「あー面倒なことになった」
頭をガシガシと掻きながら廊下を歩く男。
男の身長は180を優に超えており、体格もそれに見合った武骨さをしている。
となるとそれに見合った強烈な顔つきをしているのかと思えばそうではない。顔つきは意外と綺麗な部類で少なくとも
街で出会っても女子供が叫び声を上げながら逃げるものではない。
「あの野郎……いい加減あの席から降ろしてやろうか」
先程まで彼と相対していた相手の事を考え呪いの言葉を口にする。
この大男と相対していたのは冥界において絶大な権力を有する魔王であるサーゼクス・ルシファーという男だった。
先の戦争で前魔王からその席を奪うと、同じく別の魔王から奪った新魔王らと共に、今日日まで冥界を治めている者だ。
その例にならい、この大男も彼の魔王の席を狙っているのだ。残念ながら、一度として奪えていないが。
さて、大男は文句を口にしながらも彼を待つ者たちがいる部屋へと足を運ぶ。
彼のいる屋敷の中でも一番奥に存在する部屋だ。というのも、この屋敷の全てが彼の全てだからだ。
彼の名前はラカン。ラカン・バルバトスという。
サーゼクス・ルシファー旧姓と同じく元72注が一つバルバトス家の次期当主だ。
彼の他に兄弟は居らず、無用な後継者争いが起きていないのが幸いだ。悪魔も人間と同じように権力を欲する。いや、
人間以上に欲する面もあるか……
「おかえりなさいませラカン様」
「ああ、戻ったよベル」
部屋に入った彼に一番に声を掛けたのはドアの近くにいたメイドだ。
メイドは銀髪碧眼。身に纏うは少し手が加えられているメイド服。
彼女が屋敷にいるときはこの胸元を強調しているかのようなメイド服を纏っている。なんでも彼へのアピールらしい。
ベルファスト。それが彼女の名前だ。古くからラカンに仕え、今では従者筆頭の地位を貰っている。
「どうでした?魔王様との会談は」
次に声を掛けてきたのは何処かの姫かと見間違うほどの少女だった。
彼女自慢の金髪を彼女の性格を象徴するかのようにドリル状にしている。
ドレスを好んで着込み、その姿は言葉遣いも合わさり姫に見える。
レイヴェル・フェニックス。フェニックス家がバルバトス家へと縁を繋ぐ為に送り込んできた少女だ。
最も彼女もその事は留意しているが、全く気にしていない。むしろ、自分を送り込ませてくれてありがとうと感謝しているほどだ。
「おかしなことになった、面倒だぜ。グレモリーのお守りだってよ」
「サーゼクス様の言うグレモリーとはリアス・グレモリーの事で?」
「ああ。そのグレモリーだ」
リアス・グレモリー。現魔王であるサーゼクス・ルシファーとは血の繋がった妹で、何かと期待されている者だ。
グレモリー家は慈愛の一族と言われるぐらい、身内に甘く、サーゼクスもその例に漏れずリアスに対して少々、いやかなり溺愛している。
現在彼女は冥界に居らず、人間界に住んでいる。
というのもサーゼクスが箔を付けさせるために土地の管理者という肩書を与えたのだ。その為、駒王町と呼ばれる場所で学生を
している。
ラカンが知っているのは其れぐらいだ。
「ということは人間界にラカンさんも行くんですか?」
最後にラカンに声を掛けたのはレイヴェルと同じく金髪の少女だ。
アーシア・アルジェント。
冥界では見ない、というかしてる方が心配になるシスター服を身に纏っている少女。彼女は悪魔へ身を変える前は聖女と呼ばれ
人間界で生活していた。しかし、ある日を境に教会から追われる身となりラカンと出会い、現在に至る。
「ああ。俺だけでなく、眷族も良いそうだ。どうだ?アーシアにレイヴェル」
「わ、私も通えるんですか!?だったら行きたいです!」
アーシアはその出自上、教育機関に通った経験がなく前々から通えたらとラカンは聞いていた。
それ故、今回この話を持ち掛けられた時に眷族も通えないかと相談をしている。
「アーシアとラカン様が行かれるのでしたら私も付いて行きますわ。実を言うと前々から人間界には興味がありましたの」
見た目通りの箱入り娘の為、外の世界に興味があるというレイヴェル。
彼女はバルバトス家へやって来てからは結構な頻度でバルバトス家の所有する領地を歩き回っている。
「でしたら私の方で人間界における住居の確保をしてまいります」
「ああ頼んだぞ、ベル。金の事は気にしないでくれ、快適さを優先するように」
「かしこまりました」
ラカンに向け文句のつけようのない綺麗な礼をすると音もなくその場を去る。
このような理由で彼とその眷族は駒王町に身を寄せることとなった。
アズレンを始めた時期に書き始めました。
確か当初、アズレンはベルファストを見て始め→ベルファストを書きたい→HSDDのアーシアやレイヴェルも可愛いな→なら、両方を出して書こう。
そんな思考だった気が……