基本的にはタイトル通りに屁理屈重視な作品を選抜しております。
ジオン公国と地球連邦政府。双方が死力を尽くして戦いあった総力戦『一年戦争』。
人類を二分したとも言われる大戦が連邦の勝利により幕を閉じてから数年。
地上ではインターバルを挟みつつも途切れることなくジオン残党との戦いは継続されており、勝利国であるはずの連邦軍の限りある戦力を重力の井戸の底へ引きずり込み続けていたのである。
無論、全体としては連邦の圧倒的優位を覆すなど不可能ごとであったが、連邦は一つの国家であって、一個の運命共同体ではない。生きるために一本の足を切り落としただけで生命活動に支障をきたす人間でもない。
『壊死した足の一本や二本切り捨てたところで蚊ほどにも感じない、192の手足を持つ最大最強の化け物なのである』
敵の弱きに味方の全力を傾けさせるのは用兵の常道であり、勝利と犠牲とを秤に掛けて『割に合わない』戦域から兵を退かせるのは戦略の王道である以上は、「社会の絶対的多数の安寧と福祉のために『泥沼化した一部紛争地域からの撤退』を連邦が決断する」のは必然的な帰結であると言えるだろう。
ーーたとえそれが、残された一部地域とその地の住人たちにとって迷惑きわまりない理不尽にもほどがある決断だったとしても、敗戦国のゲリラ相手に無意味な戦闘を続ける体力は勝利国である連邦にも残っていなかったのだから・・・・・・。
斯くして、合議した訳でもないのに双方の軍は暗黙のうちに成立していた無記名の条約調印を執行するために動き出す。
連邦軍は泥沼化したことにより『相対的に価値の低まった』地域からの撤退を開始。
ジオン残党もまた示し合わせたかのように、絶妙のタイミングで撤退が完了した地域への残存兵力集中投入を決定。進軍を開始する。
戦場として選ばれたのは中東エリア。
砂漠に囲まれた小さなオアシスのような小国家群が密集している一帯。
戦前から豊富な地下資源により平和と豊かさを享受してきた土地であったが、大戦に敗北して数を減らしたジオン残党としては『第二のオデッサ』にするため是が非でも欲しい地域であり、希少資源を求めた民間企業が次々と宇宙に重要施設を上げている連邦政府にとっては先の見えた有限の資源ごと切り捨ててもよい頃合いの場所に過ぎなくなっていた土地である。
政府に見放されたことを悟った中東各国は、連邦加盟国としての建前を遵守しつつも裏では違法を承知で出自を問わない傭兵徴募をおこわせており、腕さえ立てば元連邦、元ジオンにこだわることなくアースノイドだろうとスペースノイドだろうと『国家と国民たちの安寧と福祉のために』自衛戦力として傭兵部隊に組み込んでいく。
対するジオン残党もまた内情の悲惨さについては共通していたと言えるだろう。
帰る家を失い、帰るための乗り物は乗客をおいて先に故郷へ戻ったまま帰ってくる気配すら見せてこない。
彼らに残された寄る辺は、ただ『勝利のみ』。
自分たちが地上に降りてきたときに抱かせてくれた夢をもう一度と、彼らは願い信じて突き進んでゆく。
そこには勝利があるのだと信じて。
勝利の果てに祖国の独立と、自分たちの歩むべき栄光の日々があるのだと信じて進軍し続けるより他に道を失っていたからである。
ある時、一人の男がラジオを聴いていたところ奇妙な話を耳にする。
“人はいつか誤解なくわかり合える刻がくる。連邦もジオンも関係なく、スペースノイドとアースノイドが手を携えながら同じ目標に向かって歩めるような未来がいつか必ず訪れる・・・・・・”
その話を聞いた時、男は声を出して笑い、隣を歩く同僚の肩をたたいて見せた。
同僚は逆にさめた表情で肩をすくめる。
そして言う。
「一度の出撃で5000ドル。宇宙世紀の未来トラベルは安上がりになったもんだな」
そう言って二人の男は肩を並べて歩み出す。
一つの目標に向かいながら、二つの異なる色の色と形の機体に乗りながら。二つの言語で二種類の歌を口ずさみながら。
ジオン残党の前線基地まで後3マイル。
ザクとジムが並んで歩く戦場までの道中にジオンの軍歌と、連邦の国歌が低く小さく鳴り響いてゆく。
“いざ行かん、戦場へ♪ 我らが勝利の旗を地上に住む者たちに見せつけるために♪”
“さぁ、赴かん戦場へ♪ 正しき正義の旗を宇宙に住む者たちに示しに征くために♪”