バンドリ!のヤンデレ物を書くよ!   作:大塚ガキ男

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どうも、大塚ガキ男です。
今回は最近来てる子のお話です。


奥の手は有らず、光沢の無い鈍い瞳は美しくは咲かない。

 

 

 

 あたし──奥沢美咲には、彼氏がいる。家族にも、ハロハピの皆にも(というか、言うと色々面倒なことになるから絶対に言わない)言っていないけれど、あたしには彼氏がいる。

 彼氏の名前は、佐渡夏輝(さわたりなつき)。夏輝↑ではなく夏輝↓なのがポイントだ。()の技、のイントネーションではなく、()()戦い、のイントネーションだ。

 伝わってるのかな。

 いや、誰に? という話だけど。

 とにかく、あたしには佐渡夏輝という彼氏がいるのだ。

 けれども、夏輝は、奥沢美咲という彼女がいるのにも関わらず、他の女の子と話すし、連絡先だって持ってる。幼馴染(女の子)に毎朝起こしてもらってるし、どこかのお嬢様とも大変仲良しだ。

 何してるの。

 あたしがいるのに。

 あたしだけいれば良いのに

 何で夏輝の生活に他の女の子が介入するの。何で夏輝はその生活に疑問を持たないの。

 何で他の女の子は夏輝に好意を持ってるの。

 こんなのっておかしいでしょ。

 早く夏輝を連れ戻さないと。あたしという彼女がいるのに、他の女の子にうつつを抜かしちゃ駄目でしょって叱らないと。二度とこんな事が無いようにキツく言って聞かせないと。

 じゃないと、手遅れになっちゃう。

 

「──きちゃん」

 

「──さきちゃん」

 

「美咲ちゃん?」

「……花音さん」

「大丈夫? 何か、怖い顔してたけど。わ、私、何か変な事しちゃったかな?」

「いや、そういうのじゃないです。少し、考え事しちゃってただけなので。それで、何の話でしたっけ」

「や、やっぱり聞こえてなかったんだ……」

 

 何やらしょんぼりとしている花音さんの様子を見て、あたしはようやく、現在はファミレスで昼食を摂っている最中なのだと思い出す。出来立てとは言いがたい温度のハンバーグをナイフで切り、フォークで口に運んで、また花音さんの方を見た。花音さんがこう答える。

 

「この後、どうしようか?」

 

 そう。

 当初は、『そろそろ冬物のお洋服買いたいね』という花音さんの希望で始まったこのショッピング。しかし、午前に訪れたお店をすこぶる気に入ってしまったらしく、花音さんはそのお店で服を購入し、満足してしまったのだ。かく言うあたしも自分の買い物というよりかは、花音さんを迷子にしてはいけないという使命感から一緒に出掛けているので、特に欲しい物も無いのだ。

 

「あたしは、特に欲しい物も無いので、花音さんの行きたい所に行きましょう」

「うーん……行きたい所かぁ」

 

 食事も終え。

 次の行き先も決まってファミレスを後に。

 花音さんのペースに合わせて、街を歩きながら談笑。

 お日柄も良く、ただ歩いているだけでも元気を貰えそうな、そんな天気。

 そう言えば、こころの鼻歌もそろそろ曲に仕上げないと。

 曲にするとしたらどんな感じになるのかと、どんなテーマでどんな曲調で、とか色々考え始めると、あたしをハロハピに巻き込んだお嬢様の笑顔が、あたしの名を呼びながら脳内を暴れ回る。

 うーん。

 今じゃ無理だ。

 

「ここを左だっけ」

「いいえ、まっすぐです」

 

 我が道を往こうとする花音さんをキチンと導きながら進んでいる最中。花音さんとは逆方向。つまりは、左──視界の左端に、彼氏が、夏輝が映ったような気がした。慌てて振り返る。

 

「美咲ちゃん?」

 

 突然立ち止まったあたしを心配したのか、それともあたしが立ち止まった理由を知りたいのか、あたしと同じ方向に視線を向ける花音さん。

 

「……い、いや、何でもないです。人違いでした」

「人違い?」

「はい。少し、彼氏に似ていたので」

「か、彼氏!?」

 

 夏輝と見間違えた事で少し混乱しているのか、誰にも言っていない夏輝の存在をポロリと洩らしてしまう。マズいと思った時には、花音さんからの質問攻めが始まってしまっていた。歩行を再開させながら、あたしはそれに無難な、当たり障りの無い回答で返しつつ、チラリともう一度振り返ってみた。そこには、彩先輩(仕事終わりだろうか)と、夏輝とは似ても似付かない、汚れた格好の男が並んで歩いているだけだった。

 ……どんな事情の二人なんだろう。

 

 

 

 ✳︎

 

 

 

 

「……来ない」

 

 スッスッ、と何回もトーク履歴を更新してみる。

 が。

 

「……おかしい。返信が来ない」

 

 あれから──花音さんと出掛けてから。もしくは、夏輝と見知らぬ誰かを間違えてしまったという失態を犯してから、一週間以上が経過した頃。夏輝から全然連絡が返ってこない事に気付き、あたしは焦り始めていた。普段の夏輝はテレビゲームをしていたり、ギターを弾いていたり寝ていたりで全然スマホを見ないので、返事が一晩明けてからとか一日後とかはザラだったので、油断していた。これは流石におかしい。大丈夫かな。

 電話を掛けてみる。

 出ない。

 もう一度。

 出ない。

 

「……大丈夫かな、夏輝」

 

 呟いてから、時間を確認。現在時刻は17時と30分。オレンジ色の窓の外を一瞬見てから。

 

「……よし、会いに行こう」

 

 もしかしたら、スマホが壊れているかもしれない。そうなったら、また違う連絡手段を考えなければならないからだ(あたしが通っている学校は女子校なので、当然ながら夏輝は他の学校に通っている為スマホでしか連絡が取れないのだ)。

 自転車に跨り、夏輝の自宅へと急ぐ。話し込む必要は無い。ただ、一目会ってあたしが安心出来れば良い。ついでに、他の女の子と接触しないようにそれとなく伝えれば良い。今胸中にある得体の知れないモヤモヤと不安を、解消したいだけだから。

 何度も行った事のある、夏輝の自宅の前。邪魔にならない所に自転車を停めて、深呼吸。急いだ為に額に滲んだ汗をハンカチで拭ってから、インターホンを──

 

「夏輝は居ねぇぞ」

 

 ……、

 …………、

 ………………。

 

「こんばんは、市ヶ谷さん」

「おう。こんばんは、奥沢さん」

 

 突然の、背後からの呼び掛け。振り返ると、向かいの家の塀に背中を預け、両腕を組んだ市ヶ谷さんがこちらを見ていた。挨拶をしてみるが、この場の空気はどこも和やかではない。むしろ──

 

「何怖い顔してんだよ」

「いや、してませんけど。それより、居ないっていうのは? 夏輝、普段ならもうとっくに帰ってきてると思うんですけど」

「何で奥沢さんがアイツの普段を知ってるんだよ」

「彼女ですので」

「はぁ?」

「そういう市ヶ谷さんは? 夏輝に何の用ですか」

「幼馴染だからな。もしかしたら帰ってきてねぇかと家の周辺をウロつく事だってある」

「あぁ、()()()?」

「奥沢さんだって()()()友達だろ」

「違いますよ。あたしと夏輝は、将来を誓い合った仲なんです」

「夏輝はその事認知してんのか」

「してませんけど?」

「じゃあ駄目だろ」

 

 視線がぶつかり合い、青白い火花が散る。

 

「重要なのは、夏輝が誰を好きなのかって事です」

「アイツが奥沢さんを好きって言ったのか?」

「言ってませんけど?」

「じゃあ駄目だろ!」

「言葉にこそされてませんが、心で分かるんですよ。夏輝があたしの事をどれだけ愛しているか。どれだけ心の中で想っているか」

「分かってないからその体たらくなんじゃねぇのか?」

「……さっきから偉そうに何なんですか?」

「だから、私は()()()なんだよ。誰にも代わりが効かない、世界でたった一人、アイツの世話をしてやれる幼馴染なんだ。悪いけど、奥沢さんとは年季が違うから」

「幼馴染幼馴染って、家が近いだけの薄い繋がりじゃないですか。あたしは違う。学校さえも違うのに夏輝と出会って、今こうして付き合ってる。これって、運命なんですよ。幼馴染だかなんだか知りませんけど、夏輝は多分市ヶ谷さんのお節介、良い風に思ってませんよ」

「おい」

 

 売り言葉に買い言葉──いや、実際腹が立ってるのは事実なので、これは紛れも無い本心だけど──スラスラと口から出た最後の言葉に、市ヶ谷さんは先程とは迫力が違う表情で怒った。

 

「言葉に気を付けろよ」

 

 息を呑む。

 いつもの、バンドメンバーのツッコミ役とか、まとめ役に回ってる市ヶ谷さんではない。その瞳に、夏輝への愛を滲ませた市ヶ谷さんは、恐ろしく怒っていた。

 

「……」

「……」

 

 動かず。

 喋らず。

 睨み合って、およそ一分間。市ヶ谷さんが、肩を落としながら溜め息を吐いた。

 

「止めだ止め。こんな事したって、アイツは帰ってこないんだからな」

「何ですかその言い方」

 

 依然としてあたし夏輝の行方が分からないというにも関わらず(しかし、市ヶ谷さんはどうやら夏輝の居場所を知っているような口振り)、一人意味深な言葉を吐いた市ヶ谷さんにそう問う。

 いつの間にかあたしに背を向けて歩き出していた市ヶ谷さんは、肩の向こうから雑な視線をこちらに寄越し、こう言った。

 

「アイツ、彩先輩に監禁されてんだよ」

 

 

 

 




ついに始まった、佐渡夏輝争奪戦。果たして、夏輝は誰の物に。

前島亜美さんのYouTubeチャンネルを登録しました。やいやい、がメッチャ可愛いです。
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