なお、最近バトル描写が下手になり過ぎる奇病を発症しているため敢えてバトル寸前まで終えておきました。書いてみたら見苦しすぎたものですからつい…改善を急ぎます。
『三号機、聞こえるか。大丈夫だな?』
ガンダムmkーⅡ三号機を強奪して今このときはパイロットになっている少年、カミーユ・ビダンに声が届けられた。
『お肌の触れあい回線』である。
見ると慣れない自分を気遣ってか、自分の乗っている機体と同じティターンズ・カラーの無人mkーⅡを反対側から持って飛行している、歴史VTRで見たことのあるジオン軍のドムを彷彿とさせる黒いモビルスーツがモノアイともカメラアイとも表現しがたい大きすぎる一つ目の瞳をこちらに向けてくれていた。
「大丈夫です」
『そうか。――もう離していいぞ、後に付いてきてくれ』
そう告げて、二機がかりで持ち上げていたmkーⅡ二号機を自分だけで持って先行する機体の後ろ姿に「はい」と返事をするとカミーユは、彼らがコロニー内に潜入する際の戦闘のどさくさで開けてしまった穴にトリモチだけを張って即興の穴埋めをしてある外壁に開いた穴を潜り抜けて宇宙に出た。
「わぁ・・・っ!」
外に出て、カミーユが初めて目にする慣れない生の宇宙の光景は、一言で言って圧巻だった。
まるで自分たちが生まれた故郷へと還ってきたかのような懐かしさを感じさせられる広漠とした漆黒の宇宙には、カミーユをこんな時であると承知の上で心を弾ませざるナニカがあり、彼は思わず不必要なほどバーニアを強く噴かして機体を加速させ、先をいく三機のエゥーゴ所属パイロットたちの隊長を務める男から振り向きざまに苦笑させていたのだが、その苦笑は途中で緊張をはらんだ警戒へと様相を一変させ、僚機に対して予定されていた指示を飛ばす決定を下させる。
「敵の追撃隊が出てきたぞ! アポリー、信号弾だ!」
『ハッ!』
・・・こうしてカミーユが、今までの抑圧され続けた日常からようやく解放された自由を得たことへの感慨を感じていたのとは関係なく、エゥーゴによるティターンズ拠点グリプスへの襲撃作戦は第二幕へとその舞台を移行させるため、彼らの背後から後を追いかけて三機のモビルスーツが接近しつつあったのだった。
「たった三機でティターンズの本拠地を襲撃して、一機も失うことなくmkーⅡ二機を強奪していったエゥーゴの新型MS部隊をハイザック三機で追撃か・・・なるほどな。バスクの奴が大盤振る舞いしてくれるわけだ」
俺は、レーダーに補足できる距離まで近づきつつあったエゥーゴの未確認新型モビルスーツ【リック・ディアス】の後ろ姿を望遠映像でズームアップし、まだ胡麻粒のようにしか映し出されないそれを眺めながら肩をすくめずには居られない心境にさせられていた。
「体のいい威力偵察だな、これは・・・。バスクの奴め、よくもまぁぬけぬけと放言してくれたものだ」
明らかに捨て駒として使い捨てられようとしている自分たちという状況を顧みながら、俺は上官に対して毒づく気持ちを抑えることができなくなってきていた。
本部ビル倒壊の一件で謝罪に訪れた俺に、出撃を命じたとき奴はこう言っていたものだ。
『エゥーゴのMSを全て沈めたら本部ビルの一件は帳消しにしてやる』
・・・と。
明らかに一年戦争経験者であろう敵の手腕、追撃のために発進させられたパイロットは俺を含めて実戦経験の乏しい若手ばかりで占められている。
とどめとして敵の機体は未確認の新型で、こっちは量産配備が完了してから一年以上が経過しようとしているハイザック三機のみ。
今の時点では、これ以上の性能を持つ機体がないとはいえ、だったら数を出して埋め合わせる工夫ぐらいするのが普通だ。
数だけ同じであっても質が違いすぎていたのでは互角の勝負とは、とても言えない。機体の性能もパイロットの腕も“今はまだ”相手の方が圧倒的に上なのは確かなのだから・・・。
『ジェリド・メサ中尉、無理はするな。その機体に慣れてはいないはずだ』
僚機として付いてきてくれているハイザック・パイロット二人のうち、どちらかがグリプスに着任したばかりで新しい機体に慣れてない新入りの俺を気遣ってか声をかけてくれる。
彼らはグリーン・ノア1防衛部隊の所属であり、俺とは部隊どころか配属先のビルがあるコロニーそのものが1と2で違っていて出撃する前に一度会って少し話しただけの関係ではあったが、それ故かえって彼らに恨みがなく怨恨も感じられない。最初から負けて殺されることを知っている戦闘に巻き込むのには罪悪感が沸いてくる・・・。
なんとかして無駄死にだけは避けさせてやりたいと思った俺は、追いかけている敵部隊の一機(仮にアニメ版の展開ならアポリー中尉機だろう)が、緑色の尾を引く信号弾を発射するところを見てとっさの口実に使わせてもらう詭弁を考えつく。
「ティターンズとして、最低限の任務を完了させたい。悪いがここは俺に席を譲って、黙って見ていてもらいたいのだ。頼めないか?」
『しかし、そのハイザックは予備のものを急遽調整し直しただけの代物だ。もともとmkーⅡパイロットの候補としてグリプスに赴いてきたばかりの貴官用に調整したものではない。危険ではないのか?』
フゥ・・・と深呼吸をして、俺は震えそうになる手に力を込めると力を込めて握りしめ、なけなしの覚悟と決意を振り絞ると相手の言葉に最もらしく聞こえるであろう美辞麗句によるごまかしのための詭弁を展開させていく。
「いくら腕がいいと言え、モビルスーツ三機だけで敵拠点を襲撃してくるとは考えにくい。足がなくては、行きはよくても帰りは推進剤が足りなくって宇宙の迷子になってしまうのは確実だからな。
まして、これだけのことをやってのけた連中がMSよりも戦艦の方が推進力が上だという常識を知らんとも思えない・・・」
『!!! 敵の母艦がグリプスの近くまで接近しているかもしれないと言うのか!?』
「もしくは、友軍の旗を掲げている艦の何隻かがエゥーゴに鞍替えする段取りをつけてしまっているかのどちらかである可能性が高いと俺は見ている。
もともと俺たちティターンズは、連邦正規軍からは嫌われているからな。何も不思議はないさ。連邦の半分はエゥーゴになる可能性を秘めていると考えて行動した方がたぶん安全だ」
『で、では貴官は単機で突入してどうするつもりでいると言うのか? 敵の母艦が近くまで来ている可能性があるなら、罠の中に自分から飛び込んでいく愚を犯すだけではないのか!?』
「だからこそ、俺が先行して敵をいぶり出すための生き餌になれるか試してみるのさ。それをアンタら二人には黙って見ていてもらった観測結果をグリプスにいる大佐に持ち帰ってもらいたい。そうすれば少なくとも無駄死にはならんで済む」
『・・・・・・』
俺の返事に相手は唖然としたらしく、しばらくの間は返す答えを逡巡しているのか沈黙が流れる。
相手が余計な気遣いをさせすぎてしまわぬうちに、俺は先ほど考えついた取って置きの切り札的セリフを口にして相手が譲歩せざるをえない状況を完成させた。
「・・・それに何より、今回のmkーⅡ強奪事件の発端は、俺が自分の腕に驕り高ぶってしまったことが原因で起きてしまったことでもある。ティターンズ隊員としても、一人の男としても責任を取りたいのさ。
わがままに巻き込んじまって済まないとは思うが、ここは俺に男をやらせてほしい。――頼む」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・了解した』
それなりに長い沈黙を返事の前に置いてから、ようやく相手は答えを返して機体の速度を徐々に落とし始めていく姿がモニターに映し出されていく。
『武運を祈る、ジェリド・メサ中尉。観測任務は我々が必ずや完了させることを約束するから、後顧の憂いなく戦ってこい』
「スマンな。生きて帰れたらコニャックの一杯でも奢らせてもらうと約束するよ」
『二杯にしてもらおう。俺と相方で一杯ずつのな。――奢り終えるまでは死んでくれるなよ?』
相手からの言葉で、怖さがぶり返しそうになるを空元気と自信過剰な勢いだけで振り払い、俺は未熟で恐れ知らずな若手士官らしく豪語することで自らの戻るべき退路を断つ。
「死ぬつもりはないし、逃げ回りながら撃ちまくっていれば簡単に死にはしないさ。・・・だが、もし死んじまったときには無駄死にはしてくれるなよ?」
『それは誓って約束させてもらう。―――幸運を』
最後の最後に保険としての言葉で締めくくってやると、相手は完全に機体を停止させて遠距離からの観測に集中する構えを見せる。
それとは逆に、ビーム兵器と違って射程の短さから今の距離まで撃ってこなかったアポリー中尉機らしきリック・ディアスがクレイ・バズーカを構えてこちらに狙いをつけている姿も視認でき、俺は単独で格上のエース三人を相手に生き残れる保証のない勝負を挑んでしまった自分の判断と選択を思わず後悔しかけてしまい、慌てて拳を握りしめて強い言葉を放つことで無理矢理それを胸の内に押しとどめるよう努力する。
「・・・俺はジェリド・メサだ。惨敗の連続だろうと、戦場で生き延びられてきた男になったはずなんだ・・・こんなところで呆気なく無駄死にする男であるわけがない・・・」
たとえ、何の科学的根拠にもなってくれない、ただ生き延びてきただけで、最終的には呆気なく死ぬ男に生まれ変わっただけだとしても。
今の俺には『自分は戦場でも生き延びられるのだ』と信じさせてくれる理由として使わせてくれるだけならば、この言葉は他のどんな名言よりも俺を奮い立たせて生き延びるための勇気を与えてくれる! そんな気がしてくれる俺が言った、俺の言葉だ!!!
「今の俺はジェリド・メサになった男だ・・・だとすれば死ぬことはない。運がよければ死ぬことはないのだから、悪運持ちのジェリド・メサがこんなところで無駄死にするはずがない・・・。
俺は、いい男になれる素質と、いい男になれるまで戦場で生き延びられる悪運を持った選ばれた者の一員になったはずなんだ! 運命は全て自分の力で勝ち取って手に入れてみせる!
ジェリド・メサ中尉、ハイザック。前に出る!!!!」
つづく