色々と異論がおありの方も多いかとは思われますけど、今の私の頭だとあんまり頭脳面が役に立たなくて……申し訳ないです本当に…。
そして、まだ決まってない主人公の名前…。
もう何かいい案とかある人いました時には与えてもらいたいぐらいに思いつかなくて困ってますので、アンケート祖化する気はありません故、思いついて人がいました時には遠慮なく適当にどうぞ。どうせ格式ばったのは苦手なタイプで有ります故に。
「あのパイロットは・・・一体・・・?」
地球連合軍マリュー・ラミアス大尉は、自分が搭乗してパイロットの立場を譲ったばかりの新型機ストライクのコクピットに映し出されているモニター向こうの敵鹵獲機体を見つめながら呆然と呟くことしかできなくなっていた。
生身の身体でMSに取り付き、あまつさえパイロットだけを殺して機体は無傷で奪い取るなど、通常の人間がやるには有り得ない行動であり成果だと思わざるを得なかったからである。
互いの位置関係から一連の流れ全てを観測することが不可能だったこともあっただろうが、自分から見える角度からだけ見た場合、敵MSジンを強奪したパイロット・・・・・・彼女自身は名前も性別の知らない存在が異形のナニカのように感じられてしまっても無理のない状況ではあっただろう。
「化け物か・・・・・・? ――うぅッ!?」
「!? あッ!?」
そして戦闘が終了し、自分の命を奪おうと襲いかかってくる敵と戦う『目の前の現実的脅威』が消え去り、『人ではない化け物に見えるナニカ』という非現実的なモノに対しての疑惑が戻ってきた瞬間。
マリュー・ラミアスの中で張り詰めていたいとが一気に切れて日常へと心が帰還し・・・・・・現実的な痛みまでもが急激に蘇ってくる。
4機のGを敵に奪取されるときの白兵戦で敵兵の一人を撃ち倒しはしたものの、戦友を殺された怒りに燃える別の敵兵から銃撃を浴びせられ右肩を負傷していたのである。
死に至る程の重傷ではなかったが、負傷した身体をそのままにMSという機動兵器に乗って途中まではパイロットをこなしていたのだから傷口が広がらない訳がなかった。
「・・・ぐ・・・・・・あ・・・」
「――ッ!! しっかりしてください! ねぇッ!?」
戦闘が終わった日常と共に、敵との戦闘中という非日常によって意識から遠ざけられていた激痛までもがぶり返してしまった彼女の精神は痛みに耐えようとしたが、気を緩めてしまった一瞬に襲いかかってきた激痛に耐えきれる程の経験は年若い軍人である彼女にはない。
耐えきれずに意識を失って、しばらくの間は心と体を休ませてくれる安息の眠りの誘惑に身を委ねるより他になかった・・・・・・。
その一方で、敵が開発中の機体“すべて”を強奪するという作戦に“失敗した”敗軍の将に、事後処理を自分以外の者に委ねて安息の眠りを甘受する贅沢は未だ許されていなかった。
『オロール機、大破。緊急帰投。消火班、Bデッキへ!』
ヘリオポリスを襲撃したザフト軍部隊の指揮官ラウ・ル・クルーゼは、部下からの報告と通信内容にマスクの下に隠された眉を軽くしかめざるをえない窮状に立たされていた。
その表情は部隊の旗艦としているヴェサリウスの艦橋内にあってさえ外そうとしない白い仮面に阻まれて余人に窺い知れるものではなかったが、予想外の結果に対して無心ではいられる状況ではなくなってきていることは誰の目にも明らかだったからである。
「オロールが大破だと!? こんな戦闘でか!?」
所詮は中立コロニー、碌な戦力などないと侮って始めさせた戦闘だったが蓋を開けてみれば、MS1機を大破させられ、強奪に向かわせた潜入部隊もエース1人を白兵戦で戦死させられるという無残な醜態。
そして更に――
「・・・ミゲルとは、まだ連絡が付かないのか?」
「――ハッ。機体反応は消失しておらず、先ほどから呼びかけ続けてはいるのですが、未だ応答はありません・・・」
直接的に部隊の指揮を行わせていた艦長のアデスに確認を取り、改めて強奪に失敗した最後の敵機体を奪うため敵地内で作戦を続行していた最後の戦力も望みが絶たれたことを暗に告げられた後、
「考えにくいことではありますが・・・おそらく、降伏したか、もしくは敵に拿捕されたものと推測されます・・・」
「だろうな」
アッサリと短い言葉でクルーゼは、己の作戦失敗と初戦での敗北を認めた。
機体の反応はそのままに、旗艦からの呼びかけにのみ応えることなく、定時連絡もなし。・・・戦闘続行不可能と判断して降伏したか、何らかの手段でパイロットのみを無力化されて機体を奪われたと判断するしかない状況。
だがミゲルとてザフト軍のエース部隊クルーゼ隊の一員だ。戦闘続行不可能と判断する苦境に立たされる可能性こそあろうとも、機体を自爆させて目くらましに使い自分だけでも脱出する小細工ぐらいは心得ているだろう。
ならば降伏ではなく、拿捕されたと判断する方が可能性は高いと見るべきだ。
これにより、初期に投入した戦力だけでの作戦続行は不可能であることが確定となってしまった。
敵地に侵入を果たした最後の一機が倒され、残る一機は敵エース機と思しきMAに阻まれて未だ目標に辿り着けぬまま一進一退の攻防を繰り返すことしかできていない・・・・・・一時後退と戦力の立て直し、さらには作戦そのものを変更させる必要が出てきたと言わざるを得ない。
敵を侮って仕掛けた末の敗北と失敗だ。傲慢が綻びを生んだのだと、後世の歴史家から笑われるかもしれない醜態。
だがクルーゼは、失敗を失敗のまま終わらせるほど潔い性格でもなければ、諦めのいい敗北主義者になった覚えもない。
「私が出よう。どうやら、いささか五月蠅いハエが飛んでいるようなのでな・・・」
「は?」
訳が分からずアデスは聞き返さざるを得ない。指示の前半はわかる、だが後半の比喩を含んだ部分は何を示唆しているものだろうかと、旗艦の艦長は自分たちの司令官に質問を返したのだが、相手の方にはそれには答えず散文的で具体的な作戦方針のみを説明するのみ。
「私が出たら一旦モビルスーツを呼び戻し、D装備をさせろ。私が敵を引きつけている隙に換装作業を完了させるのだ」
「D装備・・・ですか? 要塞攻略戦用の最重装備の・・・?」
ギョッとして思わずアデスがオウム返しに反問してしまうほど大仰としか思えない指示内容。
彼とて初戦の敗北と作戦失敗は痛手だと考えているが、それでも中立コロニー如きに用いるような武装ではない。いささか以上に遣り過ぎではないのかと堅実な常識人である彼としては思って当然の疑問だったが、笑いかけてくる上官の判断は部下とはいささか判定基準が異なっていたらしい。
「ミゲルほどのパイロットに機体を自爆させることなく強奪してしまえるほどの敵が潜んでいたということだ。私としては敵を侮る愚を二度も犯したくはないな」
「・・・は。しかし・・・」
「連合に残された最後の一機も、そのままにはしておけん。――笑ってくれて構わんが、私にもプライドはあるのだよ。アデス」
「・・・・・・了解しました、クルーゼ隊長」
上官からここまで言い切られては、部下として反論の余地などどこにもない。直ぐさまアデスは敵MAとの戦闘を継続しているジンを呼び戻させるために後退信号を打ち上げるよう命令し、続いてMSデッキにも残るジン部隊すべてにD装備に換装させるよう指示を出す。
――オーブに駐留する地球連合軍残存部隊とザフト軍クルーゼ隊との第二ラウンドが幕を開ける・・・・・・。
そして、その頃。
戦闘が終わっていたヘリオポリス内の一隅でも事態に変化が訪れようとし始めていた。
「・・・う・・・っ、ぐ・・・」
マリュー・ラミアスはゆるゆると意識を取り戻し、「痛み」という名の現実まで思い出してしまって、目覚めた直後の濁った思考を貫くような衝撃に軽く呻き声をあげてしまう。
だが、その痛みのおかげで茫洋としていた意識は完全に目が覚めて現状を認識できるようになり、公園のベンチらしきものに横たえられている自分にも気がつく。
「あ、気がつきました? キラーっ」
瞼を開いて最初に視界に映り込んできたのは、見覚えのない民間人と思しきあどけない表情の少女。
オーブ国の住人だろうか? 自分がいるのがヘリオポリス内の公園だという現状を見ればそれ以外の選択肢はなかったであろうが、目覚めたばかりで思考が通常通りに動かすことが出来ていないマリューには正しく認識するまでにはプロセスが必要となる。その為の余計な手間暇思考と言ったところか。
「君たちは・・・・・・うぅっ!?」
「あ、まだ動かない方がいいですよ」
身を起こそうとして再び襲いかかってきた痛みに苦悶の声を漏らす彼女に、歩み寄ってきていた黒髪の少年から気遣わしげに声がかけられる。
おそらく少女から「キラ」と呼ばれていた少年が彼なのだろう。こちらには見覚えがあり、気絶する前にストライクのコクピット内で会話を交わした覚えがある。
その直後―――
『・・・すげーなー、このガンダムっての』
『動く? 動けないのかな? なんでまた灰色になったんだろうな?』
自分が横たえられていた場所より少し離れた位置から別の少年たちの声が聞こえてきて、ボンヤリとした意識の中で深く考えることなくソチラを振り向くと・・・・・・思わずマリュー・ラミアスはギョッとしてしまわざるをえくなってしまった。
膝をついた姿勢で機能を停止させている人型の巨大ロボット。
【X一〇五ストライク】連合軍が開発した始め手にして最新鋭のモビルスーツ、軍事機密の塊に乗っかって無邪気にコクピットに這い込んでいじくり回している民間人の少年たち二人の姿が視界に飛び込んできてしまったからである。
「――その機体から離れなさいッ!!」
バァッン!!
『う、うわぁッ!?』
咄嗟にマリューは拳銃を引き抜き、コクピット付近に威嚇射撃として発砲してしまった。
無論のこと当てるつもりはなかったし、言った言葉以上の意味はなく、その機体から民間人たちを自主的に引き剥がそうとしたかっただけのこと。決して攻撃の意図はない脅しではあったが、しかしそれは撃たれた側の民間人たちには通用しづらい軍人の事情に基づく射撃でもあるものだったため、当然の様にキラたちは彼女の行動を非難する。
「な、なにをするんですか!? 辞めて下さい!!」
思わず強い声で詰め寄ってしまったキラに対しても、細かく説明してやれる余裕が今のマリューには心身ともに欠けてしまっていて、少ない意識と体力の中では軍事教練の中で染み浸けられてしまった軍人らしい高圧的な語調での態度しか取りようがない。
「彼らなんですよ! 気絶してる貴女を下ろしてくれたのは――あっ・・・!?」
「・・・助けてもらったことは、感謝します・・・」
感謝の思いを込めて言いながら、それでもマリューの身体は教え込まれた軍人としての正しい行動として、キラの眉間に銃口を向けて最低限度の情報提供だけで軍事機密を守らせる方法しか採れない。
「でもアレは、軍の重要機密よ・・・っ。民間人が無闇に触れていいものではないわ・・・」
軍人として軍の機密を守るべき立場にあり、知ってしまった者は【民間人であっても殺すしかない立場】にある彼女としては他に言い様がなかった状況ではあったものの、戦争を他国の出来事としてしか捉えず、軍事機密という言葉の定義すら調べたことが禄にない平和に慣れすぎてしまって平和ボケと言うよりも【戦争アレルギー】とでも呼ぶべき症状に陥っている典型的オーブ国民である民間人の少年たちには、そこまで思いやってやれるだけの知識もなければ見識もない。
「・・・なんだよ。さっき操縦してたのはキラじゃんか・・・」
相手の行動に対する不平不満から、思わず聞こえる様な声量で以て陰口を呟いてしまったトール・ケーニヒのように、自分たちの住まう狭い世界観のみを基準とした価値観の中での善悪しか判断基準を持とうとしなかった彼らには理解できなかった。
自分が言った言葉が、【キラ・ヤマトは連合軍の軍事機密を詳しく知ってしまった事実を示す証言】として、友人を有罪判決させてしまうことに貢献してしまう失言だったことなど、彼ら狭い世界だけを世界の全てと勘違いしている少年少女たちには解りようがなかったから・・・・・・。
そんな中、彼女たちの頭上から声が振りかけられてくる――
「皆こっちへ。一人ずつ名前を言いなさ――」
『そう軍紀軍紀とギャンギャン吠えなさんなよ、美人の姉ちゃん』
「!? だ、誰!? ・・・あ」
声に振り返って、銃口と共に視線を向けた先でマリューはもう一つの現実を思い出す。思い出しさざるをえない。
そうだ・・・どうして今まで思い出せないままでいたのだろう・・・。あまりにも現実味のない出来事に脳が理解するのを拒んでいたとしか思いようがない・・・。
自分が向けた銃口など比べものにならないほど巨大すぎる砲口を持つライフルを片手に、巨大すぎるシルエットが彼女たち全員を見下ろす様にそびえ立っていた。
モビルスーツ・ジン。
ザフト軍の量産型モビルスーツであり、人類が開発した人類初の人型の巨大な戦闘用マシーンMSの正式な第一号機とも呼ぶべき機体。
そして―――先の戦闘で敵から無傷で奪い取ってしまった、今や自分たちの側の戦力となっている一つ目の巨人兵器でもある存在。
『民間人しか生き残ってない中で、軍紀軍紀と喚いたところで理解なんざできやしないよ。
“軍人は大きな声が出せればそれでいい”と内心で見下しを買うだけさ。悪いことは言わないから辞めときな』
「――ッ、事情はどうあれ軍の重要機密を見てしまった彼らは、然るべき所と連絡が取れて処置が決定するまで私と行動を共にしてもらわざるをえません!」
発作的に強い口調でそう返してしまったのは、彼女自身が相手の言ってる言葉を正しいモノの見方だと認識してしまったせいだったのだろう。
誰だって自分たちがやっていること、尊ぶべきモノだと教えられてきたことが無意味であるなどとは思いたくはないし信じたくもない。
連合軍人として生きてきて、ストライクの開発を純粋な祖国愛から行ってきた彼女からしてみれば相手の放ってきた正論は、あまりにも今までの自分を否定することと繋がってしまわざるを得ないモノだったから。
『そうかい。その割には軍の重要機密を開けっぱなしにしといたまま、ノンビリ昼寝を決め込んでいた美人士官の姉ちゃんがどっかにいた気がするけど、ありゃアタシの幻覚かい?』
「・・・・・・ッ!! 黙りなさい! 何も知らないくせに・・・・・・ッ」
思わず強い口調で罵倒しなければならなくなるほど、相手の言葉はマリューの痛いところを突きすぎていた。
軍人は、自分の弱みを見せることが出来ない。敵から攻撃されたら撃ち返すしかない。それが――軍人に与えられた任務だ。
「オーブは中立だと、関係ないと言っていれば今でもまだ無関係でいられる、まさか本当にそう思っている訳ではないでしょう・・・ッ!! ここに地球軍の重要機密があり、彼らは其れを見た。それが彼らの現実です!! だから―――」
マリューの言葉はそれ以上続くことはなかった。
続けられなかったからだ。
ガガガガガガッッ!!!!!
・・・・・・相手に口を閉ざさせるため、最も手っ取り早い手法。
【空に向かって発砲する威嚇射撃】を、近くに立つ巨大人型ロボットが手に持つ大砲の様な大きさのライフルを使って実行されてしまった以上、人しか殺せない豆鉄砲しか持たないマリューに口を閉ざす以外の選択肢など与えられている訳がなかったのだから・・・・・・。
『吠えんなっつってんのよ、死に損ないが。文句があるなら連合だけの力でザフトを倒してからいいな。そうしたら聞いてやるわよ』
「・・・・・・っ、」
マリューの美麗な顔が激しく歪む。あまりにも相手の言ってくる言葉は正しくて、まるで暴力としか聞こえなかったからだ。
凶暴で、野獣の様な人物・・・それがマリュー・ラミアスが特異体質のナチュラル少女と初めて声を交わして会話をしたときに印象づけられた最初のイメージ。
――だが、それは直ぐに改められることになる。
『それとだな、坊主共。お前さんらも、あんまり軽々しくモビルスーツに触れてやりなさんなよ。それ知られないために銃口向けてくるほど怒ってくる相手なんだ。これ以上知っちまったら戦争に巻き込れて兵士にされちまうぞ?』
「ひ、ひぇッ!?」
続いてかけられた声にトールたちはギョッとして、先ほどまで触れてしまっていた白く巨大な今は灰色のモビルスーツを見上げ、先ほどまでとは異なる感情を持った視線をガンダムを見る瞳に浮かべ直していた。
それは“恐れ”であり、“恐怖”だった。
トールたちオーブ国民には、あまりにも戦争に対しての実感がなく、他人事として見過ぎていたせいで『兵器に対する当たり前の恐怖心』までもが鈍化しすぎてしまっていたのである。
銃で撃たれれば人が死ぬ。ナイフで刺し殺されれば人は死ぬ。
そんな当たり前のことを、当たり前の出来事としか受け止めておらず、『自分たちの身にも当たり前に起きえること』とは認識しなくなっていた事実にようやく気がついたのだ。
マリューが思わず「上手い」と思ってしまうほど、相手が少年たちに示した気遣いは有効に作用していた。
火薬庫の側で火遊びをしてしまっていた事実に遅まきながら気づいた少年たちは、モビルスーツから一刻も早く離れたくて仕方なくなっているのが一目で分かるほど怯えきっており、その反応が先ほど行った威嚇射撃の効果であることは軍人であるマリューの目には明らかだったからだ。
人はとかく暴力に弱い。行動で従わせるだけなら暴力ほど安易で楽な手段は他にないだろうと思えるほど、軍事力というモノは人々を従わせて上位者たちの優位性を守る上でも有効に作用する。
国というものが戦争を忌避しながらも軍隊を手放すことが決して出来ず、時に軍隊そのものが国家の中の国家と化してしまうことさえ有り得るのは背景として、それが関係している所以だろう。
だが一方で、軍事力によって出てきたものは例外なく武力制圧の印象を市民たちに与えてしまわざるを得ないのも、また事実だ。
力尽くで行動を従わせようとすればするほど内圧としての不平不満は高まりやすく、反抗心を刺激してしまう結果を招いてしまう。
平たく言ってしまうなら、力尽くで押しつけてくる奴らは『気に食わない』のだ。
理屈がどうとか、正しいとか間違ってる以前に感情面で気に食わない。
だから気に食わない支配者共を打倒するためなら、手順を無視してメンツを丸潰しにする様な行為をやってのけるだけで世論が味方し、民意を得ることさえ可能になってしまう状況さえ有り得てしまう。
だが一方で、暴力というモノは自分たち以外に向けられている限りは、それほど高圧的には感じられない側面を持っており、それが『他人事である間は』武器を武器として認識しようとせぬままに、気づいた途端に今まで平気だったモノを手の平返しで非難したりするようにもなる。
それはオーブ国に住むヘリオポリス住人達が身を以て体現してくれている人間の心が持つ悪性だ。ならばそれを上手く刺激して利用すればいい。
戦争の理屈は理解できずとも、自分が死んだり殺されたりする可能性が高いと解れば人は自主的に静かになり大人しくなってくれるもの。後は方法論が高圧的に見えなければそれでいい。
だからこそ先に少年たちが敵視していたマリューに向けて威嚇射撃をして見せてから、言葉によって少年たちに『先の攻撃が自分たちにも及ぶ危険性』を自主的に考えさせて怯えさせた。
マリューは相手が、ただ凶暴で勇敢なだけのパイロットではないことを理解した。
『――まっ、そういうこった。取りあえず今は美人の姉ちゃんの言うとおり動いて、迎撃準備でも整えようや。・・・次が来るまで多分、時間はあまり多くない・・・』
「え・・・?」
マリューは驚いた様に顔を上げる。
彼女とて追撃の可能性は考えていたが、それはあくまで軍人として当たり前の対応としてすべき事をしようと考えていたに過ぎず、相手の声音に込められていた深刻さとの間にはギャップが激しかった。
だが相手のパイロット・・・・・・今はまだマリューは、キラと同年齢の少女とは想像さえしていないナチュラルの不良女子学生はコクピットの中で確信と共に呟いていた。
「ここまでやった敵の司令官だ。中途半端に終わらせるようなマネはしないだろうな・・・? 頼むぜザフトの指揮官さんよ、戦い甲斐のある敵であってくれると嬉しいもんだ」
そして笑う。
楽しそうに犬歯を剥き出しにして、凶暴そのものな笑みを満面の笑顔という形で心の底から純粋に―――。
つづく