騎士王、異世界での目覚め   作:ドードー

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ゴールデンウィークに投稿できないというていたらく
遅れて申し訳ない


遭遇

ーバハルス帝国首都ー

 

「早まった感は、否めないな…」

 

 ベッドで寝息をたてる幼い姉妹を眺めながら、ため息混じりにそう呟く。

 

 ここはバハルス帝国首都にある宿屋であり、ドールとして活動するための拠点でもある。

 泊まるだけなら安く、少し金を出すだけで昼食や夕食を出してくれる、味はそこまでではないらしいが、そこは冒険者、しかも駆け出しが多い、安くてそこそこの量であれば満足する。

 

 ドールとしてもこの宿は都合がいい、変にいいところに行くと、食べもしない料理や無用のサービスが付いてきて困る、体がオートマターである以上必要なのは拠点としての場所だけである。

 

 そして現在は奴隷商から買い取ったアルシェの妹二人を連れて宿に帰ってきたところである。

 全身黒で顔も隠している為、宿の人間にとってみれば、怪しい奴が幼い奴隷を連れてきた事になるが、声で前から女性というのが分かっていた為かそこまであからさまな視線は受けなかった。

 

(フォーサイトにはいい貸しが出来ると思ったが、どこの奴隷商にいるという情報でも十分だった気がするな。金はいくらでも増やせるからタダみたいなものだが…)

 

 椅子に座りながらそんな事を考え、寝息の聞こえるベッドに再び視線を移した。

 

(無差別に手を差し伸べてるわけでも、利がない訳でもない。今回は良しとするか)

 

 

 

 

 

 

ーナザリック第六階層ー

 

 ここはナザリックの内部、大森林にある闘技場。その闘技場の観客席には大量のゴーレムが並べられ、その中央にある広場には四人の人間と一体のアンデッドが対峙していた。

 

「うっぷ…くぁっ………ふぅ、はぁ…はぁ……」

 

 四人の人間、その内一人が地面に両膝と片腕をついてもう片方の手は吐き気を抑える為に口元を押さえている。

 

 軽く剣を交えただけで恐ろしいアンデッドだと分かったが、それはまだまだ甘く、アンデッドは剣と鎧を捨てマジックキャスターの格好をとったのだ。

 そして認めたくない現実を否定するとアンデッドは答えるように指輪をはずした。

 

「アルシェ!大丈夫かっ?」

 

 ヘッケランがアルシェに声をかけるが、それが聞こえていないかのように、呟くような叫ぶようなそんな言葉をもらす。

 

「無理無理無理っ、勝てないあんなの勝てるわけないっ、逃げなきゃ…みんな早く逃げなきゃ……」

 

「落ち着けっ!…何を見た?」

 

「あの……あ…、化け物…アレは見ないと…分からない…」

 

 大声で叫ぶヘッケランの声が聞こえたのかようやく言葉を絞り出す。

 

「なるほど……つまりそれほどってわけか、理解できないのは幸か不幸かは別としてな」

 

 なんとか軽口をたたきながら仲間を見渡す。

 

 アインズが指輪を外した途端に崩れた仲間を見て慌てたが、ようやく状況を把握したヘッケランは急いで考えを巡らす。

 

(やるだけやってみるか。やらなきゃ死ぬだけだしな)

 

 仲間を手で制し武器を降ろさせ、自分も武器をしまう。武器のない両手を広げ、対話を試みる。赤く浮かぶ眼光が相変わらず不気味に光り、目を合わせるだけで恐怖が精神を侵食する。

 

「私達は貴方と戦う為にここに来た訳ではありません。私はヘッケランと申します、失礼ながら名をお聞かせ願いたい」

 

「……アインズ・ウール・ゴウン」

 

 臨戦態勢だった気配を僅かに潜めアインズは名乗る、それをチャンスと考えヘッケランは続ける。

 

「感謝します。ではアインズ・ウール・ゴウン殿、こちらも理由はあれど侵入してしまいました、貴方が怒るのもごもっともです。宜しければそれなりの謝罪をさせてほしい」

 

 対話が出来るのであれば、まだ望みはある。しかし

 

「ならん。貴様らはすでに侵入している。誰の許可もなく、このナザリックに、断じて許されることではなく、許したことはない」

 

 それは取りつく島もない返答。

 

(一か八か。これを使えば後戻りは出来ない)

 

「…その許可があったとしたら?」

 

 

 

 

「………………何?」

 

 明らかな間があり雰囲気が変わった。

 

「そんなはずは…………、いや、ありえないことは…ない」

 

 そこには僅かながらに困惑が伝わる。そして問う。

 

「誰だ?誰が許可を出した?」

 

 その問いは光、生還という可能性の光だった。許可を出せる存在がいて、それを向こうは確認できていない。ヘッケランは時間が稼げると確信し、生き残る可能性を探す。

 

「名は名乗っていませんでした。顔も隠していたので人型というぐらいしか分かりません」

 

 慎重に特定できないような言葉を選ぶ。

 

「くだらん、それではただの世迷い言だ」

 

(確定的な否定をしないということは可能性はある)

 

「ですが預かってきたものはあります」

 

 即座に切り捨てようとするアインズの言葉にヘッケランが食らいつく。

 

「……見せてみろ」

 

 此方を値踏みするような視線を受けながらヘッケランはロバーデイクとアルシェに視線を移す。

 

「ロバーデイク、アレを出してくれ。アルシェもだ」

 

 その一瞬でロバーデイクはヘッケランの意図を理解し、アルシェを気遣いながらも立たせる。困惑気味だったがそこへきてアルシェも理解し、転移の杖を取り出し始める。

 

「一つ目はこちらのマジックアイテムです」

 

 ロバーデイクが取り出した下位アイテムを手のひらに乗せながらアインズに見せる。

 

「指輪か?」

 

 アインズが興味を示す。だがこの指輪は大したアイテムではなく、ロバーデイクが時間稼ぎとアルシェの準備、そしてアルシェから視線を外す為の真っ赤な嘘である。

 

「はい、私達ではこのアイテムの価値は分かりませんが、渡せば分かると言わ「転移/テレポーテーション」

 

 そしてアイテムについての説明をしている最中、突如アルシェの詠唱が割り込む。言葉の途中という最も不意をつく形で放たれた詠唱に、流石のアインズも止める間も無く…いや、もしかしたら止める余裕があったかもしれない、ここが転移出来ないナザリックで、止める必要性を感じなかっただけで。

 ともかく転移は成功した、魔法陣が浮かび上がったと思えば、フォーサイトの四人はナザリックから掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都ー

 

「はぁ…はぁ……、逃げ…られたの…か?」

 

 首都の外に転移した四人は、転移するなり地べたに座り込む。

 ナザリックではあまりのプレッシャーの中にいた為脱出出来たと認識した途端脚の力が抜けてしまった。

 

「アルシェ、ここは?」

 

「帝国首都、おそらく首都の壁の外」

 

 なんとか気持ちを落ち着かせ状況を整理する。

 

「あ…ああ、確かにそうだな」

 

 首都入り口の門が見えるのを確認し答えるヘッケラン

 

「まったく、察しのいい仲間を持てて俺は運がいい、じゃなきゃ死んでたぜ」

 

「頭の回転が速いリーダーのおかげですよ。そういえば私達以外はどうしたのでしょうか?」

 

 自分達以外のワーカーがどうなったのかとロバーデイクが疑問を口にする。勿論、言った本人も大体の予想はしている。

 

「あんな奴らがいるところだ、おとなしく返してはくれないだろう。十中八九死んでるだろうな、俺達は運が良かった、ドールに会ってなきゃって思うと、想像したくねーな」

 

「あんな存在、信じたくない。ありえていいはずがない」

 

 アレの存在を思い出したのか、アルシェは肩を抱きながら化け物の存在を否定する。

 死が纏わりつくというより、アレが垂れ流す気配が、死と呼ぶものなのではないかと思うほど恐ろしい存在だった。

 

「まったくね。まだ上手く脚に力が入らないわ」

 

「たくっ…ドールの奴、知ってたならもう少し強引にでも止めやがれっ」

 

「まったくです。一体どこまで知っていたのか、転移の杖があってギリギリとは酷い冗談です」

 

「あ…」

 

 ポツリと呟いたアルシェの方を全員が見ると、壊れた指輪が転がっている。

 ドールに渡された魔法阻害耐性の使い捨てアイテムであり、壊れたということはそれが役割を果たしたということだ。

 

「やっぱりギリギリじゃないですか」

 

 そんな言葉を聞きながらようやくヘッケランは立ち上がり、そして全員を見渡す。

 

「取り敢えず今日はここまでだ、もう遅いしな。今日はこの後解散、話は明日集まって改めてしよう。ドールも問い詰めないとな」

 

「賛成」

 

「それがいいでしょう」

 

「このままじゃどうせまともな判断出来ないしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーナザリックー

 

 フォーサイトが転移で消えた後、アインズはアルベドに命じナザリック内の探索をした。

 

 友人の存在を脱出する為のダシに使われ、一時は怒り狂っていたがそれもアンデットの特性によりすぐに抑制され、今は大人しくアルベドの報告を待った。

 

「どうだ?ナザリック内の転移か?」

 

「未だ見つかっておりません、おそらくナザリックの外に転移したと思われます。他の人間は捕縛もしくは殺害しましたが、先ほどの四人はナザリック内にはいません」

 

(どういう事だ、何故転移出来た?ナザリックで転移出来ないのは既に確認済みだ。ならば転移阻害の対策があったのか?どんな場所かも分からないところに行くのだから、対策と言えばそこまで不自然ではないが、そもそも転移自体が珍しい世界のはずだ。転移限定ではなく魔法阻害アイテムか、ならば珍しくてもそう不思議ではないのか?)

 

「意外とマジックアイテムは流通しているのかもしれんが、それにしては装備が貧弱だったな」

 

「申し訳ありません。その場に居ながら侵入者を取り逃がすなど、アインズ様が命じてくだされば、すぐにでも捕らえてその首を持って来ましょう」

 

「よいアルベド、逃したのは私も同じだ。それにそもそもの目的は達した。だが捜索はしておかなければな、使用したアイテムは聞き出さなければなるまい、今は放って置け」

 

(ナザリックの転移阻害を無視できるとなると、そこまでちゃちなアイテムではないだろう。確認しておく必要はあるな)

 

 アルベドを手で制し話を続ける。

 

「今はそれより重要なことがある。さて人間どもは殺してもいいが、原型は分かるようにしておけよ。どうこうするのは要件が済んでからだ」

 

(ナザリックをすり抜ける転移は厄介だな。ワールドアイテムといい、この世界のアイテムは馬鹿にできない。前いたプレイヤーがばら撒いた可能性もあるしな、…セバスにアイテム収集も頼んでおくか)

 

「デミウルゴス」

 

「はい」

 

 アインズが呼ぶと一人の男が現れる。

 スーツ姿に丸眼鏡という、一見すると現代人の様な出で立ちをしている。

 

「どうだ?取り敢えず人間どもを招いてはみたが」

 

「はい、帝国へのカードとしてはいささか弱いですが、きっかけとしては十分かと」

 

「建国への一歩か」

 

「いずれアインズ様を頂点としたその国が世界を支配する。至極当然であり必然です」

 

(順調に世界征服の準備を始めてしまっている。……そんなつもりは無かったんだがな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーバハルス帝国首都帝城内ー

 

「お久しぶりです、陛下。ただいま戻りました」

 

 帝城の一室にてジルクニフの前で礼をとるレイナース。

 以前とは違い質の高い鎧を着込み、マジックアイテムと思われる物もいくつか身に付けている。

 質の高いと言っても前着ていたものは帝国から支給されたもので、四騎士として最高のものであったが、それすらも下位と言わしめるほどレイナースが着ている物は違い過ぎる。

 

 しかしさらに驚異的なのは、装備によって強さを示しているわけではなく、その鎧などの装備があくまで装備であるように振る舞うレイナース自身の雰囲気である。

 強者特有の威圧感は不自然に潜めており、落ち着き払った余裕を持つ姿は以前とは別人、もはや別の存在がレイナースの形を取っていると言われた方がまだ納得できる。

 

 ジルクニフの後ろで控えている四騎士の三人も、声は出さないまでも顔に驚きが張り付いている。以前のレイナースを知ってるからこそ驚きも大きい。

 

「ああ、久しぶりだな。…こう言ってはなんだが、本当にレイナースか?」

 

「陛下の言いたい事は分かりますが、これが今の私です」

 

「分かっている、言ってみただけだ」

 

 若干諦めを感じさせるジルクニフの返答。

 

「アルトリア様より陛下を守るように指示を受けています。それ以外は今まで通り四騎士としてお使いください」

 

 長椅子に深く座り直ししばらく沈黙したのち、ジルクニフは口を開く。

 

「正直驚いた、随分と変わったな」

 

「そうおっしゃる割に、表情にさほど変化はありませんでしたが」

 

 淡々と喋るレイナースに皮肉げに返すジルクニフ。

 

「アインズなどの化け物共を見た後ではな、それなりに耐性がつく」

 

「確かにそうかもしれません」

 

「それより呪いを解いて貰ったと聞いたが、それだけではないのだろう?」

 

「はい、身体の性能を上げてもらいました。簡単に言うと私の身体に竜の力を植え付け、その魔力で呪いを塗り潰すといった感じと聞きました。そのおかげで今までとは比にならない程の戦闘能力を発揮でき、今となっては呪いが消えたのがついでの様になってしまいましたが」

 

「ほう、竜の力か。どれぐらいのことが出来るんだ?私は戦闘に関しては全く分からないからな。分かりやすく説明してほしい」

 

 優秀な皇帝とはいえジルクニフは戦士ではない戦闘に関しては素人同然。

 

「そうですね……、今の私であればフールーダ様が相手でも問題なく勝てます」

 

「なっ」

 

 その衝撃的な言葉に後ろに控えていたバジウッドが反応する。他の二人も声に出さないまでも驚愕している。

 

「ッ……じいにか?」

 

 フールーダ・パラダイン。それは帝国の最高戦力であり、国相手に戦争できる戦力でもある。

 

「はい。陛下を守りながらでも勝てるでしょう」

 

(アインズと会ってから国家戦力並みの存在がごろごろと、全く笑えん)

 

「それは頼もしい限りだ。実際、じいは役に立ちそうにないからな」

 

「そう言えばフールーダ様はナザリックでしたね」

 

「いや、こっちに戻って来ている」

 

「ここにですか?」

 

「そうだ」

 

「では魔力を抑えておいて正解でした。フールーダ様であれば一瞬で私の存在がバレてしまいますし、それは陛下としても困るでしょう?」

 

「そうだな、別に困るほどではないが、わざわざ切らなくてもいい手札を切ることはない」

 

(元々戦いにすらならない相手だったのだ。それが今では知略を巡らす意味が出てきた程度には、此方の手札が揃ってきた)

 

「さて、では今まで通り四騎士として頼むぞ。じいには姿を見せるな」

 

「はい、あとアルトリア様からいくつかアイテムを預かっています」

 

「私にか?」

 

「はい、アレと敵対するならこれぐらいは必要だろう、との事です。意外と気に入られてるのでは?」

 

 ふとアルトリアの顔が浮かぶ、整った顔立ちで何を考えてるか分からない、感情の抜け落ちた眼がこちらを覗く。

 

「ふっ、それはありがたい。そう願っておこう」

 

(思えば対等に話せる奴などいなかったからな。同盟者…か、意外と友人なんてこんなものかもしれんな。まあ、人ではなさそうだが)

 

 

 




アインズ様の登場シーンは盛大にカット
申し訳ない、上手く書けなかった

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