騎士王、異世界での目覚め   作:ドードー

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勧誘

ーバハルス帝国首都ー

 

「さて、お前達の用事とやらも終わった事だし、本題に入ろう」

 

「おう、悪いな待たせちまって」

 

 ドールとフォーサイト、5人がテーブルを囲み話し合いを始める。

 ここ、笑う林檎亭の隅の席、あるのは蝋燭の小さな光だけで夜も遅いためここにいるのもこの5人だけである。

 

 あれからアルシェの妹達を引き渡すはずが、アルシェはもうあの家に預けることができないと言い、アルシェの宿が決まるまで僅かな間預かる事となった。その事を話し終え、いよいよ本題に入る。

 

「ヘッケランには軽く話したがお前達はアレと対峙した。一度敵対した以上、たとえ逃げ延びてもそれは一時的なものに過ぎない。そこまでアレは甘くないだろう」

 

「確かに、向かい合っただけであれほど恐怖を感じたのは初めてでした」

 

「……ん」

 

 ロバーデイクの言葉にアルシェも軽く頷いて同意する。

 

「そこで、私の勢力下に入る気はないか?」

 

 フォーサイトの面々は黙り込みヘッケランに視線を送る。それを受けてヘッケランが口を開く。

 

「…勢力下というと、どこの組織なんだ?」

 

「どこのと言われても少々困るな。明確な所属は無いしな、名前を言っても分からないだろう。……そうだな、あえて言うなら、この国の皇帝と同盟関係にある組織と言ったところだろうか」

 

「皇帝陛下と?!……ちょっと待て、言い回しが気になる。帝国の組織じゃないのか?」

 

 ヘッケランは少し声を荒げてしまったが声を潜めて問い直す。

 

「違うな」

 

「何というか組織の立ち位置がよく分からないが、この話を飲めばその保護下に置かれると言う認識でいいのか?」

 

「ああ、そう言う事だな。まあ簡単に言えば、アレでも軽々と手出しできない後ろ盾が出来ると言ったところだ」

 

「帝国でなければ法国とかか?あんたの組織は静止力になるのか?」

 

「法国でも無い、今一番肩入れしているのが帝国だ。力はそれなりにある、例えアレでも私と軽々しく戦争はしたく無いはずだ」

 

 それを聞いてもヘッケランの顔は難しいままだ。

 

「俺の勘だが、あの化け物は一国と戦争できる力があると、そう感じた。1つの組織でどうにかなるとは思えない」

 

「私もそう思う。私が見てきた中で一番のマジックキャスター、帝国が誇る最高戦力フールーダ・パラダインの比じゃなかった。帝国最強が霞む存在、例え帝国と組んでも危ういかもしれない」

 

 実際にはその魔力を見たアルシェもヘッケランに賛同する。

 

「…………お前達の言いたいことは分かる。別に今すぐどうこうとは言わない。お前達の言うところの私の組織を見てもらってからで構わない」

 

 そう言われ、腕を組んで少し黙り込む。

 

「そうか、まあ見てからでっていうなら、そうさせてもらおう。それでいいよな?」

 

「ええ、いいわよ」

 

「同意」

 

「はい、それで構いません」

 

「よし、じゃあそんな感じだ」

 

 ヘッケランがフォーサイト全員の合意を確認し返事をする。

 

「分かった、では少し遠出してもらう。都合のいい日を後で連絡しろ」

 

「了解、じゃあそれでよろしく」

 

 

 

 

 

 

 

 ドールが立ち去った後もしばらくフォーサイトの話し合いは続く。

 

「何というか、中々一段落しませんね」

 

「そうだなー、やっぱり怪しい依頼は受け無い方がいいな。まあ下調べして問題無しと判断した訳だが、今回は運が悪かったな。ドールのおかげで最悪にはならなかったが」

 

「でもそれを運が良かったかと捉えるのは微妙よね。あ、そう言えばアルシェ、もう妹ちゃんたちとは会えたんでしょう?連れてこなくて良かったの?」

 

「ん…もう会った。元気そうだったから大丈夫、私も家を出る準備をしてるから預かってもらってた方が助かる。それにそんなに時間をかけるきはない」

 

「まあその辺りは丸く収まった感じだが、何というかきな臭くなってきたな」

 

「助けられてるから印象自体は好印象だけどドール自体のことは未だに謎が多すぎよね」

 

「どこの所属でも無いと言っていましたが、やはり法国あたりが後ろ盾になっているのでしょうか?」

 

「帝国と同盟とまでいかなくても、一時的な利害一致で取り引きでもしたのかもな」

 

「国が出張る事態になってるなら、なおの事介入したくないわね」

 

「そっちの事もだけど、私は未だにナザリックの事が納得できない」

 

「確かにな。転移魔法仕込んだ罠なんて初めてだったし、あの闘技場もそこに居たゴーレムなんかも、よくよく考えたらヤバイものしかなかったな。国が動く理由としては中々ありえそうだ」

 

 

 その後もいろいろ話し合ったがフォーサイトとしての方針は纏まらず、とりあえずドールの組織を見てからもう一度話し合う事に決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、この辺りでいいだろう」

 

 ドールが歩みを止め、それに合わせフォーサイトも一旦足を止める。

 ここは帝国首都より少し離れた林の近く、まだ首都の外壁が辛うじて見える距離でありそこまで離れているわけではない。

 

「ここからは転移で飛ぶ………転移/テレポーテーション」

 

 

ー帝国北部ー

 

 キャメロット最上層洞窟の前に魔方陣が浮かび一瞬輝くとそこにドールとフォーサイトの4人が現れる。

 

「やっぱり転移魔法使えたんですね。予想が当たりましたね」

 

「それも複数転移だ。こんなこと出来るマジックキャスターなんて数えるくらいしか居ないんじゃないか?」

 

「なんとなく予想はしてた。それよりここ何処?」

 

 アルシェ以外の面々も場所が気になるのかあたりを見回すがやはり一番気になる洞窟に目を向ける。

 

「おいおい何の組織か知らないが、まさか天然の洞窟使ってるのか?近くに町は無さそうだし、あまりにも利便性が悪いだろ。……で?ここは何処なんだ?」

 

「そのまま答えるなら、帝国北部にある洞窟だな」

 

「ほぉ〜〜、ん?それって最近発見された翼竜の洞窟か?ワイバーンが住むってやつ」

 

 ヘッケランは興味なさげに応えるも、心当たりがあったのかそれとなく聞いてみる。

 

「どう呼ばれてるかまでは知らないが恐らくそれだろう」

 

「ちょっと待て、俺たちろくな装備してないぞ。ワイバーンなんか相手にできないぜ」

 

 ヘッケランの言葉に仲間にも緊張が走る。

 

「安心しろ、争いに来たわけじゃない。万が一の時は私がなんとかしよう。さて、付いて来い」

 

 そう言って洞窟の中に歩き出し、しばらく進むと更に大きく開けた通路に出る。

 

「凄えな、この景色だけで一見の価値はありそうだ」

 

「まさに誰も手をつけてない秘境って感じですね」

 

「確か此処は、入るのが制限されてたはず」

 

「おや?そうなんですか。たしかにこれだけ資源が有りそうなのに綺麗なままなのも納得ですね」

 

 足を止めたドールが振り返える。

 

「ここからもう一度転移で飛ぶ」

 

 すぐに転移魔法を発動させ、キャメロット最下層に移動。最下層入口に転移する。

 

 

 

 

ーキャメロット最下層ー

 

 広大な湖と城があるキャメロット最深部。

 

「……っ…なんだ、どこだ…ここ…?」

 

 ヘッケランの第一声がフォーサイト総意の言葉だった。

 

「お、おいドール。何処に転移したんだ?」

 

「まあ、疑問に思うのは仕方がないと思うがな。お前達と入って来た洞窟の最下層だ」

 

「天井が動いてる?」

 

「違うわ!あれ全部ワイバーンの群れよ」

 

 上を見上げていたアルシェの疑問に同じく見上げていたイミーナが指をさして応える。

 

 それを聞いてヘッケランやロバーデイクも慌てて上を見直す。神秘的とも言える景色だが、よく見るとそこら中に竜がのさばっている。

 

「ドール、ここは何だ?」

 

 ヘッケランは驚愕の表情から真剣な顔つきに戻り、若干問い詰めるように問う。

 

「いろいろな考えが頭を巡ってると思うが。あまり難しく考えるな、ここは私の住んでいる場所、ただそれだけだ」

 

 そう答えるも、納得した様子はないフォーサイトの4人。その様子に溜息をつきながら言葉を続ける。

 

「お前達はナザリックでアレに遭遇しただろう。私はアレと同じ様な存在だ。アレは死者を使うことに長けていた様に、私は竜を使う事に長けているそれだけの話だ」

 

「ここの竜、全て貴女が従えてるの?」

 

「そうだ」

 

 ふと口を挟んだアルシェに応える。

 

「……貴女も魔道具か何かで力を制限してるの?」

 

「少し違う。この体そのものがそもそも魔道具だ」

 

 そう言って手袋を外して見せる。その手首には人間にはない人形の様な関節があり生身でないことがわかる。

 

「オートマターという人形の魔道具だ。魔力を使って自分の体のように遠隔操作出来る。私はこの人形を使って、別の場所から行動していただけだ。本当の私はあの城の中だ」

 

 そう言って視線を送る先には湖の上にそびえ立つ城がある。

 

 

 

 

 結局、来た方が早いと言いながら多少強引にフォーサイトを城まで連れて行き、円卓の部屋の前まで案内し扉を開ける。

 

 ドールとしての私はフォーサイトを円卓の方に向かわせた後、扉の横に待機して機能を停止させた。

 

 

 

 

 

 

 ヘッケランはドールに促された通り、仲間を連れて円卓に近づく。そこには空席の連なる円卓があり、唯一奥の席だけに人が座っていた。

 

 それは人間らしくも人間離れした美しさを持つ少女が一人。その容姿であれば高価なドレスでも着れば映えるであろう事は明らかであるが、身に纏うのは黒く禍々しい鎧。しかしそれでもなお神聖な雰囲気に陰りはなく不思議な調和を果たしている。

 

 閉じていた目が開き無機質な視線が向けられる。

 

「一応挨拶をしておこう、この姿では初めてだからな。私の名はアーサー・ペンドラゴン、ドールとは人形の時の偽名に過ぎない」

 

「あ、ああ、分かってると思うがヘッケランだ。えっと、ドールとしての俺たちに接触していたのはあんたで良いんだよな?」

 

 若干雰囲気にのまれ言葉がぎこちないが、とりあえず確認する。

 

「ああ、今まで通りドールでもアーサーでも好きに呼ぶといい」

 

「そ、そうか、それは助かる。じゃあ今まで通りドールと呼ばせてもらう」

 

「さて、実際ここまで足を運んでもらった訳だが、特に説明する必要はないだろう。ここまでの短な道のりでもこの組織の力はある程度分かったと思うが?」

 

「ああ、国を落とせるだけの力はありそうだ。後ろ盾としては問題ないだろう、ナザリックのアレと同類というのもよく分かる。ただこれだけの力を持ちながら、何故俺たちを必要とする?」

 

「最もな疑問だ。見て分かる通りここは竜で溢れている、武力としては何の不満もないが、それは食い散らかし破壊するだけだ。ここには小回りの効く人材が居ない、特に街に偵察には入れる者がな」

 

「……ナザリックへの偵察が欲しいと?」

 

 途端にヘッケランは表情が険しくなる。

 

「望めるならだが、そこまで無茶を要求する気は無い。基本的に他国への偵察、情報収集を頼むつもりだ。任務と言うほど堅苦しくやって貰うつもりも無い。毎回依頼を受けるかは任意、ワーカーとしての延長上でやってくれればいい」

 

「俺たちとしては後ろ盾で、お得意様ができた程度の認識でいいと?」

 

「その認識で問題ないだろう」

 

「ナザリックへの制止力は?」

 

「私の組織の紋章の様なものを身につけて貰う。要は私が後ろにいるということが分かれば何でもいい。一対一ではまず間違い無くアレでは私に勝てない。戦争になれば勝てても再起不能になる可能性もある。である以上、無闇に手は出せないだろう。もちろん身を守る最低限のアイテムは支給しよう。いずれは私の組織と深く関わっていくかもしれないが、それこそお前達次第だ、私から強制することはない」

 

 

「…………」

 

 中々悪くない条件、これからの事を考えると実に都合がいい。だからといって安易に返答は出来ない。

 

「ここで答えを出す必要はない。後でゆっくり仲間と話し合うといい。転移で送ろう」

 

「分かった、改めて答えを出す」

 

 

 

 

 結局その二日後、フォーサイトはキャメロットの勢力下に加わる事に同意。帝国以外の国の調査を中心とした依頼を受けることとなった。

 




見切り発車だから終着点が全然分からん
書籍の内容も分からないからこれからの立ち回りもよく分からん

どうすればいいんだー

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