ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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久方ぶりと言うか初めての転生憑依ジェリド2話目を更新です。
本当はもっと先まで考えてあるんですけど(止まってた期間が長いのでね…)書いてみると意外に長かったので、ひとまずはここまでという事で(^^♪


俺はいつかジェリドとして勝利を手にしたい 第2話

「エゥーゴを知らないだと!? ハイスクールの学生が知らないわけがないだろう!」

「・・・・・・」

 

 ティターン憲兵の怒声に、カミーユは答えなかった。

 グリプスにあるティターンズ本部ビルの地下、取調室内で起きている出来事だった。

 

「エゥーゴの分子でない者がなんで! なんでティターンズのメンバーに喧嘩を吹っ掛けるんだ!? え? おかしいじゃないか!」

「・・・・・・・・・」

 

 軍人はデカい図体で大きな声が出せれば偉いのだと思っているかのように威圧的な声を出し、余計な身振り手振りで派手な音を出しまくる恫喝を目的としたわざとらしい演出を強制見物させられながら、それでもカミーユは一言も答えない。返事をしない。己の主張も出自も、ティターンズ技術士官の息子であると言う事実さえ口にしようとはしない。

 

 カミーユの反抗心がさせる行為であった。

 大人に対して『大人である』と言う理由だけで無条件に反発心を抱いてしまえる年齢であり、そうなり易い環境で生まれ育った思春期の少年らしさが彼に理不尽に対して不条理で応じてしまう自分を正当化してしまえる境遇に立たせていたのである。

 

 大人の横暴に対して何も出来ない自分のプライドを守るためには沈黙こそが有効であることを知る程度には現時点での彼は賢く、小利口だった。

 

「釈放だ、カミーユ・ビダン君。お母様が迎えにいらっしゃっている」

 

 ドアが開いて、スーツをまとった別の男の声が取り調べに割って入る。

 

「カミーユ君、スポーツマンはもっとハキハキしなくちゃな。いい声が出ないと勝負には勝てんよ? なにしろ君が身分不詳のスペースノイドなら、四、五日は彼に可愛がられていたところだからな。きちんと自分のことについては説明してあげないと他人には分かってもらえないものだよ」

「そうなんですか。――スペースノイドって?」

 

 カミーユは不利になりかけた話題から話を逸らすために質問をした。それは先ほどまで糠に釘だった憲兵には「カチン」と来る行為であった。

 

「釈放が決まればしゃべるのか? 現金なヤツだ」

「・・・怖いんです。怒鳴る人は・・・っ」

「!! テメェッ!!」

 

 カミーユの挑発に対してアッサリと堪忍袋の緒を切断される憲兵。手にしていたファイルを投げつけ怒りを現す。

 

「マトッシュ!」

 

 カミーユを迎えに来たスーツ姿の紳士が逆に憲兵を怒鳴りつける。

 

「お前まさか、その調子で彼を殴ったりしてはいないだろうな? 彼はフランクリン・ビダン技術大尉のご子息なのだぞ」

「え!? ・・・じ、自分は、その件については聞いておりませんでしたので・・・」

「お前が勝手に持って行ったファイル、今お前が彼に投げつけたあれに情報が書いてあっただろう?」

「・・・・・・」

「相手の親の身分がわかれば黙るのか? 現金なヤツだな」

「・・・・・・」

 

 悔しそうな顔で黙り込むしかない憲兵。所詮、彼は下士官であり、スーツ姿の男はもちろんのこと、大尉など雲の上の地位だ。逆らえる勇気などあるはずがない。

 逆にスーツ姿の紳士としては、弱い者イジメしか能がない下士官なんぞよりも、この機を利用してカミーユの両親に取り入るためにも心証を良くしておきたい理由が十分すぎるほど存在していた。

 出世に縁がない下士官と、上司の顔色を窺うことが出世に繋がる官吏との差が明確に出る構図となった。

 エリートと言えども、ティターンズは軍隊。序列は絶対であり、一兵卒の下士官が尉官に成り上がるだけでも夢のような出来事。まして彼の年齢と地位を鑑みれば夢のまた夢でしかない。

 

 そんな下っ端憲兵のひがみ根性が、目下でイジメ甲斐のあるカミーユに対して過剰なほど横柄で横暴な態度をやらせることを許可していたわけだが、その事に関して少なくとも天は許可したわけではなかったようである。彼には直ぐにも罰が与えられた。

 

 ――本部ビルの建物が、不時着に失敗して落下したモビルスーツの尻に敷かれて地下まで崩落させて、取調室から脱走可能になった囚人が逃げ出していくのを気づきもせずに驚き慌てて怯えながら自分自身も建物の外へと逃亡する愚行を犯してしまい、鬱憤晴らしで虐めていた相手の十七歳少年から盗んだモビルスーツで追いかけ回されて鬱憤晴らしに虐められてしまう未来が確定してしまったのだから・・・・・・。

 

 

 

 

 

「・・・やれやれ。落ち方に気をつけたつもりでも、この有様か・・・。こりゃあ始末書で済まないのも当然の被害だな」

 

 俺は飛行訓練中に誤って不時着した“風を装っている”MkーⅡのコクピットに映し出された本部ビルの惨憺たる光景を視界に入れながら、今さらに原作のジェリドが初っ端から相当なことをやらかしていたんだと言うことを思い知らされていた。

 そして同時に、これほどの被害を『襲撃してきたエゥーゴMS隊を全機撃墜したら不問に付す』と明言してのけたバスクの武力バカっぷりを痛感していた。

 

 功績によって罪を贖わせるのは、専制国家か独裁国の軍隊がやることだろうに。それを建前だけは民主国家の連邦の制度を利用して行っているとすれば、なるほど確かにクワトロ大尉の言うようにティターンズのやり方はザビ家よりも悪質だって言葉にも頷けるな。

 

「・・・しかし、演技とはいえ無関係な味方を巻き込むのは性に合わんな。

 出来れば始末書なんて紙切れじゃなく、エゥーゴとの戦いの中で命を助けることで借りを返したいところだが、どうなることやら」

 

 俺はそこまで言ってからハッチを開き、モビルスーツの外へ出る。

 カミーユとエゥーゴを接触させるためには必要なことではあっても、非武装の職員を含む本部ビルにいた被害者全員に重軽傷を負わせて『所詮は悪の弾圧部隊ティターンズ』の一言で済ませられるほど俺は自分が大人だとは思っていない。思うこと、言いたいこと、言ってやりたいことは山のように抱え込んでいる。

 

 だが、それを表の他人に聞かれるかもしれん場所で言うわけにはいかないんでね。落下の衝撃でドライブレコーダーが故障“してもらった”コクピットの中だけで終わらせておく必要がある。

 

 ・・・しかし、それにしてもカミーユの奴め。これだけの被害を出さないとガンダムのパイロットとしてエゥーゴに参加する選択肢を選ぶ道が生まれないなんて、本当に碌な奴じゃないな。存外、自己申告通りに『人殺ししか出来ることがないニュータイプ』なんじゃないのか?

 

「ジェリド・メサ中尉っ」

 

 混乱する本部ビルで、いの一番に事故現場へと駆けつけてきたのはエマ・シーン中尉だ。

 さすがに優等生らしい真面目な勤務態度だな。他のエリート連中が右往左往している中で一人だけ的確に行動できてるんだから大したもんだよ。

 

「無理な行動が、こういう結果に繋がることは十分にわかっていたはずです。

 せっかく、MkーⅡは加速性が高いけど小回りが利かなそうって忠告してあげたのに!」

「次のティターンズパイロットも来りゃ、焦りもするさ。それに俺は実際に乗って自分自身の感覚で確認するタイプなんでね。バスク大佐の言うとおり即戦力になれるようにって、個人的願望もあったしな」

「だからと言って禁止されてる超低空飛行を居住区でやることはないでしょ!?」

「・・・わかってる。それについては反論の余地がない。自分の驕り高ぶりと未熟さを痛感していたところさ・・・」

 

 この思いついては嘘を吐く理由がなかったから素直に頭を下げて謝っておいた。

 実際、俺がスペースコロニー内での飛行を侮っていたのは事実だったからだ。この日に備えて地上でも個人的な訓練も積んできて準備万端整えたつもりだったのだが、思うように機体を動かすことが出来なかった。その結果が予想よりも被害が大きいこのザマだ。言い訳しようがないとは、この事だな。

 

「せめて民間人の家に落ちないようにするのが今の俺に出来る精一杯だった。反省している。もし良ければだが、次の訓練の時にエマ中尉が計算したMkーⅡのデータをもう一度見せてもらえると嬉しい。この通りだ」

 

 俺は両手をそろえて彼女に対して頭を下げて頼み込む。

 ジェリド・メサはプライドの高い男だったが、優れた相手に対して教えを請うとき女だからという理由で頭を下げるのがイヤだと言うような下衆なヤツじゃなかった。感情をねじ伏せてでも頭を下げれるヤツだった。

 だから俺はヤツのことが好きなんだ。ジェリド・メサとして勝利を手にしたいと思うことが出来る男だったんだ。そのジェリドになった俺が、あいつに出来たことをやれないわけにはいかない。

 もちろん誰にだって頭を下げるわけじゃない。頭を下げるべき相手を選ぶのだって、いい男の条件だと俺は信じている。

 

「何をしている貴様ら! 警報が聞こえないのか!?」

 

 そんな俺からの頼みに対して、中尉が何かを答えようとした瞬間。横合いから怒鳴り声が響いてきた。

 ティターンズの拠点であるグリプスでは珍しい連邦正規軍の軍服をまとって、少佐の階級章を付けている人物。

 ブライト・ノア少佐だ。こんな人は後にも先にもグリプスには一人しか存在しないだろう。

 

「ブライトキャプテン・・・っ」

「隕石群でもぶつかってきてコロニーに穴を開けたのかと思っておりましたが・・・違うのでありますか?」

「地球から上がってきたばかりの貴様に、何が判断できるか!」

 

 その高圧的な口調に、俺は反射的に反感を抱かざるを得なかった。

 原作を見てるときも思ったことだが、彼の言ってることは大体において正しい。だが、相手の心情にまったく配慮を見せることなく、場所も自分の現状も考えずに『緊急事態だから素人は黙って経験豊富な俺に従え』と言いたげな口調は、上意下達の階級社会である軍隊に慣れ過ぎた頭の固い軍人のそれだ。

 これじゃあ、正規の命令系統が通じる場所ならともかくとして、ティターンズのような特殊な連中の集まる場所では要らぬ不満を買うだけだろう。

 

「エゥーゴが攻めてきたとでも?」

「わからん。対応しろと言っている」

「・・・・・・」

 

 俺は無言のまま、近くを通りがかったエレカに乗るため歩み寄りブライト少佐の側を離れた。

 

「中尉! どこへ行く!」

「ジェリド中尉!?」

「ご命令通り対応いたします。エマ中尉、三号機のチェックを頼む」

 

 ブライトの顔を見ることなく、俺は中尉にだけ顔と声を向けて後を任せるとエレカの助手席に座って運転手に発車するよう指示を出す。

 

「中尉! どこへ行く!」

「エゥーゴが攻めてきたなら、戦わなければいけないのがティターンズでしょう。その為に設立された組織なのですから当然のことです」

「でも、中尉。まだ状況が・・・・・・っ」

「それを調べに行くんだろうが!? こんな所で油を売っていて何がわかるって言うんだ! それともなにか? ホワイトベースで艦長を務められた経験豊富なブライトキャプテン一人さえいれば、オペーレーターからの報告やコロニー外の情報がわかってなくても正しい判断と行動が指示できるって言うのか!?」

「・・・っ!! そ、それは・・・・・・」

 

 エマ中尉が口ごもり、ブライト少佐が何かを言おうとしてくるのを見た俺は最後にこれだけは言っておこうと思い、余計な差し出口と承知の上で目上に対して説教を垂れる。

 

「ブライト少佐、仰りたいことはわかりますが、ここはティターンズの拠点であります。いくら上官と言えど部外者に上から目線の命令口調で指示されたのでは無用な不和と混乱を生じさせるだけだという事をご理解いただきたい。

 ここは少佐のやり方が通じていた地球連邦軍本部ジャブローではないのです! ティターンズのことはティターンズの現場に任せられ、少佐は連邦正規軍士官としてご自身の職務をお果たしあられたい! 以上です! ――行け!」

 

 そう言い残して俺は、振り返ることなくエレカを発進させた。

 ブライト少佐がどんな顔で見送ったのか興味はあったが、今はそれどころではない。

 一刻も早くバスク大佐のいるグリーン・ノア2に向かわなければならないからだ。

 

 本部ビルが崩壊した上に、敵に奇襲を受けているグリーン・ノア1にいたままでは対応に必要な最小限度の情報さえ手に入るとは思えない。何よりも現場にいるより外から見た視点の方が客観的な情報が集まるのは当然のことだ。

 

 そしてそれらが集められた先から届けられて、質量共にそろっているのは独裁組織ティターンズの中にあってジャミトフ・ハイマンとバスク・オムがいる場所以外に有り得ない。

 

 

(後はバスクから本部ビルを帳消ししてもらうのを条件として、逃げ出したカミーユたちの追撃用にハイザックを貸してもらえば第一段階はクリアーだ。後のことは変化していく状況に応じて対処してゆくアレキサンドリア流で行くしかないだろう。

 ・・・カミーユさんよ、人がこれだけお前さんを脱走させてやるため骨折ってやってんだ。

 憲兵イジメなんてくだらない真似して、ちっぽけなプライドを満足させてる間に背中から撃たれるなんてヘマだけはしてくれるなよ?

 ――原作の俺みたいな死に方をしたくなければな…)

 

 

つづく

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