ガンダム二次作   作:ひきがやもとまち

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作者が子供の頃ガンダムに憧れて、いつかオリジナルのロボット戦記物を書けたらいいなと考えていた主人公の設定を、デスティニー風にアレンジ応用した作品を作ってみました。

一応、シンの妹【マユ】が主人公のデスティニー二次って事になるんでしょうね。
当時のアイデアだと一番近い設定のキャラだったので。


機動戦士ガンダムSEED UndeadGIRL THE DESTINY

 

 CE70年に、《血のバレンタイン》の悲劇を発端として本格的に開戦した地球プラント間による武力衝突。

 その戦いの中、地球側首脳陣を扇動しつづけた思想結社《ブルーコスモス》は、影響力を経済界や政界だけでなく軍部にまで浸食していきながら、様々な《対コーディネイター殲滅用の生物兵器》を生み出し、実戦投入し続けていく。

 

 だが、組織のスローガンと矛盾しない方法論によって、生まれながらにスペックで劣るナチュラルでも遺伝子改造人類コーディネイターに性能面で勝利できるようになる――という開発コンセプトには構造的に無理があり、その隔たりは昔ながらの手法で埋められていくことになる。

 

 即ち、犠牲となる《生け贄》を代償として、現実的不可能の壁を埋めようという手法。

 

 それは、魔術儀式や悪魔サバトといった怪しげな代物にすがった人々と何ら変わるところがない復古的なやり方で、用いる技術が進歩しただけの違いしかない中世の再現をおこなっただけの代物。

 

 《ブーステッドマン》《ソキウス・シリーズ》そして、《エクステンデッド》

 ・・・・・・どれも彼らが試作し、一応の完成を見ながらも結局は失敗し、歴史の陰に埋もれていくことになった失敗作たちの名称である。

 

 だが、結果として失敗に終わろうとも、実戦に用いられる完成まで漕ぎ着けられたモノを作り上げるには、それに数倍する失敗作と欠陥品と放棄された計画の山が、犠牲となって堆く積まれているのが研究開発という分野の常識だ。

 実際のところブルーコスモスは、表向きに知られている改造ナチュラルを始めとする生体兵器たち以外にも、多くの対コーディネイター殲滅用生物兵器の開発と研究をおこない続けてきた歪んだ歴史を歩み続けていた・・・・・・

 

 

 これは、そんなブルーコスモスが生み出した《完成した失敗作》の物語である。

 

 

 

 

 

 それは嵐の夜に起きた出来事だった。

 南方特有のモンスーンに襲われて海路も不通となり、文字通りの孤島となってしまっていた場所に立つ建造物の屋内で、白衣姿をした十数人の人物たちがせわしなく試験管の前を行き来しては、時折怒鳴り声を上げている。

 

「くそッ! この被検体も失敗か!!」

「被検体075、079、共に生命反応の消失を確認。死亡した模様です」

「被検体102も同様だ。これで残っている被検体は3体だけだぞ! 本当に大丈夫なのか!?」

 

 何らかの実験結果を確認しては、絶望と怒りの声を叫び合う研究者らしき風体の男たち。

 その顔には例外なく、焦りと狼狽、そして隠しきれぬ色濃い恐怖がへばり付いたまま引き剥がすことが出来なくなっているようだった。

 

 彼らの前には一様に、全身から大量出血して動かなくなった死体が横たわり、自らから流れ出した血の池に浮かびながら、空洞化して二度と閉じなくなった眼球と口腔をナニカを迎え入れるように開け放たれたまま置き去りにされ、存在ごと無かったことにされていく。

 

「盟主アズラエルからも催促の報が来ている。『使わない兵器を造らせるため大金を払っているわけではない』と・・・・・・このままでは、この施設も遠からず閉鎖に追い込まれん・・・」

「《ブーステッドマン》の完成によって《ソキウス》も全機破棄されたと聞く……成果を出せぬ者には容赦されないと評判の御方だからな。

 だが、予算を回してもらわねば、この研究はおぼつかんし・・・」

「予算停止だけで済むものか。下手すれば次の被検体に選ばれるのは、我らかもしれんのだぞ? 邪悪なる種族を滅ぼす神征のための見せしめとして、生け贄にされて・・・な」

 

 青い顔色をした同僚からの、ゾッとするような――だが十二分にあり得る不吉な未来予測を聞かされて、彼らは一様に言葉を失って言葉を飲み込む。

 ゴクリ、と誰かが唾を飲む込む音が、静まりかえった研究室内で妙に大きく響き渡る。

 

 彼らの研究は、決して絵空事に金を払わせる税金の無駄遣いでしかない公共事業ゴッコではないはずのものだった。

 最初に成果を上げ、十分に実現可能な精算があると認められたからこそ予算が下り、こうして専用の施設を新設して研究を進めてくることが出来たのである。

 

 だが、一定の域に達してからは手詰まりになったままだった。どうしても決定的な一線を越えられず、横ばいの状態が続いていたのだ。

 そんな状況下で届くようになる、決戦を目前に控えたスポンサーから矢のような催促。それが焦りを抱いた職員たちが実験を断行し、希少な成功例たちを無駄に消費していくのに十分な動機となる。

 

「やはり土台、無理な話だったのだ! こんな得体の知れない代物頼みの研究になど手を出すべきではなかった! そうすれば――」

「今更それを言ってどうなると言うのだ!? その絵空事で成果を出す以外に我らが生き延びる道はない! リアリスト面して理屈を述べる暇があったら、打開策の一つでも考えてみせろ!! この無能が!!」

「なんだと!? 貴様、言わせておけば・・・っ」

 

 焦りによる苛立ちが不協和音をもたらし、ストレスと不安が逃げ道を求めて仲間内での乱闘によって現実逃避に走らせる。賢明に止めようとする仲間たち。

 

 ――元々その研究は、とある生物の蘇生から始まったとも言え、ある生物の破片を研究することが始まりだったとも言えるもの。

 

 それは隕石の内側から発見された、【未知のウィルス】による培養と応用の研究だった。

 

 当時の宇宙では、外宇宙に関する研究はコーディネイターたちの専売特許で、プラント評議国が建国されてからは周辺宙域が領海と定められたこともあり、地球に住む者には手出ししづらい状況だったが、地球軍の一部は宇宙資源をプラントに独占させぬため領海内への密入国を繰り返し、所属を偽った偽装艦による鉱物資源の確保に躍起となっていた。

 

 その中で回収され、地球へと持ち帰られた隕石が物議を醸すことになる。

 外宇宙から飛来してきたとされる中規模の石コロは、調査の結果『内部に人工物とおぼしき空間が造られている』と判明したのだ。

 

 それはジョージ・グレンが発見した『宇宙クジラ』の化石に等しい価値を持つ、歴史的大発見といって良い偉業となるはずのものだったが、発見者たちは歴史学者でもなければ人類学者でもなく、単なる地球軍の軍人でしかない彼らにとって惑星の価値は、その内部に内包されている文明力と技術力だけで決められて然るべきものでしかなく、その基準において小惑星は落第点しか取れない代物にしかなれなかった。

 

 この小さな星が、どれほどの長い時と距離を過ごして地球へと辿り着いたかは知るよしもないが・・・・・・少なくとも、内部の人工的スペースが完全に機能停止に陥ってから数百年が経過していることは見た者全てにとって確実だった。

 

 それらが造られた年代を逆算して考えれば、大した文明力の所産が満載された希少な品だったことになるのだろうが・・・・・・逆に言えば現在の文明レベルからすると大して珍しくもない有り触れた代物しか存在しない、時代遅れのガラクタばかりしか残っていない無価値な石コロに過ぎなかったのである。―――内部に残っていた、たった一つの存在だけを除いて。

 

 それは、僅かに残っていた《未知のウィルス》だった。

 無人となって機能は停止し、隔壁にも小さな穴が空いて真空状態になってしまってから数百年以上が経過していると思しき惑星の中で、その小さな微生物だけは一種類だけ、しぶとく、延々と、惑星に残された只一つだけの生命として今日まで命を永らえ続けていたのである・・・・・・。

 

 このウィルスを培養し、『人体に移植して強靱な生命力を持ったナチュラルを造り出す』・・・・・・その悪魔じみたコンセプトによって始動された実験と計画。

 そのために膨大な予算と人員が投入され続けた結果が、この惨状。

 それを受け入れられるのは、失敗した者として当然の責任ではあったが、このような研究や実験をおこない始めた者たちが『失敗の責任』だのといった単語を自分自身に当てはめて実践した例などほとんどあるまい。

 

「止めろ! 今は仲間割れしているときではない! そんな余裕は我らには、もう無いんだよ! 何とか明日までに何らかの成果を出さなければ我々は・・・・・・!」

「待て! 待ってくれ! 今、コイツ・・・・・・動いたように見えなかったか・・・?」

「――っ!? どこだ! どの被検体だ!? 番号は!」

 

 フラストレーションから喧嘩を止める者まで殴り合いに参加しそうな雰囲気に包まれていた室内に、画面を注視し続けていた一人が呟くように言った言葉に慄然とし、慌てて各々に割り当てられたデスクへと取って返してデータ確認を急がせる。

 次々と下から上へと流れていく文字と数字の羅列を前に、先ほどまでと何ら変わらないデータしか見出せなかった彼らの瞳に再び熱情が消えて、絶望の暗さが灯るかと思えた、その時だった。

 

「ち、違う・・・被検体じゃない・・・・・・動いていたのは、被検体じゃないんだ・・・」

 

 震える声で発見者となった最初の職員が呟く声音が、再び室内に木霊する。

 それを耳にして職員たちは首をかしげずにはいられない。

 

 ウィルスを移植した被検体ではない者に、動きが生じたところで何の異常も意味もある訳がない。まして機密保持と異分子が入り込んでしまわぬよう、この施設最深部の研究室には被検体以外には自分たち以外に存在している生物など一人もいるはずがないのだから。

 だが・・・・・・あるいは、だからこそ。

 

 

「う、動いてる・・・動いてるんだ・・・・・・っ!

 動き出してるんだよ! 死んだはずの死体が!!

 ウィルス培養用の苗でしかなかったはずなのに、なんで・・・!?」

 

 

 職員が放った悲鳴そのものの説明を聞かされて、誰もが最初は信じることなく、冗談と思って聞き流し―――やがて全員が一つの方向に向かって一斉に視線と意識を集中させる。

 

 

 それは惑星内から発見されたウィルスが、無人の空間内で、生物が生きていられるはずのない過酷な環境下で生存し続けてきた存在だったことから、最適な生存環境として人の死体こそが適役だった事が判明したことで確保された、苗床でしかなかったはずのモノ。

 

 その使用方法故に、番号すら与えられることなく放置されたままになっていた、一番最初にウィルスを注入されていた人の身体ではあったモノ。

 

 この前の戦闘で死んだ者たちの中から、たまたま相性の良い数字を示したモノを戦場から回収させてきた、只それだけのリサイクル品としか思っていなかった存在が――今、動かなかった身体を徐々に動かしはじめ、閉ざされ続けてきた瞳を開く。

 

 

 その眼球はウィルスによって染色された効果なのか、それとも生前の時点からその色をした瞳の持ち主だったのか、それを知る者は今この場には誰もいない。確認する必要性を感じなかった者たちだけが、この施設には存在している。

 

 その死体の瞳は、首筋にかかった茶色い後ろ髪に隠れず見える目の色は、血の色を透かしたような真紅だった。

 

 ゆっくりと瞼を開けて、焦点の合わない眼の前に、再び動き始めたばかりの身体の一部をゆっくりゆっくり動かしながら、視界の焦点前まで上げていく。

 

 そして見つめる視界の先には、右腕が無かった。

 服の袖口まではある身体の先が、どこかに消え失せて無くなっている。

 自分の身体の先に続いているはずの片腕は、中途で永遠に断ち切られ、ここでは無い何処かへ、今では無い何時かの場所で失われたまま、きっと未来永劫戻ってくることは決して無い。

 

 なんとなくだが、それが分かった。

 解ったからこそ死体は―――彼女は、動き始めた小さな女の子の可憐な死体は・・・・・・こう呟いたのかもしれない。

 

 

「こういうのも・・・・・・“ウンメイ”って言うのかなぁ~・・・・・・。

 ねぇ、シンお兄ちゃん?―――あは♪ アハハハハハはははははHAHAHAHAHAッッ!!!」

 

 

 

つづく

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