夜、可奈美と舞依は屋敷で就寝している。
だが、舞依は明日の試合へのプレッシャーからか中々寝付けないでいた。
もう夜遅く、宿の灯りは殆どが消えていた。遠くには町の灯りも見えるがこの辺りは月明りで満たされている。
「可奈美ちゃん、もし明日、私と当たったら・・・本気で戦ってくれる・・・?」
舞依は庭で月を見つめながらポツリと呟く。
「眠れないの?」
突然、上から声が聞こえ驚いて屋根の方を見ると、舞依より少し年上そうな短い青髪の女性が立ったまま月を見ていた。
「だ、誰ですか!?」
「警戒しなくていいわ。私も客人、ただ月を見てるだけよ」
そう言って月を見上げる女性。舞依も警戒こそ解かないがつられるように月を見る。
「綺麗・・・」
「月は日に日にその姿形を変える。人の心に似ていると思わないかしら」
女性は月を見ながらそう口にするが、舞依はその言葉に思い当たる節があるのか顔を伏せてしまう。
「・・・私の月は、晴れているようで晴れてない・・・」
「それは半月か三日月ってところかしら?」
「不安ばかりなんです・・・本当に私なんかが代表でいいのか・・・」
警戒していたはずの相手に、いつの間にか心の内を開けている。
「それは自分で考えなさい。でも、一言言うのであれば・・・」
「?」
「迷うくらいなら自分の好きな事をしたらいいわ。その先の結果があなたの答えなのだから」
そう言って、女性は屋根から降り歩いていく。
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翌日
「うわぁ~!」
御前試合会場内で、可奈美は感嘆の声を上げる。
会場は正八角形の吹き抜けとなっており、2階の観覧席からは各校の生徒が応援に来ていた。
「見て見て、あの子たち代表だよ!」
会場には可奈美達、美濃関学院の生徒だけではない。
地元神奈川県の鎌府女学院、京都府の綾小路武芸学舎、岡山県の長船女学園、そして・・・
「平城、やっぱりあの子も・・・」
昨日会った平城学館の少女。もう1人の代表の少女がしきりに話しかけているが全く聞いていないようだ。
「可奈美~、舞依~!」
「みんな!」
声のする方を向くと他の美濃関学院の女生徒達が応援に来ていた。
「緊張してるーっ?」
「緊張しまくりだよーっ!」
「可奈美のヤツ、緊張の意味知らないんじゃないの?」
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「いや~、皆さん頼もしく成長してるようでメイは感心ですぞ~!」
「あのな・・・」
「はぁ・・・」
その会場内に生徒に紛れ傍観している3人。
綾小路の男子制服を着ている灰斗、自分をメイと呼んだ美濃関学院のブレザーの下に黄色いパーカーを着ているオレンジのサイドテールの少女“
溜め息をついた鎌府女学院の制服を着ている薄紫の短いツインテールの少女“
あの後試合が始まり、1回戦の可奈美が夢中だった平城学館の少女“十条 姫和”と綾小路の生徒“山崎 穂積”の試合は姫和が開始の合図と同時に踏み込み初撃で決めた。
2回戦は可奈美と鎌府の生徒“糸見 沙耶香”。試合は沙耶香が迅移で可奈美に猛攻をかけた。
“迅移”とは御刀を媒介に通常の時間から逸脱して加速する術であり、鍛錬を積んだ者であればより速く加速できるらしい。
だが可奈美は自分の流派である柳生新陰流の基本を実践し沙耶香の剣筋をいなしカウンターを決めた。
そして3回戦、舞依と長船女学園の“益子 薫”、だが薫の方はやる気がなかったのか簡単に御刀を振り回し舞依に倒されて終了となった。
その後も試合が続き、次は同じ美濃関である可奈美と舞依の対戦となった。
「あちゃ~同じ学校の子かぁ~」
「・・・」
「どうしたのよ、そんな食い入って?」
楓は2人の試合に食いつく灰斗に疑問の視線を向ける。
だが舞依は試合開始直後に両膝をつきその状態で抜刀の構えを取る。
「何あれ!?」
「へぇ、居合か」
命が構えに疑問の声を上げる中、剣術に心得のある灰斗が冷静に分析した。
可奈美は迅移を使い一気に舞依の背後に回る。
舞依はすぐさま振り返りその勢いで抜刀する。が、その手を右手を抑え、左手に持った御刀、千鳥を舞依に振り下ろした。
「すごいね~あの可奈美って子!あの剣を片手で止めるんだもん!」
「あの速さに対応できるなんて、かなりの腕のようですね」
「・・・」
「ありゃ?ハイド?」
「何でもねぇよ(立派になったな、可奈美、舞依・・・)」
命が灰斗に声をかけるが灰斗は何でもないと返答。
しかしその心境は勝負を繰り広げた2人を頼もしく思っていた。
〈午後の決勝に、休憩をはさみ本殿白州にて行われます〉
館内放送で決勝についての事が伝えられ、観覧者全員が各々休憩を始める。
そんな中、灰斗、命、楓も動き出した。
「それじゃお前ら、手筈通りな?」
「ユッキーの勘が当たってれば、だけどね~」
「ていうか、分かってるからアタシに指図しないで!」
3人は自然に会場から立ち去っていく。
――――――――――――――――――――
「これより、折神家御前試合決勝戦を行います」
場所は変わり、折神邸の庭にて決勝が行われる。周囲には緊張した空気が立ち込めている。
「あっ、あそこ!」
1人の生徒が指を差した。
寝殿造の建物の空席、その横に現れた1人の女性、折神家現当主“折神 紫”だ。
今回は決勝戦のみ立ち会う事になっている。
そして彼女の背後に控える4人、折神家親衛隊。
第1席“獅童 真希”、第2席“此花 寿々花”、第3席“皐月 夜見”、第4席“燕 結芽”。
「紫様!」
「変わらぬお姿で、なんて神々しい・・・」
紫の登場に会場に更に緊張が漂う中、決勝に勝ち残った可奈美ともう1人、平城学館の十条 姫和が前に出る。
「準備はいいな?」
〈いつでもいいよ~!〉
〈準備はできてるけどなんでアンタが指揮取ってるのよ?〉
その頃、会場の別の場所では3人が潜んでおりいつでも行動できるよう準備していた。
「礼!・・・双方、構え!・・・写シ!」
審判の合図で遂に決勝の準備が整った。
(なんだろう・・・ワクワクするのに震えが止まらない・・・〉
「始め!」
試合開始の合図。姫和は右上段、可奈美は下段に構えた、その時だった。
—————!?
一瞬姫和が方向転換したかと思った時に稲妻が落ちたような音圧と衝撃と同時に姫和の姿が消えた。
可奈美は呆気に取られ、気づいた時には刺突の構えで紫の眼前にいた。
そして姫和の鋭い刺突が紫を貫く―――――
「・・・それが、お前の一つの太刀か?」
「っ!?」
寸前に姫和を嘲笑うかのように両手に握られた2本の御刀が刺突を弾く。
その場にいた多くの者が姫和の行動に言葉を失い硬直している。中には恐怖からか悲鳴を上げる者のいた。
だが最も驚いていたのは姫和の方だろう。だがすぐに構え直し再び紫に斬りかかろうとする。
「がっ・・・!」
だが姫和は突然背後から貫かれ写シを剥がされその場に膝をついた。
親衛隊である真希が止めに入ったのだ。
真希はそのまま地面にへたり込む姫和に御刀を振り下ろす。
「はぁっ!」
しかし真希のその刃が姫和に届く前に斬撃は別の乱入者、可奈美によって防がれる。
しして真希が同様している隙に可奈美が姫和に叫ぶ。
「迅移!」
姫和は可奈美の突然の乱入に困惑したものの、再び迅移を発動させるが体力の限界からか少し離れる事しかできない。
「お任せください」
そう言って後方に控えていた夜見は写シを張ろうとするが、紫に止められた。
しかし、
「きゃはっ♪」
結芽が単独で写シを張り迅移で2人を追撃した。
「私もまーぜて♪」
2人の前に立った結芽はまるで獲物を見つけた獣のように御刀を構え—————
その時、美濃関側の客席の影から黒い何かが飛び出し結芽と可奈美の間に割って入った。
そして結芽御刀を持っていた黒い刀身の御刀で防ぐ。
「えっ!?」
結芽は防がれると思っていなかったのか驚きの声を上げる。
そしてその黒い物の正体は、綾小路の制服から普段来ていた黒い制服に着替えていた灰斗だったのだ。
「“千代女”、“風魔”、2人を頼む!」
〈ほい来た~!〉
〈だから指図するなっての!〉
灰斗が通信機で誰かに指示を出した。
すると平城学館と鎌府女学院の客席の影から人影が飛び出し可奈美と姫和の下へ向かい、
「ちょっと失礼~」
「なっ何をっ!?」
「掴んでなさいよ!」
「は、はいっ!」
平城側から飛び出した影、命が姫和を抱き上げ、鎌府側から飛び出した影、楓が可奈美の右手を掴み同時に屋根に飛び上がる。そして屋根に着地しもう1度飛び上がり会場から離れていく。
「あ、待ってよ!」
その様子を見て結芽は追いかけようとするが、その前に灰斗が立ち塞がる。
「もう、刀使でもないくせに邪魔しないでよ!」
結芽は灰斗に怒鳴りつけるが本人は気にしていない。
「何、もう用は済んだし俺もトンズラさせてもらうさ!」
すると灰斗はズボンの膨らんでいた左ポケットに手を突っ込み大きなジュース缶のような物を投げる。
結芽はそれが何か分からなかったが灰斗がサングラスを付けた事で何か分かったようだが、その時には遅かった。
周囲に爆発音と激しい閃光が放たれ結芽や親衛隊はおろか会場の全員が目を覆う。
次に目を開けた時には可奈美達はおろか灰斗の姿も無かった。
灰斗登場&戦闘BGM:Crossing Fate feat.UNI/BLAZBLUE CCROSS TAG BATTLE
OP:Unknown Actor(feat.伊舎堂さくら〉/来兎
今回でてきた命と楓、そして舞依と話してた女性にはモデルとなった原典があります。さて何でしょう?
ヒントは「女子高生×〇〇〇」、〇の部分にはカタカナ3文字が入ります!