ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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時間ができましたのでクロボンW2話目を書き直しました。前回の分には「修正前」と銘打って一応残してありますけど、邪魔だった場合は削除しますので言ってくださいませ。
基本的にはこちらの方が当初考えてたのに近く(まんまじゃありませんが)話の流れ的にもこっちを基準にする予定でおります。


ガンダムW戦記~クロスボーン・バンガードの旗のもとに~2章(修正後)

 ゼクス・マーキスがガンダム相手に三機のMSを失ったとの報告は、彼から海に沈んだMS引き上げの手柄を横取りした連合所属のマリーナにより連合本部へ報告され、OZ構成員にも自然な形で即日に内に浸透していった。

 

 それ自体に問題はない。なぜならOZは事実上、連合正規軍とは別組織であるとは言え形式としては連合指揮下の一部隊に過ぎぬのだから『共通の敵と戦うため情報を共有する』ことは軍組織として当たり前すぎるほどの道理であるのだから。

 

 

「なにしろ“あの”ライントニング・バロンが一機の敵を相手に三機のモビルスーツを落とされてしまうほどの強敵だ。対策を練るため日頃からの思うところは一時棚上げにして味方同士連携し合うのが連合軍人としての使命ではないか」

 

 ――正論である。だからこそ阻止するべき正当な理由も存在しない。

 如何に本音が見え透いていようとも建前は建前として守られねばならぬのが、国家が持つ組織の有り様というものだろう。

 

「ライトニング・バロンが、たかが反乱分子を相手に三機のモビルスーツを失って二人の部下を殺されたんだとよ」

「噂は噂だ。他に言うんじゃない」

「・・・本当らしいぞ? ゼクス本人もやられたらしい」

「成り上がりが、いいザマだ」

 

 ・・・無論、OZ本部内でこのような会話が交わされるようになる事こそ彼らの狙いであったことは言うまでもない。

 OZの持つ雰囲気は、腐った連合軍部内にあって紛れもなく最良の部類に属していたが、それでもこの種の悪感情を完全に取り除くことは不可能なところに、考える頭を持ってしまった『人』の持つ業と不幸が組織のそのものが持つ悪癖という形で現されていたと言えるのやもしれない。

 

 

「たった一機の敵がやったって話だぜ? アレックス」

「手柄をあげるチャンスが来たんだよ、ミュラー」

 

 二人のOZ士官が個人的ツテで伝え聞いた噂話を、輸送機での退屈な長旅でのお供にしている。

 

「所詮ライトニング・バロンも過去の基準から見たエースに過ぎない。新しい時代には新しい時代に相応しいエースが必要になる。

 時代の流れに乗りきれなかったエース殿は愚か者なのだ。淀みを正すためにも近いうちに我々の手でご退場頂くとしようじゃないか。なぁ? 選ばれた者の同士よ・・・」

 

 

 

 ――これらの意見は、右と左の意見が出ることによって陣営がわかれ、片方が悪なら真逆は正義で正しいとする短絡的な主張を台頭させてしまう人の世が持つ弊害であり、かつての世界でクロスボーン・バンガードを産み落とす要因ともなった人が生まれ持つ業でもあったが、今のところ“この男”はそれらの美しくない醜い感情と無縁であるようだった。

 

 

「モビルスーツを三機も撃ち落とされたそうだな?」

 

 手にしたオペラグラスを降ろしながら、輝く黄金の髪を持ちOZ軍服をまとった若い男は、物憂げな身のこなしで吐息を吐くかの如く画面向こう側に映る男にそう呼びかけていた。

 

「君ほどの男がとんだ不始末をしたな。連合のうるさ方を黙らせるのが一苦労だ」

 

 暗に“掴んだ敵情を語るよう”促された仮面の男ゼクス・マーキスは、望まれるまま最適と信じる情報を簡明な一言で表現し、上司であり親友でもあるOZの総帥『トレーズ・クシュリナーダ』に報告する。

 

『相手はガンダニウム製のモビルスーツでした」

「なんだと」

 

 部下からの報告に口では驚きの念を現しながらも、言うほどの驚愕は表情にない。

 むしろ“納得”の色合いが強い。

 然もあろう、元より軍事的な驚きとはそう言うものである。

 

 フィクションと違い、想像を絶する新兵器が登場しただけで圧倒的不利な戦局が覆され勝利するなどという状況は現実の戦争だとほとんど実在しない。

 互いに敵対する両陣営の一方で発明され実用化された兵器は、今一方の陣営においても理論的には実現している場合がほとんどだからだ。

 

 モビルスーツ、ビームライフル、そしてガンダム。

 

 いずれもがそうであり、宇宙世紀の戦争方式を一変させたミノフスキー粒子でさえ、弱小の新興国家ジオン公国に勝利をもたらすことは出来なかった。

 今回もまた例外ではない。宇宙でしか精製できない特殊な金属ガンダリウム合金の使用を前提として設計されたモビルスーツの情報は、15年前の時点で開発者たちのチームと共にOZ本部が把握していた存在だ。

 

「15年前、このOZに私と君、そして“彼ら”がいてくれたら、こんな不手際にならなかっただろうがな」

『では、やはりあれはガンダム?』

「他に考えられまい? 連合の宇宙に対するチェックが甘すぎたと言うことだ」

 

 トレーズは穏やかな口調で指摘したが、その内容は手厳しい。

 約二十年前、地球上で頻発する紛争に単独で対処しきれなくなった各国家が寄り集まって出来たのが地球圏統一連合であり、圧倒的軍事力で紛争問題を解決し争いの種を減少させていった連合軍が、今度は肥大した軍組織を維持するため新たな敵を求めて設定したのが当時まだ発足したばかりのコロニー群による自治機構だった。

 

 彼らは非武装を説く指導者のもと平和的解決を望んでいたが、手に入れた権益を未来永劫確保し続けるためだけに敵を欲していた連合軍に通じるはずもない。

 指導者は暗殺され、混乱するコロニーに正義と平和をもたらすという建前でもって軍事的に介入し、制圧したコロニー間の航路上に宇宙機雷を設置して、人材の交流と情報共有のための通信を一切断絶させるまでやってのけたのである。

 

 

 ――だが、地球圏統一連合軍が危険分子と認定したコロニーに対して行った治安維持活動はここまでで、コロニー間の連帯を阻止しただけで地球から宇宙を支配できると慢心した連合首脳は安心してしまったのである。

 それ以降、彼らは今までずっと地球に引きこもり、延々と味方同士で利権の奪い合いと責任の擦り付け合いに終始し続けてきた。

 自分たちが何もせずとも支配と権益が維持し続けられる制度さえ作ればよいとして、安穏とした城壁の奥の平和と繁栄を自分たちだけで独占できる今に油断しきってしまっていたのだ。

 

 

 それをトレーズは指摘して、指弾したのだ。甘い、と。

 結束できず、他の勢力と情報交換さえできなくなった抵抗勢力が次にとるべき手段は何か? ――テロである。当たり前のことだ。

 連合は統制社会を敷いたのなら、コロニー市民の内部にまで監査の目を光らせなければ成功したとは言えない。真にもって連合のコロニーに対する態度は中途半端に甘く、適当すぎたと言わざるを得ない…。

 

 

「――人が持つ文化、思想、宗教、利権、政治理念の違いから争い合うことで生じてしまう戦争は悲しいことです。それらを実力行使によって鎮圧するため軍を存続させる必要があるのは道理でありましょう。

 ですが、局地戦が継続することが強大な軍組織全体の存続価値を認める理由にならないのもまた子供でも分かる道理でしかありません。倒すべき敵がいる限り兵士たちと軍隊を残し続ける口実になるなどという考え方は欺瞞の創出でしかない。

 統一のために生まれた組織であるならば、統一がなった暁には連合軍などという武力集団は、一部の治安維持に必要となる最小限度の兵力のみを残して破棄すべきでした。それをしなかった時点で連合は、設立された当初の志も理念も大義すら自ら捨て去ったのです」

 

 

 その時、トレーズの隣に座ってオペラを観劇していた同胞が声を差し挟んできた。

 普段は奥ゆかしく、人と人との間で交わされる会話に割って入ることを非礼であるとし忌み嫌う彼にしては珍しい反応だった。

 

 トレーズは興味深そうな視線で、隣に座った“もう一人の親友”を眺めやる。

 

 

「自分たちが獲得した既得権益を未来永劫独占し続けるためだけに存続しようとする軍組織は人類にとっての癌細胞に過ぎません。

 これを残すことこそ悪であり、討つために流れる血は正義であると小官は確信致します」

「ほう。君はこれから我々が行う大事のなかで流れる血は、悪ではないと言い切るのだな?」

「はい」

「戦争は悲惨であり、悲しみを積み重ねるものでしかないと知った上でかね?」

「無論です。成さねば人類全体が滅ぶというという戦争の中で、判らぬ者には力でもってでも教え諭すことは必要悪だと断言できますから。

 そして、誰かが強権発動という名の悪を成さなければならないとするならば、それは自らの血を流すことを恐れない高貴な精神を持つ者でなければなりません。

 そしてそれを担うべきは腐敗堕落した軍を永遠に存続させるため敵を創出する連合ではない。自らの意思で考えることを放棄したガンダムのパイロットたちでもない。

 その任に堪えうる者は現在のところ、我々と閣下、そしてゼクス特佐をおいて他にはおりません・・・」

 

『・・・・・・・・・』

 

 画面の向こうとこちら側で“彼”の話を聞いていた二人の青年は、それぞれの表情に違う感情と過去を込めて頷きを交わし合い、決意を秘めた瞳でお互いの瞳を見つめ合う。

 

 素顔を晒した両眼、仮面の向こうに光る青い双眸、そして“片目をアイパッチに隠した冷たい隻眼”・・・・・・五つの異なる瞳が一点に集中して混じり合い、一つの決意と理想をもって一つの堅く揺るがぬ意思を成す。

 

 

『・・・連合のマリーナがあの機体を回収しようとしております。いかが致しましょう?』

 

 やがてゼクスが何事もなかったかのように報告の続きを再開する。

 “今この場で話した内容は聞いていなかったことにする”。そう言う意味を込めた当たり障りのない偽装のための日常会話にトレーズもまた合わせる。

 

「それはこちらに任せてもらっていい。君には海中探査の特別隊を送るから、後は頼む」

『了解しました』

「わかっていると思うが、大事の前だ。勝てぬと分かり切っている敵を相手に、部下を無駄死にさせるような真似はしたくない。万事慎重にことを運んでくれたまえ。

 ガンダムの名を持つ敵は、私や君が思っている以上に強敵らしいからな」

『承知しております』

「ああ、それとそちらに面白い物を送ろう。見ておいてくれたまえ。我々にとって真の敵になる者たちの姿だ」

『わかりました。――では』

 

 その言葉を最後にブラックアウトする端末の画面。

 

「さて・・・私はこれから連合本部ビルで定例会議に出席しなければならないが、君はどうするかね? ザビーネ。逢いたいガンダムパイロットがいたならば送り届けるため特別機を用意するよう準備させているが?」

「閣下には敵いませんな・・・」

 

 

「――では、東シナ海の揚子江付近に。この五機の中でもっとも弱く、覚悟が足りていないのは龍の使い手である彼と見ました。戦いに驕り高ぶり、傲慢油断が見え隠れしています。

 一度敗北を味あわせることで奮起させ、閣下が相手取るに相応しい相手かどうか試してみたいと思いますので・・・」

 

「そうか、では好きにするといい。

 ・・・ところで、もし彼が敗北に打ちのめされて二度と立ち上がれなくなった場合には、我々の計画に大きな変更を加える必要が生じるだろう。そうなった場合にはどうするのかな?」

「その時には・・・」

「その時には?」

 

「その程度の人物だったと諦めがつきます。我々は単純に力だけでことが成せるとは思っていません。それを成せる者には己の力だけでなく運命さえ味方させるような自分の外側にある力も必要でありましょう。

 自らが生まれ持った才能のみに頼り縋り、己よりも弱い敵に勝てるだけで自分は強いと勘違いし、たった一度の敗北さえ乗り越えられない脆弱すぎる精神の持ち主に自分以外の人の命を奪う資格はないのです。

 ――感情を処理できぬまま人を殺す人類は、ゴミだという事実を教えに行ってやると致しましょう・・・」

 

「君たちは厳しいな・・・よかろう。それにより彼が敗北から立ち直れず我々の計画に狂いが出たとしても私は君を許そう。期待するに値しない者に信じてしまった己自身の戒めとして心に刻みつけて己を罰することを制約させてもらおう。

 この様にして己の器と運命を占うのも、時には悪くないものだ・・・・・・」

 

つづく

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