IS<インフィニット・ストラトス>閃光ノ蒼キ刃 作:明智ワクナリ
PCちゃんが故障してしまい、今頃になって治りましたので、生存報告と共にお送りいたします。
あ、言い忘れましたが、明けましておめでとうございます。今年もこのWAKUNARiをよろしくお願いしますね~。
「や~、それにしてもすごかったねみやびん。セシリンと引き分けちゃうなんて」
「そ、そうかな?正直戦い方が滅茶苦茶だったし、下手すれば一発K.O.だよ…………」
「そんなことないよ~。皆もみやびんすごいって言ってたし」
「へ、へえー。そうなんだ。あ、ほら、ちゃんと前向いて」
「は~い」
現在弥生は寮の自室でドライヤー片手に本音の髪を乾かしている最中だった。
どういう訳かこの1週間の間で本音のドライヤー係に任命されしまったのだ。きっかけは些細なもので、髪を中々乾かそうとしない彼女を注意したのだが「えー、それじゃあみやびんがやってー」と言われ、仕方なくやった結果本音が気に入ってしまい現在に至る。
「えへへ~。役得役得♪」
「ん?何か言った?」
「何でもないよ~。えへへへ」
随分とご機嫌だなあ、と弥生は思いつつ妙に上機嫌な本音を見て微笑んだ。
当初は彼女と同居することに少なからず抵抗を感じていた弥生も、今ではそれほど気にならなくなっている。彼女が持つ独特の雰囲気が大きいのかもしれない。ほんわかとマイペースで男と同室だというのに動じず、それどころか積極的に話しかけてきたりと弥生は驚くばかりだった。
「みやびん髪乾かすの上手だね~。何かやってたの?」
「ああ、昔姉さんの髪を乾かしてたから。多分それのせいだと思うよ」
「えっ?みやびんお姉さん居たの?」
「うん。昔からいい加減でね、風呂上がりにバスタオル1枚で家の中歩き回るような人なんだ」
「へえー。そうだったんだぁ」
感心するように頷く本音。
そう、弥生には20歳になる姉が居る。仕事は出来るが私生活はがさつでいい加減、事あるごとに弥生を頼っては家事をサボる。そして誰よりも厳しく優しい、たった1人の家族なのだ。
「……………あれからもう11年か」
「どうしたのみやびん?」
「ううん、ただちょっと昔のことを思い出してね」
弥生は悟られぬよう笑顔を浮かべる。そんな弥生を見て本音は不思議そうな表情を浮かべるが「そっか~」といつも通りののんびりした笑顔に戻った。
(…………11年前、か。時が経つのは早いな)
言い様のない感情を抱きながら、にっこり笑う本音を見て弥生は顔を綻ばせるのだった。
◇◆◇
「というわけで、1年1組のクラス代表は織斑一夏に決定しました」
翌日の朝、SHRで真耶が発表したのは一夏のクラス代表決定についてだった。クラス全体から歓声が沸く中、一夏は「そんな馬鹿な」という驚愕の表情で固まっている。
「先生、何で俺がクラス代表なんです?昨日の試合じゃ俺は負けたんですけど」
挙手をしながら質問する一夏。
昨日、弥生の試合終了後に一夏の白式が到着しセシリアと対決したが、結果は敗北。初期設定だけで前半を戦い抜いた彼の秘めた才能には驚かされたが一歩足りなかったらしい。続く試合に白兎も挑んだが、一夏と同様に敗北している。結果、引き分けとなった弥生とセシリアのどちらがクラス代表になるかを、両者の話し合いで決定しろということになったのだが、
『クラス代表は弥生さんにお譲りしますわ。わたくしにも少し反省すべき点がありましたし』
セシリアの辞退によりクラス代表の権利は弥生に譲渡されたのだ。しかし、元々弥生はクラス代表になるつもりで決闘を受けたわけではない。任務に支障を出す可能性が高い役目を受けるわけにもいかず、「専用機持ちの一夏の方がいいのでは?」とクラスメイトたちに提案したところあっさり受諾されてしまった。
「雅くんで一度決定したんですけど、クラス全員の意見で変わったんです」
にこやかな表情で話す真耶に複数の女子が賛同する。それを聞いた一夏の顔は真っ青を通り越して真っ白になっていき、その後ろに座る白兎が妙に優しい笑顔で肩を叩いていた。
(ゴメン一夏。これも任務のためなんだ)
弥生は胸の内で謝罪をすることしかできなかった。
◇◆◇
それからというものの苦労の連続だった。一夏は専用機の件で騒がれ、弥生はセシリアとの一件で余計に目立ってしまい、休み時間は女性陣の熱烈なアピールで費やされる始末。こうなることは元より承知の上だったが、いざこうして体験すると想像以上の地獄だった。しかも弥生の苦労はそれだけに留まらず、さらなる試練が降りかかってくる。
「弥生さん。昼食、ご一緒してもよろしくて?」
彼女、セシリアがその苦労だったりする。昨日の決闘以降、弥生への対応は目を見張る変わりようだった。勿論、一夏や白兎に対する彼女の姿勢も変化したのだが、セシリアは何かに付けて弥生に絡むようになったのだ。そして今現在も食堂にこうして彼女が現れた。
「え?あ、うん。別に構わないよ」
「では、失礼しますわ」
何やら凄く嬉しそうにしながら弥生の隣に座るセシリア。しかも微妙に椅子をずらして接近してくる。
「ど、どうしたのセシリア?何か近くないかな?」
「あら、そうですの?わたくしの祖国ではこれが当たり前でしてよ」
と言ってズズイ、と更に距離を詰めてくる。最終的には肩が触れ合う寸前まで侵攻され、弥生は椅子をずらして距離を取ろうと試みるが「どうしましたの弥生さん?」と妙に凄味を感じさせる笑顔で阻止されてしまった。弥生は諦めたように溜息をつき、手前に置いた弁当箱の包みを解いていく。
「弥生さん、学食ではありませんのね」
「ああ、今日は特別だよ」
「特別…………。も、もしかして他の女性から………!?」
特別という言葉に反応したセシリアが、またしてもズズイとこちらに身を寄せてくる。
「違うって。これは自分で作ったんだよ」
「そ、そうでしたか………。でしたら安心ですわ」
何が安心なのかわからないが、定位置にセシリアが戻り弥生は安堵した。気を取り直して包みを解いていき弁当の蓋を開ける。今日の弁当は、豚肉と玉葱の生姜焼きと鰤ブリの照焼き、南瓜かぼちゃの煮物にレンコンの甘辛炒めと和食で統一させたメニューだ。弁当箱の中が気になったようで、セシリアが興味深そうにのぞき込んでくる。ちなみにセシリアのメニューは洋定食のナポリタンだ。
「弥生さん料理がお上手でしたのね。全部ご自分で?」
「うん、たまにこうして作んないと腕が鈍るから」
「なるほど………」
関心したように頷くセシリア。
「とりあえず食べようか」
「そうですわね」
弥生は箸を手に取り「いただきます」と両手を合わせて、生姜焼きを頬張り続いて白米を口に運ぶ。味の染み込んだ豚肉と玉葱の甘みが口に広がり、弥生は満足そうに顔を緩ませた。鰤の照焼きは濃すぎず薄すぎずの味付けで、南瓜の煮物もダシの染み具合がバッチリ、レンコンの甘辛炒めも程よい辛みが食欲をそそる。
と、そこで隣から視線を感じた弥生は横を向くと、セシリアが慌てた様子で視線を逸らした。よく見ればあまり箸が――ではなくフォークである――進んでおらず、チラチラと弥生の手元を見ている。
「えーと、もしかして食べたい?」
「っ!?ななな何を言っていますの!?わたくしがそのようなことを――――」
「でもさっきから俺の弁当見てるじゃない」
「~~~~~~~っ!!?」
セシリアの顔が手元のナポリタンのように赤く染まり、フン、と鼻を鳴らしてソッポを向いてしまった。そんな彼女を見て弥生はやれやれと苦笑する。
「あ、そうだ。ちょっと他の人の意見も聞きたいし、食べてくれないかなセシリア?」
セシリアが乗っかりやすいように仕方なく提案してみると、弥生の予想通り肩をピクッとさせて反応した。セシリアは恐る恐るといった動きでこちらに振り向く。頬はまだほんのりと赤い。
「どうかな?」
「…………ま、まあ。弥生さんがどうしてもとおっしゃるなら、考えてあげなくもなくてよ」
微妙に口を尖らせて恥ずかしげに弥生を見てくる。弥生は「ぜひお願いするよ」と言って、生姜焼きを一口分箸で持ち上げるとセシリアに向けた。
「はい、どうぞ」
「え………?あ、え、………その」
急にしどろもどろになるセシリアは、弥生と差し出された箸を交互に見て頬を赤く染める。そんな彼女の反応を見て弥生はあることに気付いた。
「あ、ごめん。流石に男が口付けたのは嫌だよね?」
「い、いえ!?そそそそんなことありませんわ!全然平気ですの!」
「え?でも――――」
「弥生さんの折角のご厚意ですもの!無駄にできません!」
弥生の声に被せるタイミングでセシリアが言う。その熱意に若干引き気味の弥生は、改めて生姜焼きを彼女の口元に差し出した。
「えーと。それじゃあ、改めて」
「い、頂きますわ」
緊張した面持ちで生姜焼きをパクリ、と頬張るセシリア。口元を手で隠しながら咀嚼する彼女の頬は、相変わらず赤い。
「………おいしい」
ポツリと言葉を漏らし、弥生を見て今度ははっきりと言った。
「すごくおいしいですわ、これ」
パアッとセシリアは笑顔を浮かべ、その姿を見た弥生は一瞬見惚れてしまう。考えてみれば彼女の笑顔を見たのはこれが初めてだ。この1週間、セシリアの表情といえば怒った顔か挑戦的な笑みのみで、おそらくこれが本来の彼女なのだろうと弥生は思った。
「そっか。ありがと、セシリア」
「ふえっ!?ま、まあ、ありがたく思ってくださいな!」
セシリアは慌てたようにそれだけ言うとナポリタンを黙々と食べ始め、そんな様子を隣で見ていた弥生は、
(何というか、可愛らしいお嬢様だなあ)
と、心の中で呟きつつ弁当を減らす作業に戻る。
その後も特に目立った会話はなく、終始セシリアの顔は赤いままだった。
◇◆◇
「んにゃー、暇だな~。なんでこんな暇なんだろ~」
「…………暇、同感」
同時刻、ビル群の屋上で望遠鏡を構える1人の少女が暇を持て余していた。
「全くさあ、どうしてこんな任務をうち等に押し付けるのかにゃー。適材適所って言葉がなんのためにあるのかわかんなくなるよ」
ショートカットの髪の少女が心底つまらなそうに文句を言う。大きめのパーカーと七分丈のジーンズにミリタリーブーツと、ボーイッシュな雰囲気を感じさせる。
「…………それも、同感。…………でも、この任務、今後の作戦に必要。…………我慢、大事」
隣で身動ぎ一つ取らずにパソコンのキーボードを叩く、ツインテールの大人しそうな少女がぼそりと呟いた。膝下まで隠れる白のロングコートと可愛らしいチェックのマフラーが風ではためく。
「我慢かあ~。そういうの嫌いなんだよね~。うち的にはさ、こんなコソコソするんじゃなくて、もっと派手に爆撃でドカーンとブチかましたいっていうか」
「…………そのためにも、任務遂行大事。…………これやらないと、計画台無し」
「んにゃー、でもさ~。こうして眺めてるだけなんてつまんないよ~」
ぶつくさと文句を垂れ流す少女の視線の先にあるのはIS学園。
「…………侵入成功」
「お、流石はプロハッカーだね~。どれどれ………」
「…………内部構造確認。………警備システム、言うほど複雑じゃない」
「ふ~ん。世界で唯一とか言いながら期待外れだな~。警備がザルだし、ちょっと平和ボケしすぎだよね~」
「…………そうでもない」
ツインテールの少女が敷地外の場所を指さす。その先に表示されているのは東京武偵高校だ。
「はは~ん、武偵ね。確かにこれは厄介かにゃー」
「…………でも、計画進行、問題なし」
「そうだねえ。うち等強いし~。それにドンパチは好きだからOKかな~」
ショートカットの少女は、無邪気な笑みを浮かべて高らかに笑った。
誤字脱字等ありましたらよろしくお願いします!