ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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バケモノ書くためにデスティニーを見ていたところ(デストロイ戦です)、急に思いついたので書いてみたら短いからすぐ出来たので投稿してみた作品です。
ヘブンズベース攻防戦にダークセレニアがいた場合はのお話。碌でもない内容ですけど、バケモノできるまでの暇つぶしにでもどうぞ。


機動戦士ガンダム 死のデスティニー PHASE-2

 鉛色の雲に空を覆われたアイスランド沖に、大小無数の艦船が浮かんでいた。

 ヘブンズベース・・・前大戦において壊滅したアラスカ基地に代わる連合軍の指令本部に逃げ込んだロゴス残党を拿捕するためザフト地上軍と連合から脱退した艦船群とが合流した大同盟艦隊による総攻撃が行われようとしていたのである。

 

 

「要求への回答期限まで、あと5時間・・・・・・」

 

 ミネルバの艦橋において、タリア・グラディス艦長が時計を確認しながら呟きを発する。

 ・・・もともとザフト軍の中でもインパルスガンダムを有する艦として中心的な役割を果たすようになっていたミネルバは、ロゴス討伐のため地球へと降りてきたデュランダル議長が座乗艦に指名したことから名実ともに同盟艦隊の総旗艦としての地位を与えられていた。

 

 その船の艦長である彼女は、開戦初期のように若造として侮られることもなくなり、尊敬の念と憧れと・・・それと同質同量の嫉妬と妬みを向けられる立場に今ではなっている。

 

「やはり、無理かな?」

 

 そんな彼女にゲスト席からお声がかかる。振り返った先にプラント最高評議会議長デュランダルが困ったような笑顔を浮かべて席に座り自分を見つめてきていた。

 彼は今回の作戦開始に先立ち、ジブラルタル基地を出発するおり「ヘブンズベース」に対して降伏勧告を通達していたのであるが、未だ何の回答も返されないままなのである。

 

『最後まで諦めることなく平和的解決の道を探り続ける』とする、彼の政策方針に則った行動ではあるものの、艦橋から見上げれば民間のヘリコプターが空を飛び、氷の海には明らかに軍属とは思えない船舶の姿があちらこちらに見受けられ、さらにはテレビの生中継により今回の壮大な包囲殲滅戦の経緯が世界中に放送されながら戦うことになる状況を客観的視点で見たならば。

 

(・・・まるで子供のゴッコ遊びよね・・・)

 

 と、不味い皮肉の一つも浮かんできてこざるを得ないのが現状におけるグラディス艦長の立場であり、素直にそうとは言えず沈黙を返さざるを得ないのもまた彼女の難しい立場というものでもあった。

 

「戦わずにすめば、それがいちばん良いのだがね・・・・・・」

 

 やりきれない表情でひとりごちながら、一瞬だけ議長が考えていたのは別のこと。

 ・・・先日、ロゴスメンバーの情報を公開して市民を暴徒化し、テレビ中継による演説で煽り立てることで襲撃させたときのことだ。99パーセントまで計画通りに推移していた計算に、たった一点だけ黒ずんだ不快なシミが付けられていた。

 

 ロゴスの中で最年少メンバーの屋敷を襲撃した暴徒たちが返り討ちに遭い、逆に全滅させられてしまったのである。

 そこまでは想定の範囲内であり、選択肢の変更で対処できる程度の誤差でしかなく、むしろ被害者たちを悼む想いが、対ロゴス連合軍にあらたな憎しみと正義の炎を宿してくれると敵自らが掘った墓穴に祝杯を挙げたくなったものだが、現場の映像を見せられた瞬間、そんな想いは1ミクロンの塵も残さずこの世からきえてなくなってしまった。

 

 ヒドかった。余りにも酷い有様だった。それこそ、こんなものを誰かの目に触れさせてしまえば折角燃え上がった対ロゴスへの怒りと憎しみの炎に冷や水をぶっかけられることは間違いようのないほどに凄惨すぎる光景。

 

 それは、ロドニアにあった研究所を見たことがある者でさえ吐き気を堪えられなくなるほど悲惨すぎるスプラッター映像がごとき現実の光景。

 串刺しにされて野晒しにされた一般市民の死体を切り刻み、被害者たち自身の血文字で綴られていた文章にはこう記されていた。

 

『我々をこうしたいのなら、こうされる覚悟を持って攻めてきなさい』

 

 ・・・デュランダルは映像を見たその場で証拠隠滅と、この件に関しての徹底した情報管制を敷かせるよう厳命した。

 

(あんな真似が出来てしまう人間が、ロゴスにいたとは予想外だった・・・可能であれば、余計な小細工を労する時間的余裕を与えず一気呵成に攻めかかり殲滅してしまいたいのが本音なのだがね・・・)

 

 そう思いながら、彼もまた本音を口に出す訳にはいかない立場にある身である。

 今は個人的感情で先走っていいときではない。

 このあと数時間後には、新しい世界を始めるための狼煙となる戦闘がはじまるのだから・・・・・・

 

 

 

『こちらヘブンズベース上空です! デュランダル議長の示した要求への回答期限まで、後三時間と少しを残すところとなりました』

 

 上空を旋回しながら戦況を撮影し、コメントまでしてくれる親切なマスコミを乗せたヘリコプターが同盟艦隊直上を飛行しながら全世界に向けて生中継を行っている。

 

『――が、未だ連合軍側からは何のコメントもありません。

 このまま刻限を迎えるようなことになれば、自ら陣頭指揮に立つデュランダル議長を最高司令官としたザフト、および対ロゴス同盟軍によるヘブンズベース攻撃が開始されることになる訳ですが・・・・・・おや? あれは―――』

「・・・? なんだ・・・?」

 

 アナウンサーによる実況解説の声が途中で止まり、不審げな呟きが発せられるのを艦内放送で垂れ流しにされていたものを聞き流していたデュランダルの耳にも入る。

 卑劣極まるロゴスらしい通告抜きでの先制攻撃でも仕掛けてきてくれたのかなと、艦隊後方の安全圏内に旗艦を配置していた彼は気楽にそう考えていたのだが、実際に目にした光景はやや意表を突くものであった。

 

「・・・光?」

 

 デュランダルが目にしたもの、それは雲に向かって照射された光だった。より正確に表現すれば、鉛色の雲をスクリーンにして映し出される、どこかの国で撮影された何かの映像。

 それは映像だけで音は付属していなかったが、ヘブンズベース側から流されてきた音声により映像の内容と一致してリアリティと説得力が付与されていた。

 

 その映像の第1シーンは、こういうセリフから始まる。

 

 

『――気をつけろ、ステラ! そいつはフリーダムだ! 手強いぞ!!』

 

 

「な・・・にぃぃ・・・・・・っ!?」

 

 

 その映像を見せられ、その音声を聞かされたとき。デュランダルはその一言だけを呟くのがやっとの心理的窮状に追い込まれていた。

 

 それはロゴスを炙り出すために彼が使ったのと同じ、燃えさかるベルリンの映像。

 ――そのノーカット版が、今全世界に向けて同時生中継がなされている前で無料再放送で垂れ流されている。

 ジブリールの屋敷を占拠した部隊が回収したはずの映像が、自分たちが突入するより大分前にロゴスメンバーが全員で観戦していたその映像を、どこかの誰かが録画させ続けていたもの。

 

 それが今、ザフト軍の手で連合政府が秘匿し続けてきたロゴスという真実を公開された市民たちの前に、連合軍の側からも提供できる真実として情報公開されたことにより・・・・・・一つにまとまりかけた世界に再び大混乱をもたらそうとしていたのである。

 

 憎しみという名の友情で結ばれた対ロゴス同盟軍の絆は、真実によって軛を打たれ、亀裂を入れられてしまった。

 事実を公開された議長としては、自身が隠していたフリーダムとアークエンジェルの存在について何らかの納得のいく説明を味方になってくれた者たちに対してしなければならない。

 事実を上回る真実性を持った『虚構』によって、彼は自らのついた嘘を正当化して事実に対抗しなければならなくされてしまったのである。

 

 偽りの団結によって結ばれた、憎しみの同盟軍の絆に亀裂が入るまであと残り三秒・・・・・・

 

 

 

 

 悪い意味で盛り上がりだした対ロゴス同盟艦隊を横目に見ながら、対極に立つヘブンズベース内のロゴスメンバーは白けた気持ちで、一人の若者を眺めていた。

 盛り下がるメンバーの中で、一人だけ心の底から楽しそうに嬌笑を上げ続けている若者。

 ブルーコスモス盟主、ロード・ジブリール。

 彼は自らが選んで軍事部門を一任していた少女の手腕に、心からの拍手喝采を送りながら、憎むべき宿敵デュランダルの晒す醜態振りを見下しながら大声出して笑い転げていたのである。

 

「ふはははははっ! 見てください皆さん! ご覧ください皆様方! あのいけ好かないデュランダルと、奴の口車に乗せられてノコノコこんな所まで出張ってきたお調子者の寄せ集めどもが右往左往していますよ! どちらの方が正しくて真実なのかと、怒鳴り散らしながらね。近来にない名喜劇だとは思われませんか?」

「ハッピーエンドで終われなければ、喜劇とは言えんじゃろうな」

 

 若者の先走りを窘めるように、皮肉るようにロゴスの一人である老人が葉巻に火を付けながら軽い口調で嫌みを言った。

 もっとも、今このときのテンションが絶好調にあるジブリールに対して、たかだか嫌み一つで効果が上げられるなら苦労しない。

 彼は「フッ!」とせせら笑うとモニターの一つに映し出された、愛娘とも呼ぶべき最愛の少女型敵対勢力自動殲滅マシーンに対して心からの笑顔を向けて言葉を発する。

 

「見事だ! セレニア君! これで敵の団結はバラバラ・・・正義の味方や神のような人間などいないのだという事実を額縁付きで我々から教えてもらえた民衆は、偽りの絆を保つことなどもはや出来はすまい・・・」

『・・・どーも。お褒めいただき恐悦の至りです』

 

 いつも通り、やる気を感じさせない口調と態度は今まで彼を苛つかせることが多かったものだが、こうなってみるといかなる窮状に追い込まれても冷静さを失わない落ち着き払った名将の素質が彼女にあったことを証明するもののように思えてくる。

 

 ――やはり自分の目に狂いはなかった! 彼女を抜擢した自分は正しい!

 

 ・・・愛娘をウソ偽りなき本心から褒め称えながら、同時に自分自身の先見の明を自画自賛する器用さを発揮させながら、それでもジブリ―ルの有頂天振りは止まらない。

 

「しかし、空に浮かぶ雲に光で映像を映し出す演出か・・・・・・アルミューレ・リュミエールの光波防御帯技術の応用に、こんな使い道があったとは思いもしなかったな。今度は私もなにかの折に採用してみたいほど美しい技術だよ、セレニア君」

『であるなら、まずは今を乗り越えることに全力を尽くすといたしましょう。“今度”を迎える前に死んでしまったら堪りませんからね』

「乗り越える・・・? ハッ! 何を言っているのかね、セレニア君。我々は攻めるのだよ。奴を、今日ここからね。

 そのためにこそ君が立案した万全の迎撃作戦であり、誘い込まれた獲物を捕らえるためのトラップなのだろう? ――私は君を信頼しているのだよ・・・セレニア君。

 君“は”、私の信頼を裏切らないでほしいのだがね・・・?」

 

 ベルリンで失敗したファントムペインのネオ・ロアノークを引き合いに出して脅しをかけるように言ってくるジブリ―ルだったが、事この少女相手には糠に釘だ。

 軽く肩をすくめて見せて、いつも通り覇気に欠ける返事を返してくるだけである。

 

『失敗したときの処罰はご自由に。責任者とはそう言うものですからね。別に責任逃れをする気はありませんし、逃げるつもりもないですので適当にどうぞ。

 今は失敗したときのことより、勝つための準備に全身全霊を傾けたい時ですのでね』

 

 老人たちとは違う表現で皮肉を返してくるセレニアに、ジブリ―ルはまたも「フッ!」と鼻を鳴らす。

 

『とにかく皆様方は待っていらっしゃれば宜しいのですよ。映像を見せられた敵軍が右往左往している姿をご覧になりながら、ノンビリと葉巻でも吸いながらごゆっくりと・・・ね?』

 

 ゴホッ、ゴホッ、と。一部のロゴスメンバーから咳き込む声が聞こえてくるのをさり気なく無視するため、VIPルームに同席していた連合軍の高官がジブリ―ルとセレニアに確認とも報告とも判然としない言い方で話しかけてくる。

 

「・・・デュランダルは映像を我々が加工したデマであると味方に説明し、我が方に対しても映像が真実であることの証明と、偽の映像で人心を惑わす悪辣さを糾弾する通信を呼びかけ続けてきておりますが、如何いたしましょう?」

『完全無視です。好きなだけ吠えさせてお上げなさい。飽きたらそのうち勝手に攻めてきますよ。その為に来た人たちですからね。手ぶらじゃ帰れませんし、議長さんの立場がそれを許してくれないと思いますから。

 ――ああ、でも最初に届けられてた降伏勧告にだけは返事をしておいてください。“拒否します”とね。

 “この上は武人らしく正々堂々剣によって雌雄を決しましょう。約束の刻限まで互いに英気を養い、悔いの残らぬ戦をすることを連合の名においてお約束いたします”・・・とかも付けちゃっていいかもしれません。言っても損にならない社交辞令は言っとくべきです』

「・・・了解しました。先方にはそのように通信を送り返し、それ以外の通信はすべて聞き流すよう担当者には通達しておきます」

 

 礼儀正しく述べながらも、その高官の表情は露骨すぎるほど「エゲツねぇ~・・・」と書かれていたが、声に出してなければ問題にはならない。それが大人の社会で守るべきマナーという名のルールと言うものである。

 

 

 

『おそらく敵は、脱走艦は出すことなく一応の団結は保ったまま攻撃を開始すると思われます。その際には引きつけて撃つを味方に徹底しておいてくださいね? わざわざ要塞に立てこもっている側から好き好んで地の利を捨て、出戦を仕掛ける必要性もとくにありませんから。

 デストロイ三機が出れば、通常の機体でアレに対抗できないことは既に知ってるザフト軍としても対抗できる数少ない駒、インパルスを出してくるでしょう。あるいは開戦から結構経ちますし、そろそろ新型の高性能機を完成させている可能性もありますから、性能的に我が方が有利とも限りません』

 

 

『なので待ち戦です。敵艦隊と機動戦力を分断させて各個に撃破するオーソドックスな手法でいきますよ。各員は油断することなく、落ち着いて指示に従ってください。そうすりゃ簡単には死にませんし、死なせないよう私もできる限り努力しますから。

 ――我が方は現在のところ負けていますが・・・・・・まぁ、チェックをかけられただけでチェックメイトはまだされていません。諦めるにはまだ早いでしょう。

 それでは皆さん、自分が死なないように頑張って戦かってくださいね。以上』

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