IS<インフィニット・ストラトス>閃光ノ蒼キ刃   作:明智ワクナリ

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お久しぶりで~す!

なんとなーく前半を加筆修正したんですが、後半が続かにゃい………。

前作と相も変わらずグダってると思いますが、よろしくっす!!


第2話『ルームメイトはマイペース?』

放課後、夕焼けに染まる廊下を弥生は力なく歩いていた。その顔には疲労が色濃く表れ、心なしか瞳に灯る光も弱く感じる。

あの後、セシリアとの決闘は瞬く間に学園中へ知れ渡り休み時間は女子で満員。更には放課後までスキャンダルが発覚した芸能人のごとく追い回され現在に至る。

 

「…………全く、なんだって任務初日からこんな苦労を背負わなきゃいけないんだ?」

 

ちなみにここには一夏と白兎はいない。教室から逃げる一歩手前で女子軍団に行く手を阻まれたため、今頃は興味津々の女子勢に囲まれていることだろう。予想せずともこうなることをわかっていた弥生は、授業終了とともに教室を飛び出したため間一髪で難を逃れた。

不意に弥生は教室の扉の前で足を止め、上に付けられたプレートを見た。プレートには何も表示されておらず、弥生は音を立てないよう慎重にその扉を開く。

教室は無人で机などが隅に積み上げられていた。

弥生の記憶通りここは空き教室のようで、清掃がきちんとされていない所からここ数年無人だったらしい。

弥生は廊下に人影が無いことを確認してから再び慎重に扉を閉め、制服の内から携帯を取り出し、電話帳から『遠山キンジ』を選択して電話を掛ける。

 

(大丈夫だろうけど、一応は確認しておきたいし)

 

プルルルルッというコールが二回ほど流れてから、キンジの電話と繫がった。

 

『も、もしもし、弥生か?』

「ああ、俺だよ。久しぶりキンジ」

『そうだなっ、実に久しぶりだ弥生。どうしたんだ?』

「白雪から連絡があってね。一応キンジが無事か確認しようかと思って」

『そうか、わざわざ悪いなっ』

 

と、少し早口で答えるキンジ。まるで何かを急いでいるかのような、それでいて何かを隠しているようなそんな雰囲気だ。どちらにしてもいつものキンジとは明らかに違う。

 

「キンジ、どうかしたの?いつもと様子がおかしくない?」

『別に大したことじゃない。ただ部屋に―――――』

『ちょっとキンジ早くしなさいよ!コーヒーひとつも満足に作れないわけ!?』

 

次の瞬間、少女の甲高いアニメ声と床をガンガンと踏み鳴らす音が聞こえてきた。

 

「へえ、同居人が居なくなった途端に女子を連れ込むなんてやるね~、キンジ」

『んなわけあるかっ!俺がどんな人間かはお前が一番知ってるだろ!』

「あははは、分かってるよ。どうせまた面倒事に巻き込まれてるんでしょ?」

『………ああ、まさに厄日だな。なんだって俺なんかが―――――』

『まだ出来ないの!?あと30秒で出来なかったら風穴なんだから!!』

 

少女の声がまたしても会話に介入してくる。風穴とはまた物騒な脅し文句だ。

それを聞いた弥生は苦笑交じりで続けた。

 

「……なんだかのんびり話してられなそうだね」

『すまん、折角電話かけてもらったのに…………』

「いやいや、気にしなくてもいいよ。ただ最後に一ついいかな?」

『ん?なんだ?』

「キンジを襲ったISって、本当に武偵殺しだった?」

 

そう、弥生がキンジに電話をかけた最大の理由はこのことを聞くため。もしそれが本当であるなら任務に支障を与える可能性があるからだ。

 

『正確には断定できないな。諜報科が傍受した電波が武偵殺しと一致したから暫定的にそう判断しただけらしい。犯行の手口も同様だった、っていうのも合わせてだが』

「………そうなんだ。わかった、ありがとうキンジ。とにかく頑張れ」

『ああ、死にたくないからな。そっちも任務頑張れよ』

「うん、それじゃあ」

 

キンジとの電話を終えた弥生はお互いに苦労してるなあ、と思いつつ電話帳の奥に複雑に仕舞われた電話番号へすかさずコールする。

なぜ教室から逃げたのか、それには3つの理由がある。

1つは言わずともわかるように質問攻めを予見しての事、2つ目はキンジの安否の確認。そして3つ目は―――――

 

『はいはーい。お電話お待ちしてたっスよ~』

 

彼女、水花に用があったからだ。

 

『お疲れ様っス。どうだったっスか、入学初日のIS学園の雰囲気は?』

「…………一言で表すなら、この世の地獄だね」

『おやおや。男子禁制の花園でそのコメントとは、随分と贅沢っスね~弥生さん。それは間違いなく全世界の男性を敵に回す発言っスから気を付けるんスよ。下手したら夜道で後ろから刺されるか、怨念で呪い殺されるレベルっス』

「どんなレベルだよそれ…………」

 

相変わらず他人事で心底楽しそうに話す水花に呆れ果てたのか、弥生の切り返しに鋭さはなかった。

弥生も少なからず女子校というものに憧れを抱いたことがある。それは女装趣味に走りかけた若気の至りなどではなく、年頃の男子が抱く純粋な興味だった。

共学の男勝りな女子に比べ女子校の生徒というのは、清楚で華やかな印象がとても強く感じる。世に於ける男子学生にとってはまさに理想像、『交際相手は女子校の生徒』とさえ定義されるほど憧れの存在だ。

だが、それは内情を知らない者たちの単なる押し付けに過ぎず、実際にこうして女子校に放り込まれたことがないからそう言えること。

そして、それを経験した者だからこそここが地獄と言えるのだ。

 

『まあ、私は男じゃないっスからあんまりわからないんスけど、弥生さんの気持ちには共感できるっス。マジでウザいっスよね~。……………………群れなきゃいられないようなクソどもなんて消えればいいんスよ。大体大人数で徒党組んどいて中途半端な嫌がらせとか小学生かっつーの。いや、小学生以下?幼児?そもそもアレに人間なんて名称は勿体ないっスね。人外生物がお似合いっス。そう、人外。フフ、フフフフフフフフフフ……………………』

「あ、あのー水花さん?ものすごーく怖いんですけど」

『もはや生物学的に抹殺すべき対しょ――――ハッ!?つい本音が出てしまったっス!』

 

我に返って慌てふためく水花。一方、地の底から響いてきそうな呪詛を耳にした弥生は、恐怖のせいか携帯を持つ手が小刻みに震えていた。

 

『コホン、随分と話が逸れたっス。で、私に電話ということは何か御用があるんスよね?』

「あ、ああ。ちょっと2くらい調べてほしいことがあってさ」

『入学初日で調査依頼なんて、あんまり幸先良くないっスね。それで内容は?』

「うん。まず1つ目は桐原白兎についてもう一度調べてほしい」

『桐原白兎っスか。何か気になることでも?』

「少しだけ引っかかるところがあってね。それと2つ目、これは今朝方起きた事件についてなんだけど」

『ああ、早朝に通学中の武偵が所属不明のISに襲撃されたやつっスね?それなら現在調査中っスよ』

「流石、情報を掴むのが早いね。ちなみにその情報はどこにハックして盗み出したの?」

『盗むなんて人聞きの悪いこと言わないでほしいっスね。諜報科の内部データをちょっぴり覗かせてもらっただけっス』

「それを世間では盗みと言うんだ」

 

携帯の向こう側で抗議する水花に弥生はヤレヤレ、と呆れて溜息をついた。

彼女はこの世界にそうは居ない『天才』と称される人間の1人。かつてアメリカ合衆国の国防省(ペンタゴン)が誇る世界最高峰のセキリュティシステムと謳われた『ファイヤーウォール』、それを僅か十数秒で打ち破るほどの実力を持つ彼女なら、諜報科のメインサーバーにハッキングをかけるなど造作もないことだろう。

だが武偵という立場にある弥生にとって、さも当然とハッキングを行う人間が知人にいるのは些か複雑な気分だった。

 

『まあ、それはそれとして。弥生さんの頼みなら断る義理がないっスから、この水花さんがちょちょいと調べてあげるっスよ』

「ありがと。それじゃあ頼んだよ水花」

『あいあいさ~』

 

最後まで呑気な水花と話し終えた弥生は携帯の時刻を見た。

時刻は5時半を過ぎた頃、学生たちは自室と事前に届けられた荷物の確認で部屋に向かっている頃だろう。しかし、弥生は自分の部屋に行くことを少し躊躇っていた。

その原因は遡ること30分前。

 

◇◆◇

 

記念すべき初日の授業が終わった放課後。机の上で伸びていた一夏を白兎と二人で励ましていた時のことだった。

 

「あ、皆さんまだ教室に残ってたんですね」

 

声をかけてきたのは真耶。相変わらずサイズの合わない眼鏡をずり下げながらよかったぁ~、と安堵の息を漏らす彼女が手にしていたのは書類と3つの鍵だった。

 

「どうも、山田先生。僕たちに何か御用が?」

「はい。えっとですね、寮の部屋割りが決定したのでそれを伝えに来ました」

「そういえば荷物は預けたけど部屋の番号は聞いてなかったね」

 

そう。このIS学園は全寮制、つまり寮での生活が義務付けられている。これは将来有望な生徒たちの安全を守るためのモノであり、未来の国防力に関わる人材を養成しているのだから登園の処置だろう。

その時、机に伸びていた一夏が首を傾げながら言った。

 

「あれ?俺が聞いたときは部屋割りが決まってないから、1週間は自宅通学だって話だったんですけど」

「ええ、その予定だったんですが事情が事情なので、少々強引に部屋を割り振ったんです。その辺り政府から通達などありませんでしたか?」

「「「ないです」」」

 

おそらく今回の部屋割りは政府側からの強い要望によるものだろう。世界初の男性操縦者たちを不可侵領域であるIS学園から出すのはあまりにもリスクが高すぎる。

懸命な判断と言えよう。と、そこで弥生はあることに気付いた。

 

「あの、先生。部屋割りを強引に決めたっていうのはどういうことですか?」

「えっ?あ、あの、それはですね。その、何と言いましょうか………。いくら政府からの要請とは言え、私もこういうのはあまり良くないと思うんですが…………」

 

表情を濁らせて目を泳がせる真耶を見て、弥生は何とも言い難い不安を感じた。

 

「え、えと。とにかくですね、これが寮までの地図とルームキーです。失くさないように気を付けてくださいっ」

 

◇◆◇

 

時刻は戻って現在、弥生は自分の手のひらにあるルームキーを見つめた。チェーンで繫がれているナンバープレートには1045号室と記されている。ちなみに一夏は1025室で白兎は1032室。そして、これこそが寮に向かいたくない原因なのだ。

 

「一体この学園は何を考えてこの部屋割りにしたんだ…………!!」

 

弥生は任務上、寮内全ての部屋割りを把握している。その記憶が正しければそれぞれの部屋に同居人が居たはず。そしてそれは言うまでもなく女子だ。

つまりこの学園は年頃の男女を同じ部屋に放り込んだわけである。

いくら外へ出すリスクが高いとはいえ、これはこれで少々無理があるのではないだろうか。

そもそもこの学園に正式に入学したとはいえ、それはあくまでも表向きの話。弥生の目的は身分を隠したまま対象を護衛すること。そしてそのためにはそれ相応の準備が必要となる。それ故に周囲に関係者がいない状況、つまり1人部屋くらいは政府側も気を利かせて用意するだろうと考えていたが、どうやらその考えは甘かったようだ。

 

(とはいえ、今更どうにかなる問題じゃないよね。部屋に行かなきゃ騒ぎになるだろうし…………)

 

おそらく人生最大のイレギュラーに今現在遭遇しているだろうが、任務の重要性を考えれば許容するほかなかった。

 

◇◆◇

 

弥生が教室から寮の通路に来た頃には時刻はすでに午後8時。

ここに来るまでにとても積極的な女子たちに発見され、やっとの思いで振り切り自分の割り当てられた部屋へ向かおうとしていたのだが、

 

「…………えーと、これはつまりどういう状況なの?」

「…………さ、さあ。僕が来た時にはすでにこの状況でしたが」

 

弥生たちが唖然として見つめている先にいたのは、青い顔をした一夏だった。

何故か一夏は目の前にある扉に向かって土下座をしていて、正面の扉には無数の穴とこれまた不思議なことに木刀が突き出している。

弥生はそろりと平謝りしている一夏に近づいて声をかけた。

 

「…………あ、あのさ、何やってるの一夏?」

「ああ、弥生、白兎。実は箒が俺のルームメイトだったんだけど、その…………少し問題があってな」

 

バツが悪そうに表情を曇らせる一夏。

話によれば、箒が先にシャワーを浴びていることに気付かず一夏は部屋に入ってしまい、それに気付いた彼女は同性のルームメイトだと勘違いしたらしく、バスタオル1枚の姿で挨拶に出た箒とご対面、というわけらしい。

しかし、こういった問題が起こるのも当然といえば当然のことだろう。自分のルームメイトが同性の女子ではなく男子だったら、少なからず問題があっても仕方のないこと。箒自身も寝食を共にする相手がまさか一夏だとは予想も出来なかっただろう。

それ故にこのような…………扉を木刀で突き破るという暴力的な行為に走ってしまったに違いない。

 

(確かに彼女が怒るのも当然なんだろうけど…………流石に木刀で襲い掛かるのはどうなのかな?)

 

もしかしたら危険は外部などではなく、一夏のすぐ傍にあるのかもしれない。

隣に居る白兎といえば木刀の突き出たおぞましい扉を興味深そうに観察していた。

 

「しかし、この木製の扉にひび一つ入れずに木刀で穴を空けるとは、とても洗練された突きですね。日々の修練なくしてこの技は不可能でしょう。…………なるほど、篠ノ之さんは剣道の有段者のようですね」

 

と、一体何に対して感心しているのか不明な白兎を放っておき、弥生は両手を地につける一夏の肩を叩いた。

 

「うん………まあ頑張ってよ一夏」

「僕も応援してますからねっ」

 

弥生は同情するように苦笑いを浮かべたが、白兎の表情は何とも幸せそうに満面の笑みで楽しんでいた。木刀で扉を突き破る箒も十分危険だが、この天使の如き笑顔の方もこの上なく恐ろしく感じる。

 

「………ああ、頑張る。ところで2人はどうだったんだ?」

「僕の方も女子の方でしたよ。まあ木刀で殴りかかられることはありませんでしたが、かなり動揺はしていましたね。当たり前ですが。弥生はどうです?」

「いや、俺は今現在向かおうと思ってたとこだよ」

「そうでしたか。だったら早く向かわれた方が良いのでは?僕もそろそろ戻りますし」

「え、ああ、うん。そうだけど………」

「ちょっと待ってくれ!?俺を助けてくれないのか!!?」

「一夏、世の中というのは我々が認識している以上に厳しいんです。残念ながら助けてくれと言われておいそれと救済の手を差し伸べる天使のごとき良心の人間は少ない。それが世間であり、また大人なのですよ」

 

まるで宥めるかのように優しく語り掛ける白兎だが、その言葉は非常に辛辣である。そんな彼を見ていた弥生は軽くドン引きし、正面で正座する一夏も唖然とした表情をしていた。

そんあ二人の反応に満足したのか、エセ神父のような胡散臭い笑みを消すと元の微笑に戻る。

 

「ふふふ、冗談ですよ冗談。見捨てるなんてそんなわけないじゃないですか~」

「「……………」」

 

あくまでも冗談と言っている白兎だが、弥生たちにそうは聞こえない。

 

「…………なあ弥生、白兎ってこんなやつだったっけ?…………」

「…………それは俺が聞きたいくらいだよ…………」

「どうかしましたか?」

「な、なんでもない。気のせいだ」

「えーと、それじゃあ俺は自分の部屋に戻ろうかなあ!」

 

これ以上ここに残ってたら何か面倒事に巻き込まれそうだ、と感じた弥生はワザとらしく声を出してその場から離脱することにした。

 

(白兎って、意外と黒いんだな…………)

 

後ろを振り向いて一夏たちに手を振ると、なんとなく背筋に寒気を感じた弥生は早足で部屋へと向かった。

 

◇◆◇

 

しばらく、といっても1分程度を歩いたか歩かないかところで弥生は足を止めた。

 

「えーと、1045室は……………あったあった」

 

弥生は扉の前に立ってポケットから出した鍵を差し込む、が。

 

(ん?開いてる…………ってことは同居人はもう部屋にいるのか………)

 

そう考えた途端に弥生の気が重くなる。まだこちらが先に部屋で待っていれば後から来た同居人と少しは身構えて話せるのだが、後から入室となると同居人との間に妙な雰囲気が漂うのは目に見えている。

しかし寮生活である以上同居人との接触は免れない、つまりこの題にNOは当てはまらないのだ。

 

「…………なるようになるしかないよね」

 

改めて決心した弥生は念のため扉に一歩近づき少し強めにノックする。すると扉越しに「はいは~い。開いてるよ~」とどこかで聞いたようなのんびりした返事が返って来た。

ドアノブを回し意を決して扉を開ける。

 

「お、お邪魔します」

 

弥生は緊張した面持ちで簡易ながらも割としっかりした造りの玄関を跨いだ。

そこから数歩歩くとまず最初に目に入ったのが大きな二つのベッドで、見た目からしても割と高級そうに見える。

そして同時に見えたのは奥のベッドで寝そべる同居人の姿だった。いかにも高級そうなベッドの上でお菓子を広げながらノートパソコンを開いていた少女は、こちらの存在に気付いたようで体を起こすと弥生の方へ向く。

 

「やあやあ、これから同室になるお仲間だね~。私は布仏本音だよー。これからよろし……く……………?」

 

そこにいたのは、今朝のSHRで高速睡眠を披露して弥生を仰天させた布仏本音だった。

相変わらずのほほんとした挨拶をしてきた本音は、弥生が視界に入った瞬間言葉が途切れた。

ちなみにどうでもいいが本音の格好はパジャマのようなもの。黄色い生地で上着とズボンの境目がないツナギのようで、狐だかなんだかよくわからない耳と尻尾が付いた着ぐるみを思わせるパジャマだ。

 

「や、やあ、布仏さん」

 

とりあえず何か話さなければ、と思った弥生は無難に挨拶をした。

しかし、当の本人といえばキョトンとした顔で弥生をジーと見つめるだけで、なんとも気まずい雰囲気に妙な汗がダラダラと流れる。

 

「あれれ?なんでみやびんがここに居るの?もしかして部屋間違えちゃった?」

 

顔は引きつり言葉もぎこちない弥生を見て目をパチパチしていた本音は首をかしげる。彼女の言う通りこれが間違いだったら良いのに、と弥生は胸の内で叫んだ。

 

「え、えーと、その。布仏さんのルームメイト、俺なんだけど」

 

その瞬間本音がフリーズした、というより周りを取り巻く空気までフリーズしたという方が正解かもしれない。とにかくこれは非常にマズい状況だと感じた弥生は慌てて続けた。

 

「い、いや、アレだよ布仏さん。悪戯とかじゃなくて本当なんだよ?俺もこういうのは良くないと思うんだけどさ、なんか知らないウチに決められちゃってて…………。あっ、別に布仏さんが嫌だっていうわけじゃないんだけど、ほら、やっぱり年頃の男女が一つの部屋で過ごすのは違うんじゃないいかなあって……………」

「……………」

 

弥生が誤解を与えぬよう必死に弁解を試みるが、本音の反応は依然としてナシ。

流石の弥生も無言の空気に気圧されてつい口をつぐんでしまった。

 

(終わった……全てが……………)

 

と弥生が絶望に打ちひしがれていたその時だった。

 

「そうなんだ~。みやびんがルームメイトなんだね~」

 

予想とは裏腹にほんわかとした笑顔で返す本音。そんな彼女の反応に弥生は「えっ?」と間抜けな声を出してしまった。

 

「そ、そうなんだ。俺がルームメイトなんだよ」

「そうみたいだね~。へへへへっ」

「そうそう。あ、あははは」

 

2人は顔を見合わせると互いに笑い合った。しかし―――――

 

 

「ええええええええええええっっ!!!??」

 

 

現実とは無情なもの。これで全てが万事OKになるわけもなく、本音の絶叫に弥生は溜息しか出なかった。

 

◇◆◇

 

「そういうことだったんだ~」

 

数分後、落ち着きを取り戻した本音に事情を話した結果、本音は快く受け入れてくれた。

 

「ごめん、最初にちゃんと事情を説明しなかったのが悪かったよ」

「そんなことないよー。みやびんはちゃんと説明してくれたんだし万事OKって事で。私こそ大きい声出してごめんね~」

 

現在は双方とも向かい合うようにベッドに腰かけている。ちなみにベッドは奥の窓側が本音で玄関側が弥生という配分で決定した。

 

「けど、本当にいいのかな?俺一応は男だし、迷惑とかじゃないかな?」

「大丈夫だよみやびん。私はこの程度では狼狽えないのだ~」

 

大船に乗ったつもりで安心してねー、という本音の言葉に弥生は感謝すると同時に肩の重みもスッと軽くなったように感じる。

 

(なんだかよくわからないけど、この娘となら上手くやっていけそうな気がする)

 

「ありがとう。改めてよろしく、布仏さん」

「こちらこそよろしくねー、みやびん」

 

2人はもう一度握手を交わし、顔を見合わせておかしそうに笑い合った。

 

「えと、とりあえずは俺たちが生活するうえである程度の線引きが必要になるだろうから、そこから決めていいこうと思うんだけど。その前に荷物を片づけちゃってもいいかな?」

「そうだね、じゃあ私も手伝うよ~。ついでにみやびんの持ち物検査だ~」

「ちょっ、布仏さん!?何勝手に人のバッグ開けてるの!?」

「あれれれ~、どうしたのみやびん。私に見られたらマズい物でも入ってたりして~?」

「べ、別にそういうわけじゃないけど、見られたくない物だってあるからね?」

「むうぅぅー。……………隙ありっ!」

「あっ!?それはダメだって布仏さん!」

「ふっふっふっ。返してほしければ私を捕まえるのだ~」

「こら、待て~~~~!」

 

こうして、弥生と本音の騒がしくも微笑ましい同居生活が始まったのだった。

ちなみにこの騒動は就寝前まで続き、その後巡回中の千冬に大目玉を食らう羽目になるのだが、今の2人には知る由もないことである。




お疲れ様でーす。

いや~相変わらずの駄文に恥ずかしさパナイパナイ。

この調子だとセシリア戦もグダるかなぁー?
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