながら“訂正を促す"。

 

「貴重な戦力・・・それは兵士に対してでしょうか? それとも、モビルスーツに対してですか?」

「貴様! 私を愚弄するのか!!」

 

 怒声をあげる将軍。トレーズ自身、やや気分を出してしまった自分を恥じてはいたので誰も仲裁に入ろうとしなければ“言葉が過ぎた非礼は"詫びるつもりであったが、幸いなと言うべきなのか、そうする必要性は生じなかった。

 議場の参加者たちが目配せし合って、予め決めておいた仲介役に合図を送ったその瞬間に、

 

「まあまあ、トレーズ特佐。今後もあることだし注意をだね―――」

 

 

 

 

「ずいぶんと見当違いな言い合いが聞こえてきますな。ひょっとして私は来る場所を間違えましたでしょうか? 閣下方」

 

 

 

 怜悧で鋭利な若いその声が聞こえたとき、豪奢で華美な成り上がり貴族風の内装で統一された会議室にいるトレーズ以外すべての将校が思わず「びくっ」と身体を揺らがせた。

 そうするだけの悪影響を“彼"は既に議場に詰めるご老人方に対して及ぼしてしまっていたからである。

 

 目上に対して、『目上だからと言うだけでは平伏しない生意気な若造』。

 スラム化し始めていた古いコロニーの再建計画立案時に、『効率と歴史を調和させたアンティックなものに変えてしまおう』という大胆な提案をおこなって高めた声望を背景に着々と連合議会に足場を築いてゆく『政治をろくに知らない青二才』。

 

 

「は、ハウゼリー殿・・・・・・」

 

 誰かが彼の名を呼び、彼は議場にいる全員に見えるよう頭を下げて一礼して見せた。

 この若者こそ、連合軍傘下にある別組織《スペシャルズ》の一隊にして事実上の同盟組織《クロスボーン・バンガード》の若き司令官『ハウゼリー・ロナ』。

 総帥マイッツァー・ロナの長男にして、次期後継者と目されている歯に衣着せぬ言動と過激な論調で知られる将来有望な若手将校である。

 

「失礼。遅れて参上してきた身でありながら、謝罪が後になってしまいました。どうか礼儀知らずの未熟な若造の無礼をお許しください、将軍」

「うっ、くっ・・・そ、そのような些事はどうでもよい! これは我々連合軍の問題である! クロスボーン・バンガードの司令官殿には関係なきこと。どうか余計な口を差し挟まないで頂きたい」

「これは異な事をおっしゃられる。我々クロスボーン・バンガードも地球圏統一連合の一員であり、連合正規軍麾下の《スペシャルズ》に参加させて頂いた新参者に過ぎません。

 同じ《スペシャルズ》に所属するOZ総帥殿が問題を起こされたのであれば、それは軍人として我々も連帯責任を問われるのが軍における正しい秩序の在り方というもの。そうではありませんか? 将軍閣下」

「ぐっ、ぬっ、ぬぅぅ・・・」

「そもそも、先のトレーズ閣下の仰っていた言葉のどこに問題があったというのでしょう?

 我々は軍人であり、国家のため、大義のため、戦う力を持たぬ者たちを守るためその身を張る義務を負う者たちです。

 民衆は怖いと言って逃げ出すことが許されますが、敵と戦うべき使命を負った軍人たちは血を流すことを恐れてはならず、先陣に立たなければなりません。そして、我々《スペシャルズ》は正規軍より先にその役目を果たす義務を負っているからこそ正規軍の軍人たちより二階級上の待遇を与えられているものと理解しております。

 彼ら戦死した将兵二名は、務めを果たした名誉ある英霊です。その御霊を穢すような発言をされるとは、我々に皆様方より先んじて死ぬ権限をお与えくだされた連合上層部に属する方の言葉とは思えません。

 どうか将軍閣下。我々クロスボーン・バンガードから先兵として死ぬための勇気を取り上げないで頂きたい! 我々は連合のため、戦友のため、守るべき民間人のための盾となって死ぬ覚悟は既に出来ているのです! その覚悟を剥奪される屈辱を甘受するのを避けるためならば、今この場で自殺して皆様方に我らの忠誠と覚悟をご理解して頂くより他ありますまい!」

 

「ま、待て! 待ってくれハウゼリー殿! 悪かった! 私が悪かった! 失言だった! だから今この場で死ぬのはやめてくれ!

 そうしないと会議後の晩餐会で私の配当が・・・ゴホッ、ゴホッ」

 

 

 ――慌てて謝罪して前言を取り下げたはいいものの、慌てすぎて要らぬことまで口に出しそうになってしまった醜態を咳払いで取り繕いだす将軍と、同じように慌てて仲介に乗り出す他の参加者たち。

 

 この場の誰もがハウゼリー個人の命に興味はなく、そして彼ら全員がハウゼリーに『今この場で死なれては困る理由を持っている者たち』でもあった。

 

 金と、特権である。

 創設から二〇年が経過し、軍上層部も世代交代がおこなわれ、まともな外敵もいない状況下で出世してきた、勝って当たり前のゲリラやレジスタンスの掃討戦しか戦争を知らない世代が半数以上を占めている今日の連合軍首脳部の惨状が、この体たらく振りである。

 

 

 ――討つべし、の一語に尽きる。

 

 

 ハウゼリーは仲介役を買って出た数人の中年将校相手に、渋々ながら自殺を諦め席に着き、隣席のトレーズ相手に片目をつむってウィンクしてみせるのだった。

 さすがのトレーズも、これには苦笑せざるを得ない。

 

 ハウゼリーは、自分に当事者でもなんでもない赤の他人の身でありながら、その事実を誰にも気づかせぬままトレーズへの攻撃をすべてなかったことにしてしまったのだから。

 

 

 トレーズは思う。

 

 ――所詮、連合軍は平和に慣れすぎてしまっている。自らの身を危険にさらすことなく、一方的に他人の命を奪う権利と資格が自分たちにはあると思い込みすぎてしまっているのだろう。

 だが、自らの血を流すことを恐れなくていい戦争から、人々は一体なにを学べるというのだろう? 一方的に他者をミンチに出来る戦争をおこなう者たちからは、戦争は悲惨であり、悲しみを積み重ねるものでしかないという人としての基本さえ忘れ去られて思い出すこともなくなってしまうのではないだろうか?

 私にはそれが耐えられない・・・。

 

 だから、これからの時代は我々が創ろう。

 我が組織OZと、ロナ家によるクロスボーン・バンガートと共に新しき世の尖兵となることで・・・・・・。

 

 

 

 ――アフターコロニー・一九五年。

 地球から巣立った人類は宇宙コロニーでの生活に新たな希望を求めていた。

 しかし、地球圏統一連合は正義と平和の名の下に圧倒的な軍事力を持って欠くコロニーを制圧していった。

 

 その統治は今までは上手くいっていた。

 圧倒的な軍事力による制圧も、当初における恫喝効果が絶大だったのは事実なのだから。

 

 だが、恫喝の持つ政治力学というものでは恒久的な支配体制など望むべくもない。それが、軍人出身の政治家兼連合軍高官たちには理解できない。・・・否、理解したがらない・・・。

 

 

 

 

「さて、本日の議題であるコロニー間の連帯阻止の一件だが――――」

 

 

 

 

 ・・・・・・連合が信じ続けたいと願う『自分たちが支配する平和な世界は永続する』という幻想が崩壊しようとしていた・・・・・・。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。