ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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ちょっとした体調不良により本来書きたかった内容を書けるほど頭がしっかり働いてくれなくなってますのでインターバル回を投稿しておきます。
シロッコSEED、平和な愚痴り回。
大人たちの笑えない戦争事情をお楽しみいただけたら幸いです。


転生した私はコズミック・イラの立会人になろう。9章

『・・・死にたいんですか? こんな所で・・・何の意味もないじゃないですか』

『なんだと貴様! 見ろっ! みんな必死で戦った! 戦っているんだ! 大事な人や大事なモノを守るために必死でなぁっ!!』

『!! 気持ちだけでいったい、何が守れるって言うんだ!?』

 

 

 

 ・・・・・・感慨と共に、私は原作でのやり取りを思い出しながら心の中で肩をすくめる。

 たしか、アニメ版ではこの辺りで交わされていた会話だったなと記憶の糸を手繰りながら私はクルーゼの隣に立ち、その光景を“画面の外から”眺めやっていた。

 

「両名とも無事にジブラルタルに入ったと聞き、安堵している。先の戦闘ではご苦労だったな」

『・・・死にそうになりましたけど』

 

 ヴェサリウスの隊長用個室に据えられた端末の画面に向けて語りかける自分たちの上官に対しディアッカ・エルスマンは、不満気な表情にイヤな感じの笑顔をたたえながら皮肉な返事を返してきていた。

 あたかも、“自分たちがこんな目に遭ったのは俺たち以外が役立たずだったからです”とでも言い足そうな口調と表情で。

 

「残念ながら足付きとストライクを仕留める事は出来なかったが、君らが不本意とは言え共に降りたのは幸いだったかもしれん。足付きは今後地球駐留部隊の標的となるだろうが、君たちもしばらくの間、ジブラルタルに留まり共に奴らを追ってくれ」

『・・・・・・・・・』

「無論、機会があれば討ってくれて構わんよ?」

 

 それだけ告げるとクルーゼは、相手からの返事を待たず一方的に通信を切った。これ以上、苦労知らずのお坊ちゃん方の相手などしている暇はないという意思を行動で伝えようとするかのように。

 

「ふぅ・・・」

 

 通信を終えて疲れたようにマスクを外して目をほぐすクルーゼ。

 私の調合した薬によって老化の進行は大分停滞しているため、アニメで見えていた範囲までしか彼の顔に年輪は刻まれていないが、今ばかりは加齢とは別の身体的影響により彼の身体は急速に老いが見受けられていた。

 

 端的に表現して、寝不足と過労による中間管理職のオッサン臭さが滲み出る顔つきになってしまっていたのである。

 

「苦労性のクルーゼ隊長、お疲れ様です」

「茶化すなシロッコ。私としては冗談口を返している余裕さえ惜しい心境なのだぞ・・・?」

 

 “あの”クルーゼが言っているとは思えないほど『生の疲れ』が滲み出ている口調と表情を前にして、友人には悪いと思いながらも私は笑いを我慢するのに少なからず苦労させられてしまうのだった。

 死から遠ざかったことで、死ぬまでは生きているため努力してみようと思い直してくれた我が友クルーゼではあるが、ここまで激変しすぎた状況というのは想像の埒外だったのは事実なので、私としても計算が狂い・・・なんと言うかこうバカバカしすぎて笑い話にしたくなってしまうほどハイテンションになっていたのである。

 

 まぁ、要するに私の方でも連日の徹夜で調子がおかしくなっているだけだったりするのであるが。

 

 

『機会があれば・・・だとぉ・・・?

 討ってやるさ。次こそ必ず、この俺がなぁ!』

 

 

 先の通信を終えた直後、イザークが叫んでいた宣言を思い出しながら私は片手に持つチューブを友に向けて掲げて見せる。

 

「不満そうだったな彼らは。おおかた地上の現地部隊と合流した後でもストライクを討つため独断専行を繰り返す腹づもりなのだろう。

 フッ。前線でモンテ・クリスト伯のような復讐劇か・・・。イザークらしいな、お坊ちゃん」

「その分、我々大人が子供の遊びの後始末をやらされるというのだから、堪ったものではないがね」

 

 鬱憤をぶつけるように毒を吐くとクルーゼは、私から自分の分のチュ-ブを奪って口に含む。

 入っているのは普段は飲まないカフェイン入りのコーヒーである。パイロットは排泄の問題から利尿作用のあるコレを飲みたくても飲まない者が意外に多く、私もクルーゼも例外ではなかったのだが今このときばかりは飲まなければやっていられない。

 

 眠すぎるのだ。眠気覚ましの一杯でも飲まなければ到底やっていられない状況に現在のクルーゼ隊中枢は陥っていたのである。

 

 なにしろ我々は『敗軍の将』たる身なのだから・・・・・・。

 

 

「ニコルとアスランの方はどうした・・・?」

「休憩を与えておいた。どのみち、戦闘の恐れがない空域においてパイロットにやってもらう事はほとんどないのは当たり前だからな。

 存分に寝て、充分に食べ、英気を養ってもらうことこそが通常任務時におけるMSパイロットの果たすべき仕事なのは言うまでもなかろう?」

「・・・その割に、私たちは働きづめになっているのだがね・・・・・・」

「何事も事後処理が一番の苦労なのはすべての事柄に共通する弊害だからな。受け入れるしかあるまいよ」

 

 私は肩をすくめて友の嘆きに応えてやる。

 まったく、キラ・ヤマトの言うことは尤もだったとつくづく思い知らされる。確かに戦争中では、気持ちだけで守れるモノなど何ひとつない。

 

 なぜなら戦争とはモノを大量消費し続けることで行われる行為なのだから。

 守るためには使いまくり、失いまくることでしか何一つ守れるモノは存在しないのが戦争という異常事態の中での悲しい現実というものなのだから。

 

「ハルバートンの第八艦隊はほとんどが降伏を拒否して、闘死するか逃亡するかを選んでくれたから比較的捕虜は少なくて済んだが・・・それでも0というわけにはいかん。一人残らず戦死する戦闘などありえんのだからな。

 現在は監獄用のスペースに放り込んであるが・・・もとから敵の数の方が多い相手だ。少ないとは言え、比較的にでしかないことは今のうちに伝えさせておいてもらうからな?」

「・・・また、食料の消費量でグチを聞かされるのかと思うと頭が痛くなってきそうになる幸せな未来の報告をありがとう心の友よ・・・」

 

 どういたしまして、と返してやろうかと思ったが止めておいた。正直、シャレで済まない状況がすぐ身近に迫ってきていることを知る身としては冗談としても口にするのが憚れる内容だったからな。

 

 

 ――ザフト軍は、プラントが地球に対して戦争状態に陥ってしまうときのことを考えて創設された私設軍隊である。最初から地球が敵となることを想定して創られているため、支給される装備のほとんどは自前での調達が可能なことを前提として設計されている。

 

 無論、効率やコストを考えたら外部委託や輸入に頼った方が遙かに生産効率がよくなる部品は数多く存在しており、性能的にもモルゲン・レーテ社から購入した方が優れた成果を出す機材を数えだしたら切りがない。

 

 だがそれでも、モルゲン・レーテがオーブの国営軍需企業であり、オーブが地球にある国の一つである以上は、地球と戦争することを想定して設立されたザフト軍にとって依存しきる訳にはどうしてもいかない。敵に武器の心臓部を握られてしまうことだけは、可能性上の話だけだったとしても絶対に避けなければならない最重要課題だったからである。

 

 その為、ザフト軍は軍として軍事行動をする上で必要となる物資を最低限プラントで自給自足が可能となるよう最初から計算されて設立された極めて特殊な組織となっていた。

 地球と地続きではないスペースコロニーが、地球全体を敵として戦うことを想定し、その並外れて高い技術力を最大限投入したからこそ可能となった異形の軍隊と言うべき存在なのかもしれない。

 

 

 ――だが、反面。ザフト軍の大本であるプラント本体は非常にもろい経済基盤の上に成り立っている宇宙都市でしかなかった。

 

 なにしろ元々がコーディネーターを隔離するため宇宙に創られた鳥籠でしかないのだ。

 コーディネーター側の主観はどうだったか私は知らない。しかし、連合が食料その他の宇宙では手に入りにくい生活必需品を鎖としてプラントを地球に縛り付けておく政策を取っていたであろうことは容易に想像が付く。当然の政策と言うべきだろう。

 

 『強い牙を持つ奴らは閉じ込めておくか繋いでおくかしないと危ない』のだから――。

 

 その結果、プラントの食料そのほか生活必需品の自給率は笑ってしまいそうなほどお粗末なものにならざるを得なくされてしまっている。プラント理事国からの支援がなくなれば直ぐにも干上がるのではないかと思われるほど切羽詰まっている状況がもう何年も前から常態化してしまっているのだ。

 

 もちろん地球を相手に戦争を仕掛けると決めた時点で、一定の増産には成功していた。

 得意の遺伝子工学技術をフルに使い、動植物の成長促進、生産量の増加、安全で美味な遺伝子組み換え作物など現代日本では白眼視されながらも知らぬ間に口にしている類いのものだったが、この世界のプラントでは一般の食卓に上るほどポピュラーな一般的な食物となっていた。“戦前までは”。

 だが、それも開戦以降は激減する一方と成り果ててしまっている。軍隊が作った端から持って行ってしまうからだ。

 戦闘時における人間の肉体は、平時と比べて三倍の食事量を必要とするのだと何かの本で読んだことがある。その説が正しいとするならば、たかだか戦前の二倍、三倍に増やした程度ではプラントの食料生産量が長期間の戦争を支えられるものではない事ぐらい子供でも分かりそうなものなのだがな…。

 

 

「ただでさえ、軍艦に余剰人員など乗せていない。食料は搭乗員が予定された日数を消化する分以上は載せられるスペースが存在しなかったから詰め込むことが出来なかった。その上――」

「我が軍の艦船はモビルスーツの運用を前提に設計されているせいで、見た目ほど余剰スペースが用意されておらず、連合軍籍の艦艇はMSのない時代から使われていた分だけ広く、人員も多い。おまけに――」

「たかだか戦艦とモビルアーマーしか保有していない第八艦隊だけ殲滅したところで、足付きもストライクも仕留められなかった我々は事実上、作戦を失敗させられた敗軍の将と言うことになるわけだからな。さらなる補給を求めるからには相応の成果を出すことを要求される羽目になるだろう。堪ったものではない。

 あの距離ではどうせ追い詰める以上のことは望むべくもなかったというのに・・・」

「ああ・・・。そう言う意味でもイザーク達が地上に落ちてくれたのは幸いだった。これ以上厄介ごとが増やされるのは正直勘弁して欲しいと願っていたところだったからな」

 

 疲れたように肩をすくめるクルーゼ。

 彼が言っているのは、イザークが先の戦闘の最後におこなった非武装の脱出用シャトルをビームライフルで撃とうとした行為、それについてプラント理事国各位から非難の声が上がっていることについてだった。

 

 彼は戦闘にどさくさで間違って撃ってしまっても、誰にも気づかれるはずがないと高をくくっていたのかもしれないが、SEEDの世界にはロウ・ギュールをはじめとするニュータイプじみた特殊技能をもつ民間人が数多く存在している。今回の件もジェス・リブル辺りが撮影していたのかもしれない。

 厳しい情報規制を強いたときには既に手遅れ、各地のプラント理事国に持ち込まれてしまった情報は今更どうにかすることなど不可能だったため、やむを得ず彼ら二人の処遇を地上の前線に押しつけて無理矢理手落ちに持ち込んでしまった。そういう事情が先の通信には隠されている。

 

 彼らにはああ言ったが、本音を言えば『敵を討ちに行く以上は、無論君らも討たれる可能性は考慮しておいてもらうぞ?』というものでしかない。

 同じ言い訳で各国からの非難を躱して急場しのぎを繰り返させたのだから、地ベタを這いずり回って左遷先でほとぼりが冷めるのを待つぐらいの我慢を要求する権利と資格が当然我々にはあるのだと私は確信している。

 

「ああ、そうだクルーゼ。伝え忘れていた。本国からの通達だ。今回の件について、君自身の口から直接説明と釈明を聞かせて欲しいとのことだったぞ」

「・・・またか。あれだけ同じ内容の報告と報告書を届けさせておきながら、まだ同じ内容の謝罪を耳にしたがるとはな・・・。

 人という生き物はつくづく他者を貶めることで自分の方が上に立った気になりたがる生き物なのだと言うことがわかって嫌になってくるよ」

「そんなものさ、俗人共のやることというものはな。天才の足を引っ張ることしかできない俗人共としては、自分たちの先を行く天才の足を引きずり落として同列に並んで笑い飛ばしたい欲望がある。

 コーディネーターもナチュラルも身体能力と頭脳面で違いがあるだけで精神的には大差ない以上、この手の欲望は誰しもが持ち合わせていることだろう。

 ・・・愚かなものだ、世の中の流れを洞察できん無能な政治家という奴らはな。いずれ我々が粛正してやるとしても、今はそのときではない以上、頭を下げに赴く以外に他あるまい。

 それが隊長と副隊長というザフト軍の中間管理職に与えられた役割というものなのだよ、我が盟友クルーゼ」

「・・・与えられた役割を演じるというのは存外に難しく、疲れる生き方なのだな。我が親友シロッコよ・・・」

 

つづく

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