ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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昨日にご要望をいただいた『戦記好きがキラ・ヤマトに~』の正規版(物語の最初から書くバージョン)を書いてみましたので投稿させていただきました。
…ただ、思っていた以上に覚えてなかったので大部分はあらためてのオリジナルになっちゃいました。ごめんなさい。やっぱり後で書くは良くないと思い知らされましたので、次から書いたのは消さずに取っておくよう意識するつもりです。


正規版・戦記好きがキラ・ヤマトに憑依転生

 

 カタカタカタ・・・。キーボードを叩くリズミカルな音が自分を中心として狭い範囲にだけ響き渡る。

 

《――南アフリカの難民キャンプでは慢性的に食料、支援物資が不足しており。百二十万の人々が生命の危機に直面しています――》

 

 ふと見るとコンピュータ画面の上方に別枠で開いたままにしておいた『戦争の最新戦況報告』を伝えるニュース映像に新たな戦場が映し出されていた。

 

《では次に、激戦の伝えられます華南戦線のその後の模様です。新たに届きました情報によりますと、ザフト軍は先週末、華南の手前6キロの地点まで迫り――》

 

 機械の巨人――モビルスーツに半壊させられて黒煙を立ち上らせている市街地から逃げようとしている難民たちの悲鳴だけが聞こえてきている華南をバックに映し出されている。

 画面前方で戦況を報告しているリポーターの、うわずっていながら抑制のきいた声が不調和だった。

 

「キラ~、こんな所にいたのかよ」

 

 横合いから声がかけられたので顔を上げて、そちらを向く。

 “この身体になってから出来た”二人の友人、トール・ケーニヒとミリアリア・ハウの姿があった。ミリアリアはトールのガールフレンドだから一緒にいるのは不思議じゃない。

 

「カトウ教授がお前のこと探してたぜ」

「見かけたら、すぐ引っ張って来いって。

 なぁ~に? また何か手伝わされてるの?」

 

 僕は“この身体の本来の持ち主”特有の曖昧な笑みを返事代わりに返しながら肩をすくめて、呼び出しに応える準備をはじめる。

 

 カトウ教授は僕が所属している中立コロニー《ヘリオポリス》にある工業カレッジ内にラボを持つ、サイバネティック工学の第一人者で、僕の素性を知った上でいろいろと自分の仕事を手伝わせてくれている。人使いは荒いけど、いい人でもある好々爺だ。

 

 ・・・もっとも“これから起こる事態”を前に、“彼女”が訪ねてきていたことを考えるなら、今僕が手伝わされているデータ処理も“例のアレ”を完成させるために重要な一要素なのかもしれないけども。

 

「お? なんか新しいニュースか?」

「・・・ああ。華南だって」

 

 トールが僕の見ていたPCの画面を覗き込むように身を乗り出してきたので、開いていたウィンドウを操作して、ズームして見やすくする。

 

《こちら華南から7キロの地点では、以前激しい戦闘の音が続いています!――》

「うへぇ~、先週でこれじゃ、今頃はもう陥ちちゃってんじゃねぇの、華南?」

「・・・・・・」

 

 思わず僕は相手の顔を見上げてしまい、相手から不思議そうな目で見られたため慌てて適当な相づちだけを返してお茶を濁す。

 

 ・・・彼は気づいていたのだろうか? たぶん、いや絶対に気づいていないんだろう。

 今彼の口から出た言葉が、『今の時点で華南に住んでいた人々が故郷を失わされていて』『画面に映っていた人々のうち何割かは食糧難で生命の危機に瀕している難民キャンプをさらに追い詰める役割を果たしている現実』を内包してしまっているのだという、当たり前の認識を考えようともしてないみたいだから・・・・・・。

 

「・・・華南なんて、けっこう近いじゃない・・・。大丈夫かな? 本土・・・」

 

 ミリアリアが不安そうな顔と声でそうつぶやいて、トールが恋人の不安を払って上げるためも兼ねてなのか努めて呆気らんとした楽天的な口調で言ってやる。

 

「ああ、そりゃ心配ないでしょう。近いたって、うちは中立だぜ? オーブが戦場になるなんてことは、まずナイって」

「そう・・・? ならいいけど・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 ミリアリアの声から少しだけ不安が薄れたのを感じ取り、僕は敢えてなにも余計な言葉はコメントしようとせずに、教授のラボへ赴くための準備だけに自分の意識を専念させる。

 

 第二次大戦が、ナチスドイツによる中立国ポーランドへの侵攻から始まったという近い過去の事例や、表向きは中立を保ちながら裏では正規軍兵士を義勇軍として派兵していたり、兵器類の軍需物資供給を担ったりしていた実質的参戦国の形ばかりだけ中立国が乱立している過去の戦史にかんする知識なんて、今の時点で言う必要はとくにないんだろう。

 

 ・・・どうせ、もうすぐ思い知らされてしまうのだから、今の時点から恐怖に怯える必要はまったくない。

 二度と戻らない平和な時を少しでも長く味わっていられるなら、それはそれで良いことだと僕は信じているから。

 

 

 僕は空を見上げる。垂れ込める人工的に生み出された雲の向こう側に広がっている、厚さ100メートルに及び合金製のフレームに覆われた人工の大地という名の大空を。

 

 

 ・・・この世界は、平成でも令和でもなく『コズミック・イラ』

 遺伝子操作により最初から優秀になるよう調整されて作り出された人工新人類『コーディネーター』と、地球原産の自然から生まれたホモサピエンスを祖先に持つサルの子孫たる旧人類『ナチュラル』とが種族の違いを大義名分として憎み合い殺し合い、戦争をしている。・・・そんな時代。

 

 

 そして僕の名前は、『キラ・ヤマト』。

 『機動戦士ガンダムSEED』で主人公を務めた少年に生まれ変わった、もしくは憑依した『現代日本の戦記好き高校生』。

 

 そんな僕にとって第二の穏やかな人生も、もうじき終わりを迎えさせられてしまう。

 戦争に、巻き込まれて戦わなくちゃいけなくなる日が目前まで迫ってきている。

 

 スーパーコーディネーターの高スペックだけじゃ、知っていても防ぎようがなかった戦争に、もうすぐ僕らも巻き込まれることになってしまうだろう。

 

 だから今この時だけは、今この時までは平和を心より謳歌しておこうと思う。二度と帰らぬ日々が終わる寸前まで、その幸せと尊さを記憶と心の奥底に刻み込んでおこうと思う。

 

 

 そう思ってPCを閉じる間際、最後の戦況報告を伝えるリポーターの声が鼓膜に届いて、映像が視界に入り込む。

 

 

《――早く早く! 早く逃げて!》

 

 

 そう叫びながら逃げていく避難民にカメラを向けて、救いの手を差し伸べようとすることなく、「自分たちは命がけで悲惨な戦争の現実を伝えに来ている」とアピールするかのような緊張感と使命感に満ち満ちた彼らマスゴミの表情が鼻につき、不愉快になった僕がマシンを強制的にシャットダウンさせる。

 

 これが僕にとっての戦争が始まる前に味あわされた、平和の終わりに感じた最後の不快感だったことを今の時点の僕は知ることが出来ないでいる・・・・・・。

 

 

 時に、CE,70。『血のバレンタイン』の悲劇によって悪化した、地球・プラント間の緊張は一気に本格的な武力衝突まで発展して、戦局は疲弊したまま十一ヶ月が過ぎようとしている時分。

 

 『機動戦士ガンダムSEED』の物語は、『自称』中立国オーブ首長国連邦に属する工業コロニー・ヘリオポリスで極秘裏に製造されていた地球連合軍用モビルスーツ『ガンダム』を奪取するためザフト軍の攻撃を受けるところから始まる。

 

 その時が来るまで平和の残り時間はあと何十分なのか? 戦争までの距離は残り何マイルなのか?

 

 それは、巻き込まれたときに解ることで、巻き込まれない限りは解らないことでしかない。

 今を生きる僕たちはただ、今はまだ終わらされていない最後の平和を記憶にとどめ置くため覚えられる限りは見続けておく。

 ・・・それぐらいしか戦争に巻き込まれる前のスーパーコーディネーター、キラ・ヤマトに出来ることは何もなかったから・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――その頃。

 人工の空の向こう、戦争をしている世界の片隅において。

 ヘリオポリスに向けて工作員を乗せた小型艇を発進させながら、仮面の指揮官が慎重論を唱える部下の提案を却下しながら語りかけていた。

 

「――遅いな。私の勘がそう告げている。

 ここで見過ごさば、その代価。いずれ我らの命で支払わなければならなくなるぞ?

 地球軍の新型機動兵器、あそこから運び出される前に必ずや奪取するのだ。そのためなら多少に犠牲やリスクは覚悟の上だよ。

 ・・・殺されるよりかは殺した方がマシなのだからな・・・フフフフ・・・」

 

 

 

つづく

 

 

 

オマケ『転生憑依キラ・ヤマト君による中立講座』

 

キラ「ガンダムに限らず平成アニメの戦争作品で誤解しちゃった人も多いらしいけど、争いごとに対して中立という立場を取るには厳しい条件が課せられてるんだ。代表的なものを下に記載しておいたから参考にして、戦争と中立について考えてみてね」

 

 

①交戦国による中立領域の利用防止。

②交戦国の戦力、兵器、公債等の供給禁止。

③交戦国との交通通商条約は自由だが、戦時禁制品については交戦国は海上で捕獲することができる。

 

 

・・・等など、他多数。

 

キラ「と、言うことなんですけど。今の話をお聞きになってどう思われましたか? ウズミ様」

 

ウズミ・ナラ・アスハ「・・・・・・その質問への回答は、後ほど政府より公式発表をおこなう予定でいるので、それまで待っていてくれたまえキラ・ヤマト君」

 

 

注:結局この件についてオーブ評議会は、ウズミ代表首長が現職にある間は公式見解を示すことはなく、ヘリオポリスの一件で引責辞任で地位を退いた後、後を引き継いだホムラ新代表によって『全てはアスハ前代表の独断によるもの』と公式の場で発表されたとか、されなかったとか・・・。

 平和の国『オーブ首長国連邦』が抱える歴史の闇は深く、そして仄暗い・・・・・・

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