「ここが私の家よ」
雪村に連れていかれた先は大きな門を持つ家だった。いや、マジでデカい。門だけで分かるこの家の広さ。初音島の歴史を知らないが、昔は武士とかが住んでいそうな家だ。
「さ、入って」
門の鍵を開けて俺に入ることを催促してくる。初めて訪れる女子の家に少し緊張しながらも門をくぐった。
再び彼女の後ろを歩き、居間と思われる大きく開けた部屋に付いた。そこにはすももに似た女性がちんまりと座っていた。
「あら、すもも。おかえりなさい」
「ただいま、杏姉さん。今日はお仕事大丈夫なの?」
「ええ、大丈夫よ。今日と明日は休み取ったわ。明後日からはまた家を空けてしまうわ」
休みを取ったあたりで一瞬目が遠くなった女性。彼女は一体何の職に付いているのだろうか。
「分かった」
「それで?そこにいる彼の紹介は?」
「あっ、彼は佐々木くん―佐々木正之くん。さっき偶然スーパーで会って、栄養バランスが酷くてつい連れてきてしまったの」
「そう。……ま、すももが連れてきたから心配はしないわ」
俺の紹介をしてくれたものの、今一会話に入ることが出来ない。しかし挨拶をしないのは余りにアレなので無理やり割り込んだ。
「えっと、紹介にあずかりました佐々木正之です。雪村さんとはクラスメイトの仲で今一自分もどうして此処にいるのか分からない状況です」
「丁寧にどうも。私は雪村杏……すももの、そうねお姉さんといったところかしら。でも一応保護者よ」
「ほ、保護者ですか……」
姉で保護者。従姉妹か何かだろうか。それほどまでに二人は似ている気がする。雰囲気とかそっくりだし。
「じゃあ、佐々木くん。私は料理作るから暫く待ってて」
「あ、いや俺も手伝うよ。流石にタダでご馳走になるのは……な」
「ふふっ、じゃあ手伝ってもらおかな」
彼女から予備のエプロンを借りて台所に立つことに。
しかし、この家の台所大きいな。家が大きいから当然なのだろうが、びっくりだ。まぁ、物を置くスペースが多い分料理しやすいけど。
「じゃあ、私は先にお米を研いでセットするから、佐々木くんはお野菜を洗っておいて」
「了解」
彼女の指示に従って料理をしていく。
意外にも息が合ったのか、テンポよく料理を作ることが出来た。
「それじゃ、いただきましょ」
「はい、いただきます」
「いただきます」
杏さんの言葉を皮切りに料理を口に運ぶ。今日作ったのはタケノコの炊き込みご飯と、玉ねぎやニンジンを使ったかき揚げ、豆腐とわかめの味噌汁。後は、サラダだ。
「ふぅ、ごちそうさまでした」
「おそまつさま」
「佐々木君は結構食べるのね。お姉さん、驚いたわ」
「これでも育ちざかりですからね。それに、久々に人の作った料理を食べましたからつい」
本当に久々に自分以外の料理を口にした。父は料理できる人じゃないし、母が亡くなって以来ではないか?
本当に美味しかった。食後に出されたお茶を口にしながらしみじみ思う。
「良かったわねすもも。美味しかったって」
「……ええ。作った甲斐があったわ」
少し照れ臭そうに話す雪村。しかし、
「どうして俺を夕飯に誘ったんだ?こう言っては何だが、俺と雪村は特別仲が良いってわけじゃないし」
「そうね。私自身もよく分かってないわ。でも、迷惑だったかしら?」
「いや。それはないな。むしろこちらが礼を言いたい。美味しいご飯をありがとう」
俺は思わず頭を下げた。ただのクラスメイトという関係だというのに飯をくれた。簡単にできる真似ではない。
「喜んでもらえて何よりよ……それに私も久々に杏姉さん以外と夕飯を食べたし、お相子だわ」
「そっか……じゃあ、そろそろお邪魔しようかな。これ以上は明日に影響出そうだし」
話をしていると予想以上に時間が経ったので、帰らないと不味い。お風呂にも入ってないし、洗濯物も畳まなければならない。
「あっ、そうね。じゃあ、また明日?」
「ああ。また明日」
玄関まで見送りに来てくれた杏さんと雪村にもう一度ごちそうさまと告げ。俺は家の門の内側に置いておいた自転車に跨り帰路に着いた。
ここで力尽きてます。