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それから3日間...。兄様が寝ている間に色々あった。名前を付けたゴブリンや牙狼族達の姿が変わった。記憶者さんによると、どうやら進化したようだ。ゴブリンのうちオスはホブゴブリンに、メスはゴブリナに進化した。牙狼族達は、元ボスの息子に付けた嵐牙が種族名となり、テンペストウルフに進化したようです。そして......
「完全復活ー!」
兄様が起きました。
「兄様、おはようございます。」
「まあ、リムル様!おはようございます!」
私とゴブリナに進化したハルナが起きたばかりの兄様に挨拶した。その時の兄様の反応は...
(リンネと.....誰....?)
ですよね!訳が分からないですよね。私もあの時は驚いたよ。
「すっかりよろしいのですね。今、リグルド村長を呼んできますね。」
「あ、はい。」
「よろしくお願いします。」
ハルナはリグルドを呼ぶために家を出た。兄様は茫然としたまま曖昧に返事をし、私はその様子を見て、苦笑いしながらお願いした。
「なあ、リンネ。あんな美人、村にいたっけ?」
「あれはですね....」
「リムル様!お目覚めになられましたか!」
私が兄様の質問に答えようとした時、リグルドが部屋に入ってきた。
リグルドが一番変わったから、兄様、混乱するなあ.....。
「おお、リグルド!さっきの....女性.....は....?誰だよ!」
うん、そうなりますよね。
「リグルドです。」
「3日の間に一体何が...⁉︎」
リグルドがいきなり若返って、筋肉ムキムキだったら...。気持ち分かります。兄様、すっかり混乱してますね......。
「名前をいただいたからです!」
「それだけで⁉︎」
リグルドの言葉に、兄様、驚いている。そろそろ説明しないと.......
「名持ちの魔物になったから、魔物の格を上げたのです。それで、兄様の魔素が吸い取られ、リグルド達は進化したのですよ。ちなみに、オスのゴブリンはホブゴブリン、メスのゴブリンはゴブリナに進化しました。」
「な、なるほど.....。それで、名前をつけるだけであんなに大喜びしていたのか。」
私が説明すると、兄様は、納得した様子だった。そのあとすぐ、前から強い風が吹き、リグルドが吹き飛ばし、誰かが入ってきた。
「我が主、ご回復心よりお慶び申し上げます!」
「その角、額の星.......嵐牙だよね?」
「はい!」
入ってきた嵐牙は、兄様が起きたことに尻尾を振って喜び、兄様は、嵐牙かどうか確認した。兄様の問いに、嵐牙は返事し、さらに尻尾を速く振った。
「兄様!どこかに掴まって!吹き飛ばされないように!」
「吹き飛ばされる?...わぁぁああああああ!」
私は嫌な予感がしてそう言って柱に掴まり、兄様は私の言ったことに困惑していると、部屋の中で突風が巻き起こり、屋根と兄様が吹き飛ばされた。
「兄様‼︎」
私は咄嗟に、洞窟内で兄様が捕食したコウモリの翼に擬態し(兄様の擬態を記憶して使っている)、人間に翼が生えている姿になった。私は翼を動かし、空を飛び、兄様に近づいた。突風が修まったと同時に、兄様をキャッチすることができた。兄様が落ちなくてよかった。
「嵐牙!もう、しっかりしてくださいね。兄様が眠ってから何回目ですかね。まあ、おかげで飛ぶのは上達することができましたが........」
「も、申し訳ありません。」
私は、嵐牙の近くまで来て(まだ飛んでいる状態)そう言うと、嵐牙は尻尾を下げ、体の大きさを小さくした。
「お!体の大きさまで変えられるのか、便利だな。」
兄様は、嵐牙の小さくなった姿を見てそう言った。
「リムル様ー!お目覚めになられたのですね!」
「ワオーーーン!」
すると、飛んでいる私達のことに気づき、全員が集まった。
(進化というより、もうこりゃ別の生き物だな。)
(はははっ。ゴブリンの中でも、男性のゴブリンはホブゴブリン、女性のゴブリンはゴブリナ、牙狼族は全にして個らしく、全員繋がっていて、嵐牙は共通名として種族全体が進化して、テンペストウルフになったらしいです。おかげさまで、進化して姿がかなり変わっていますが、全員がそうというわけではないんです。ほら。)
集まった全員を見て、兄様がそう言い、私は乾いた笑みを浮かべながらある一匹のゴブリンの方を指差した。
(あれはゴブタ。......確かにお前はあんまり変わってないな。)
兄様がゴブタを見てそう言い、私も同意の意味を込め、頷いた。
(まあ進化はいいとして、問題はゴブリンと狼達が暮らすために、衣食住をどうするかだ。)
(そうですね...。)
兄様と私は念話で会話し、しばらく考え.....
「皆さん!集まってください!」
私は、切り株がある場所まで飛び、切り株の上に兄様を乗せ、地面に下に降り、集まってきたゴブリンや牙狼族達にそう言った。ゴブリン達は、ぞろぞろと切り株の近くに集まり、何が始まるかと互いに話していた。私は、立って見ていたが、切り株のすぐ隣にいた嵐牙が上に座ってくださいと言い、遠慮していたのだけど、何度も言われて、結果、私が折れて嵐牙の上に座った。ちなみに、嵐牙の上はふわふわで、座り心地はとても良かった。まあ、そんなことをしているうちに、ゴブリン達も静かになっていた。
「はい、今、みんなが静かになるまで五分かかりました。」
「.......................。」
(...兄様、ここ異世界ですから、さすがに通じないと思います。)
(あ!そうだった...。)
兄様の言葉に、ゴブリン達が何のことか分からず首を傾げた。私は、苦笑いしながら念話で伝え、兄様は、顔を赤らめてそう言った。
「見ての通り、俺達は大所帯になった。そこでトラブルを避けるため、ルールを決めようと思う。ルールは三つ。最低この三つは守って欲しい。一つ"人間を襲わない"、二つ"仲間内で争わない"、三つ"他種族を見下さない"以上。」
兄様は、気を取り直してそう言った。
「はい!」
「はい、リグル君。」
兄様の話の後、リグルが手を上げ、兄様が名前を呼んだ。
質問があるのかな...?
「何故人間を襲ってはならないのでしょうか?」
....当然の質問ですね.......。
「簡単な理由だ。「こらリグル!リンネ様が人間と似た姿をされているからでしょう。」.........ま、まあ...それもあるけど........俺が人間を好きだから。以上。」
「なるほど理解しました!」
(え.....理解しちゃった...?ほんと?...あ!リンネのことが理由になっているからか!)
兄様が説明している途中、リグルドがリグルにそう言い、兄様もそれを聞いて、それも理由になるなと思い、リグルドの言葉に頷きながら、言おうしていた理由を言った。すると、リグルが笑顔で納得した。兄様は、リグルが納得したことに驚き、少し考えてそう思った。
......私のことが理由だとしたら、少し恥ずかしいです。....私が理由ではないと言えないんですよね....。忠誠心が凄過ぎなんですよね...。これは、他の理由も言いましょう。
「えっと...人間は集団で生活しています。手を出すと、大きな反動が来る場合もあります。本気で向かって来られると、太刀打ちができないと思う。痛手を負うのは避けないといけません。それに、仲良くした方が色々得だと判断したからです。」
「「「「「「うんうん。」」」」」」
私の考えておいた理由を言うと、ゴブリン達は頷いた。
「他に何かありますか?」
「はい!」
「ゴブタ君!」
納得した様子だったので、私が他の質問があるかどうか聞くと、ゴブタが手を上げ、兄様が指名した。
「他種族を見下さないというのは?」
「お前達は、進化して強くなっただろ?調子に乗って、弱い種族に偉そうにするなよって意味だ。偉くなったと勘違いするな。いつか相手が強くなって、仕返しされてもつまらないだろ?」
「分かりましたっす!」
「「「「「「「うんうん。」」」」」」」
ゴブタの質問に、兄様は予め考えていた答えを言い、ゴブタは、納得した様子で返事し、周りのゴブリン達も納得した様子で頷いた。
「そんなところだ。なるべく守るようにしてくれ。」
「「「「「はい!」」」」」
兄様の言葉に、ゴブリン達は大きな声で返事をした。
「それとだ。村長リグルド、君をゴブリンロードに命じる。ゴブリンの長だ。村をうまく治めるように。」
「よいよいよいよい.....」
続いて言った兄様の言葉に、リグルドが何故か泣き出してしまった。
「ははー!このリグルド、この身の命に賭けて、その任、引き受けさせていただきます!」
「うむ、任せた。」
(ぶっちゃけ丸投げなのに、こんなに感動されてしまった......。)
(まあ。やる気になってくれているし、いいのかもしれません。)
リグルドは片膝をついて言い、兄様は頷いて言った。内心で兄様がそう思っていたので、私が念話で言い、兄様も一先ず納得することにした。
兄様は、ゴブリン達に役割を与えた。村の周囲を警戒するチームに、食料調達チーム。この二つは特に問題ありませんでした。問題は......家を作るチームと衣服を作るチーム。衣食住の衣と住の部分なのですが......
「家とは呼べないな。」
「ですね。」
「うっ.....」
今にも倒れそうな木の家を見て、兄様と私は感想を言った。その言葉は、リグルド達の心に刺さった。
(俺も日曜大工レベルしかできないが、ゼネコン勤務だったので良し悪しは分かる。)
(でも、これは...ゼネコン勤務じゃなくても、私でも分かります。)
(うん...。)
兄様と私は崩れていく家を見ながら念話した。
「お恥ずかしい話です。」
「すみません....。」
崩れた家を見て、リグルド達が頭をかいて謝った。
「それと衣服だが.......。」
「ん?」
兄様がそう言ってハルナを見ると、ハルナは首を傾げた。その動作だけで、胸にあるものが揺れた。
「ちょ、ちょっと露出しすぎかな!それが悪いという訳ではないが....」
「兄様、その辺にしてください。」
兄様が顔を赤らめながらそう言っているので、私は、これ以上は止めた方がいいと思い、兄様のスライムの体を引っ張って、強制的に止めた。
.....スライムって、本当に柔らかくて、伸びるんですね。思ったよりも伸びて、驚きです。
「技術持った者がいないのです。」
「え?作れないなら調達できないのか?」
「今まで何度か取引をしたことがある者達がおります。衣服の調達もですが、器用な者達なので、家の作り方も存じておるやも。」
リグルドの言葉に、兄様が聞くと、リグルがそう答えた。
取引する相手とかいたのですね..。魔物なんですけどね....。
「これじゃあどうにもならないから、ちょっと会いに行ってみるか。どこの誰だ?」
「ドワルゴンに住むドワーフ族です。」
「ドワーフ!鍛治の達人!あの有名な⁉︎」
「兄様、いったん落ち着きましょう。」
兄様がそう考えて聞くと、リグルドが答えた。リグルドの言葉に、兄様は興奮し、私は、兄様を落ち着かせた。
(だが、こりゃあ行くしかないだろう。)
(確かにそうですね。)
兄様の話に、私も賛成した。
「そのドアルゴンとやらに行ってみる。リグルド、留守の間は任せていいか?」
「はっ!お任せあれー!」
兄様はリグルドにそう言い、リグルドは筋肉を見せて、そう言った。
...筋肉を見せる必要あるのかな.......?
私達は、何人かのゴブリン達と一緒に、ドワルゴンに向かうことにした。全員が牙狼族達の背中に乗った。ちなみに、私は、嵐牙の背中の兄様の後ろに乗った。
「じゃ、いってきまーす!」
「少しの間、お願いしますよー!」
兄様と私は、見送りに来たゴブリン達にそう言い、牙狼族達は走り出した。
「いってらっしゃーい!」
「お気をつけて!」
「お早いお帰りをー!」
見送りに来たゴブリン達は、手を振りそう言った。
こうして、私達は、ドワーフに会うために村を出発した。どうやら、ドワーフの住むドワルゴンという国は、結構大きな町で王様もいるらしいです。
(ちょっと、いや.....)
(大分楽しみですね。)
(ああ。)
兄様と私は、ドワーフに会えることと、初めて行くこの世界の町に胸を高鳴らしていた。