「それじゃあ行かせて貰いますよ!!」
最初に動いたのはシザースSだった。シザースSは姿勢を低くして突っ込みながらシザースバイザーツヴァイ矛を蒼雷目掛けて振り上げた。
「勿論、遠慮なく来なよ」
『STRIKEVENT』
それを蒼雷は契約モンスターの腕を模した蒼色の籠手のジンオウガントレットを両手に装備すると拳の部分から伸びている爪の様な部分でシザースSの攻撃を押さえ込んだ。
「甘いですよ!」
「そっちこそね!!」
その直後にシザースSはシザースバイザーツヴァイ盾を蒼雷の顔を殴る様に横凪ぎに振るった。が、蒼雷も気づいていたのか攻撃を押さえ込んだのとは反対のジンオウガントレットで盾を強引に弾き、後ろに跳んで距離を取った。
「やっぱり簡単には倒せそうにないですか……分かっていたとは言え骨が折れそうですね」
「そう言う割には勝てないとは言わない所が文らしいよ。じゃあ次は俺の番だね」
「……?」
蒼雷はそう言うと両手のジンオウガントレットをシザースSに向けた。その行動にシザースSは警戒をしながら疑問の顔をした。
そして、それと同時にジンオウガントレットの十本の爪の様な部分が全て飛んできた。
「くっ!!」
シザースSはそれに対してリアクションをとる暇も無かったのか全力で床を転がり回避した。その際にシザースバイザーツヴァイ盾を落としてしまったのか、落とした方を見るとシザースバイザーツヴァイ盾の近くに爪が全て突き刺さっており、そこから籠手の部分までを鎖で繋いでいた。
「これを初見でかわされるとはね……」
蒼雷はその爪と籠手を元の形に結合させながら呟いた。
「肝が冷えましたけどね(盾をどうにか取りに行かないとカードを使う事も出来ませんけど……克也が簡単に行かせるとは思えないんですよねー。私の方のカードの種類は全部知られてますし)」
シザースSは自分のサバイブの性能チェックの為に何回も蒼雷と戦っており、手の内が殆どばれてしまっていた。一方の蒼雷の手持ちのカードの効果をシザースSは殆ど知らないでいた。
「(こうなったら……いえ、流石に克也が女性に関係する事が苦手とは言え、この状況ではそういう攻撃は意味ないですよね。……無いですよね?)」
シザースSが色々と思考を凝らしていたがいい案が浮かぶ事は無く、蒼雷も盾が無ければカードを使えない事を知っているからかシザースSの攻撃の届かない遠距離に立っていた。
「こうなったらごり押しです!!」
結局、いい案が出なかったのかシザースSは無駄に声高くそう言うと蒼雷に向かって駆け出した。
「それは一番愚策じゃないかな文」
蒼雷はそう言ってジンオウガントレットの十本の爪を射出した。
「そんなのは私が一番分かってますよ!!でも、これしか無いならやるしかないんですよ!!!!」
その飛んできた十本の爪をシザースSは一本だけをシザースバイザーツヴァイ矛で上に弾くと他の爪を地面に平伏してかわした。
そして、上部に弾き飛ばして落ちてきた鎖を強引に掴み取ると自分の腕にそれを巻きつけた。
「むっ?何の真似かな」
「柔道の真似事ですよっと!!!!それから停滞!!!!」
「なっ!?」
そのままシザースSは鎖ごと蒼雷を柔道の一本背負いの様に上空に投げ飛ばし、その際に速度を変える程度の能力で蒼雷の速度を遅くした
蒼雷は突然動き辛くなった体に戸惑い、受身も取れずに地面に叩きつけられた。
「油断大敵ですよ克也」
シザースSはシザースバイザーツヴァイ盾を広い矛と共に再度構えた。
「そう言えば文の能力は速度に関する能力だったね。速くなるだけじゃなく遅くも出来る……結構いやらしい能力だね」
「べ、別にいやらしくはありませんよ!!」
「……いや、そう言う訳で言ったんじゃないけどね」
蒼雷は苦笑交じりの声でそう言うとジンオウガントレットを構えて突っ込んできた。
「正面から来るとはいい度胸ですね!」
『ADVENT』『BUBBLEVENT』
シザースSはそんな蒼雷に対して二枚のカードをシザースバイザーツヴァイ盾に読み込ませた。
一枚目のカードの効果でシザースSの背後にボルキャンサーの眼が緑から水晶の様に透き通った赤に変わり、背中から両手の鋏よりも細く長くなった鋏が二本生えてきていた。更にお腹が鏡の様になっていて中には泡の様な物が入っている姿をしたボルライズキャンサーが現れた。そして、ボルライズキャンサーは口から地面に向かって泡を放った。
「その泡は確か麻痺+溶解効果が合ったね」
蒼雷はそう言うとジンオウガントレットで地面を叩き割り其処に放たれた泡を全て流れ落とした。
「そう来ると思ってましたよ。ボルキャン!!」
『ああ!!』
シザースSはそれを見るとすぐさまボルキャンに命令を下し、蒼雷に突撃させた。
「モンスターにはモンスターで行くのが定石かな」
『ADVENT』
蒼雷はそう言うとドラグバイザーツヴァイを蒼くしたジンオウバイザーにカードを読み込ませた。すると空から蒼色をした西洋の竜をモチーフに尻尾が二つに分かれている契約モンスター、ジンオウスプライトが現れボルキャンに突っ込んで行った。
『………………!!!!』
『話すならばもっと大きな声で言え!!!』
それをボルライズキャンサーは両手の鋏で防御しつつ背中の鋏をジンオウスプライトの首に向かって降り下ろした。
『………………!!』
『何ッ!?』
その攻撃を察するとジンオウスプライトは全身を放電させた。それは流石に防ぎようが無かったのかボルライズキャンサーは後方に吹き飛ばされてしまった。
「ボルキャン!?」
『俺の心配は良いからお前は自分の相手に集中していろ!!!』
その光景に驚いたシザースSが思わず声を掛けるがボルキャンの言葉を聞き直ぐに蒼雷に向かい合った。
「言われなくてもやってますよ!!」
「攻撃は届いて無いけどね」
「煩いですッ!!」
シザースSは言わなくても良いことを言ってきた蒼雷に向かってシザースバイザーツヴァイ矛を横凪ぎに振るった。が、先程から防がれていた方法と同じジンオウガントレットの籠手の部分に防がれた。
「この近距離なら……盾は間に合わなさそうだね」
『THUNDERVENT』
「しまっ!?」
言葉と共にジンオウバイザーにカードを読み込ませるとシザースSに向かって矛を通して雷撃を叩き込んだ。
「……今のでもまだ倒れてはくれない、か」
「あ、当たり前です!!(……いや、正直もうボロボロなんですけどね)」
それをくらったシザースSはまだ立っており蒼雷に向かって限界を誤魔化す様に大声で言っていた。そんなシザースSの装甲はこの戦いの中だけでかなり傷ついていた。
「……(霊夢さんの必殺技を防いだこのシザースの装甲にこれだけの傷をつけるとは流石に常時サバイブのライダーは各が違うと言った所なんですかね)」
「さてと、そろそろ諦めて負けてくれないかn……『……………………!!!!!!!!』……スプライト!?」
シザースSに諦める様に言っているとそれを遮る様に空を飛んでいた筈のスプライトが墜落してきた。その背中にはボルキャンが背中の鋏と両手に引っ付いていた。
『どうやらモンスターとしては俺の方が優秀の様だな』
『………………!!!』
『させるか!!』
ボルキャンの言葉が許せなかったのかスプライトは再び体を放電させようとしたが、その前にボルキャンがスプライトのお腹に左手の鋏を突き刺した。その痛みでスプライトの攻撃は中断されてしまった。
「……事情が変わった。悪いけどそろそろ倒させて貰うよ文」
蒼雷はその光景に危機感を感じたのかジンオウガントレットを構えてシザースSに向かって突撃する。
「遠慮しますよ!!」
シザースSは蒼雷の突撃に対して横にそれながらシザースバイザーツヴァイ矛を横凪ぎに振るい防御した。
「今度はこっちの番ですよ!!」
「なっ!?」
シザースSはそう言うと手に持っていたシザースバイザーツヴァイ矛を地面に投げ捨てて蒼雷に肉薄してきた。蒼雷はそれに一瞬驚愕の声を挙げたが即座にジンオウガントレットをシザースSの顔面に向かって突き出した。
「そう来ると思ってましたよ!!」
シザースSは少し喜びの声の混じった声で言うと、両手でシザースバイザーツヴァイ盾を持ち直しジンオウガントレットの爪を狙って振り回した。
「なっ、ぐっ!?」
その攻撃がクリーンヒットしたのかジンオウガントレットは呆気なく破壊され、一緒に蒼雷もその攻撃で壁にまで吹き飛ばされた。
「……克也、提案何ですが」
「何かな?」
吹き飛ばされた蒼雷が目だった傷が無いことを見たシザースSは話し始めた。
「次の一撃で一番ダメージを追った方が負けってのはどうですか?」
「……そうだね。あまり時間を掛けると静香が不安がるからね」
了承が得られると二人は同時にカードを取り出してそれぞれのバイザーに読み込ませた。
『『FINALVENT』』
「行きますよ克也」
シザースSがファイナルベントを使うと両手にシザースピンチが装備され、背後にボルライズキャンサーが立った。
「じゃあ俺も行こうかな」
蒼雷の手に再度ジンオウエストックが握られると蒼雷はスプライトの背中に立った。
「「……ボルキャン(スプライト)!!!!」」
二人が各々の契約モンスターに声を掛けるとそれぞれ必殺技の体制に入った。
『これで決めるぞ文!!』
『……………………!!!!』
ボルライズキャンサーは地面に向かって泡を放ち、背中の鋏を天井にまで届く長さまで伸ばした。
一方のスプライトは体に雷光を纏い、地面にその足をつけると咆哮した。
「はぁぁぁ!!!」
「これで終わりだッ!!!」
シザースSは放たれた泡の上を氷の上で滑っているかの様に滑っていき蒼雷に向かって両手のシザースピンチを降り下ろし、ボルライズキャンサーが更に追撃で背中の鋏を降り下ろすシザースインパクトを放った。
蒼雷は両手のジンオウエストックを右手に重ねて持つと左手でスプライトの首を掴んだ。それと同時にスプライトは地面が凹むほどに踏みつけをし、回転しながらシザースS達に突っ込み、突き出したジンオウエストックで貫くスパイラルボルトを放った。
そしてその二つの攻撃は激しい音をたててぶつかった。
「……俺の負け、か」
「ええ……私の勝ちです」
攻撃が消えると其処には少し鎧を焦がしたシザースSと武器であるジンオウエストックを破壊され膝をついている蒼雷の姿があった。
「負けた筈なのに清々しい気分を味わうなんて久しぶりだね」
「これからはそんな事の連続ですよ?何せ今の静香さんは私何かよりもよっぽど強いですからね」
「はは、確かにね」
二人は戦いが終わった安堵から油断していた。……もし普段の二人ならばやって来た気配に気付けていただろう。
『ッ!?文!!避けろ!!』
「へ?避けろって……」
シザースSが入り口の方向を見ると其処から巨大な光球が迫って来ていた。しかし、気付くのが遅かった。光球は既に文の手の届く距離にあった。
『……ちぃ!!文!!後は任せたぞ!!!!』
だが、シザースSを庇うようにボルキャンが前に飛び出した。そして……その光球が当たると同時に世界から音が消えボルライズキャンサーは消滅した。
「……え?」
「一体誰が!!?」
「ふむ、どうやらモンスターしか殺せなかった様ですね」
入り口の方向から来た人物は二人が知っている人物だった。
「くっ。来るとは思ってたけど予想よりも速いですね……清人さん」
清人……王竜麟はその言葉に驚いたのか興味深そうに聞いた。
「ほう、私の元を去ったのに私の名前を覚えているとは殊勝な心掛けですね」
「まあね。……で、何の用ですか」
「いえ、用済みの二人には死んで貰おうと思いまして来た所存ですよ」
「……二人だと?」
蒼雷は思わず敬語も忘れて聞き返した。
「ええ。裏切り者の神埼克也と役立たずの記名丸あ「黙れッッ!!!!」やを……何か言いましたか?」
蒼雷はショックで変身解除され崩れ落ちている文を背中に隠しながら言い放つ。
「文はこんな俺の事を最後まで諦めずに救おうとしてくれた!そんな文に比べたらあんたは唯の引きこもりだ!!!」
「……遺言はそれだけですか?」
王竜麟が蒼雷に近づこうとした瞬間
『主に手を出すな!!!!!!』
今まで小さな声で喋っていたスプライトが突然大声で叫びながら王竜麟に突っ込んでいった。
「なっ、スプライト!?」
『主、その少女を下まで!!それぐらいの時間は稼いで見せます!!』
「……頼む」
そう言うと蒼雷は壁に穴を開けて其処から下に飛び降りた。
「文、聞こえるか?」
「……はい。ショックではありますけど何とか……でも」
下につくと蒼雷も変身を解除して文に声を掛けていた。そんな文は自分のシンボルの無いカードデッキを見て自嘲気味に笑った。
「……文、逃げるんだ」
「え?」
「清人は俺が何とかするだから……「嫌です!!!!」文?」
文は克也の言葉を遮って話し出す。
「もう自分の知らない所で誰かが死ぬのは嫌なんですよぉ」
そう話した文の顔は泣いていた。恥も何もかも捨てた彼女は仮面ライダーでも、ましてや人殺しでも無い。唯の女の子だった。
それを見た克也は覚悟を決めて文の顔が見えるように座った。
「文……元気に出るおまじないだ」
「え……?」
克也はそう言って文にキスをした。一瞬にも満たない時だったが二人の唇にはしっかりと感触が残っていた。
「その、だな。俺も文の事は満更じゃ無かったよ。むしろ好きな方だったと思う。だからこそ先に逃げてくれ。大丈夫だ、頃合を見て俺も逃げる。だから……頼む」
克也の必死な言葉を聞いた文は……
「分かりました。……ちゃんと帰ってきて下さいよ」
「ああ」
それを聞いた文は「約束ですよ」と言うとその場から離れて行った。
「さてと……死ぬ気でやってやるよ」
克也はそう気合を入れると蒼雷に変身しあの場所に戻って行った。
十分後
「此処まで来れば大丈夫でしょうか?」
文は噴水がある広場まで逃げてきていた。そして噴水の目の前に立つと先程の事を思い出していた。
「ふふ、克也からキスなんて……嬉しいじゃないですか!!後はちゃんと帰って来てくれるといいのですが……」
そう思考をしていると後ろから何かを投げつけられた。
「痛ッ、もう誰ですか物を投げ…………嘘」
それは何処かで見た筈だった。蒼い色と龍の紋章の入った欠片達を全て繋げたら……それは蒼雷のデッキとよく似ているのでは無いだろうか。
「忘れ物ですよ記名丸文」
「笛木清人……!!」
「では、死んでください」
そう言うと清人は手に持つ拳銃の引き金を躊躇い無く引いた。
「ガッ!?」
銃弾は文の右足を打ち抜き文は痛みで倒れてしまった。
「さて、遺言はありますか?」
「…………貴方は何れ倒される」
「ほう、何故ですか?」
「私や……か、克也が負けても意思を引き継いでくれる誰かが居ますからです」
文は克也が死んだと認めた事実に泣きそうになるが言い切った。
「成る程……それは楽しみですが、貴方は此処でリタイヤです」
清人はそう言って手に持つ拳銃の照準を文の眉間に合わせた。
「……(霊夢さん、魔理沙さん。私は先に休んでしますが二人とも頑張って下さい。貴方達なら世界を救える筈です。……じゃあ逝きましょうか。父さん、母さん、紅葉、克也今其方に逝きますよ)」
文がそう心の中で呟き終わり目を瞑ると同時、拳銃から銃弾が放たれ文の眉間を貫いた。
「…………」
清人は無表情で文だったものを見ると残った銃弾を全て文に叩き込み。その場を去った。
「……文?」
先を進んでいた霊夢は不意に立ち止まり後ろを見た。
「文がどうかしたのか?」
「……何でも無いわよ。ほら、とっとと行くわよ魔理沙」
「へいへい」
気のせいだったと結論づけると霊夢は魔理沙を連れて更に先に進んで行った。
ではご一緒に。王竜麟貴様ぁぁぁぁぁ!!!!!!
……自分でもこいつに殺意が沸いた。やはり長い事居た文を殺しやがったから何でしょうかね?まあ、こういう悪役も必要だから執筆は大変だぜぇ(白目ピクピク)