異なる世界で妹として楽しんでいます   作:日々草

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今回は少し短めです。





ドワーフの王

 

「.....兄様、とりあえず状況を説明してください。」

 

「あの時はエルフがいて、天国だった......。」

 

「それは良かったのですが、私が聞きたいのは、どうして牢屋に入っているのですか!」

 

そう。今、私は牢屋の前にいて、牢屋の中にいる兄様と話していた。

エルフと会えて、楽しんでいたのはいいのですが、牢屋に入るなんて何があったのですか!

 

「いや、ちょっと、色々あってな.......。」

 

兄様から聞いた話によると、エルフに会えてとても楽しんでいた時(楽しんでいたというより、調子にのっていたという気がしますが)、カイジンさんに無理なことを発注した大臣のベスターが店に来て、兄様に酒をぶっかけたらしい。兄様はカチンとはしたが、カイジンさんや店の迷惑になると思って何もしなかったけど、カイジンさんが怒って、その大臣さんを殴ったらしい。しかも、顔を思いっきり。で、その騒ぎで、大臣を殴ったカイジンさんとその関係者の兄様達が捕まったらしい。裁判が終わるまで牢屋の中らしい。

 

「俺が短気を起こしちまったばっかりに、みんなも巻き込んじまった。すまん!」

 

「大丈夫、問題ないさ。」

 

「オヤジさんが気にすることないですよ。」

 

「うーうー。」

 

「喋れよ!」

 

カイジンさんは全員に謝り、三人は気にするなと言った。一名だけ頷いていて、兄様にツッコミを入れられていたけど...

 

「.....カイジンさん、大臣に手を出してよかったのですか?」

 

「ああ。リムルの旦那には言ったが、腕のいい職人を探していたよな?俺じゃダメかい?」

 

私がカイジンさんに聞くと、カイジンさんは頷き、そう言った。

 

「えっ⁉︎いいのですか⁉︎」

 

「ああ。リムルの旦那と同じこと言ってたが.....」

 

私の言葉に、カイジンさんはまた頷いた。

 

「大歓迎ですよ!でも裁判を受けるみたいだけど、大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ。死刑にはならんし、罰金ぐらいで済むだろ。」

 

「そうだといいのですが......。」

 

私は喜んだが、裁判のことを思い出し聞いた。カイジンさんは大丈夫だと言っているけど、私はとても不安で、何か嫌な予感がした。

 

「あの大臣、えらくカイジンを目の敵にしてたようだが.....。」

 

「たしかに。話を聞く限り、そういう風に感じました。」

 

兄様と私は、疑問に思っていたことをカイジンさんに聞いた。

なんか明らかに別のことを、カイジンさんへの対抗心がありました。

 

「俺は、この国の王ガゼル・ドワルゴに仕えていたんだ。7つある王宮騎士団のその1つの団長だった。奴はその時の部下、副官だった。侯爵の出でな、俺は庶民の出だったし面白くなかったんだろう。当時からよく衝突していた。そんな時、功を焦ったベスターの計画の1つ、魔装兵計画がポシャっちまった。ベスターは自分の失敗を全て俺に押し付けた。軍の幹部を抱き込み、偽の証言まで用意してな。で、俺は責任を取って、軍を辞めたってわけだ。あいつは未だに何かというと俺を目の敵にして無理難題を吹っかけてくる。今回の件もそうだが....。」

 

「しょうもない奴だな。」

 

「まったくです。」

 

カイジンさんの話に、兄様がそう呟き、私は頷いた。

こっちの世界でも身分とかでそういうことがあるのですね.......。

 

「そうだな。ただ、奴も別に悪人ってわけじゃないんだ。俺とは馬が合わなかったが、元々研究熱心で努力家だ。功を焦ったのも王の期待に応えようとした結果だしな。俺がこの国から出ていけば、あいつも少しはマシになるかもな。」

 

「そんなものかねえ....。」

 

「優しいですね、カイジンさんは。」

 

カイジンさんが頷きながらもそう言い、兄様は少し納得していなさそうに呟き、私微笑みながら呟いた。

 

「リムルの旦那、リンネお嬢、世話になるぜ。」

 

「ああ。」

 

「はい。...て、お嬢......。」

 

カイジンさんが私達に手を差し出し、兄様が頷いて体の一部をカイジンさんの手に巻き付け、私は頷いたが、お嬢と呼ばれたことに複雑そうな顔をした。

ええ〜......お嬢...なんかちょっとね.......。

 

「それなんですけど、俺達もカイジンさんに付いていきます。」

 

「そうっす。カイジンさんと一緒に働けるなら、どこまでも行きます。」

 

((はっ......!))

 

ガルムさんとドルドさんが立ちながらそう言い、兄様と私はこの後のことを察した。そして...

 

「うーうー。」

 

((やっぱり(か)。))

 

やはりミルドさんが頷き、私と兄様は同じことを思った。

やっぱり喋らないのね.....。

 

「リムルの旦那、リンネお嬢、俺達が付いていったら迷惑かい?」

 

「大歓迎です!」

 

「みんなまとめて面倒見てやるさ!こき使うから覚悟しとけよ!」

 

カイジンさんの確認に.私と兄様は元気良く答えた。

 

「あ、そういえばゴブタがまだ寝ているのですよ。もう十時間以上も。」

 

「ロングスリーパーか!」

 

私がまだ寝ているゴブタのことを思い出し、兄様に言うと、兄様はツッコミを入れた。

幾ら何でも寝過ぎよね........?

 

「「「「「あはははは!」」」」」

 

牢屋の中から私達の笑い声が響いていた。

 

 

 

...................

 

 

その後、私がゴブタの様子を見に行くと、

 

「んっ...。リンネ様、何かあったんすか?」

 

「あははは....。」

 

ゴブタが目を覚まし、そう聞いてくるので、私は苦笑いしか浮かべられなかった。

これはこれで凄いです.....。

 

「あったはあったの。ちょっとね....。用があるから、ゴブタは先に出て。私と兄様も用が済んだら戻ってくるから、リグルと嵐牙にも伝えてね。」

 

「ちょっ!?どういうことですか、リンネ様!」

 

「ほら、早く行って。」

 

私は苦笑いを浮かべながらそう言って起きたばかりのゴブタを外に出そうとして、ゴブタが慌ててわけを聞こうとするが、私はゴブタを外に出して、手を振った。

さすがに、関係ないのに裁判に巻き込んでも可哀想だからね...。

私はそう思いながらトボトボ歩いていくゴブタの後ろ姿を見ていた。

 

 

 

 

..................

 

 

そして、3日後...

 

「ガゼル・ドワルゴ王の御出馬である。」

 

兄様達の裁判が行われた。兄様達を裁くのは、ドワーフの英雄王ガゼル・ドワルゴである。ちなみに、私は前に記憶した隠密と似たようなものを使い、裁判の後ろで兄様達を見ていた。今、私と兄様以外を片膝を床につけ、頭を下げていた。兄様は何もせず、私は姿が見えていないが、一様頭を下げていた。

 

(やっべえ...この男、化け物だ。)

 

(兄様、失礼ですよ......。でも、間違いなく強いですね......。)

 

この国の王、ガゼル・ドワルゴを見て、兄様がそう思い、私は兄様をやんわり制しながらも思った。

英雄王と呼ばれるのが分かるくらい直感で感じ取れますね.......。私の存在もバレそうだけど、大丈夫かな......?いや、それより.......

 

(あの人、大袈裟ですね。頭や腕に包帯を巻いているけど、頭や腕に異常は全く見えません。)

 

(あいつ、あんなに怪我してなかっただろうが。)

 

(兄様、この裁判、嫌な予感がします。気をつけてください。)

 

(....ああ、わかった...。)

 

私がベスターの方を見て伝えると、兄様がベスターをじーと見て心の中で呟いた。

兄様の様子だと、カイジンさんはそこまでのことはしていない...。でも、大怪我をしているように見せかけているのなら、何かありますね.......。

私は兄様に注意して、兄様は頷いた。

 

「これより裁判を始める。一同起立。」

 

(立ってまーす。)

 

(くすっ。同じく立ってまーす。)

 

その言葉で、全員が立った。兄様が少しふざけてそう言い、私は少し笑ってそれにのった。

武装国家ドワルゴンの裁判では王の許しなく発言はできない。そのため、弁護には代理人が当たるのだけど.....

 

「....とこのように店でお酒を飲まれておられたベスター殿に対し、カイジンらは複数で店に押し入り、暴行を加えたのです。これは断じて許されるべき行為ではありません。」

 

「買収されたな。」

 

(なんだって⁉︎弁護してくれるんじゃなかったのか?)

 

(弁護人さん、そんなに簡単に買収されないでくださいよ!)

 

弁護人の話を聞き、カイジンさんがそう呟き、兄様と私は心の中で怒っていた。

 

「それは事実であるか?」

 

「はっ!間違いございませぬ。」

 

間違いだらけですよ!

裁判官のような人と弁護人の話に、私は心の中で叫んだ。

 

「ガゼル王よ。お聞き届けいただけましたでしょうか?この者達への厳罰を申し渡してください。王よ!」

 

(カイジンはベスターのことを悪人じゃないって言ってたけど、絶対悪人だろ、あいつ。)

 

(......いや、そこまで悪人っていうことではなさそうですよ。)

 

ベスターの言葉に、兄様がそう思い、私はベスターさんを見て、兄様の言葉に反論した。

 

「これより判決を申し渡す。」

 

(これは罰金で済むとは思えないな。嫌な予感しかしない。)

 

(同じく。)

 

裁判官の言葉に、兄様がそう思い、私はそれに同意した。

 

「主犯カイジン、この者は強制労働20年に処す。その他共犯者どもは鉱山の強制労働10年に処す。」

 

(なっ.....!)

 

(おいおいおいおい!)

 

裁判官の判決に、私と兄様は驚いた。

いくらなんでも、これはひどい......。

 

「これにてこの裁判を閉延」

 

(ちょ待てよ。)

 

(待ってください!)

 

裁判の終わりを告げようとする言葉に、兄様が止めようと思い、私もスキルを使おうとした時、

 

「待て。久しいなカイジン。息災か?」

 

今まで何も言わなかったガゼル王がそう言った。すると、カイジンさん達が片膝ついて頭を下げた。

 

「カイジン、答えてよろしい。」

 

「王におかれましても、ご健勝そうでなによりでございます。」

 

裁判官にそう言われ、カイジンさんは頭を下げたまま言った。

 

「カイジンよ、余の元に戻って来る気はあるか?」

 

「恐れながら王よ、私は既に主を得ました。この契りは私の宝であります。この宝、たとえ王の命令であれど、手放す気はありませぬ。」

 

ガゼル王の問いに、カイジンさんは頭を上げてそう答えた。

カイジンさん、王様に信頼されているんですね.......。その王様の命令を断るカイジンさんも凄いです。私達のことを選んでくれたのはとても嬉しいですが....。

 

「無礼な!」

 

兵士が声を上げ、その場にいた兵士全員がカイジンさんに槍を向けた。

 

(え、嘘!?)

 

(ですよね....。)

 

兄様は驚いているが、私は苦笑いした。

王様の命令を断ったら、そういう反応ですよね....。

私がそう思っていると、ガゼル王が手で兵士達を制止させていた。

 

「で、あるか。判決を言い渡す。カイジン及びその仲間は国外追放とする。以上である。余の前より消えるがよい。」

 

ガゼル王の言葉に、私はほっとした。

よかった.....。

 

(ふう......国外追放だけで済んだか。でも、ちょっと寂しそうだな.....。)

 

(どうやら、カイジンさんのことをそれくらい信用していたようです。)

 

兄様もほっとしながらガゼル王を見てそう言い、私は兄様に見たままの様子を伝えた。

この目、こういうことも見ることができるのね.....。

私がそう思いながらガゼル王を見ていると、ガゼル王と目が合った。

 

(記憶者さん、バレていませんか?)

 

(おそらく気配に僅かながら気づいたと思われます。)

 

(.....もう少しスキルを改良して、絶対にバレないようにした方がいいかもね.....。)

 

私の方を見るガゼル王を見て、私は記憶者に聞いてみると、記憶者さんはそう答えてきた。記憶者さんの言葉に、私は少し固まったが、気を取り直して前向きに考えることにした。

 

「これにて閉延。」

 

その言葉で、兄様達は外に出され、兵士達も出ていった。

じゃあ、私も....。

私は、見えないけどガゼル王に礼をしてから出ていった。

 

 

 

 

....................

 

 

「さてベスター、何か言いたいことはあるか?」

 

ガゼル王とベスターと裁判官以外いない部屋で、ガゼル王がベスターに聞いた。

 

「お、王よ.....。私は...、そ、その....。」

 

「残念だ。余は忠実な臣を一人失うこととなった。」

 

ベスターが口ごもるなか、ガゼル王は悲しそうにそう言った。

 

「な、何を仰います!カイジンなど。あのような者、王に忠誠を誓うどころかどこの馬の骨とも分からぬスライムと.......」

 

「ベスターよ。お前は勘違いしておる。余が失う忠実な臣それは.....」

 

「あっ...。」

 

ガゼル王の言葉に、ベスターはそう言ったが、ガゼル王は首を横に振ってそれを否定し、ベスターは察した。

 

「余はお前に期待していたのだ。ずっと待っていた。魔装兵事件の際も。真実を話してくれるのを。そして、今回も......。それを見よ。何か分かるか?」

 

ガゼル王は茫然とするベスターのことを気にせず話し続け、裁判官に青い液体を持って来させ、見せた。

 

「ヒポクテ草から作られた完全回復薬フルポーションだ。」

 

「そんな...!ドワーフの技術の粋を集めても98%の抽出が限界のはず...!一体どうやって.......⁉︎」

 

「それをもたらしたのはあのスライムだ。」

 

「はっ....!」

 

ガゼル王の言葉に、ベスターは驚き動揺して聞き、ガゼル王の答えで、自身の失態に気がついた。

 

「......それと、もう一人いるようだ。フルポーションを入れた器もまた、とても見事な物だそうだ。おそらく其奴だろう...。おまけに、何者かの気配を感じた。其奴が裁判に紛れ込んでいたのだろう。」

 

ガゼル王がそう呟きながら何か考えていたが、ベスターの話に戻すことにした。

 

「お前の行いがあの魔物達とのつながりを絶った。何か言いたいことがあるか?」

 

「何もございません.....王よ...。私は王の役に立ちたいと...。幼い日に初めて王を見た日から.....ただそれだけで...。私は道を誤ったのか.....。カイジンに嫉妬した時から....あるいはもっと前から........。王の期待を裏切ってしまい、申し訳ありません...。」

 

ガゼル王の問いに、ベスターは涙を浮かべて膝をつき、下を向きながらそう答えた。

 

「ベスター、二度と余の前に姿を見せるな。そして最後に一言、お前に言葉を贈ろう。大義であった。」

 

ガゼル王は最後にそう言い、ベスターのすすり泣き声が裁判所に響いた。

 

「....やっぱり気づいていたのですね。」

 

私は裁判所の扉の前でそう呟き、すぐにその場を去った。

少し気になりましたからね。

 

 

 

 

...............

 

 

 

「兄貴、元気でな。」

 

「迷惑をかけたな。お前も元気で。」

 

ドワルゴンの出入り口で、最後の兄弟の会話をしていた。必要な荷物を背負い、カイジンさんとカイドウさんは寂しそうな顔をしていた。

 

「リムルの旦那、お嬢、兄貴を頼む。」

 

「心配ない。こき使うだけだ。」

 

「.......無理はさせないようにします。カイドウさん、色々とお世話になりました。」

 

カイドウさんの言葉に、兄様はそう言い、私はそれに苦笑いし、カイドウさんにお礼を言った。

実は、兄様達が牢屋にいる間、カイドウさんのところにお世話になっていました。とても感謝しています。

 

「これより判決に従い、カイジンとその一味を国外追放とする。早々に立ち去れ!」

 

その言葉と同時に、出入り口の門は閉まっていった。

 

「さて行くか。」

 

「森で私達の仲間達が待っています。」

 

「ああ。」

 

門が閉まるのを見てから、兄様と私はそう言い、カイジンさんも頷き、歩き出した。

色々あったものの職人を連れて帰るという当初の目的は果たされたのだった。それもこれ以上ないと言っていいほどの腕前の職人達を。

 

「代理人は捕らえたな?厳罰に処せ。」

 

「はっ!」

 

一方、ガゼル王は部下に命令していた。部下はその命令に頷いた。

 

「あのスライムと少女を監視せよ。あんな魔物が解き放たれているとは。絶対に気取られるなよ。絶対にだ。」

 

「はっ!」

 

ガゼル王はもう一つ命令し、その命令を念押しした。部下は一段と大きな声で返事し、部屋から出た。

 

「あのスライムは化け物だ!まるで暴風竜ヴェルドラの如き!それに、あの少女も......いずれ何かに化けるだろう!」

 

ガゼル王は何もいない部屋でそう呟いた。

 

 

 

 





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