IS<インフィニット・ストラトス>閃光ノ蒼キ刃   作:明智ワクナリ

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前回の投稿からかなり遅れてしまって本当にすみません!
完結まで頑張らせてもらいますので引き続きよろしくお願いします!


第5話『転校生は幼馴染!?』

「ねえ、織斑くんたちも転校生の話って聞いた?」

 

朝食を済ませ、一夏たちと教室に向かうとクラスがちょっとした騒ぎになっていた。一夏が席に座るなり、近くで話していた女子がそんなことを聞いてくる。どうやらこの騒ぎはその転校生が原因だったらしい。

 

「転校生?聞いたことないな」

「僕もそういった噂は耳にしていませんね」

 

一夏と白兎は一様に頭を横に振る。

 

「そうなんだ。雅くんは?」

「いや、俺も初めて聞いたよ。いつごろから噂になってたの?」

「う~ん、1週間くらい前かな。今日は当日だから余計に、ね」

 

仕方ないね、と弥生は肩をすくめた。転校生の話は既に水花の情報から把握済みだが、ここは敢えて知らない振りをしておく。そうしておいた方が色々と都合がいいのだ。

 

「今の時期に転校生って珍しいけど、騒ぎ過ぎじゃないのかこれ?」

「仕方ありませんよ。転入という事はそれなりに実力のある方なんですから」

 

不思議そうにする一夏に白兎が説明する。白兎の言う通り、このIS学園に転入するにはそれ相応の実力が必要だ。そもそもIS学園は世界唯一の育成機関だけあって、試験の難易度がずば抜けて高い。ここにいる生徒たちはその厳しい試験をクリアした優等生であり、中にはセシリアのような例外もあるが基本的にここはエリート校なのだ。しかも、それが転入となると条件がさらに厳しくなる。試験に於ける実力もそうだが、何より国家の推薦がなければ転入は不可能、つまり転入生は国家代表候補生。そしてそれこそがこの騒ぎの原因である。

 

「転校してくる子って中国の代表候補生らしいよ。すごいよね~」

「へえ、そうなのか」

「ふふ、わたくしの存在にようやく危機を感じたみたいですわね」

 

隣を見るとセシリアが相変わらずのポーズで立っていた。その表情は鼻高々、といったところだ。

 

「何をそこまで騒ぐ必要がある。この学園に転入するというだけであって、このクラスに来るわけではないだろう」

 

そこで一夏の隣から箒が呆れた様子で言う。確かに、転校生というだけでこの騒ぎになるのは正直なところ小学生までと弥生も感じてはいたが、ここが特殊な学校である以上仕方ないことなのだろう。転入が決まっている隣の2組は、ここよりも大盛り上がりのようで歓喜の声が聞こえてくるほどだ。

 

「とにかくっ、専用機のあるクラスはウチと4組でけだから、クラス対抗戦は楽勝だよ」

「目指せ!優勝!!」

「「「おおー!」」」

 

知らぬ間に女子たちが周りを取り囲み、優勝への熱意を燃やしていた。これも最近では当たり前の光景になりつつある。事あるごとに取り囲まれるため、一種の免疫がついたらしく今では取り乱すことはない。だからといっても、この状況にうんざりすることだけは変わらない事実だが。

 

「―――――その情報、古いよ」

 

その時、ふと教室の入り口付近から声が聞こえた。その場に居た全員の視線がその方向に向く。

 

「2組の代表もたった今専用機持ちに変更したから。そう易々と優勝させないわよ」

 

扉にもたれ腕を組むツインテールの少女は、どこかワザとらしい口調でそう言う。クラス全体が「この娘、誰?」という妙な空気が流れるが、一夏だけは反応が違った。

 

「鈴?…………お前、鈴か?」

「そうよ?あたしは中国代表候補生、凰鈴音。今日ここに来たのは宣戦布告ってとこかしら」

 

不敵な笑みを漏らす鈴。周りの女子はわからないようだが、その姿はとにかくワザとらしくて痛々しい。

 

「何格好つけてるんだよ鈴。それすげえ似合わないぞ」

「ちょっ!?アンタなんてこと言ってくれるのよ!?今のセリフ台無しじゃない!」

 

一夏の核心を突く言葉にどうやらキャラが崩壊したらしく、面食らった表情で顔を赤くする。反応を見る限り、彼女の素はこちらのようだ。

 

「おい」

「もう、なによ!?」

 

バシィンッ!

 

出席簿による直下打撃が鈴の頭に落とされ、その威力を物語るかのように音が響く。鈴がソロソロと頭を押さえながら振り向くと、出席簿を片手に持った千冬が立っていた。

 

「SHRの時間だ。教室に戻れ」

「うげ………。ち、千冬さん」

「織斑先生と呼べ。それといつまで入り口を塞いでいるつもりだ?」

「ス、スミマセン…………」

 

先程までの威勢はどこへ行ったのやら、鈴は千冬の前から飛び退くように横へとずれる。格好つけていた時とのギャップが激しすぎて、クラスメイトたちはキョトンとしていた。しかし鈴はそんなことを気にすることなく一夏を指さして叫ぶ。

 

「またあとで来るからね!逃げないでよ一夏!」

「さっさと戻れ。もう一度食らいたいか?」

「い、いいえ、戻りますっ!」

 

つい最近どこかで聞いたようなセリフを残して去っていく鈴。あまりの急展開にクラス全体が沈黙する、が。

 

「アイツ、IS操縦者だったのか。知らなかったなあ」

 

ポツリと一夏が漏らした瞬間、周りの女子たちが一斉に詰め寄り始めた。

 

「一夏。今のは誰だ。随分と親しくしていたが………」

「そうだよ!どういう関係なの!?」

「転校生の子だよね!?しかも代表候補生!?」

「もしかして付き合ってるの!?そうなの!?」

 

女子たちによる集中砲火が一夏を襲う。一難去ってまた一難とはこのことだ。しかし、

 

バシンバシンバシンバシィン!!!

 

「貴様らもさっさと席に着け」

 

千冬の出席簿が制圧射撃の如く彼女たちの頭に降り注ぎ、それぞれ頭を押さえながら席に着いていく。

 

(彼女が凰鈴音、か。なんだかこっちも難ありかも)

 

席に座った弥生は、嫌な予感を残しつつ一日の始まりを迎えるのだった。

 

◇◆◇

 

「待ってたわよ、一夏!」

 

昼休み、いつも通り一夏たちと食堂に向かうとそこには鈴が待ち受けていた。どうやら一夏の到着を待っていたらしくトレーにはラーメンが置かれている。同時にその瞬間から箒の表情は不機嫌になり、そんな彼女に一夏は気付くこともなく「あっちのテーブルに座ろうぜ」と皆を促して席に着く。

一夏は日替わりランチで、今日は(サバ)の塩焼き。その他にセシリアは洋食ランチ、箒はきつねうどん、白兎は焼肉定食と普段と変わらないメニューである。ちなみに弥生は炒飯と餃子のセットだ。

 

「それにしてもびっくりしたわよ。アンタがニュースに出た時、幻覚を見てるのかと思ったわ」

 

席に着くなり鈴が一夏に話しかける。

 

「俺だってびっくりしたぞ。いつ代表候補生になったんだ?」

「オホンッ、一夏。そろそろどういう関係か説明してほしんだが」

 

ワザとらしく咳払いをして会話に割り込む箒の表情は、鈴と入り口で出くわした時より不機嫌だ。それに加えて二人だけの会話になっていることが気に食わないようで、口調には少し棘があるように感じられる。そこで一夏は思い出したかのように手を叩いた。

 

「そういえば紹介がまだだったな。鈴は俺の幼なじみなんだ」

「幼なじみ………?」

「ほら、箒が転校したのって小4の終わりだろ?そのあと小5の頭で鈴が転校してきて、中2の終わりでで向こうに帰ったからほぼ1年ぶりなんだよ。で、こっちが箒。前にも話したけど、鈴が転校してくる前の幼なじみで同じ剣術道場に通ってた娘だ」

「へえ~。よろしくね、篠ノ之さん」

「こちらこそよろしく頼む、凰」

 

一夏の紹介によって挨拶を交わす二人だが、お互いにお互いの名前を妙に強調させて火花を散らす。色恋沙汰には疎い弥生でも鈴が一夏に好意を持っているのはわかった。が、肝心の一夏といえば、妙な空気を流す二人を見て不思議そうな顔をするだけで全く気付く様子もない。

 

「ところで、アンタたちがもう二人の方?」

 

どうやら鈴の興味が正面に座る弥生たちに向けられたようで、二人は軽い挨拶をしておくことにした。

 

「桐原白兎です。これからよろしくお願いしますね」

「俺は雅弥生。よろしく」

「紹介あったけど、あたしは凰鈴音。ま、機会が会ったら仲良くして」

 

一夏にしか興味はないようで、鈴はそれだけ言い残すと再び一夏との会話に戻る。しかし、弥生の隣に座るイギリスの代表候補生はそれが気に入らないらしく、不機嫌オーラ全開で立ち上がった。

 

「ちょっとよろしいかしら?イギリスの代表候補生たるこのわたくしをお忘れでなくて?」

「………誰よアンタ?」

 

一夏の件、弥生の件、そして今度は鈴による三度目の爆弾が投下され、周りに座っていた女子たちの顔が青ざめていく。

 

「あ、あなたっ!まさかこのセシリア・オルコットを知りませんの!?しかも同じ代表候補生だというのに!?」

「あ、ごめん。あたし他の国に興味ないから。でもアンタがイギリスの候補生なのはわかったし、今ので頭の片隅には残るだろうから良かったじゃない」

「~~~~~~~っ!!?」

 

声にならない怒りのせいでセシリアの顔が真っ赤に染まる。どうやら彼女は思ったことを率直に伝える性格のようで、良くも悪くも厄介な娘だなあと弥生は考えつつ、隣で憤慨するセシリアを宥めるのだった。

 

◇◆◇

 

放課後、今朝方弥生が感じていた予感は的中してしまった。

 

「いいじゃない。ただ部屋を変えてくれって頼んでるだけなんだし」

「いいわけがあるかっ!これは一夏と私の問題であって部外者には関係ないだろう!」

 

午後8時過ぎ。食堂で夕飯を済ませた弥生はのんびりと寮の通路を歩いていると、一夏の部屋から鈴と物凄い剣幕の箒が言い争っているのが聞こえた。何事だと思った弥生は一夏の部屋を覗いてみると、ボストンバックを片手にした鈴と修羅のごとき気迫を纏わせた箒が玄関で対峙し、奥で一夏が訳がわからん、といった表情で立っていた。

 

「………皆こんな時間に何してるのさ?」

 

呆れた声で弥生が言うと、近くに居た鈴が口を開く。

 

「何してるって、部屋を変えてくれるよう交渉してるだけなんだけど」

「は…………?」

 

弥生はつい間抜けな声を出してしまった。そんな弥生を見て呆れた鈴が仕方ないと言わんばかりに説明する。彼女の話によれば、一夏の同居人である箒と部屋を交換しよう、と交渉している真っ最中だったらしい。

 

「…………ホント、何やってるんだよ君らは」

 

あまりにくだらなさすぎる理由に弥生は頭を抱えたくなった。

 

「ま、とにかく。篠ノ之さんも男が同居人じゃ色々と困るでしょ?あたしはそういうとこ気にしないから大丈夫だし、いいよね?」

「だから良くないと言っているだろう!大体何の権利があって私と一夏の間に割り込んでくるのだ!」

「幼なじみだからよ。それじゃ不満?」

「不満以前の問題だ!ふざけるのも大概にしろ!」

 

段々とヒートアップしていく箒。両者ともに一夏へ好意を抱いてるだけあって、お互いに引こうとはしない。いわば世間で言うところの修羅場というやつなのだ。この半月で箒の性格は頑固だとわかり、対する鈴も怖いもの知らずのようで、どう見ても相性が最悪だろう。

そんな中、さらに場を混乱させる要因が弥生の後ろから現れた。

 

「おやおや、皆さんどうかされましたか?」

 

その場にいた全員の視線が弥生の後ろへと向けられる。同時に弥生は底知れぬ不安を感じてゆっくり振り向くと、そこにいたのは白兎だった。

弥生の前で怒り心頭の箒は鈴を指さすと、これまた怒涛の声で言った。

 

「どうしたもこうしたもあるかっ!この転校生がふざけたことばかり抜かすのだぞ!!」

「別にふざけたことなんか言ってないわよ?ただ部屋を交換してって頼んでるだけだし」

 

箒の言い分が気に入らなかったようで、鈴も箒を指して抗議の声を上げる。

 

「うるさい!今は私が話しているだろう!」

「うるさいのはどっちよ!ていうか部屋交換しなさいよ!」

「断る!」

「なんでよ!」

「なんでもだからだ!」

「「ぐぐぐぐぐぐ…………っ!!」」

 

お互いに睨み合う2人。反発し合う箒と鈴はさながら水と油、磁石でいうところのN極とS極といったところだろうか。どちらも引く気はないらしく、2人の間から発せられるオーラからはどす黒いモノを感じる。

だが、そこで白兎が思いついたかのように手を叩いた。

 

「そういえば凰さん」

「なによっ!!」

「寮の部屋を変えたいんですよね」

「さっきからそう言ってるじゃない!」

「その場合には、変更には寮長の許可が必要だったと思うんですが」

「それがどうしたのよ!」

「いや、1年の寮長って織斑先生ですよね。その理由で申請が通るのかと思ったものですから」

「「「「あ」」」」

 

その瞬間、その場にいる全員がポカンと口を開けた。

そう、考えてみればこの1年の寮長を務めるのはあの織斑千冬なのだ。そんな彼女に『幼なじみ』という理由で部屋替えの申請するなど自殺行為に等しいだろう。

それを思い出した箒はフフン、と勝ち誇ったかのように胸を張り、対する鈴はみるみるうちに顔を青くしていき、わずかに肩を震わせていた。

 

「ふ、ふんっ!これで終わったなんて思わないでよね!!」

 

結局この日は鈴の撤退で幕を閉じるのだった。

 

◇◆◇

 

それから1週間が経ち、今日はクラス対抗戦当日。初戦の組み合わせは一夏と鈴、男性操縦者と噂の試合とだけあってアリーナは満席だ。ちなみに弥生はというと、セシリアと共にピッドでその様子を見ているところだった。

 

「流石、注目のカードだけあってすごい人数だね」

「そうですわね。ちょっとだけ悔しいですけど…………」

 

セシリアが拗ねた顔でそんなことを言う。きっと自分より鈴の方が目立っているのが悔しいのだろう。最近になってセシリアは時折こういった表情を見せるようになった。少しずつ彼女と信頼を気付けていることを弥生は喜びたかったが、どうにもそんな状況ではない。項垂れるようにベンチに座る一夏は、いつにも増して沈んでいる。

 

「ハア………。結局当日になっちまった」

 

一夏が沈んでいる理由、それはつい1週間前の放課後のことだ。いつも通り第3アリーナで特訓をしていたところで鈴が乱入、そのまま一夏と大喧嘩となった挙句、言ってはならないことを言って鈴を激怒させてしまったとか。ちなみにその頃弥生は自室にて本音に勉強を教えていたため、事件を知ったのはその翌日だった。

 

「まあ、落ち込んだって仕方ないんだし全力でぶつかって謝ってきなよ」

 

弥生はそう言って一夏の肩を叩く。

 

『試合開始5分前。選手はアリーナへ出撃してください』

 

アナウンスがスピーカーから響き、外から歓声が沸き上がる。促すように弥生は立ち上がった一夏の背中を押して親指を立てた。一夏は一瞬驚いた顔をするが、弥生の気持ちが伝わったらしくいつもの表情に戻る。

 

「それじゃあ二人とも、行ってくる」

「うん、頑張ってよ一夏」

「勝って帰ってきてくださいな」

「おうっ!」

 

一夏は力強く頷いて白式を展開、ピッドから勢いよくアリーナへと飛び出していった。

 

「よし。俺たちもそろそろ行こうか」

「ええ」

 

一夏を見送った二人は、彼の勇姿を見るべく観客席へと向かった。




完読ありがとうございます!
前回のシリーズではここで止まってしまったのですが、今回は諦めません!
感想等をお待ちしております。
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