ラカンらが入学してから一年が経つ。
自分たちの実力で彼らは駒王学園へ入学をした。悪魔として歳を食っているのでアーシアに合わせて編入ではなく入学という形に
したのだ。
アーシアはつい最近まで人間として人生を歩んでいたので年相応の見た目をしている。レイヴェルも幼い見た目もあり
入学に違和感は持たれなかったが、ラカンだけは周りから少し驚かれていた。
まぁ、常識的に彼ほどの大男が一年生というのはどうも違和感が残る。幸いにして老け顔という事でやり過ごしたが。
「しかし、グレモリーも中々に大変だな」
「本音では?」
「無能だ。あの男の妹だからと期待していたんだがな……」
時刻は夜。人間であれば眠っている時刻だが、彼ら悪魔にとっては活動適応時間だ。
駒王町は魔王の妹が治めていることもあり、現魔王に不服あるいは何かしらの狙いを持った者たちが度々出没する。
多くははぐれ悪魔と呼ばれる存在だ。位の高い悪魔は眷族を持つことが許される。先に述べたように悪魔は権力を欲する。
故に、他の悪魔の眷属よりも強い眷族をと追い求めるのは火を見るよりも明らか。
また、他の種族を悪魔へと変える悪魔の駒と呼ばれるものもある。アーシアが人から悪魔になったのもこの力のおかげだ。
望まず悪魔になったものが主人を殺したり、あるいは主人のもとから逃げ出したりした存在がはぐれ悪魔の大部分を構成する。
多くは力の持っている奴らだ。主人が力を求めるがゆえに。
「これでっ……終わりだ……っと」
共に回るレイヴェルと会話しながらはぐれ悪魔を討伐する。
ラカンは純粋な腕力のみで敵を圧倒した。しかも傷一つ負わずにだ。負ったら負ったで彼の眷属が黙っていないが。
「ば、化け物め……」
最後にそう言い残すとはぐれ悪魔は塵となり風に乗って消えた。
「元は違えど同じ悪魔だろうがによ……」
彼からすればはぐれ悪魔は被害者だ。しかし、だからと言ってその悪逆を放置するわけにはいかない。
更に彼はバルバトス家の者だ。
バルバトス家は冥界における武の一族。家訓が「強いものが正義」とする程度には武力を行使するのを躊躇わない。
「これで反応が消えましたわ」
「そうか……はぁ、疲れた」
はぐれ悪魔を倒すのに使った右腕をぐるぐると動かし軽くストレッチをする。
彼がはぐれ悪魔が駒王町に出没すると気づいたのは入学してから半年の事だった。
初めての学校生活にアーシア共々目を輝かせて毎日を過ごしていたのだが、ある日彼のセンサーに引っかかる出来事が起きた。
一家惨殺事件である。
何気なく朝にテレビを見ていた時に発覚。テレビでは元警察関係者の見解が述べられていたが、直感的に違うと思った。
それから事件現場付近を警察に怪しまれない程度にウロチョロしていたら悪魔の気配を感じたのだ。
彼からすれば月とスッポン程の力量差だが、一般人からすれば怪獣VS人間だ。勝てるはずがないので彼が直々に成敗した。
グレモリーも動く気配がなく、仕方なく今日まで新たな惨殺事件が起きないように毎晩パトロールをしているのだ。
「お疲れ様ですわ、ラカン様」
「ああ、レイヴェルも付き合ってくれてありがとな」
「いえいえ、私は貴方の下僕。となれば主人に付き添うのも当然の事ですわ」
レイヴェルはラカンから騎士の駒を受け取っている。
騎士の駒はその対象者の速度を上げる効果を持つ。速度とは簡単に言えば全ての動作だ。
剣をふるう速度、動く速度、魔法を唱える速度。レイヴェルは元々フェニックス家の悪魔で炎系統の魔法の扱いでは他の追随を
許さないレベルを誇っていた。
そこに騎士の駒の効果の一つである魔法詠唱の速度アップが合わさり、ラカンの眷属の中でもかなりの戦力となっている。
☆☆☆☆☆
サーゼクスからリアスのお守りを頼まれたラカンだが、日常においてはほとんど関わりを持っていない。
一応、バルバトス家の者だという事は伝わっている。というか、彼の傍にいるレイヴェルの存在でバレている。
しかし、彼女は彼に対しては興味どころか悪意を持っている。
あの偉大な魔王である兄から土地の管理者を任されているにも拘らず、バルバトス家の者を送り込んでくるとはどういう了見かと怒りさえ持っている。
バルバトス家に対しての感情として冥界の悪魔たちは大きく三つに分けられる。
一つはリアスのように嫌う者たちだ。戦乱ではない現在において武を誇る一族に対して元々一定数が嫌っていたが、ラカンが次期当主になってからは爆発的に増えた。
というのも、現魔王であるサーゼクスに対して無礼である上に数回に渡って私闘を繰り広げているからだ。
次に中立の者たちだ。彼らはバルバトス家の武の恐怖をしっており、敵対はしたくないが懇意にしたいわけでもないという者たちだ。
最後は好意を持っている者たちだ。筆頭としてフェニックス家が挙げられる。現当主であるフェニックス卿とラカンの父であり、現在のバルバトス家当主のゼオン・バルバトス
は昔からの交友がある。
とまぁ、リアスが怒るのも無理はなかった。ラカンらが夜な夜なパトロールをしているのを鑑みるに本人の管理能力は置いておくとしてだが。
「裕斗、ラカンのクラスでの評判は?」
「彼はクラスの人間からは好意的にみられてますね。学校の問題児たちを懲らしめてるそうですから」
苦笑いしながら自身の眷属である木場裕斗が言う。彼はリアス・グレモリーの眷属の一人で騎士の駒を貰っている。
駒王学園ではその整ったルックスから王子とも呼ばれてる。
その木場の口から出た問題児。彼やラカンらと同じ二年生の松田・元浜・兵藤の三人の事を指す。
彼らは学校に在籍する女子に対して必要以上のセクハラ行為を働き、学校のみならず近隣でも噂になるレベルの問題児だ。
一応生徒会も何度も注意をしているのを見かけるのだが、反省の色が見えない。
「そう……」
「なんでリアスはそんなにラカン君の事が気になるの?」
木場とリアスに紅茶の入ったカップを差し出したのは姫島朱乃。彼女もまたリアスの眷属で女王の駒を持っている。
リアス・グレモリーと並び学校のマドンナとして持て囃されている。
「バルバトス家は嫌なのよ。アイツら武力で物事を解決しようとするのよ」
「あら?でも木場君の話によると武力よりも対話路線のようだけど」
「ええ、僕も問題児に対して説教をしているのを見た事があります」
木場と姫島は自身の主人がラカンに対してあまり良い感情を抱いていないという事は彼がやって来てから知っているが、理由までは分かっておらず、これを機にと思ったようだ。
しかし、そんな彼らの思惑通りにはいかずリアスは紅茶に口を付けると黙ってしまった。
☆☆☆☆☆
リアスが眷族から質問を受けている頃、ラカンはアーシアを共に連れて教会に寄っていた。
悪魔は例外なく教会などの神聖とされる場所には近寄れないとされている。なので、近寄り遠くから見るという事をしていた。
アーシアが一度、駒王町の教会を見てみたいと言っていたのだ。ラカンに拾われなければ、アーシアは此処の教会に派遣されていた可能性があるのだ。
しかし、その教会はおよそ形を保っていなかった。
遠くから見ても分かるぐらいにボロボロで何とか雨風をしのげるといった様子だ。このような場所に派遣されていたと思うと何処か寒く感じるアーシアだった。
「これは酷いな……」
「はい。幾ら何でもこの状態の教会を放置は」
「此処の教会は現在は無人なのか?だとしても……なぁ」
教会は天界と呼ばれるこの世界を構成する一部の場所の管轄下に置かれている。
即ち、神という存在は天界を統べている。その事を知るのは天界や、冥界でも一部の者たちだ。
神というのは千差万別で、駒王町の存在する日本は日本神話勢。協会が属するのは西洋神話と別れている。一口に西洋神話と言われても様々だ。
天界や冥界とは別の勢力として北欧神話勢など神がまだこの世に存在しているという証拠の一つだ。
話が逸れたが、協会は天界の管轄下。それを放置など威信に係るものだ。
「これはキナ臭いな。アーシア、今日の所は帰るぞ」
「え?は、はい」
アーシアの手を引きラカンはその場を後にした。その際、ラカンが扱う使い魔を教会を監視する目的で放っておいた。
アーシアが此処に派遣されたとするならこんなボロボロの状態は可笑しい。天界に所属する教会の上層部の連中が何か企んでいるのか。
はたまた一部の暴走した部下なのか。
此処で力尽きて止まってます。