試合会場から無事に逃走できた可奈美達。
「ここまで来ればひとまず安心かな~・・・」
「だといいんですけどね・・・」
流石に走り疲れたか足が止まり、神社の境内に身を潜めていた。
「・・・おい」
「ん?」
命の下の方で声がし、その方に向くと命に抱き上げられたままの姫和が睨むように見ていた。
「いつまでこうしている、いい加減降ろせ」
「おっと、ごめんね」
命は素直に姫和を降ろし、解放された姫和はすぐさま距離を取って御刀を構える。
「ちょっと!?」
「助けてくれた事には礼を言う。が、ここまでだ、別れよう」
「ちょちょ、ちょっと待ってよ!」
一触即発の中、可奈美が止めに入る。
「何故助けた、目的は一体何だ?」
「えっ・・・決着が着いてないから・・・かな?」
決着とは、恐らく決勝戦の事であろう。
その言葉を聞いたからか姫和の御刀を握る手に力が入る。
「なら・・・今相手をしてやろう」
今にでも抜刀しそうな姫和を見ていた楓が止める。
「待ちなさいよ、さっきの弾丸迅移でロクに写シも張れないくせに」
しかしその楓にまで姫和は食って掛かる。
「貴様等こそ何者だ!刀使でもないのに何故!!」
確かに刀使でもないのにあの状況に介入してきた2人の方が異常であろう。
警戒されても不思議ではない。だがそれには理由があった。
「ん~、“刀使じゃない”には語弊があるかな。メイとフーは今御刀を置いてきちゃってるんだよね~」
「なっ!?」
命の言い分に姫和は呆然とする。自分達は御刀を置いてきたと言ったのだ。
「師匠、そういう事は言わなくていいんですよ」
そこに楓が割って入る。
「確かに今のアタシたちは御刀を持ってないわ。けど本音を言えばアンタが折神紫に突撃かける事を予想してたのよ」
『!?』
「当然アンタが折神紫を狙う理由も知ってるわ」
楓の言葉に驚いている姫和だが楓は更に言葉を続ける。
「けどまぁこうして失敗したから師匠と、あとアイツと一緒に逃げるのを手伝ったって訳」
可奈美にはまだ何を言っているか分からなかったが、姫和は一先ず御刀から手を離した。
「・・・それで、これからどうするつもりだ?」
「とりあえずはアンタの方針に付き合ってあげる。けどもしもの時はこっちから指示させてもらうわ」
「・・・良いだろう、だが完全に信用した訳ではないぞ」
「別にいいわ、それでも」
「メイもOKだよ~」
「ちょちょ、ちょっと待って!!」
ここで今まで蚊帳の外だった可奈美が無理矢理入ってくる。
「えっと・・・とりあえずあなたたちは一応姫和ちゃんの味方なんですよね?」
「そうよ。それよりもアンタはどうするの、衛藤可奈美?」
楓の言葉に姫和の可奈美の方を見て、可奈美は一瞬怖気づきそうになるが気力を振り絞り言葉を放つ。
「・・・私もついて行く。皆で協力すればさっきみたいに何とかなるよ!」
「自分が何を言っているか分かっているのか?」
可奈美の言葉に姫和が問いかけ可奈美は俯く。
だがすぐに顔を上げ姫和に向き直る。
「・・・分かってる。大変な事になるかもだけど、いろんな人に迷惑かけちゃうかもだけど・・・、姫和ちゃんと・・・皆と一緒に逃げる!」
可奈美の力強く言い放たれた言葉に姫和は言いよどみ、その後諦めたような軽い溜め息をつく。
「何が目的か知らんが、邪魔になるなら見捨てる」
「え?それって・・・」
「・・・好きにしろ」
姫和の諦めたような発言に可奈美は嬉しそうにする。
「うん!好きにする!」
今後の方針が決まったようで、そこに命と楓が割り込む。
「じゃあやるべき事も見つかったって事で自己紹介!メイは望月 命!来てる制服を見て分かる通り美濃関の高等部1年!よろしくね!」
「相神 楓、一応鎌府に通ってるわ。師匠・・・望月 命の弟子よ」
「うん!よろしくね楓ちゃん!命さん!」
「ふ、楓ちゃん・・・!?」
「メイも気軽にちゃんづけでいいよ!」
「うん、命ちゃん!」
自己紹介をし可奈美にフランクに接された楓は軽くショックを受けたようで、命も可奈美に気軽に接して欲しいという。
その後パトカーのサイレンが聞こえるようになり、4人は一先ず神社の床下に身を潜める。
その中姫和は床下に隠していた巾着を取り出し中から一通の手紙を取り出す。
(こうなったからには、これも早々に処分すべきか・・・)
「それ、前もって隠してたの?」
「昨日、お前と門前で会う前には」
可奈美の問いに姫和は簡潔に答える。そして4人は床下から這い出る。
「折神紫と刃を交えて逃げおおせるとは思っていなかったがな」
姫和はスタスタと歩いていくが、その途中可奈美が何かを思い出し脚を止めた。
「ああ!私荷物も携帯も財布も宿舎に置きっぱなしだ!」
「残念だが諦めろ」
「十条の言う通りよ、管理局に至急された携帯じゃ一発で居場所がバレるわ」
「うう・・・、舞依ちゃんのクッキー、昨日のうちに食べとけばよかった・・・」
姫和と楓に言われ、可奈美は涙目で項垂れた。
そして神社から移動しようとした時、今度はバイクのエンジン音が聞こえだす。
「もう追手が!?」
「大丈夫、メイたちの味方だから」
姫和が御刀に手をかけるが命がそれを止める。そして左側の道路の奥から黒いバイクに乗った少年がやってきて命達の前で停まり少年、灰斗がヘルメットを脱ぐ。
「ここにいたのか、探したぞ・・・」
「ゴメンねハイド~、逃げるのに必死で・・・」
「あ、昨日の!」
命と灰斗の会話の途中、可奈美が灰斗の顔を見て昨日門前でぶつかった人だと分かった。
親し気に話している事から味方だという事に間違いは無いのだろう。
「あの後御刀も持ってこいなんて言うから尚更苦労したぜ・・・」
そう言って灰斗はバイクの左側のサイドバッグから3本の御刀を取り出し命と楓に差し出す。
「ありがと~!待ってたよ~メイの正宗ちゃ~ん!」
「まぁ・・・ありがと」
命の御刀は銘を“石田正宗”、楓の二刀は“朱銘貞宗 本阿 伏見貞宗”と“朱銘貞宗”だ。
「待て、味方だとは分かったが何者だ?しかも男だと?」
命と楓が御刀を受け取った後に姫和が灰斗の事を問う。
彼女からすれば灰斗とは初対面だ。
「あ、そうだったね、初対面だっけ。えっと・・・」
「俺ぁ暁 灰斗、見ての通り男だが気軽に接してくれ」
――――――――――――――――――――
管理局の取調室から出て来た真希を待っていたのは同じ親衛隊の寿々花だった。
「・・・柳瀬 舞依は、恐らく何も知らないな」
「こちらも、岩倉 早苗も同じでしたわ」
2人は可奈美と姫和と同じ代表者、柳瀬 舞依と岩倉 早苗に取り調べを行っていたのだ。
しかし有力な情報は得られず2人は無関係だと判断せざるを得なかった。
「紫様に御刀を抜かせるとは・・・。親衛隊として恥ずべき失態だ・・・!」
壁に手を当て悔し気に呟く真希。
「しかし何故紫様は、あの時僕たちを止めたんだ?」
「お考えがあるのでしょう?紫様の意図は後になれば必ず分かりますわ」
あの襲撃後に姫和達が姿を消した後、実際に騒動になった。
少なくとも更なる混乱を避ける為だろうがその意図は紫にしか分からない。
「それより今回の件、“例の組織”とやらと何か関係が?」
「今の所は分からない。それに2か月程前に管理局と五箇伝合わせ数本の御刀も盗み出されているからな」
「両校の学長が到着してから、ですわね・・・」
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とあるトラックが検問で審査を受けていた。
その中には野菜を入れたダンボールしか積んでおらず特に怪しい物は見つからなかったので許可が下り走り出す。
検問から遠ざかった所でダンボールに詰めたキャベツが揺れ出し、そのキャベツが盛り上がったと思ったら中から可奈美、姫和、命、楓の4人が出てくる。
「ふぅ~、上手くいったね」
「静かに、バレちゃうじゃない」
4人は隙をついてトラックに乗り込み積荷に紛れていたのだ。
姫和が幕を捲り外の様子を見る。
「・・・よし、高速だ」
どうやら高速道路に乗ったようで一先ず追手は撒けるだろう。
更にトラックから離れた位置にバイクに乗った灰斗もついて来ている事から上手くやり過ごせたのだろう。
「ところで十条、アンタお金どのくらいあんの?」
突然楓に問われ、姫和は持っていた紙封筒の中を見る。
「1人分の最低限程しかない。まさか1人から5人に増えるとは思っていなかったからな」
そう言って姫和はジロリと命と楓を睨む。
「大丈夫だよ。メイとフーも少しは持ってきてるし」
「逃亡資金ですからね、無駄遣いしないでくださいよ?」
命と楓が簡単な会話をしている中、可奈美が姫和の荷物から何かを見つける。
「あっ、これアナログのスペクトラム計?すごい!骨董品だ!」
可奈美が手に取った物は方位磁針のような形状で、ガラス球の中に液状の何かが入っている。
“スペクトラム計”とは荒魂の位置を探るレーダーのような物で、強化ガラスの中に荒魂化したノロをスポイト数滴分入れる事でノロの集合する特性を利用した磁石のような物だ。
現在は折神紫考案のデジタル化されたスペクトラムファインダーという機能を持った携帯が支給されている。
「これ誰の?もしかして姫和ちゃんのお母さん
「
「私のお母さんも刀使だったんだ、すごく強かったんだって!」
「へぇ~、それじゃハイドのお母さんとも一緒だね!」
『え?』
2人の会話に命が入り込み2人は困惑するがすぐに理由を説明する。
「ハイドのお母さんもすごく強かった刀使だったんだって!」
「そうなんだぁ!じゃあ私のお母さんと姫和ちゃんのお母さん、灰斗君のお母さんと誰が1番強いかな?」
「私に聞くな」
先程よりも冷たい反応で可奈美の言葉に返答する姫和。ふとある事を思い出し可奈美に問う。
「名前は?」
「え?お母さんの?」
「・・・お前の」
『えっ?』
直後、その場にいた全員が固まった。そして可奈美が爆発した。
「酷い!!私の名前知らなかったの!?」
「・・・忘れた」
姫和は顎に手を当て思い出そうとするが出てこないようだ。
「可奈美っ!衛藤 可奈美だよ!!」
「ちょっ、声がデカい!」
「お前も十分大きい!」
「・・・皆大概だと思うけどね~」
――――――――――――――――――――
その頃、御前試合決勝戦会場・・・
可奈美達の騒動からしばらくしたが、それでも各校の刀使達は待機を余儀なくされていた。
そんな中で気配を薄め会場に潜んでいる人影。
「メイちゃんたちは何とか逃げれてるみたいだけど、いつまでも続けられないよね・・・」
ピンクのショートヘアで美濃関の制服を着て、首にはフードの付いたマフラーのような物を着けている少女。
そこにヘリのローター音が聞こえてきた。
「美濃関と平城の学長が来たかな、私も師匠と合流しないと・・・」
そう言って少女はその場を後にしていく。
そしてそれに気づく者は、当然ながら誰もいなかった。
――――――――――――――――――――
トラックに揺られる事数時間、高速から降りたのかあ周りが静かになった。
「ここ、どこだろう・・・?」
「東京だよ。その証拠にほら」
可奈美の疑問に命が答え、その後に夕陽に映える1本の高い電波塔を指さす。
「うわぁ高ーい!」
「・・・東側か?」
その後トラックは公衆トイレ前で停車し、その間に可奈美達はトラックから降り近くの雑貨店で御刀を隠すギターケースと制服の上から羽織るジャンパー等の上着を購入。
灰斗は検問時に黒い制服のままでは引っかかってしまうので予め命に自分の服と御刀を預け雑貨店のトイレ内で着替えた。
買い物後に安いホテルを見つけ一泊の手続きを進めていた際、学生だけである事からか受け付けが5人を怪しんだが、
「命たち最近バンド組みまして、良い会場ないかな~って探してたんですよ。東京は広くて候補が多いから大変で」
「そうなの!確かに東京には良い会場はいっぱいあるからね。ライブ頑張ってね」
「ありがとうございま~す!」
命の機転で乗り切る事ができた。
そして無事に部屋の鍵を借り部屋で一息つく一行。
「ふぅ~どうにかなったね、すごね命ちゃん!」
「まぁね~、メイにかかればこのくらい朝飯前ってね!」
可奈美の言葉に命は胸を張る。
一方姫和と楓はカーテンの隙間から外の様子を見ていた。
「どう?」
「・・・今の所は大丈夫だ」
そう言って姫和はカーテンを閉める。
「あ、私ご飯買ってくるね」
「呑気ね、こんな時にご飯なんて」
「そうだ、こんな時に・・・」
「腹が減っては戦はできぬって言うでしょ?」
意気揚々と答える可奈美に姫和と楓は何も言えなくなってしまう。
「大丈夫だよ!外にはハイドもいるし、何とかなるでしょ?行っといで?」
「うん!ありがとう命ちゃん!」
命が容認した事で可奈美は部屋を出て下で見張りをしていた灰斗と合流しホテルの外へ出る。
――――――――――――――――――――
舞依は1人、管理局入口の前で佇んでいた。
先程無関係であると判断され解放されたが可奈美達は未だ発見できていない。
怪我をしていないか、今どうしているか、考えれば考える程に不安になる。
「可奈美ちゃん・・・」
舞依には唯々無事を祈るしかなかった。
ppp・・・ ppp・・・
そこに携帯に着信が入る。相手は「公衆電話」と表示されていた。
恐る恐る電話に出る。
「はい・・・?」
〈舞依ちゃん?〉
「かなみっ・・・!?」
思わず名前を叫びそうになり手で口を抑える舞依。
相手はなんと可奈美だったのだ。
口をつぐんで小声で話す。
「今どこ?」
〈それは・・・えぇっと、どこだろう?〉
何とも可奈美らしい返答だ。
〈いろいろ迷惑かけてごめんね?私は大丈夫だから心配しないで〉
「そんな事言われても・・・」
すると会話の中にスピーカーか何かの声が入ってきた。
可奈美ではない、機械的な喋り方は定時アナウンスの放送だ。
(この放送・・・)
〈あぁごめんね!もう小銭なくて・・・えぇと・・・私の荷物預かっといて!じゃあ!〉
「あぁ、ちょっと!」
ブツッ
舞依が何かを言い切る前に可奈美との会話はそこで終わる。
しかし、舞依は今の会話で
ED:心のメモリア/衛藤 可奈美(CV:本渡 楓)、十条 姫和(CV大西 沙織)、柳瀬 舞依(CV:和氣 あず未)、糸見 沙耶香(CV:木野 日菜)、益子 薫(CV:松田 利冴)、古波蔵 エレン(鈴木 絵理)
刀剣て似たり寄ったりの銘が多くて覚えるの面倒ですね・・・
現に御刀のモデルを調べる最中、似てる銘の刀剣が何本もあり目が回りそうでした・・・