ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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『戦記好き転生キラ』を更新。
本当は、ムゥVSラウや、ユウキ二尉の話も含めることで今作らしい1話分とする予定だったんですけど眠いです。
細かいことは明日、ジックリ考えながら書ける時間に書くようにしますね。今無理して最後まで書いて出すと、絶対ダメになりそうですので……


正規版・戦記好きがキラ・ヤマトに憑依転生 第5話

 ドォン! ドォーッン!!

 

 遠くの方から爆発による爆発音が残響となって響き続けてくる中で、僕はカガリを――今はまだ知らないはずの名前を呼べない女の子の手を引いて、工場区画へと続く地下通路の中をひた走っていた。

 モルゲンレーテが密かに開発中だった《X105ストライク》が保管されている場所へ至るためだ。

 キラ・ヤマトにとって、初期の代名詞となる機体が鎮座している場所へと続く細かい道のりを、描写していた原作シーンというものはない。だけど、ある程度の目星はついていた。

 

 モビルスーツサイズの代物を開発可能で、軍事機密として関係者以外の立ち入りが禁止されている空間。

 しかも開発がスタートするのは、連合側が予想外の苦戦によって戦局が膠着状態へと陥ったぐらいからという時期が条件として加われば、候補になれる場所は限られてくるしかない。

 

「!! ここ――っは・・・・・・」

「~~・・・ッ」

 

 照明が停電して暗くなった通路を抜けた先にあった開けた場所へと辿り着いた瞬間、僕は眼下から聞こえてくる銃撃戦の音と、キャットウォークから見下ろす先でトレーラーに横たえられている灰色の巨大兵器を前にして、目的地に間違えずに到着できたことを悟らされて思わず声を上げそうになってしまうのを寸でのところで原作セリフに近い言葉に言い直す。

 

 そんな僕の横ではカガリが、視界の先に見える2機のロボット兵器を――僕たちの母国である中立国オーブが条約を反故にして連合軍に加担し、密かに開発させていた連合製のモビルスーツである《X105ストライク》と《X303イージス》の姿に愕然とさせられた姿が視界の隅に映っていた。

 

「・・・やっぱり・・・地球連合軍の新型機動兵器・・・・・・っ」

 

 呻くように、そう呟きながら力なく「ガクリ」と膝を折った彼女はやがて、

 

「お父さまの、裏切り者ッ・・・・・・!!」

「っ! マズい!!」

 

 工場区画内という場所柄故か、カガリが通りやすい声音の持ち主だったのか、予想していたよりずっと大きく響いたカガリの悲鳴じみた声に驚いて、正面の敵と抗戦していた作業服の女性連合軍人――マリュー・ラミアス大尉が振り返って、背後から敵に挟撃されたと思い込んでしまったらしい僕たちに銃口を向けてきた姿を目にした瞬間、僕は咄嗟にカガリの手を引いて無理矢理立ち上がらせると再び走り出して、脱出用の避難シェルターの目印がある場所まで改めて走り出す!

 

「泣いてちゃ駄目だよ! ほら走って!」

「うっ・・・、く・・・っ」

「泣いてたって何も出来ない! とにかく今は走るんだ! こんな所で殺されたいのか!?」

「――ッ!? ~~~ッ!!」

 

 その途中で、思い詰めやすくて泣きやすいカガリを叱咤して、励ましながら無理矢理にでも走らせ続けて、どうにか一番近くのシェルターまで辿り着くとスイッチを押す。

 ピピピッ!と、中から呼び出し音が響くと同時にスピーカーから男の人の声が聞こえてきて、

 

『――まだ、誰か残っているのか?』

「はい! 僕と友達もお願いします! 開けてください!」

『2人!?』

「はいっ」

 

 僕からの呼びかけに対して、相手の男の人は“人数だけ”に驚いた応答をしてくるのを聞かされて、僕は内心でホッとする自分を感じさせられていた。

 

 良かった、と素直に思ったんだ。このシェルターに原作通りの人が逃げ込むことが出来たと分かって、それを嬉しく感じている今の自分の体と心がある。

 僕がそう感じているんじゃなく、『キラ・ヤマトの肉体』が、僕にそう感じさせているんだ。

 どうやらキラ・ヤマトの肉体は、本来は知らない僕だから知っている原作知識であろうとも、『その犠牲があること』を知っている事柄に対しては精神に働きかけてくるほどの強い影響力を発揮してくるらしい。

 それはキラが、持って生まれた才能とは真逆に、“そういう事”に対して異常なまでのアレルギー反応を示してしまう精神性の持ち主であることを否応なく知らしめてきて、将来的なことを思えば不安にもさせられそうになるけれど・・・・・・とにかく今は、他にやるべき事があるっ。

 

「もし人数に余裕がないようでしたら、一人だけでもお願いします! 女の子なんです!」

『女の子・・・・・・わかった。すまん! 左ブロックに37シェルターがある、そこまではなんとか走ってくれ!』

「ありがとうっ」

 

 時間節約のため、結果が分かっているやり取りを省略して告げた僕からの提案に、スピーカーから聞こえてくる男の人は入り口のロックを開けてくれた。

 最後に告げたお礼の言葉が聞こえていたかどうかは分からないけれど、とにかく僕はカガリの両肩を掴むと、未だに落ち込んでいるらしい彼女をシェルター入り口のドアの中へと無理やり押し込めるように押さえつける。

 

「え・・・? な、なにをっ!? 私は・・・っ」

「いいから入って! 僕は向こうに行く! 大丈夫だから! 君はきっと大丈夫だから!」

「待て! お前いったいな―――」

 

 何かを感づかれてしまったかもしれない彼女の言葉を最後まで聞くことなく、僕はボタンを押して、プシュッという空気が漏れる音共に扉が閉まり、カガリの姿が地下シェルターへ向かって急速に降下していくのを確認すると再び走り出す。

 

 今来た道を逆方向に逆走し始めたんだ。

 今度の目的地は男の人から教えてもらった、左ブロックのシェルターじゃなく、未だに銃撃戦が行われている工場区画の一角。

 

 キラ・ヤマトが初めてマリューさんと合流できた時には、すでに向こう側のシェルターには“ドアしか残っていない状態”になっていた。

 なら今更どうしようもなかった・・・最高の性能を生まれ持たされたスーパーコーディネイターだろうとも、死んでしまった死者に対しては無意味で無力。それが戦争の絶対原則。

 どんなに神を気取って傲慢な姿勢で研究を続けようと、死を克服することができない神様モドキによって創り出された存在が持つ力なんて、その程度のものでしかあり得ないのだから・・・!

 

「ぐぉっ!? ら、ラミアス大尉・・・っ」

「ハマダ!? ブライアン! 早く起動させるんだッ!」

 

 工場区画まで走りながら戻ってくると、マリューさんが生き残った部下たちを率いてストライクを背にして防衛戦を展開させながら、自分たちが時間を稼いでいる間に機体を起動させる作業を行わせている耳に入ってきた。

 

 だけど、どう足掻いても状況は彼女たちに不利な方へ作用しているようでもあった。

 キャットウォークに立って、全体を俯瞰して見下ろせる位置にいるからこそ分かったことだけど・・・・・・ザフト軍の歩兵部隊はバーニアを使って四方だけじゃなく、上からも狙える位置に陣取って立体的に戦場を活用しながらストライクに迫りつつあった。

 対して連合軍側は、ただサブマシンガンで武装しているだけの通常歩兵だから、平面的な戦闘で普通の銃撃戦しかやりようがない。

 

 ただザフト軍は数が多くないことだけが、連合軍側のマリューさんたちに有利に作用しているようでもあった。この場にいる敵兵たちだけを排除してしまえば、後続はないと見ていい。

 

 そう判断した僕は周囲を見渡し、機体の凹凸を遮蔽物にしながら牽制射撃を行っている彼女を狙うことが出来そうな位置を探し出そうとして・・・・・・いた。

 

「危ない後ろ! 11時方向っ!」

「ッ!? ――ッ! ッッ!!」

 

 僕の声に反応して即座に振り返ると、指定された方角に向かって引き金を引く彼女。

 ただ発砲音はあまり響かなかった。弾を節約したわけじゃなくて、逆に弾切れになったみたいだった。

 振り向きざまに放った最初の数発だけが音を伴って発射され、その後は引き金を引くだけで音は出ず、それでも気付かれていない背後から狙い撃つつもりだったらしいザフト兵の緑服にとっては完全に意表を突かれた一撃だったからなのか、アッサリと事切れて倒れ伏す姿が僕の視界にも少しだけ写ってきていた。

 

 まるで出来損ないのマリオネットが、糸が切れて倒れていくみたいに不格好な死に方が、妙にリアリティを感じさせてくれず、僕の心を逆にゾクッとさせてくる。

 

 ・・・・・・人がこうもアッサリと、何でもないことのように死んでいく姿を見ても、大した残虐性や非人道的な印象が残らない人の殺し方・・・・・・銃の登場で成し遂げられた、殺意の簡便化。

 もしこれが、モビルスーツという自分ではレバーを引いてるだけで人が大勢殺せるような兵器を大量生産できるようになってしまった時には、どういう感じ方を人はするようになってしまうのか・・・?

 その考えの先に『ムルタ・アズラエル』の姿が重なって見えてしまい、僕の背中は戦慄せずにはいられなかったから――。

 

「さっきの子か!? なんで・・・・・・来いっ!!」

「大丈夫です! 左ブロックのシェルターに行きます! お構いなく!」

 

 マリューさんからの呼びかけに、僕は謝絶の言葉を返事として返していた。

 もちろんキラ・ヤマトに転生憑依しただけで、キラ本人ではない僕は自分の言葉がすでに実行不可能であることを知っている。自分が言った場所がドアしか残らなくなった後になっている事実をすでに知っている。

 

 ただ、自分が知っていることを知られないために言う必要がある言葉だった。的確すぎる言葉や助言は疑いを生む理由になる。ある程度の間違いや過ちは犯しておいた方が、僕みたいな立場の人間には都合が良かったんだ。

 

「あそこはもう、ドアしか無いッ!! こっちへ!!」

「りょ、了解・・・っ」

 

 彼女から再度の呼びかけを聞かされ、ほんのわずかに逡巡するフリをして見せ、近くの通路から爆発が生じて爆風に転がされてから、少しだけ安全性の上がった状態の工場区画へとキャットウォークから飛び降りて着地して、高さと運動不足がたたって足が少ししびれてしまいながらも、彼女の元へと走り始める。

 

 ――だけどその時、僕たちの位置からは見えない側面に展開されていた戦場で、連合軍兵士とザフト兵との間で思わぬ勝敗の結果が生じてしまっていたことを、僕は完全には把握できていた訳でもなかったらしい。

 

 連射可能なサブマシンガンという、命中率の高さこそが重要な武器を互いに撃ち合い、当たってしまえば貫かれて即死してしまう恐れもある程度の耐久力しか持たされていないモビルスーツ姿での銃撃戦において、思っていた以上にコーディネイターとナチュラルとの能力差は戦闘結果に影響を及ぼしにくい部分があったらしい。

 

 ズダダダッ!!

 

「ぐわッ!?」

「ラスティ!? くそぉぉぉ―――ッ!!」

「うお、わ・・・ッ!」

「ハマダ!? きゃあッ!」

 

 最後に残っていた連合軍の歩兵が、まぐれ当たりか狙った結果だったのか、襲撃してきたザフト軍の赤服エース1人を射殺してしまう大金星を上げたことで、結果として襲撃部隊側も最後の生き残りとなった人物が怒りに駆られて銃を乱射しながら突貫し、赤服を射殺した連合兵を打ち倒すと、続いてマリューさんにも銃を向けて発砲して負傷させてしまったのだ。

 

 正直、自分では早めに動くことで一人ぐらいベテランを生き残らせれるかと考えていたんだけど・・・・・・どうやら驕り高ぶりも度が過ぎていたらしい。足がしびれてる状態では、今からだと原作通りに動くぐらいしか出来そうもない。

 

 僕は、負傷したマリューさんの元まで歩み寄って、倒れそうな彼女を支えようとし。

 相手の赤服エースは、感情任せに乱射したせいで弾が切れた銃を手放し、軍用ナイフを抜いて彼女にトドメを刺すため駆け寄ってこようとする。

 

 その瞬間だった。

 僕と相手が、互いに同じ目的を目指して、まったく真逆の理由と目的のために、逆方向から到着したことで互いの顔を互いに見える位置まで来てしまって見つめ合う形になってしまったのは―――

 

 

「――キラ・・・?」

 

 ナイフを構えたまま、ヘルメットのバイザー越しに聞こえてきた少年の声に顔を上げ、僕もまた相手の顔を見つめ返すと、その人物の名をハッキリと呼んだ。呼んでいた。

 

「アスラン・・・・・・アスラン・ザラか・・・っ!」

 

 意志の強そうな緑の瞳の中に僕の姿が――キラ・ヤマトの姿が映っているのが見て取れた。

 成長と共に鋭さを増した物静かな顔立ちは――僕が好きだったアスラン・ザラの面影を完全に消し去ることまでは出来ていなかった。

 

 

 そんな僕とアスランとが――キラ・ヤマトの肉体とアスラン・ザラ本人とが炎に包まれつつある工場内で、三年ぶりに予期せぬ再会を果たすことになって動きが止まってしまってしまっていた、その瞬間。

 

「~~っ、えいっ!!」

「な――ッ!? くそッ!」

 

 パンパン!と拳銃弾が、動きを止めた敵兵の隙を突いたマリューさんが負傷の痛みに顔をしかめつつ、アスラン目掛けて発砲する音が響き渡った。

 位置と距離的に不利と見て取ったらしきアスランが、幾度かの大ジャンプの末に後退して、もう一機だけ残っていた《Xナンバー》のコクピットまで辿り着くと同時に、工場そのものにまで火が回り出す。

 

 おそらくは爆発物に引火してしまったことで、急速に崩壊が早まったのだろう。この場に生身でい続けること自体が危険になりつつある状況に陥ると、相手の女性士官は負傷を免れた手で僕を押しやって機体のコクピット内へと強引に避難させてしまうと自らも乗り込んで、

 

「シートの後ろに! 私にだって・・・・・・動かすくらい・・・・・・う、ぐ・・・っ」

 

 苦しげな呻き声を上げながら、機体のOSを起動させていくマリューさん。

 こうして工場区画を戦場を舞台にした、《Xナンバー争奪戦》は幕を閉じる。

 一つの章が終わって、次の章が開幕の時を迎えたんだ。

 

 モビルスーツ同士の戦闘という、この世界では初めてとなる歴史上の快挙。

 その記念すべき日の内訳が記された章として―――。

 

 

 

つづく

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