IS<インフィニット・ストラトス>閃光ノ蒼キ刃   作:明智ワクナリ

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お久しぶりです?現在『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ 』に絶賛度ハマり中のWAKUNARiです!

いやはや、更新亀でスミマセン。

緋弾side書き溜めして「おにあい」読んでアニメ版見てたらすっかり忘れてました(笑)

ある程度話が進んだら緋弾sideを投稿するです。

では、セシリア戦どうぞっ!


第3話『決闘の青い円舞曲』

翌日、朝の8時。

弥生たちは1年生寮の食堂にて朝食を摂っていた。周囲を見渡せばやはり女性だけ、言うまでもないが給仕から教員に至るまで当然のことながら女性である。

弥生たちは食堂の隅、1番目立ちにくい場所に集まっていたが、相変わらず周囲の目線は熱心なモノだった。

同じテーブルに座っているのは弥生、一夏、箒の3人だけだった。白兎は職員室え用事があるらしくこの場には居ない。本音は朝が極度に弱いらしく――夜通しで画像収集とやらをしていたのが1番の原因だろう――同様に居ない。おそらく同じクラスの女子たちが叩き起こしている頃だろう。

ちなみに箒は会った時から不機嫌全開。さっきから一夏がフォローしようとするが箒の眼力で一蹴され、それを見ていた弥生が溜息をつくといった一連の流れがさっきから続いている。

これは余談だが、あの晩弥生が去ったあと白兎が箒に一夏を許すよう掛け合ったのだが、事態は悪化したらしく大騒ぎになったとのことだ。それもあったせいか箒の機嫌はすこぶる悪い。

そんな中、一人の女性の声が濁った空気に割り込んでくる。

 

「織斑、雅。少し話がある」

 

顔を上げるとそこには千冬が立っていた。ちなみに千冬は教師兼寮監を務めていて、彼女の管轄はこの1年生寮である。

名前を呼ばれた一夏と弥生は立ち上がろうとしたが千冬が手で制す。

 

「座ったままで構わん。突然だが織斑、お前のISは準備に少し時間がかかる」

「え?」

「予備機がない。だから少し待て。学園が専用機を用意することになった」

「???」

 

なんのことか分かっていない一夏に千冬は呆れつつも説明した。

 

「本来ならば、IS専用機は国家もしくは企業に属している人間に与えられるものだ。が、お前の場合は状況が状況なのでデータ収集を兼ねた実験機として配備されることが決定した。どうだ?理解したか?」

「えーと………たぶん」

「それと雅、お前にも企業側から専用機が配備される予定だが、聞いているな?」

「はい、入学前に一応は。搬入時期は聞いてないですけど」

「そうか。搬入時期についてだが、お前のISも予定より遅れるらしい。模擬戦までには間に合わないとのことだ」

「わかりました。ありがとうございます」

 

ちなみにこの情報は偽物である。

自身の専用機はすでに所持しているが、今回の任務上持ち込むことは出来なかったため、現在は水花のラボに格納されている。

そして搬入時期については世間体を考慮してのこと。中小企業として運営しているところが、政府の援助なしに1ヶ月程度でISを開発しては色々と問題があるためだ。頃合いを見計らって弥生の下に送り届けられる予定になっている。

一夏の専用機については色々と不透明な部分が多いようだが、開発元は倉持技研という研究所らしい。水花の話によれば、同時期に進行させていたISの開発を中断させて一夏の専用機を優先しているとのことだ。

2人がそれぞれ違う表情で頷いていると、それを聞きつけた女子たちが騒ぎ始めた。

 

「嘘!?二人とも専用機が用意されるの!?まだ入学して2日目なのに!?」

「学園ってことは政府の援助で、だよね?」

「雅くんは企業側かあ~。憧れるなあ」

 

周りの女子たちが羨ましそうに見ていると千冬が手を叩き、

 

「人の話に耳を傾けている時間があるなら、まず手と口を動かせ。言っておくが遅刻した者はグラウンド10週だからな」

 

効果は覿面だったようで、それを耳にした女子一同は大慌てで食べ始め、周りは違う意味で騒然とする。

 

「…………私は先に行くぞ」

「ん?ああ、また後でな箒」

 

先に席を立った箒に一夏が答えると例のごとく箒が凄まじい眼力で一夏を打ち抜き、こちらを見て「教室で」とだけ言い残してその場を後にした。

 

「篠ノ之さん、随分と機嫌が悪いみたいだね…………」

「…………ああ、よくわからないんだが名前で呼ぶとスゲー睨まれるんだよな」

 

なんとかして手を貸してあげたいとは思うものの、これは一夏と箒の2人で解決すべき問題だろう。部外者である自分が手を出すような事柄ではない。

そう思った弥生は、困惑した表情で頭を抱える一夏の肩を励ますように叩く。

 

「元気だしなよ一夏。ちゃんと話せば篠ノ之さんもわかってくれるよ」

「ありがとう弥生。そんな風に言ってくれるのはお前だけだ」

「そう言われるとなんだか照れくさいな…………。まあ、何かあったら相談してよ。解決できるかは置いといて、アドバイスくらいなら出来るかもしれないからさ」

「ああ、何かあったらその時は頼むぜ」

 

弥生と一夏は固い握手を交わしながら笑い合った。それは2人の間に固い絆が結ばれた感動的なシーンのように見えるが、

 

「ね、ねえ。あの2人ってそういう特殊な関係じゃないよね?」

「でもでも、私たちが話しかけると表情が硬くなるのに、男の子同士で話してるときはすごく楽しそうだよ。特に雅くんと話してるときとかっ」

「それってつまり織斑くんと雅くんは男が好きだったの!?」

「え?それってもしかしてアレなの?織斑くん×雅くんのカップリング的な?どっちが受けで攻めなのかしら?ハッ、もしかしてそこに桐原くんも交じってスリーマンセル展開に!?」

『キャ――――――♪』

 

とんでもない誤解へと発展していた。

 

「えっ!?ちょっ、なに言ってるの!?」

「いや待て待て!?これは違うんだ!?俺と弥生はそういう関係じゃ――――」

 

と、一夏と弥生が弁明しようと席を立ち上がった時、凄まじい殺気が隣から発せられる。2人が一斉に姿勢を正し、昨日のセシリアのように錆びかけのブリキ玩具の如く顔を向けると、出席簿片手に立っていた千冬が呆れた顔でこちらを見ていた。

その瞬間、2人はダラダラと冷や汗を流し、食堂に響いていた喧騒も波が引いていく。そんな中、千冬は張り詰めた空気を破るかのように口を開いた。

 

「全く、お前たちは朝から何をしている。そういうのは夜の内に済ませておけと―――――」

「「スミマセン、マジで弁解させてください」」

 

2人は千冬の言葉を遮るように謝罪し、同時に素早く頭を下げる。そんな弥生たちを見ていた千冬は「冗談だ」と不敵な笑みを浮かべて答えた。

その後、この出来事は全校生徒に瞬く間に広がり、入学2日目にして『織斑一夏と雅弥生は男好き!?』という笑えない噂が流れたのだった。

 

◇◆◇

 

それからというものの、弥生の日常は苦労の連続だった。

学園の隅々まで散策しながら――更衣室やトイレは無理だった――敵の侵入経路や狙撃ポイントに至るまで徹底的に調べ尽くした。

こういった任務の場合、最重要とされるのがこの2つだ。内部の構造を把握するのも重要な事だが、もし敵の襲撃を受けた際に必要なのは立ち回りである。相手の行動を予測して裏を取るにはこういった下調べが後の役に立つ。もちろん、敵の侵入を未然に防ぐために何かしらのトラップを仕掛けるためでもあるが、流石にそれはやめておくことにした。ここが一般校とは違うIS学園であり、織斑千冬という存在が居るからである。下手に何かをすれば厄介事に発展しかねないため、下調べで留めておくことにしたのだ。

その他にも一夏や白兎の勉強に付き合ったり、ほぼ毎日女子に見つかっては追い回され、セシリアと顔を合わせれば一々からまれ、やっと寮に戻ったかと思えば本音の自堕落ぶりに呆れて世話を焼いたりと、武偵高やアーガスト社に居た時よりも多忙な日々を送っていたせいか気付けば1週間が経ち、セシリアとの決闘が目前に迫っていた。

という以上の理由から第3アリーナ・Aピッドに弥生たちは集合していたのだが、

 

「なあ、箒」

「なんだ、一夏」

「ISのことを教えてくれる話はどうなったんだ?」

「………………」

「目を逸らすな目をっ」

 

現在の一夏と箒はこんな感じだった。2人のやり取りを見る限り、どうやらこの6日間である程度仲は戻せたようだが、問題はそれじゃない。

 

「う、うるさい!大体お前の太刀筋が鈍っていることに問題があるのだ!中学3年間剣道を怠けていた自分に責任があるだろう!」

「うぐ………確かにそれは悪かったと思ってるけど、剣道は別として他にもっとあるだろ!基本とか知識とか!」

「そ、それは雅に教わっていただろう!私はお前の精神を鍛えなおす為にやっていたのだ!故に私は正当だ!」

「何が正当なんだっ!?」

 

丁度1週間前に箒は一夏と剣道の手合わせをしていて、その結果は一夏の惨敗。その現状を目の当たりにした箒が「これから一夏を鍛え直す!」と宣言していたのだが、

 

(……………まさか今までずっと剣道の稽古だけをやってたとは)

 

流石の弥生もここまでは予測出来なかった。だが、そのおかげか2人の仲は戻ったのだから万事OKなのだろう。

 

「みなさーん!お話があるのでこっちを見たくださーい!」

 

とその時、近くにいた副担任の山田真耶が小さい背を一生懸命に伸ばして手を振る。その姿は可愛らしく、とても微笑ましい光景だ。決して変態的な意味ではなく。

 

「すまないな山田君。さて、全員集まっているな」

 

真耶の後ろに控えていた千冬が真剣な面持ちで前に出る。それを見た弥生たちは顔を引き締めた。

 

「織斑、先ほど連絡があったんだがお前のISは到着までにまだ時間がかかるそうだ。アリーナの使用時間までには十分間に合うそうだが、正直待っている余裕はない」

 

千冬はそこで一度言葉を切ると、一夏から弥生に視線が移る。

同時に弥生には一抹の不安がよぎった。

 

「そこで、雅。急遽お前から試合を行ってもらう」

「お、俺ですか?」

「そうだ。ISの操縦が素人とはいえ、知識に関しては他の生徒より抜きん出ている。勝手のわからない人間が行くより遥かにマシだろう」

「そうですけど…………」

「それにオルコットからの指名もある。専用機という大きい差から当初は却下したが、今となっては仕方ない」

 

悪い予感は大抵的中するもの。もはやこの場所から逃げ出すことは出来ない。そして弥生が選べる選択肢はたった一つ。

 

「…………わかりました」

 

YESの一言だけだった。

 

◇◆◇

 

ゲートからアリーナへ出ると直径200メートルのステージが弥生の目に映る。障害物は無く、地形も真っ平らなコロシアムだった。ステージをなぞるように観客席が全方位に並び、そこの一角でクラスメイトたちが座っているのが見える。

 

―――――全機能、正常稼働を確認。システム共に異常なし。

 

ISから伝えられる情報を整理しつつ、弥生は異常が無いか再度確認していく。

現在弥生が搭乗しているISは打鉄、防御力が高く近接戦闘に特化した第二世代型の訓練機だ。銀灰色にカラーリングされた機体は、巨大な肩部シールドとスカート型のスラスターで鎧武者のような印象を与えられる。

 

「あら?よく逃げずに来ましたわね。褒めて差し上げてもよろしくてよ」

 

空を見上げればそこにセシリアはいた。鮮やかな青色に彩られた『ブルー・ティアーズ』と共に。

特徴的な4枚のフィンアーマー、そして両手で握られた大型のBTエネルギーライフル『スターライトmkⅢ』が光を浴びて輝いている。

 

「本当は逃げたかったんだけどね」

 

相変わらずのセシリアに弥生は溜息をつくと機体を上昇させ、互いに対峙するように並んだ。

 

「今なら見逃してあげても構いませんわよ。まあ、あなたが泣いて謝るというのならですが」

「悪いけど、それは無理な要求かな」

「そうですか。実に残念ですわ。今のが最後のチャンスでしたのに」

「そうかい。でもそうやって余裕ぶってると痛い目見るかもよ?」

「ご忠告感謝いたしますわ。でもご安心してくださいな。なにせわたくし――――」

 

試合開始のサイレンが鳴り響くと同時に、

 

「手加減などしませんからっ!」

 

―――――前方敵IS、射撃体勢に移行。初弾装填確認、脅威度・中。

 

試合開始と同時にセシリアのスターライトmkⅢが火を噴いた。弥生が即座に上昇した次の瞬間、足下をレーザーが音速を超えて打ち抜く。

もしも相手が弥生ではなく一夏か白兎のどちらかだったなら、間違いなくヒットしていただろう。

 

「随分と手荒な挨拶だねっ!」

「あら、言ったはずですわよ!手加減はしないと!」

 

―――――警告、第二射確認。

 

弥生は打鉄から送られてくる情報よりも先に反応し、打鉄を回転させてセシリアの第二射を回避、続く第三射も難なく躱してみせた。

そんな弥生の動きにセシリアは驚いた表情を見せる。

 

「割と勘だけは働くようですわね、あなた」

「少しは見直してくれたかな?」

 

弥生はその言葉に返すように笑みを浮かべ、対するセシリアも返すようにスターライトmkⅢを構え直す。

 

「あら、その程度で調子に乗るのは早くてよ」

 

不敵な笑みと共にセシリアの背後から現れたのは4基の自立稼働兵器だった。

その姿が視界に入った途端、弥生の顔に僅かだが緊張が走る。

 

「仮にもIS工学を学んでいたというなら、これがどういうものかご存知ですわよね?」

 

(…………ブルー・ティアーズか…………)

 

機体名の由来でもある4基のビットは全方位を対象にオールレンジ攻撃を可能とし、射撃に死角が無いのが最大の特徴だ。装備数は全部で6基、残り2基は実弾のミサイルを積んでいる。

 

「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

四基のビットがうねるように不規則な移動をしながら、弥生をロックしていく。

彼女とは機体の性能差という時点で絶望的だ。しかも遠距離武装に対して近距離型のサブマシンガンで切り抜けるには厳しいだろう。

 

(さて、どうしたものかな…………)

 

◇◆◇

 

アリーナの管制室では一夏たちがモニター越しに試合を見ていた。だが、光に照らされて見える皆の表情はあまり芳しくない。モニターには激しい射撃の雨を必死に掻い潜りながら、サブマシンガンで応戦している弥生が映し出されている。

 

「なかなかやりますね雅くん」

 

そんな中、モニターを見ていた真耶が感嘆と言葉を漏らす。その後ろでは、

 

「す、すごいな…………」

「恐ろしいくらいの猛攻ですね。よくあの中で応戦できるものです」

 

一夏と白兎がそれぞれ違った表情で試合を見ている。一夏の隣に立っている箒は何も言わずただモニターを見続け、席に座りながらコーヒを飲む千冬はモニターに映る弥生を見て眉をひそめていた。

 

(確かに実力はあるようだな。IS工学を専攻していただけあって、オルコットの機体を正確に分析し把握している)

 

機体の特性を把握しているだけあってその動きは非常に軽やかだ。初の実戦、しかも代表候補生が相手でありながらそれを微塵も感じさせない戦いぶりである。

だが、同時に違和感も感じていた。

 

(しかし、これが本当に初の実戦だというのか?)

 

初撃や第二第三の射撃を回避した時の動きと、モニターに映る弥生の場馴れしたような身のこなし。

セシリアと弥生のISの性能差は歴然、本来ならば試合自体が成立しないほどのレベルである。

確かに代表候補生であるセシリアの実力は、学園全体から見ても飛び方もろくに知らない雛同然だが、それでも候補生としての訓練を受けて来た彼女の技術は他の生徒に比べれば遥かに高い。もちろん彼女自身が手を抜いているということもあるだろうが、それを差し引いたとしても弥生の実力は明らかに素人の域を出ている。

まるでこれまでに本当の実戦を経験して来たかのような、そんな風に千冬は見えていた。

そしてもう1つ不審に思ったことは、

 

(どこかで昔会ったようなそうでないような…………)

 

何かを忘れているかのような、何かが記憶の奥で引っかかっているような感覚。

弥生がピットから出撃する姿を見た時、強烈な既視感が千冬を襲った。だが、今こうして弥生をモニター越しに見ているが先ほどのような妙な感覚はない。

 

(私の思い違いか…………?)

 

疑うような視線がモニターに向けられる中、試合は急展開した。

 

◇◆◇

 

―――――シールドエネルギー残量109パーセント。機体損傷度、中。

 

ブルー・ティアーズによる射撃の雨を縫うように回避し続けるが、ダメージの蓄積率は考えていたよりも高かったらしい。応戦すべく弥生も上空に向けて射撃を行うがこの距離では命中する筈もなく、気付けばマガジンはゼロ、新たに装填したマガジンが最後の一個となっていた。

 

(このままじゃ打鉄が持たない………。まったく、訓練機だっていうのに容赦ないなあ)

 

状況はあまり良くない。正直ここから逆転するのは困難な状態だ。

こちらから仕掛けたとしても、周囲に展開されたブルー・ティアーズで動きを封じられ、スターライトmkⅢで狙撃されるだろう。その場合、打鉄のシールドエネルギーはおそらくゼロになる。

しかし、そもそも今回の試合で弥生が勝利する必要はどこにもない。ここでセシリアに勝ってしまうと教師陣に怪しまれる可能性が高い。特に危惧すべきは千冬であり、下手なことをすれば弥生に対する疑念を煽りかねない。だが、

 

「さっきまでの威勢はどうしましたの?逃げていても状況は変わらなくてよ」

 

この高飛車お嬢様に何もしないまま負けるのは気に入らなかった。同じ負けるにしてもこのままで終わるのは納得がいかない。

そう思った弥生はサブマシンガンを構え直すと、機体の進路を急反転させて上空のセシリアを見上げた。

 

「あら?やっと潔く負ける気になりました?」

「まあね。でもそう簡単に負けるつもりはないよ!」

 

先に動いたのは弥生だった。腰部のスラスターを噴かして地面スレスレを飛行する。それと同時に4基のビットが進路上に射撃を行うが、肩部のブースターを巧みに操作して速度を維持したまま攻撃を躱し、セシリアとの距離を確実に縮めていった。

 

(…………ここだ!)

 

セシリアとの距離が中程に達したところで打鉄を上昇させ、全てのスラスターを最大出力にして一気に距離を詰めようとする。が、

 

「甘いですわ」

 

弥生の行動を予測していたセシリアはビットを進路上に展開させ、勝ち誇ったかのような笑みを漏らす。しかし、弥生もまたセシリアの行動は想定していた。

 

「これで閉幕(フィナーレ)ですわね!」

 

セシリアが右手を振るい、4基のビットが射撃体勢に移る。

距離や速度からして回避は不可能。防御に徹したところで、ブルー・ティアーズの連続射撃に耐えられるほどのシールドエネルギーはもう残っていない。

だが、その攻撃を回避する方法が一つだけある。それは、

 

(射撃進路を捻じ曲げるっ!)

 

弥生はサブマシンガンを前方に構えトリガーを引いた。狙いはつけず乱射、弾丸は収束することなくビットの展開範囲内にばら撒かれる。そしてビットが射撃を開始すると同時に無数の弾丸が命中し、射線はわずかに逸れた。

だが、全ての攻撃を逸らすことは出来ず肩に衝撃が走る。

 

―――――バリアー貫通、肩部被弾を確認。シールドエネルギー残量、83パーセント。実体ダメージ低。

 

打鉄から警告が伝えられるが構わず突進する。今ここで動きを止めたら折角のチャンスが台無しなってしまう。

 

「くっ!?なんて無茶を!?」

 

弥生の奇策に一瞬だが動きを止めるセシリア。その隙を突いて距離を埋めようとするが、

 

「まだ手段はありますわ!」

 

金属音と共にブルー・ティアーズのスカート部分が迫り出し、同時に弥生の表情が凍り付く。そこから顔を覗かせていたのは弾道ミサイル、もう2基のブルー・ティアーズだった。

 

―――――警告!敵ISのミサイル発射を確認。接触まで残り20秒。

 

回避が間に合わない。撃ち落とそうにも先の攻撃でサブマシンガンは弾切れ。

ならばと弥生はサブマシンガンを放り、近接ブレードを右手に展開させた。進路は変えずに直進させながらブレードを水平に構える。

そしてミサイル接触5秒前で打鉄を回転させ、ミサイル同士の僅かな隙間に入り込んだ弥生はブレードで2本同時に切り裂く。真ん中から両断されたミサイルは背後で爆散した。

 

「なっ!?」

 

驚愕のあまり動きを止めたセシリアの隙を突いて、弥生は一気に懐へと飛び込む。

 

「っ!?」

 

こちらの接近に反応したセシリアは反射的に防御体勢をとる。が、それは弥生にとって好都合だった。セシリアの間合いに入った弥生は無重力機動を利用して上段からの回し蹴りを放ち、防御でがら空きになったスターライトmkⅢの銃身にヒット、そのまま蹴り落とす。

 

「くっ!?」

「もらった!!」

 

弥生はすかさず下段からの切り上げを放つが、ギリギリで回避したセシリアは後退し右手を振るう。

するとセシリアと入れ替わるかのように1基のビットが弥生の目の前に現れた。しかし弥生は慌てることなく放たれたレーザーを躱し、そのままビットを切り裂く。しかし、

 

「もらいましたわっ!」

 

セシリアが再び右手を振るい、もう1基のビットが弥生の目の前に展開された。どうやらさっきのは囮だったらしく、本命は2基目のこちらだったようだ。今の弥生はブレードを完全に振りぬいているため隙だらけ。おそらくは彼女もこれを狙っていたのだろう。

ビットの銃口から溢れる光が一層輝きを強めた。打鉄は肩部のダメージもあってシールドエネルギーはさらに消耗している。そんな状態で攻撃を受ければ間違いなくエネルギーが底をつくだろう。

回避も防御も不可能。

だから弥生はもう片方の手に近接ブレードを展開させ、2基目のビットを両断した。

 

「そんな!?2基同時にっ!?」

「全方位オールレンジ攻撃の弱点、それは操縦者自身がビットの制御に集中するが故に連携攻撃が不可能であること。そして操縦者が無防備になることだったよね?」

 

弥生は両腕をクロスさせて再びセシリアに接近する。

だがセシリアが再度右手を振るうと、背後に待機していたもう2基のビットが姿を現した。

 

「弱点?笑わせないでくださいな。そんなもの、わたくしに攻撃が通る前に撃墜してしまえばよくってよ!」

「ならもう一つ」

 

その時弥生は驚くべき行動に出た。

構えていた二振りのブレードを放り投げたのだ。弥生の手から離れたブレードは回転しながら直進し続け、セシリアの後方に待機していたビット2基を貫く。

 

「―――――っ!?」

「ビットの制御は操縦者の思考に最も依存するってことだよ」

 

そう、セシリアの操るブルー・ティアーズの弱点とは彼女自身だ。

自立稼働兵器とはいえビットを制御するのはあくまでも操縦者、つまりは思考に依存している。ならばその操縦者であるセシリアの意表を突けばいいだけのこと。それ故に彼女は弥生の奇策に反応することが出来なかったのだ。

もしもビットがAI搭載型の完全な独立機だったならば、今の攻撃は通らなかっただろう。

一方、セシリアは驚愕のあまり目を見開いた。たった数分で自身の使用できる装備のすべてを使用不能にされたのだ。

今まで戦ってきたどの相手とも違うありえないほど無茶で無謀な戦術。悔しいが彼は強い、とてもだが自分が太刀打ちできる相手ではない。しかし、セシリアにはそれが認められなかった。

男は嫌いだ。

男はいつだって弱い。

男は自分たちよりも低能で、そしていつも――――女性(自分たち)を恐れている。

 

(男に負けるなんて、死んでもお断りですわ。父と同じ、男にだけは…………!!)

 

セシリアの瞳は闘志で再び燃えた。

そう、この男に抗う方法はまだ残っている。使うなら今がその時、セシリアは右手を振り上げて叫んだ。

 

「『インターセプター』!」

 

セシリアの右手に光の粒子が集まり形を形成していく。そしてその光が霧散したとき、手にはショートブレードが握られていた。

『インターセプター』、射撃主体のセシリアが持つ唯一の近接武器であり、そして現在使用できる最後の武器。

 

「わたくしが射撃武器しか装備していないと思ったら大間違いでしてよ!」

 

間合いは十分、目の前にいる弥生も先の攻撃で丸腰だ。つまり反撃する手立てはない、そう読んだセシリアはインターセプターを弥生に向けて振り下ろした。だが、

 

「甘いよ」

 

セシリアの刃は弥生に届く寸前で、甲高い金属音と共に停止した。その先で受け止めているのは同じ刃、それは弥生が瞬時に展開させたもう一振りの近接ブレードだった。

 

「あ、あなた………もう一振り持っていたというの!?」

「そうだよ。おかげでかなり苦労したけどね」

 

弥生が近距離射撃武器であるサブマシンガンを選んだ理由がこれだ。拡張領域の少ない打鉄に装備させる射撃武器はサブマシンガンが限界だったのである。

 

「行くよ。今度は君が踊る番だ」

 

次の瞬間弥生は動いた。鍔迫り合いで隙だらけになったセシリアの脇腹に膝蹴りを放ち、よろめいた瞬間に体当たりで吹き飛ばす。

 

「うぐっ………!」

 

さらに追撃するためブレードで一閃するが、一歩先に体勢を立て直したセシリアは紙一重で回避した。

 

「今度はこちらから行きますわよっ!」

 

上空で身を翻したセシリアが急速で接近し鋭い突きを繰り出すが、弥生はそれをブレードで往なしていく。鋭くとても洗練された剣技ではあったが、単調で狙いが正確すぎる彼女の攻撃はとても読みやすい。

対するセシリアも弥生に負けずと応戦していた。隙をついて振り下ろされるブレードをなんとか躱しながら、必死に食らいついていく。

 

「はあっ!」

「せやあっ!」

 

互いの刃がぶつかっては火花を散らし、互いの機体に傷が刻まれていく。

 

―――――警告。シールドエネルギー残量12パーセント。実体ダメージ・大。

 

機体を見ればあちこち傷だらけで、損傷個所からはスパークが出ていた。セシリアも同様で、ブルー・ティアーズから煙が上がっている。つまりシールドエネルギーも機体も、その両方が限界寸前なのだ。

 

「次で決着が着きそうですわね」

 

セシリアの表情に疲労が浮かんではいるが自信ありげな笑顔は健在だった。

 

「そうだね。やっと終われそうだよ」

 

同じように弥生も笑い、ブレードを腰に引き戻して居合いの体勢をとる。対するセシリアもインターセプターを上段に構えた。

一瞬の静寂、そして両者は同時に飛び出した。ドンッという空気を震わす音と共に、弥生とセシリアの機体が近づいていく。

 

「はあああああっ!!」

「おおおおおおっ!!」

 

弥生のブレードが音速を超えてセシリアの首筋に向かい、セシリアのインターセプターが弥生の胸を捉えかけた瞬間。

 

『試合終了。両者、共に引き分けとする』

 

試合終了を告げるサイレンがアリーナに響いた。




お疲れ様です!

戦闘描写はやっぱり難しいですよね~。うまく行かないモノです。

では、次の機会に。
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