「ん……ここは」
『起きたか、霊夢。一時間ばかり気絶しただけで安心したぞ』
『霊夢さん!?大丈夫ですか!!』
霊夢が眼を覚ますとミラーワールドでは無く現実の拠点である神社の木造の床に寝ていた。
「レッダー……それにスターも。あれから……どうなったの?」
霊夢は自分が戦っていた筈のフェネクスの気配が周囲一体に無い事に気付きレッダーに聞いた。レッダーは少し唸った後に正直に話し出した。
『奴は逃げた。その原因となったのは霊夢お前だ。ただし、今話しているお前ではなく静香の事件の時にも出てきた奴の事だ』
「そう……そいつは何か言ってたの?」
「うむ……。次に奴が出張るような事態になったら、奴はなりふり構わずにこの戦いを終わらすそうだ」
「そんな事になってるのね」
霊夢は一度地面に俯くと自身の頬を叩いた。
「痛っ!加減するべきだったわね」
『れ、霊夢さん?いきなり何してるんですか?』
自身の主人である霊夢の奇行に驚いたスターは近くの鏡から頭だけを出して心配そうに言った。
「気合を入れただけよ。流石に何度も頼ってられないでしょ?それに、感覚は分かったしね」
『『感覚?』』
パートナーの二匹をよそに霊夢は何気なく空を見た。
「ええ。それよりも今日の空は綺麗な青空よ。どうせ、もうじき見てる暇もなくなるんだからあんたらも見ておいたら?」
霊夢が空を見ていると空の一点が黒くなった。その黒い点は真っ直ぐに霊夢のいる場所まで近づく、というよりも落ちてきていた。
「はあっ!?」
それが神社にぶつかる直前に霊夢は霊力を放出しブースター代わりにして前に飛ぶことで回避できたが神社はそうもいかずあっけなく倒壊してしまった。
「な、何で私のいる神社は悉く壊されるのよ……。天子の奴といい今の落ちてきたのといい何か私って憑かれてるのかしら」
『巫女のお前が憑かれたら終わりだろうが。神や霊を降ろすのならともかくとして』
『え、あれは……』
スターが驚きの声をあげた。
「どうしたのよスター、何かあったの?」
不思議に思った霊夢が神社の倒壊あとに近づくと自分に乗っている瓦礫を吹き飛ばしながら落ちてきた物、黒い龍が現れた。
「黒いレッダー?」
『貴様は、ドラグブラッカー!?』
『久しぶりだな、若輩者』
その龍にレッダーは驚きを隠せずにいた。
「レッダー、前に会わなかった?」
『あ、ああ。だが、奴が今回の戦いに参加するとは聞いていないぞ』
『フン。そも、今回のライダーバトルは今までとは情勢が違うだろうが。既にこの戦いはルール無用。勝者こそが正義、敗者は悪なのだ』
ドラグブラッカーの背中から一人の少女が下りてきた。
「ブラッカー、ご苦労。私が喋るから黙っていろ」
『それが命令とあらば従おう』
少女の感情を感じさせない声にブラッカーは頭を垂れるように大地に体を置いた。
『なっ、奴が女に従うだと!?』
「いや、あんたが驚くってどんだけよ。ていうか、あんた、あのモンスターと知り合いなの?」
『奴は……女の主人には絶対に従わない奴だ。男でさえ気にくわなければ喰うほどだったからな。奴は俺の……兄だ』
「そ、そうなのね。何か、そう言われると納得できるわ」
霊夢がレッダーからブラッカーの事を聞いているうちに少女は霊夢でも顔が見える位置まで来ていた。
「……え?」
「それだ。貴様は驚いた顔で死ね」
自分にそっくりの少女を見た霊夢の動きは止まりその隙を逃さず少女は手に持ったドラグセイバーの赤い部分が黒くなった剣を振り下ろした。
「くっ!」
咄嗟の事で回避が遅れたが直撃を避け距離を取った霊夢は剣が掠った左腕を抑えながら目の前の少女を見据える。
「逃したか。だが、それでいい。あっさり終わっては復讐にならない」
「復讐?生憎と同じ顔に怨まれる事をした覚えはないわよ」
「お前の存在そのものが迷惑なんだよ。行けブラッカー、奴の全てを食い散らせ」
少女が言うと今まで大人しくしていたブラッカーは凄まじい速度で体勢を整え霊夢に突っ込んで来た。
『させるか!!』
だが、霊夢の後ろの鏡からレッダーが出現しブラッカーと激突した。
『目障りだ、失せろ』
『生憎とこいつは俺のパートナーでな。お前と違ってパートナーはある程度大事にするさ』
互いににらみ合いながらパートナ達の上空で滞空し、指示をお互いに待った。その二匹の下では似た顔の少女達が距離を取りながらデッキを構えていた。
「あんたが何者かは分からないけど、ここで倒させて貰おうかしら」
「倒されるのは貴様だ、偽者!!」
両者同時にカードデッキを鏡にかがすと目の前の相手まで走り出しデッキを持つのとは反対の拳を突き出した。相手の拳を掴むと少女はその手を捻ろうとするが霊夢が足払いを掛けた事で失敗に終わったが、デッキを石の様に握り締め振り下ろした。
霊夢は避けようとするが避けきれず赤い大きなリボンが髪から外れてしまいまとめていた長い黒髪がほどけた。
「くっ、変身!」
「逃がすか!変身!!」
龍騎になった霊夢はミラーワールドに入るとするがリュウガになった少女がその手を掴みに強引に引きずり出した。
「最早、ミラーワールドに行く必要は無い。既にこの現実世界こそが戦いの場だ!!」
「現実世界で戦闘をするなんてあんたら正気!?」
『SWORDVENT 』『SWORDVENT 』
互いに似たような剣を構え切りかかりドラグブレードをぶつけ合う。
「正気じゃないさ。自分の場所を奪われて正気でいられるか!?その上貴様はその場所を貴様は捨ててくれやがった。そのせいで『私』がどれだけ絶望したか貴方に分かるか!?」
「何ですって!?私がいつあんたの場所を奪ったって言うのよ!!」
最初は男のような口調のリュウガだったが次第に女性の口調で怒りと憎しみに満ち溢れた言葉を龍騎に言い放っていった。口調に怒りが込められていく事にリュウガの太刀筋はより鋭くなっていき徐々に龍騎は押され始めた。
「あんたがこの世界に来てからずっとよ!!あんた……なんて、あんたなんて、大人しく幻想郷とかいう場所で呑気に暮らしていれば良かったのよ!!そうすれば私だってこんな思いしなかった!!だから、返してよ!
私の家族を!私の友達を!私、博麗零無の人生を返してよ!!」
「そ、そんな……。じゃあ、貴女がこの世界の私なの?」
『ADVENT』
「そうよ、あんたによって何もかもめちゃくちゃにされた人間よ!!」
『霊夢!!』
「え……?きゃあぁ!」
リュウガの言った言葉に動揺していた龍騎はリュウガが呼んだブラッカーに気付かず火炎弾が直撃してしまい神社の残骸に突っ込んだ。
「まだよ、この程度じゃ私の恨みは少しもはらせちゃいない!!ブラッカー!!」
『仰せのままに』
ブラッカーが火炎弾を連続で神社の残骸に放った。神社の残骸も巻き込んで周囲に炎が広がった。
「……ふふふ。ふふ、やった!これで私はまた博麗零無になれる!」
『やったな、零無』
『UNITEVENT』
「誰がやられたって?」
残骸を跳ね除けその下からドラグカイザーと龍騎が出てきた。それを見たリュウガは先程まで普通の少女の様に喜んでいたのが嘘かのような憎悪を纏っている様な雰囲気になった。
「……やられろよ。それで私はハッピーエンドなんだから。何で死なない?シネヨ、イイカラ、シネヨ」
「はっ、私を殺してハッピーエンド?とんだお子様ね。人を殺してハッピーエンドなんて言ってる内は本当の幸福は見えないわよ」
「お前が言うか。人の存在を奪ったお前が!!」
『FINALVENT』
「そうね。でも、ここで私を殺して戻ったら貴女は絶対に後悔する。私はもう二度とそういう人を見たくないのよ」
『FINALVENT』
龍騎とリュウガがお互いの必殺技を放つ準備をする。合体を解除したレッダーと共に宙に跳ぶ龍騎、そのままドラゴンファイヤーストームを放つ。リュウガは宙に浮かび迫ってくる龍騎に向けてブラッカーの放つ黒い火球と共に必殺の蹴りであるドラゴンライダーキックを放った。
「だあぁぁぁぁぁ!!」
「はあぁぁぁぁぁ!!」
二人のライダーキックは空中でぶつかり合い原典の龍騎とリュウガと違いお互いの攻撃が相殺し、どちらも倒されず後ろに吹き飛んだ。
「ぐっ!ブラッカー!!」
リュウガは上空にいたブラッカーの尻尾を掴み滞空した状態で黒炎を放たせた。
「レッダー!!私に構わずあのドラゴンに攻撃よ!」
『GUARDVENT』
黒炎を左のドラグシールドで防ぐと龍騎はジグザグに動きブラッカーを翻弄する。その隙にレッダーが接近しその尻尾をブラッカーに叩きつける。
「偽者に付き従う偽者風情がッ!私のパートナーに触れるな!!」
『ぐおっ!?』
が、リュウガが叩き付けた尻尾を掴むとそれなりの大きさのあるレッダーを持ち上げ大地に叩き付けた。
「ふん!!この程度か、偽者!!……あいつは何処に行った?」
レッダーに攻撃をしている隙に龍騎を見失ったリュウガは周囲を見渡すが近くに龍騎の姿は見つからなかった。
『零無!上だ!!』
「え?」
「落ちなさい!!」
スターの背に乗りドラゴンマッハクラッシュを発動した龍騎が上空から迫りリュウガが持つブラッカーの尻尾を切断した。
『ぐぉぉぉぉ!?』
「ブラッカー!?よくも、ブラッカーを!!」
リュウガは怒りのままにスターの背から下りてきた龍騎に拳を放った。
「ふん!!」
「がっ!!」
だが、その拳は簡単に龍騎に掴み取られ逆に自分が殴り飛ばされてしまった。
「これは神社を破壊してくれたぶんよ。……私は謝らないわよ。確かに貴女には悪い事をしたわ。だからって貴女のしようとする復讐を肯定するのは……無理よ。何より私にもやる事があるのよ」
『SURVIVE』
龍騎Sになった霊夢がゆっくりとリュウガに歩いていく。龍騎Sが迫ってくる間ずっと、リュウガは小さな声で何かを言っていた。
「……?」
近くまで来た龍騎Sは漸くリュウガが何を言っているのか分かった。
「イヤダイヤダイヤダイヤダ、カツカツカツカツカツ、ナクスナクスナクスナクス、私がいなくなっちゃう……」
「ッ!?」
龍騎Sが攻撃の届く範囲まで来るとリュウガから黒い炎が溢れて来た。その中心にいるリュウガは幽鬼の様に立ち上がるとデッキから一枚のカードを取り出した。そのカードを取り出すと周りの炎が意思があるかのように激しく燃え出した。
「お前のせいだ。お前が私に大人しくやられていれば、このカードを使う事も無かった。お前のせいで私はまた失う……お前のせいだ」
『SURVIVE』
ブラックドラグバイザーが変化したブラックドラグバイザーツヴァイにサバイブ邪炎のカードを読み込ませた。するとリュウガの体が変化していき目の前の龍騎Sの赤が黒に変わった姿のリュウガSになった。
「私のせいじゃないでしょ。それに今更サバイブになってもこの距離なら私の方が早い!」
龍騎Sがソードモードにしたドラグバイザーツヴァイを振り下ろした。
「……は?」
「ふん!!」
だが、リュウガSの体に触れた瞬間、何の前触れも無くドラグバイザーツヴァイの刀身が消滅してしまった。それに困惑している龍騎Sの腹部にリュウガSの強力な拳が突き刺さった。
「がっ!!」
「消えうせろ」
膝をついた龍騎SにリュウガSは容赦なく蹴りを放ち、龍騎Sは吹き飛ばされ辛うじて無事だった賽銭箱に激突した。
「ぐっ!何、いきなり体が重くなって……」
「これこそが私のサバイブ。私に触れた物はライダーであればその機能を少しずつ失う。しばらくすれば回復するがな」
リュウガSはブラックドラグバイザーツヴァイをソードモードにしながらゆっくりと龍騎Sの方に歩いてくる。
「はあっ!?そんな能力この戦いじゃチートじゃない!!」
「無論、代償はある。このサバイブは変身する度に私から何かを奪っていく。それは感情だったり記憶だったり五感だったりする。お前のせいで私は嗅覚を失ったぞ?」
龍騎Sはその話を聞きながら何とか立ち上がろうとするが全く体に力が入らず立ち上がれずいた。
「時間稼ぎのつもりなら無駄だぞ?この能力を授けたのは奴だ。元来のライダーでこれを敗れるものはまずいない」
「ぐっ!!」
辛うじて動く左手で近くの賽銭箱の破片を投げるがそれで止まるはずも無く遂に龍騎Sを上から見下ろせる位置まで来てしまった。
「これで終わり……ちっ、あっちはお前よりも強くなっているのか」
ドラグブレードを振り下ろそうとしていたリュウガSだったが唐突に北の方向を見ると龍騎Sを一瞥し言った。
「今回は生かしてやる。精々死の恐怖に怯えていろ」
リュウガSは北の方に向かって走り去ってしまった。リュウガSが走り去った直後変身が解け、緊張からか霊夢は地面に倒れた。
「ライダーの機能停止はチート過ぎでしょ。……もう、サバイブだけじゃ勝てないレベルの奴だらけね」
霊夢は地面に倒れた状態のままで空を見た。空は先程までの青空とはうって変わって曇天となっていた。