ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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ジェリドを書くより先にこっちを出したかった個人的欲求。
ガンダムと銀河英雄伝説とを比べながら楽しむのが大好きな作者の趣味により、周囲との温度差が凄まじいように描かれてしまったコルベット隊の面々の回です。

本当はもう少し先まで書くのを想定してたのですが、今日から始めたばかりだと予定通りは無理がありました。


コルベット×ガンダム二次創作戦記 2話「『コルベット隊』結成秘話」

「これより我々は、自分たちが乗ってきたガウを解体する。ジオン残党軍としての初仕事だから派手にやるように。以上」

 

 コルベット隊隊長のアイゼナッハ大佐が、残党軍を率いる指揮官として独立して最初に出した命令が上記のものである。

 

 開戦時から使われている旧式ではあったが、地上に残っている中ではきわめて珍しく故障して落ちる心配のない安全第一改造された逸品だったのだが。

 大佐にとってはガラクタ以下のお荷物でしかない。何故なら金が掛かりすぎるから。

 

「補修部品に使えそうな物は残らず引っぺがして丁寧に保管しろよ-。壊した後で売るんだから、無駄にはするなー。丁重になー」

『うーい、了解でーす』

「我々をオーストラリアまで無事に送り届けてくれたお袋さんなんだ。年老いてるからって無碍には扱っちゃダメだぞ? キチンと最後まで面倒見てやって年金で新しい生活スタートする基盤を築くのが、正しい子供の恩返しってもんだ。感謝の思いを込めてぶっ壊すように」

『へーい。今までありがとうクソ婆。俺たちの今後のため糧になれ!』

 

 カーン!!

 

 誰かが経年劣化で錆び付いて取れづらくなってた部品を力尽くで剥ぎ取る音が周囲に響き渡る。

 彼らにとってガウ攻撃空母は使える使えないに寄らず、乗ってきて到着した今になってはお荷物でしかなくなっていたのだ。むしろ問題なく動くぶん、性質が悪いとも言える。

 

「修理するための部品はジオン製だし、補充が利かない地上で壊れてくれたら早くに捨てられてたんだけどなぁ。燃料は地球上でも無理すれば手に入れられるから始末に悪い。

 ジオン地上軍にとって一番厄介な未練だよ、この馬鹿デッカくて金ばっかりかかる年食ったお袋さんは」

 

 大佐はそう言って舌打ちする。

 実際にその通りで、ガウはその強力な空輸能力から敗れた今でも地上各地でジオン残党軍から羨望の眼で見られる空飛ぶ空母だったが、デカい分だけ養うのに掛かる費用もバカにならず、飛行機械らしく精密機器の塊だから定期的なメンテを欠かすことも出来ない。

 使っても使わなくても金ばかり掛かる無駄飯ぐらいなど、さっさと口減らしのため解体して、今日を生き抜くための食費に充てた方がまだマシだったのである。

 

「あ、それから餞別にもらってきたドップも一緒に解体して補修部品に分別しといてくれないか? あんな航空力学無視したバカみたいなフォルムの代物使うぐらいなら、連邦のお古を闇市で買って改修した方がまだしも使い物になる。

 どうせドコも物不足で鹵獲機使いまくっているだろうし、ジオンマークさえ画いておけば撃たれやしないよ。たぶんだけどね?」

 

 半ば以上、責任を放棄して大佐は言ってのける。

 これは決定して命令する責任者として無責任発言だったが、現在の戦況を見るに可能とされる責任の取り方としては最上位に属する類いの責任感に満ち満ちた請負でもあった。

 

 そもそも、味方を誤射する馬鹿がいることなど想定して出撃を命じるバカなどいない。安全面を最大限気遣ったつもりで出撃させて撃ち落とされるのが撃墜なのである。

 それを撃ったのが敵であれ味方であれ、どうしてソイツが撃たれたのかは撃った奴らに教えてもらえとしか指揮官としては答えようがない。誰も敵に撃たせるつもりで味方を出撃させる訳ではないのだから、味方の非撃墜までは正直想定しきれない。

 

 結果的に落とされたことには責任を取るが、落とさせないよう味方に周知する以上の努力は存在しない。落とされた時に誰に責任なのかは『落とされた奴』がいて初めて生じる類いの問題なのである。

 

 

「しかし、壊すのはよいのですが誰に売る気なのです? 地上では稀少なジオン製品といえど、新規参入の我々では闇市場でも足下を見られるだけですよ?」

 

 モビルスーツ部隊の隊長であるマスニード大尉が話しかけてくる。

 もっとも、現時点で彼らが保有するモビルスーツは作業用に持ってきた旧ザク一機だけであり、残りは書類上に『二機』と記載して『二機分の補修部品』を多めにもらい、実際には兵士を乗せて重量を誤魔化しただけだったりするので肩書きだけのお飾り隊長でしかないのだけれども。

 

「決まってるじゃないか。味方に売りつけるのだよ」

「は?」

 

 大尉は一瞬、ポカンとしてからしばらくして了解の意を示して頷いた。

 士官学校で優秀な成績を修めながら、冴えない風貌を理由に出世が遅れて左遷させられたと噂の大佐殿は、今日も通常運行で昼行灯ぶりを発揮してくれているらしい。

 

 人類史上初めてモビルスーツを実戦投入し、いくつかの分野では連邦を超越していたジオン製品は、戦後の地球上においては反連邦政府思想を持つ地下組織たちにとって憧れの品となっているため多額で取引されているのだが、一方で慣れない商売と裏取引の犠牲になる元ジオン将校が後を絶たない問題も続出させていた。

 

 モビルスーツを複数擁している大規模な部隊であるなら報復を恐れて、せいぜいが国籍や人種を問わない代わりに通常よりも安く買って高く売る、商売道徳心に溢れた誠実な対応をしてくれるのだが。

 一機程度しか保有しない弱小部隊とかだと交渉している間にパイロットがハニートラップで寝取られて裏切りにあい、裏切りが成功した後にパイロットも殺されて一緒に連邦軍兵士へと死体を売り飛ばされてしまう場合も存在している。

 連邦兵としても戦争が終わって残党狩りしか仕事がない中でクビにされないためには手柄が必要であり、残党軍兵士の死体は結構高値で売れたりするのだ。

 売り飛ばした相手の兵士から口封じのため殺される商人もいるにはいるが、そんな事まで気にするのなら堅気で居続けて真面目に誠実に生きれば良い。卑劣感として金儲けしようとするならリスクとリターンとは常に相対性で成り立っている事を理解しておかなければならない。

 

「そんなハイエナたちを相手に交渉して勝てる自信など私にはない。それぐらいなら、味方に売る。売って信頼と信用できる人材を紹介してもらえる下地を作る方がなんぼかマシだ」

「ヘイ! まことに持って大佐殿のご慧眼で! へっへっへ」

 

 如何にもな太鼓持ちの風を装って道化る大尉に、白けた目を向けながら『独裁者っぽいチョビ髭』と本国にいた頃は称されていた自分の髭を右手指でいじくりながら、なんで自分はこんな所でこんなことをやらせてるんだったかな?と、己の過去について走馬灯のように思い出そうと回想し始め――――直ぐに思い出した。

 たった三ヶ月前のことなのに忘れかけてしまっていた辺り、引っ越し準備というのは本当に忙しいものなのだなぁと心中で感想を抱きながら・・・・・・。

 

 

 

 ・・・一年戦争末期、オーストラリアから物資を山のように抱えて撤兵したユライア・ヒープ中佐指揮下にあるジオン残党軍の中から戦後、一部が旧戦場に逆戻りしてきており、敗戦寸前のゴタゴタの中で階級責めに遭った士官学校出身士官の一人である大佐は、ユライア中佐に委ねられていた『オクトパス』とも呼称される八つの輸送部隊を束ねた非公式補給部隊のうち一つを率いる部隊長でもあり、階級章に描かれている星の数では上官より上になってしまったが、彼なりに上官殿には敬意と尊敬を抱いていたので変わらず忠勤に励んでいた。

 彼の元を飛び出して独立したのも『せざるをえなかったから』であって、彼自身が望んだ結果ではない。――全員を養い続ける金を得るには出稼ぎ組が必要だったのである。

 

 

「オットー・アイヒマン大佐から地球に降下してきた『インビシブル・ナイツ』支援のため、後方支援部隊を一つ寄越して欲しいと要請がきた。名門出身でありながら一兵卒として戦い続ける覚悟のある青年エリク・ブランケ少佐の力添えをしてあげたいのだそうだ」

「・・・で、私たちに行けとおっしゃるのですか?」

 

 元民間輸送企業でマネージャーをしていたせいで軍人らしくない外見的特徴を持つ中佐の前で、冴えない中年がジオンの士官服を着ているだけにしか見えないアイゼナッハ大佐(面倒だから階級章は変えずに中佐のまま)は、仕事に疲れた中年男らしい表情で肩をすくめながら答えた。

 軍だと部下に命令を拒否する権利はないが、無言の不平不満を示す権利ぐらいは黙認してくれる上司もいるのである。

 

「・・・大佐殿も少佐君もザビ家の覚えめでたきエリート様方だ。ギレン総帥のご意志を継いで戦い続ける道を選んだ残党軍として戦い続けるためには、頼まれて断れる相手じゃないだろう?」

「ですな~。仲間同士助け合わないと売り飛ばされかねないのが残党軍なワケですし」

「イヤな現実を思い出させてくれるなよ・・・・・・」

 

 冴えない口調でアッサリと言ってのける階級は上の部下に中佐は唇をへの字に曲げさせられる。まったく大佐の言うとおりで、現在のジオン残党軍は極めてアンバランスな状態で立っている組織だ。

 

 負けたからこそ一枚岩にならなくてはならず、一枚岩になるためには部外者は排除すべきであり、ギレン閣下のご意志を継いでダイクンの理想を実現する大義のための聖戦において、『英雄への協力を拒む非国民』に安心して背中などを預けられる訳がない。

 裏切って捨てられる前に売り飛ばして囮に使え! 敵を倒すために敵を使うなら一石二鳥だ!

 ・・・こう言う理屈がまかり通ってしまっているのが国家を失った国家のために戦い続けるテロリストもどきな元国軍の実態だったから・・・。

 

「ウォルター大佐からは、『ザビ家の評価を気にする時代はそれほど長くないはずだ』と言われたからこそ引き受けた『オクトパス』だったのだがな・・・」

「まぁ、予定が予定通りに運ぶことなど滅多にはないものですからなぁ」

 

 辛辣な事実を大恩ある上司への別れの挨拶として、大佐は補給部隊の一つを引き連れ『インビシブル・ナイツ』がおこなおうとしている『水天の涙作戦』支援のために出向。地理的理由から、旧職場のオーストラリアを拠点に選択した。――地形が分かってる分だけ調べる経費が浮くからである。

 

 

 こうして、ジオニズムの思想とも亡き故国への愛国心とも無縁で、補給部隊故に復讐戦を企図するほどの傷を受けさせられた覚えもなく、覚えさせられた時が全滅する時と同義な貧弱すぎる装備しか持たされず、故郷に置いてきた家族や恋人たちも『二年も経ったし生きてるかどうか分からんし、どうせ俺たちのことなんて待っててくれるはずもないか』と諦める程度の学歴と収入と人間関係しか持てたことないから冷や飯ぐらいの荷物運び補給部隊に配属させられてた、アイゼナッハ大佐の人格的影響受けまくりの面々はオーストラリアの地に最初の一歩目を踏み締めた。

 

 

 そして訪れる、後に彼らの部隊名が敵味方関係なく、ご当地強敵存在として知れ渡るようになる新たな母艦の設計図を携えた部隊の紅一点にして『観賞用としては最上級。実際に使ったりしたら男として死ぬ』と噂されている美人副官アリーシャ・マクガイル中尉が大佐の傍らへと音もなく歩み寄り、一枚の紙切れを手渡した。

 

 

「大佐、ご要望のあった設計図の完成品をお持ちしました。ついでに現地の業者から買い取りの見積書も受け取ってきたところです」

「おお、アリス君! ご苦労だったねぇ。疲れただろうからお茶でも飲んでゆっくり休んでくれたまえ」

「いえ、結構です。私以上においしい紅茶を淹れられる者は我が隊には存在しませんので、休んだままでは飲めませんし、飲めたら飲めたで不味すぎるでしょうから」

「・・・・・・そうかね」

「それよりも、現地部隊に多額で売りつける算段をした上で紹介してもらった職人たちへの発注なのです。ビタ一文罷り成らんと言い渡されていますので、頑張って良質な補充用部品をガウとドップからひん剥いてください。私たちのご飯がかかっています。

 あまり安値で買いたたかれるような品だと、私たちがまとめて炭鉱と娼館を兼ねた安酒場に売り飛ばされかねませんので、そのお覚悟で」

『うおーっ!! お袋さん、今まで元気でいてくれてありがとう! 俺たちの生活のため高く売られてくれ! 頼むから!』

 

 

 ――こうして、後に『ミデアハンター』として補給部隊強奪のエキスパートとなる、“真っ正面から殴り合えば必ず負ける部隊”は誕生の産声を上げる。

 

 

つづく

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