ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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同時に何作か思いついたは良いものの、一度に書けるのは一作のみ(当たり前ですが)
なので取り敢えず一番簡単だった『機動戦士ガンダム・アグレッサー』原作の二次創作です。原作と言うよりかはモデルにして別作みたいな作品ですけどよければどうぞ。

注:超性格の悪い主人公です。苦手な方はお控えください。


機動戦士ガンダム・エクサイン

 ――俺はよく戦う理由を人に尋ねられることがある。

 なぜ戦うのか? なぜ人を殺すのか?

 なぜ“ジオンを裏切った裏切り者の亡命者”が、連邦の軍服をまとってまで愛する祖国に銃を向けるのか。お前の忠誠心はどこにあるのか?――と。

 

 そんな時、俺はいつも決まって、こう答える。

 

「■■は、●●か?」

 

 ――と。

 

 

 

 

 ・・・息を潜めて時期を待つ耳に、自分の呼吸音が響いてきてヤケにうるさい。

 モビルスーツのコクピット内でノーマルスーツを着用しながら息を殺すことに意味などないのは承知の上の無駄な作業だ。

 

 だが、それをやらないと安心して待てないのが待ち伏せ作戦というものである。

 ジッとしたまま隠れ潜んで敵を待つ。身動き一つしただけで敵に見つかる可能性は0だと保証してくれるものは何一つなく、仮にあったとしても昨日までで期限切れの保証かもしれない可能性は無限大。

 逆に、隠れ潜んでいるのが敵にバレていて、罠に誘い込まれようとしているのは自分の方かもしれない可能性は完全無欠の未知数。・・・これで怖くなければ嘘かフィクションの二択だろう。

 

 だが、今回。どうやら彼の忍耐は正しく天に認めてられたらしい。

 敵のジムは、こちらに気付いた様子もなく単独で歩いて近づいてくる。警戒していないわけではなく、首を左右に振って索敵しつつも、右手に持ったジムライフルは敵が出てきたら即応できるよう全周囲に向けられる持ち方をしている。

 

 ――かなりの手練れだな。手強い・・・。

 

 コクピットの中で、そのジオン兵は敵の力量と実戦経験の豊かさを看破し、たとえ奇襲に成功したとしても油断はするまいと心に定める。

 そして、待つ。

 

 一歩、二歩、三歩。少しずつ近づいてくる地球連邦の主力量産型MSジム。

 最近、連邦本部ジャブローで本格的な量産が開始されたばかりの新型だが、開発におけるテストのため先行試作型は早くから各地に回され経験豊富なパイロットに割り当てられてきた経緯を持つ機体でもある。

 それ故に、現段階におけるジムのパイロットは手強い。ほぼ確実に経験豊富な古参兵が乗っている場合がほとんどだからだ。

 正式に量産が始まってしまえば昨日今日MSを触ったばかりの素人にも回されるようになるのだろうが、絶対数が少ない間まではエース専用機とも呼ぶべき機体が連邦のジムなのだ。油断していい相手では決してない。

 

 だからこそ彼は待つ。絶好のタイミングで、必勝の攻撃を放てる距離に敵が来るのを大人しく。息を潜めて隠れ潜んで、深く静かに狙いを定めてしっかりと―――

 

「・・・今だっ!!」

 

 叫んで彼はスイッチを押し、伏せていた機体を立ち上がらせながら、右手をひらめかせて“其れ”を射出する。

 

 ワイヤーと呼べるほど細くはないが、白兵戦で鍔迫り合うほどには太くもない、中途半端な太さと長すぎる射程を持つ独特の武器『ヒートロッド』

 

 ジオン軍の地上戦闘用モビルスーツ『グフ』にのみ装備されている内蔵武装で、高圧電流を流すことが可能な鋼鉄のムチだ。

 これを彼は、モビルスーツでも簡単に隠れることが可能な柔らかい砂地に潜んで敵を待ち受け、近づいてきたところを“足下めがけて”射出した。

 

 オデッサ作戦の前哨戦で『青い巨星ランバ・ラル』が考案したとされる、グフ専用の奇襲戦法。

 元来、宇宙戦闘を想定して開発されたモビルスーツは重力に縛られただけで機動性の大半を奪われてしまい、さらに片足だけでも動けなくされたモビルスーツは事実上、トーチカよりも頑丈で斜角の広い砲台でしかなくなってしまう。

 機動しなくなった機動兵器モビルスーツは、ボールと同じで『鉄の棺桶』に成り下がる。移動できなくした後ならザクバズーカで遠距離からよく狙って撃てば一発で確実に仕留められる。

 

 その効果が認められたからこそ、この戦法はジオン地上軍の古参グフ使いたちに急速に広まって必勝戦術と認識されるようになっていた。

 ザクの射撃武装と互換性がないわけでなくとも、左手で掴んで発砲する以上は『75mm機関砲』を使うことが出来なくなるのは道理だ。間違ってトリガーに触れてしまっただけでも暴発するのは避けられないのだから。

 そして、緊急時にいつもの癖で使おうとしてしまう経験豊富なベテランが多く出てしまったことが、グフ使いたちがグフ本来の使い方である接近戦用の奇襲戦法を用いるようになった経緯がジオン側にも存在していた。

 

「食らいやがれ! 地球のモグラ共!」 

 

 その接近戦用に造られたグフが持つ、接近戦用の奇襲兵器ヒートロッドが奇襲作戦に用いられて、連邦軍のジムに急速接近していく光景をメインカメラで凝視したままグフのパイロットが汚らしい言葉で敵を罵倒した。

 勝った、と彼は勝利を確信したのである。

 

 奇襲戦法とは、相手の予測していない攻撃だから奇襲と呼ばれ、予測できない攻撃だからこそ先制攻撃の初撃を完全に避け切ることは限りなく不可能に近い。

 あの『連邦の白い悪魔』でさえ、ラル大尉が使ってきた戦法で片足先をもぎ取られたと伝え聞いている。まして敵が悪魔でも白いモビルスーツでもない、ただのジムなら初見でこの一撃目さえ入ればそれでいい奇襲を避けきれるわけがない。

 

 ――そのはずだった。

 

「な、なにぃッ!?」

 

 グフのパイロットは目を剥いて、己が見ている光景を疑った。

 最高のタイミングで放った、必勝の位置からの攻撃。避けられるはずのない距離にまで迫っていたはずの攻撃は、しかしギリギリのタイミングで上に飛んで避けられてしまった。

 奇襲を予期していなければ不可能な反応速度だ。奇襲はその性質上、奇襲されると敵がわかっていた場合に獲物と猟師の立場は逆転してしまう戦法のことを指しており、来ると分かっている攻撃を避けることぐらい熟練者なら一瞬の隙があれば十分すぎる時間なのだ。

 

 奇襲戦法の内容が敵に漏れていた! ・・・だが、一体どこから漏れたのであろう?

 繰り返すが奇襲はバレてしまえば終わりで次はない、初見殺しの戦法だ。作戦の一部だけでも見た者は一人も生かして帰すことは許されない。

 動けなくなった敵であろうと、逃げようとする僚機であろうと、避難していたサムソントレーラーの運転手と難民たちだろうとも。

 問答無用で一人残らず殺し尽くして、自分たちが殺したという事実さえ現場に証拠を残さないよう細心の注意を払い続けてきたのである。今のところ敵に情報が漏れたという話は一切入ってきていない。にも関わらず何故・・・?

 

 疑問符を浮かべて、空へと逃げ出した敵機を追って顔のメインカメラを上向きさせた、その瞬間。彼の視界に敵機の右肩に描かれた所属部隊を示すマークが映り込んでくる。

 

 真っ赤に塗られた赤い右肩に髑髏のマーク・・・あれは!!

 

「エクサイン部隊・・・こいつが噂に聞く、ジオンから逃走して連邦に寝返った裏切り者だけでつくられたとか言う恥知らずな売国奴部隊の一員か!」

 

 心からの憎しみを込めて敵パイロットを激しく罵倒し、シールド裏側に取り付けられていた『ヒートサーベル』を抜き放つ。

 逃げゆく敵の背中から切りつけてやるため、仕留め役として潜ませていた味方のザクに指示を出す。

 

「ダッチ! 空中にいる間にヤツを狙い撃て! 今なら自由な回避行動は取れん!」

『了解です、大尉殿!』

「だが、ヤツは恐らくベテランだ! 無理して当てようとせず動きを制限するだけでいい。

 止めは私が接近戦で仕留めてやる!!」

『了解!!』

 

 憎むべき裏切り者を前にしても、グフのパイロットは冷静さを失ってはいなかった。

 この戦法に対処できるのは敵が知っていたからであり、この戦法は手の内が知られた時点で無用の長物と化す奇術めいた戦術であり、この手が使えるグフ共々エース以外のパイロットには存在すら供与されていない戦法であるはず。

 にも関わらず、敵に寝返った裏切り者が知っていた。さらには其れを完璧な形で実戦に活用してきやがった!

 

 間違いない・・・こいつはエースだ!

 

 グフのパイロットはそう確信して、自分たちも必勝の戦術を取る道を選んだ。

 自分と味方機の二機で役割を分担し、支援用の射撃武器を持ったザクが敵を足止めした上で自分がグフで接近戦を仕掛け、止めを刺す。

 

 それで詰みだ。

 

「卑怯者がいるべき場所へ送ってやる! 祖国を裏切って連邦の犬になった恥知らずが死後にヴァルハラへ行ける権利があるなどと思い上がるなよ!」

 

 叫んで機体を走らせ、その動きに連動したザクが狙いを定めてザクバズーカを発射する。

 自由の利かない空中にありながら、敵はどういう手品を使っているのか器用に機体を動かして攻撃を避け、それでも動きは大きく制限されたままグフの向かう先に強制着陸せざるを得なくさせられる。

 

「死ねィッ!」

 

 振りかぶり、切りつける。

 背後からの狙い澄ました一撃であったが、それでも敵はエースだ。反撃は無理でも防ぐぐらいのことはしてきても不思議ではない。

 事実、最初の斬撃はビームサーベルを抜いて防がれた。凄まじい技量と反応速度だ。裏切り者でなければ心の底から感嘆したくなるほどに。

 

「それほどの腕を持っていながら、なぜ祖国を捨てて敵に走った! 一角の腕を持つお前がどうして連邦の犬に成り下がる道を自ら選ぶ? 地球になんの恩があると言うのだ!?」

『・・・はぁ?』

 

 惚けたような、呆けたような、呆れたような、そして馬鹿にしているような暗い響きを持った若い男の声。

 

「そうだ! どうせ連邦はお前たちを自分たちと同じ正規軍だなどとは死んでも思おうとはせん! 我々はジオン兵であり、奴等は連邦軍人なのだ! その事実を前にして貴様は一体どのような理屈で以て自らの裏切りを正当化するつもりなのかと聞いている!!」

『・・・バカか? お前は・・・』

「・・・・・・・・・は?」

 

 お肌の触れあい回線から聞こえてくる、敵のパイロットを『ブタかサルと同一視してくるような』冷淡で辛辣極まる悪意ある見下しに満ちた声。

 

『・・・バカな質問に答えてやる。なぜ、ジオン軍の軍服を脱いで連邦の軍服を着ているのかだが、殺されそうになったから死ぬよりかはマシかと思い逃げてきだけだ。そしてモビルスーツの操縦以外に能がなかったから連邦軍の飯と給料目当てで志願した。以上』

「な、な・・・・・・なにィッ!?」

 

 彼にとって、あり得ないほど当たり前すぎる裏切りの理由。

 兵士が殺されそうになったから命惜しさに軍を脱走して、金目当てで敵軍に寝返っただと・・・・・・バカな! 子供向け戦争映画の三流小悪党でもあるまいに、そんな軟弱な精神と忠誠心も理想も志さえ持ち合わせていない人間に耐えられるほどモビルスーツ操縦の訓練とジオン軍パイロットの選抜基準は低くない!

 

「貴様、正気か!?」

『お前こそ正気か? 頭の中大丈夫か? もっとも、連邦のバカ軍人共も似たような寝言をほざいていたから、どいつもいつもみんな脳がイカレちまったジャンキーなだけかもしれんがな。

 まったく・・・連邦だジオンだと、どうでもいい政治の理屈について騙りたがるバカが多くて面倒くさい限りだよ。連邦にもジオンにも俺以外はバカしかいないのか? 少しは学べ、低脳共』

 

 あまりにも酷すぎる罵倒の内容と、声に籠もっている純粋すぎる見下しと悪意の念に、グフのパイロットは流石に鼻白まざるをえない心境に陥らされていた。

 ここまで敵を見下し罵倒してくる礼儀知らずな敵というのも、この戦争が始まって以来見たことがない。

 と言うより、コイツ本当に軍人か?と疑問を持ってしまうほど社会性に問題点がありすぎている。到底、上意下達の軍隊でやっていける人格をしているとは思えないのだが、相手はそんな彼の困惑に頓着した様子もなく、相変わらず一方的に罵倒と非難を浴びせまくってくるのみ。

 

『政治屋どもや政商どもが利権の奪い合いのために始めた戦争の中で、兵士にとっては連邦がどうのジオンがどうのと、どうでもいい政治の都合話だろうがバカが。

 俺たち兵士は撃てと命令されたときに、撃てと言われた方向に銃口向けて引き金を引くだけ。撃つことを決めるのも上、撃つヤツを決めるのも上。

 俺たちに戦争させてくるヤツが着ている服が連邦製だろうとジオン製だろうと、戦争させられてる俺たち兵士が気にする必要0に決まってんだろうがバカ。どうせ勝っても負けても得するのはお偉方だけ。俺たち兵士は損するだけで鐚一文分け前を分けてくれる親切な政治屋なんざ連邦にもジオンにもいやしねぇよ。

 他人に流させた血で肥え太りたがるヤツらの非課税所得のために遠い異国の地で無駄死して、名誉ある生と威厳ある死とか言う戯言を敵と語り合う奴隷の倫理観がそんなに大事か?

 俺みたいな正常な人間にはまるで理解できん。お前らキチガイ共の屁理屈は昔っからサッパリ理解できた例しがない。狂人は死ね。社会にとっての害獣になる』

『大尉―――ッ!!!』

 

 最後に続いた部下の叫び声を聞きながら、最期までグフのパイロットには相手の言ってる内容が何一つ理解できなかった。

 コイツは何を言っているのか? 何について語っているのか? 一体コイツはどこの世界のどんな出来事を非難しているのだろう・・・・・・そんなことを考えながら、彼は自分でも気付かぬ内に死んでいた。

 

 彼は、もっと考えて行動すべきだったのである。

 奇襲戦法の情報が漏れていた。だから敵はこちらの初撃を完璧なタイミングで回避することが出来た。

 では、他の策を講じてきている可能性は? 伏兵もあり得たし、遠距離からの狙撃もあり得る。大部隊による援軍で包囲殲滅せんというのも兵力に余裕があるなら良いだろう。

 

 だが、一番簡単な奇襲の対処法がある。シンプルな手だ。

 ただ単に『獲物だと思って襲いかかった羊が、羊の皮を被ったキツネだった』という平凡極まる囮作戦。

 

 素手のままだった左腕の偽装を外して、中から飛び出したショルダーガード無しのグフの左腕75MM機関砲を相手のコクピットに押し当てて接射しまくっただけのこと。

 捨て駒亡命者部隊に完全な状態のジムを送ってる余裕がないからと言われて、左腕のないジムが配備されてきたから、戦場に落ちてたグフの残骸から左腕を掻っ払ってきて取り付けてもらい、ジオン軍所属だと勘違いされて味方から撃たれないようにジムの腕部パーツの外装だけを分けてもらった。

 

 ただそれだけだ。後は勝手に相手が勘違いしただけ。自分はまったく何も悪いことはしていない。

 ただ軍人として、正しく碌でもない仕事を真面目にこなして給料分の働きをしただけである。他には何一つやっていない。そんな奴隷じみた勤労意欲など、生まれてこの方持ち合わせていた記憶はない。

 

 

 

 

「さてと・・・。もう一機残ってたんだったな。それとも既に逃げ出したか? ・・・俺にとってはどちらでもいいことか。

 まったく、負ければ地獄に直行させられ、勝てば味方から嫌味を言われて難癖付けられ、裏切り者だと決めつけられたら黒でも白でも銃殺刑。どっちにしても地獄しか待ってない状況というのは気楽でいい。

 俺の意思や配慮に関係なく、上の胸先ひとつで決まっちまう命だったら何一つ我慢してやる必要性がないんだからな。いつ死んでもおかしくない命ほど気楽なものはない。せいぜい死ぬまで自由に生きさせてもらうぞ、連邦軍とジオン軍のお偉い無能の皆様方よぅ・・・」

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