「やれやれ私とした事が家に忘れ物をするなんてな。まったく、たるみ過ぎなんだぜ」
紫色のとんがり帽子を被った金髪の少女は自らが住んでいた孤児院の入り口に立っていた。
「しっかし目障りなぐらい青空だな、おい。こんなんじゃ悪い奴は外に出たくなくもなるな」
とんがり帽子を深く被りなおすと少女は手を孤児院に向ける。
「そんじゃま、消えてもらうとするか。恋符『マスタースパーク』」
その手からとある『少女』の代名詞とも呼ばれる魔砲が孤児院に向かって放たれた。直撃すれば孤児院が消し飛ぶだろうその一撃は突然現れた白鳥型のモンスターの妨害によって孤児院に当たる事は無かった。
「なんだ、出てきちまうのか。てっきり私は傍観に徹すると思ったんだけどな」
「私をおびき出すためだけにこのような事を?」
少女の言葉に反応して近くの茂みから白鳥を模した何処となくナイトに似た白色の仮面ライダー、ファムが出てきた。出てきたファムに悪戯に成功した子供の様な笑みを浮かべた少女はファムの方を向き言った。
「それもあるけど私、ここのガキ共は嫌いでなー。ついでに殺してやろうかと思ってな」
「……外道ですね霧雨魔理沙。その方が私の復讐も捗りますが」
「復讐ね。いいね、その方が私もやりやすい。襲われた方が正当防衛になるからな。それから……私をその名で二度と呼ぶな。私の名は魔梨沙だ」
名前を名乗っている魔梨沙に構わずファムは地面を蹴り瞬時に接近するとその無防備な胴にサーベルの形をしたブランバイザーを突き放った。が、魔梨沙は跳躍をしファムの肩を踏みつけ先程までファムがいた位置に立った。
「おいおい、名前は聞くもんって親に聞かなかったのか?」
「くっ!」
「ま、無礼のお詫びはもう貰ったから許してやるとするか。丁度鏡が欲しかった所だったしな」
「っ!?」
魔梨沙は先程の一瞬の間にカードデッキをブランバイザーにかざしVバックルを呼び出していた。そのまま流れるようにデッキをバックルに叩き込んだ。
「さて、さっさと退場してもらうぞ仮面ライダーファム!」
「くっ、それはこちらの台詞だ仮面ライダーナイト!!」
その言葉と共に両者の武器が激突した。
「ふん、簡単な挑発に乗るわりには戦い慣れてるもんだな」
「当然です。貴女方に復讐する為に元凶のもとで散々鍛えてきたのですからね!」
ナイトは数回の剣戟の間に相手が予想よりも強いことに関心し、相手から距離を取ろうとしたがファムは逃がすまいとナイトに突進をしながらブランバイザーを振るった。
「足元がお留守だぜ」
「ぐっ!!」
『SWORDVENT 』『GUARDVENT』
ナイトはファムの攻撃を読んでおり逆に足払いを掛け転ばし即座にウィングランサーを召還しファムに振り下ろす。が、ファムも負けておらず倒れながらブランバイザーにカードを読み込ませウィングシールドを召還し攻撃を弾きその勢いのままナイトにウィングシールドを叩きつけた。
「ッ。流石に今のは効いたな」
「ふん、なんならもう一発お見舞いしましょうか?」
ナイトは盾の一撃をくらった場所を押さえながら容赦なくウィングランサーを構えている。一方のファムは違和感を覚えていた。
「(霧雨魔理沙の今までの戦い方と明らかに違う……今までの彼女ならあれをくらったらもう少し動揺するはず。それに、考えてみればあの博麗霊夢の親友がこんな汚い真似をする?)」
「考え事とは余裕だな、おい」
「っ!!」
考え込んでいたファムはナイトの接近に気付いておらず掛けられた声に驚き後ろに跳んでしまった。跳んだ後でファムは気付いた。
「(奴がいない!?)」
目の前にナイトがいないことに。だが、確かに声は聞こえてきた。前に居ないのであればナイトが何処にいるかは明確だ。
「後ろか!?」
「ご名答。正解者には槍をプレゼントだ」
そのままウィングランサーはファムの腹を貫いた。
「……ちっ。幻か」
貫いたファムの手応えの無さに気付いたナイトはそれを幻覚だと断定しデッキからカードを取り出した。
「幻覚には目覚ましってな」
『ナスティベント』
ダークウィングが超音波を発するとナイトの近くの空間が一瞬揺らいだ。ナイトはそこにウィングランサーを投げつけた。
「くっ、ここまで早く対応されるとは思いませんでしたよ」
「はっ、この程度で今の私を殺す気か?そうだったなら思い上がりすぎだぜ」
ウィングランサーをウィングシールドで防いだファムが悪態をつきながらその場に現れた。その姿にナイトは嘲笑の言葉をかけるが武器は油断なく構えたままだった。
「ええ、勿論思っておりませんよ。むしろこの程度で殺すなんて勿体無いです。貴女方は私達が殺すのですから」
「私達ねぇ。……ああ、そういうことか。相方は霊夢の方か」
「ええ、その通りですわ。安心してください、殺すときは一緒に殺してあげますから」
「ああ、そりゃ勘弁だ」
ファムは自身の発言を聞いてからのナイトの様子がおかしいのには気付いたがそれがどういった種類のものかは理解できなかった。
「……どういうことですか?」
その為疑問を示すのは当然の事だった。
「いや、まあな。……あの糞巫女を殺すのは私の役目だ。譲るわけないだろ」
疑問を放つことなくナイトを倒す事だけを考えていれば魔梨沙の逆鱗に触れることもなく『ナイト』だけを倒せただろう。だが、彼女はその逆鱗に触れてしまった。だからこそ、ナイトから溢れんばかりの憎悪が出るのも必然だったろう。
「……ッ!!?」
ファムはそれを感じると直ぐにその場から跳躍し後退して目の前のナイトを再度見直した。
「(普通のナイトと変わっていないですよね?じゃあ、今の変化は一体……。ここは零無に応援を頼みましょうか。彼女なら既に捕らえているかもしれないですし)」
目の前のナイトを警戒しながらファムは仲間であるリュウガに神崎士郎から貰った意思伝達用のお札を使い連絡を送った。
「(警戒のしすぎかもしれませんが備えあれば憂いなしですからね)どうやら貴女もようやく本気になったようですね。なら、こちらも……?」
ファムはデッキからサバイブのカードを取り出そうとしたが何故か上手く取れなかった。不思議に思ったファムは自信の手を見て気付いた。
「……え?私の手は何処に……あっ」
自身の手首が千切れているのとすぐ傍に誰かの手首を持ったナイトがいるのに。
「ッ!!?」
「おいおい、逃げんなよ。復讐対象から逃げる復讐者がいるのかよ。てっ、これは自虐か」
「がっ!?」
本来なら叫びたくなるような激痛だがファムは気合で我慢しその場を急ぎ離れようとしたがそれよりも早くにナイトがその鳩尾に拳を放ち逆の手で地面に叩きつけた。その衝撃で何故かナイトの鎧が砕け変身が解除された。
「あっ?あー、そうかそうか。もうあの姿じゃ私の全力には耐え切れないか」
「あ、貴女その背中に生えている羽は何?」
ファムが地面に倒れながら見た魔梨沙は背中から悪魔の様な羽を生やし瞳が赤く輝いていた。その指摘を受けた魔梨沙はファムの頭を見ながら言い放つ。
「吸血鬼だよ、吸血鬼。知ってるだろ、それぐらい?まあ、レミリアほど上等なもんじゃないけどな」
そう言いながら魔梨沙は笑う。その笑顔にはただただ復讐という狂気だけが張り付いていた。
「ど、何処でそんなものを」
「あんたらの上司だよ。まあ、奴にとって見れば発火剤のつもりだったのかもしれないが結果オーライだ。お陰で霊夢に復讐ができる」
「神埼が?いえ、それよりも復讐って一体?」
「そんなこと死に行く奴が知らなくていいんだぜ」
そのまま魔梨沙は近くに刺さったままだったウィングランサーを掴み頭に振り下ろした。その攻撃の余波で地面には大穴が開き土煙が舞った。
「……今のはチェックメイトだと思ったんだがな」
魔梨沙は自身の攻撃で開いた大穴にファムの残骸がないのを見るとすぐに周囲を見渡した。ファムはすぐに見つける事ができた。しかし、その横にはファムを庇うように立ったリュウガSがいた。
「やらせるものか。真理沙、大丈夫?」
「え、ええ。出血がまずいかもしれませんがこの程度ならやれます」
「…………」
リュウガSはファムの様子に一瞬逡巡した後、その手を強引に掴んだ。
「零無!?」
「この場は逃げるのが得策。貴女が死んだら復讐を果たしても意味がないもの」
「零無……」
「おいおい、私が逃がす様な優しい奴に見えるか?」
魔梨沙は近くにあった石つぶてを数個掴みあげ、それを全力で目の前の二人に投げつけた。今の魔梨沙は吸血鬼を名乗るだけありその力も強化されており石つぶては凄まじい速さで二人に向かって行った。が、その石つぶてが当たる事は無かった。
「貴女の攻撃じゃシャドウの防御は超えられない」
全ての石つぶてをその身で防いだドラグランザーに良く似た黒い龍、ドラグシャドウは主の言葉に呼応するように咆哮した。
「ちっ、確かに今のままじゃそいつは突破できそうにないな(なら、よく似た博麗霊夢の龍も同じか。まあ、力は手に入れた後はそれを入れる器だな)」
魔梨沙はポケットに入れた白紙のカードを撫でるとため息を一つ吐いた。
「いいぜ。逃げるならとっとと逃げな。私も暇じゃないからな」
「そうか。博麗霊夢を殺すのは私だ」
そう言いリュウガSは暴れるファムを連れその場を去った。
「……博麗霊夢は私の復讐対象だ、譲るわけには行かないな。その為にもあいつらのとこに行かないとな」
魔梨沙はそう言い放ちある場所に向かって歩いて行った。その様子をダークウィングは何ともいえない表情で見ていたが大人しく魔梨沙について行った。
次回もなるべく早く投稿できるように頑張るのでお楽しみに。