騎士王、異世界での目覚め   作:ドードー

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対話2

 ーキャメロット城内ー

 

「さて、同盟を結んだわけだが勘違いされては困るぞ。

 同盟を結んだのは貴様であって帝国ではない」

 

  アルトリアが口を開きさらに続ける。

 

「貴様ら人間と私では生きる時間が違いすぎる。

 貴様が死んだ後の帝国が健在である保証などない、貴様が優秀でも貴様の後釜まで優秀とは限らんしな、故にこの同盟は貴様と私との間での話だ。

 そしてこちら今のところ求めるのは情報一択だ、これまでの歴史から今の国々の情勢、一般的な常識、特別なアイテム、モンスターなど全てにおいて貴様の知り得る情報を要求する。

 無論貴様が対価を払う以上こちらは力を振るってやろう」

 

「…わかったそれで構わない、帝国内部と争うことになる以上そちらの方がいいかもしれん、どちらにせよ状況に左右されるがな」

 

  ジルクニフにとって同盟などただの建前に過ぎない、大事なのはこの存在と協力関係を築けたことであり、その力がこちらに向かない事である。

 

「内部にの敵に関してだが帝国の西にトブの大森林という広大な森がある、そこにあるナザリック大地下墳墓に大勢力の組織があり、そこの主と交渉した。

 国を作らせるつもりだったんだが帝国に潜り込まれた。

 おそらく帝国の中で準備したのちに自分の国を建国するつもりだろう。力もそうだが知略も化け物級だ」

 

「ナザリック……(嫌な予感がする、記憶が正しければ人外どものギルドだったはずだ、同盟者はよくそんな相手と敵対しようとする、実は馬鹿なのか?同盟を結んだ以上私も争う事になるかもしれん、一応やり合った事はあるが勝負がついた事はなかった、確かあそこは30いや40人ぐらいだったな、殴り合うならともかく余りにも手数が違いすぎる。

 帝国の守りにまで手が回るか怪しいところだ)」

 

「その主の名がアインズ、アインズ・ウール・ゴウンと名乗っていた。

 見た目はスケルトンのアンデットだが只のリッチーなどではない筈だ、正直強いのは分かるんだがどれぐらいか言われると分からんとしか言いようがない、雰囲気も恐ろしくその禍々しさから死の化身と言われても信じるだろう。

 奴自身も強大だがその従者達もまた同じだろうアインズには及ばないんだろうが、それに従者達の忠誠心も高そうだったな、どちらかというと崇拝に近いのかもしれんが、…ん?そういえば禍々しさで言えば君もアインズといい勝負だな、君も死の化身かなにかなのか?」

 

  ジルクニフは最後に冗談を交えながらアインズについて語る。

 

「死の化身か…残念ながら私は首をはねるぐらいでしか死を与えてやれん」

 

  口ではそう返すが思考はますます深まる。

 

(アインズ・ウール・ゴウン?、いやその名は知っているがそれはあくまでギルド名の筈だ、その様子だとおそらくギルドマスターが名乗っているのだろう、あそこのギルドマスターはガイコツのアンデットだった筈だ。

 それに従者?NPCの事か?それはいいが他のギルドメンバーは居ないのか?同盟者が会っていないだけか?……もしかして奴も私と同じようにこの世界に来たのか?、ゲームのサービス終了時に。

 それなら1人はなくても多くて4、5人といのはありそうだ。

 40人は流石にきつかったが4、5人なら特に問題はなさそうだな、…それにしても従者か、やはり人型のNPCは便利そうだ、こうなることがわかっていれば沢山作っておいたんだが、せめて1人は作るべきだったな、非戦闘員のメイドでも、いれば違った気がする)

 

  このキャメロットにいるNPCは見た目が完全な純竜種のみであり竜人すらいない、そもそもユグドラシルのプレイヤー達が純竜種のNPCを作らないのには理由がある。

  使いづらい、それに尽きる、その攻撃方法が肉体を使った打撃とブレスのみであり、きっちり育ててようやく状態異常の付与効果といったところでサポートが全くできない、その巨体により戦闘時に邪魔になったり、巨体故の小回りの効かなささ、アイテムを自分で使うことが出来ず、装備出来るアイテムも他と比べ少な過ぎるなど、出来ることが限られるのが大きい。

 

  純竜種の最大の利点は広範囲高威力の攻撃とその絶対的な耐久性だがNPCをある程度まで育てればモンスターを狩るには耐久性はそこまでいらず、高火力も最後まで育てればプレイヤークラスまで上がるが育成に時間がかかる。

  だったら他のNPCにサポートさせプレイヤー本人が戦った方がよほど効率的である。

 

  これらによりユグドラシルでは純竜種のNPCは不人気だった、だがこれがギルド同士の対戦においては別であった、その必要以上の高火力は只のモンスターに効率が悪いがNPCを削るに最適であり下手に中途半端なNPCは2、3体簡単に沈む、更に耐久性も高い対魔力と対物理を備えているためなかなか削られない。

 

  そこまで育てるのが大変な純竜種が多くいる為このキャメロットはギルドメンバー1人にして最強ギルドの一角へとなり得たと言っても過誤ではない。

  ギルド同士の対戦であるはずなのに相手のダンジョンでボスモンスターが湧くようなものである。

 

(さて、私がナザリックのことを知っていることを話すべきか?、出来ればナザリックには私の存在は隠しておきたい、その為にも知る人間が少ない方がいいが、どちらにしろ探られれば同じか。

 …うむ…やはり情報収集能力がキャメロットはあまりに低い、ゲームでは気にならなかったが現実となるとここまでとは、総力戦ならともかくこちらには器用に立ち回れるNPCが居ないからな、自分で動くか同盟者頼りとなるな)

 

  ある程度考えがまとまり口を開く。

 

「ナザリックについて色々聞かせてもらったが、私はナザリックのことを知っている」

 

  ジルクニフの表情にあまり変化はない、驚かなかったというより予想内だったのだろう。

 

「どういうことだ、やはりこことは関係性があったのか?」

 

(まさか今更アインズとは友好的な関係だ、などと言うなよ)

 

  ジルクニフの口調は落ち着いているが内心はひどく動揺している。

 

「そう睨むな、知っていると言っても大した情報はない、べつに同盟を結んでいた訳でも特別敵視していた訳でもない。まあ戦争した事はあるが」

 

「おい、最後にとんでもない事言っている自覚はあるのか?私としては安心できるが、どういう状況なら特に敵視してないところと戦争になる?」

 

「まあ色々ある、それより聞きたいことがある、アインズ・ウール・ゴウンとはそもそも奴が所属する組織の名前だった筈だ。確認するがその名を奴の一個人の名前として名乗っていたのか?」

 

「ああ間違いない、自分の名前として名乗っていた」

 

「では従者以外で奴と同格のやつはいなかったか?、

 元々奴の組織は奴含めて40人ぐらいで構成されその下に従者どもがいるはずだ、まあおそらく40人はいないと踏んでいる、多くても4、5人だと考えているが」

 

(40人だとっ!ふざけるなっ、従者どもですらあの数で危機に瀕しているのにアインズのようなのが40人もいたら3日いや1日で世界が終わってしまうではないか!…ん?)

 

「ちょっと待て、さっき君はアインズの組織と戦争した事があると言ってなかったか?」

 

「ああ、決着はつかなかったがな」

 

「この化け物めっ!……………すまん、心の声が漏れた」

 

「正直な奴は嫌いではないぞ」

 

「いや、とても頼もしい限りだ……とにかく奴と同格はいなかったはずだ」

 

「建前でカバーするには本音が大き過ぎる気がするが、まあいいこれが私の知る程度のナザリックの情報だ、他にも細かくあるが今日のところはこんなところだろう」

 

「そうだな私もいつまでもここに居るわけにもいかない、そろそろ帝都に戻らなければならないしな」

 

「それは構わんが私の望む情報を寄越せ、今はとりあえず世界の情勢などのでいい後で人を送れ」

 

「それには及ばない、このレイナース・ロックブルズを置いていく、…レイナース、アルトリアへの情報提供を任せる」

 

「……了解しました」

 

「そういうことだ聞きたい事はレイナースに聞いてくれ」

 

「私としては別にいいが大丈夫なのか?、大事な護衛だろう?」

 

「それについては多少は痛いがそれよりもこのことを知る人間を増やすことの方がリスクが大きいからな、さて地上には転移させてもらえるのだろう?」

 

「ああ、キャメロット最上層に送ってやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ジルクニフを地上に送りひと段落したした後にレイナースに向き直る。

 

「改めて名乗ろう、アルトリア・ペンドラゴンだ好きに呼ぶといい、貴様のことはレイナースと呼べばいいのか?」

 

「はい、それで構いませんアルトリア様」

 

「では付いて来い、貴様の部屋に案内してやる」

 

  アルトリアは歩き出しレイナースがそれに従い付いて行く、そして歩きながらアルトリアが説明する。

 

「しばらくここに滞在するらしいが、基本的に貴様の世話はオートマターがする、人形のマジックアイテムだ、食事などの必要なものは持って行かせるしある程度の必要なものは元々部屋にもあるはずだが、

 もし他に足らないものがあったら人形に言いつければ用意するだろう、城内は基本的に何処でも出歩いていいが円卓のある部屋には入るな、それと城外にでるのはあまり勧めん。

 情報については明日からゆっくり聞くとする、取り敢えず今日は休め」

 

「わかりました、ありがとうございます」

 

  部屋に着き明日の予定を軽く話し立ち去ろうとするがレイナースに呼び止められる。

 

「お待ちください」

 

「ん?、何か用か?」

 

  アルトリアは振り返って答える、レイナースは少し迷っていたようだが意を決して話し始めた。

 

「…実はお願いがあるのですが」

 

「同盟者からか?」

 

「いえ私個人のお願いです」

 

「言ってみろ」

 

  そう言うとレイナースはおもむろに顔にかかっていた前髪を持ち上げる。

 

「…………」

 

  隠れた右半分の顔は醜く、痣や火傷とも違う、どちらかと言えば病気のような痕があった、元の顔が整っているだけに余計にその醜くさが際立つ。

 

「……その顔は?」

 

「呪いです、モンスターを倒したときに受けました。死の目前にモンスターが私の顔に呪いを放ったのです」

 

「…なるほど、死に際の呪いか厄介だな」

 

「はい、帝国最高の魔法使いでもこの呪いを解くことは出来ませんでした。……なので…アルトリア様ならこの呪いを解く手段をお持ちではないかと」

 

「同盟者はこのことを知っているのか?」

 

「元々この呪いを解くために四騎士になりました。

 陛下とは自分の身を優先していいという条件で仕えています。」

 

(その条件で騎士にするとは、優秀であれば問題ない同盟者らしい考え方だ。

 さてどうする、治してやってもいいがどこまでのアイテムを使うかによるな、いや、だがここで助けておくのは大きいか?こんな条件で皇帝と取引するぐらいだこの娘にとっては重要な事なのだろう、助ければ恩は大きいもしかしたら使い勝手のいい手駒ができるかもしれん、場合によっては同盟者にも恩を売れそうだ)

 

「そうか、まあ解けるかどうかは分からんが、試してやろう」

 

「あっありがとうございますっ」

 

「まだ解けると決まったわけではないがな」

 

  アルトリアはそう言いながら虚空に手を伸ばす、手首まで虚空に消え再び現れる時には手に小瓶が握られている、それをレイナースに差し出す。

 

「使ってみろ」

 

  その差し出された小瓶を受け取る、それは細部まで装飾された小瓶で中には青い液体が入っていた、おそらく何かのポーションなのだろうが、それが何なのかレイナースには分からなかった。

 

(おそらくポーションなんでしょうが何のポーションかは分からないですね、それに容器だけで価値がありそうです)

 

「はい、では使わせていただきます。」

 

  そう言ってレイナースはポーションを顔にかける、その後しばらく待つが顔に変化はない。

 

(状態異常を治すポーションだったんだが、効果はないなもう一つランクの高いものを出すか)

 

「駄目か、次だな」

 

  そうやって段々効果の高いものを使っていくが一向に結果は出ない。

 

(呪いの付与状態と認識されてない可能性がある。呪いが継続してかかっているのではなく、すでにかけ終わっているから意味が無いのか?、これでは仕方がないな諦めるか)

 

 そう思ったとき一つの可能性が頭をよぎる。

 

(……使うか?アレを…)

 

  少し迷い考える、ふとレイナースを見ると失望したような顔だ、その失望は私にではなくその可能性にだろう。

  僅かに開いたと思った道が再び閉じたのだ、今度こそ、今度なら、そんな思いがあったのだろう。

 

(なんだかんだ言って使わないのだ、ならここで使っても惜しくはあるまい)

 

  言い訳じみた事を思いながら一つの箱を取り出す、その箱は掌より少し大きく真紅のような赤に金の装飾がされている、その蓋を開けるとそこには銀の指輪が二つ丁寧に収められている。

  流れ星の指輪(シューティングスター)

  ユグドラシルでもトップレアクラスのアイテムである。

  また課金アイテムでありこれを手に入れようとすると半端な額では全然足らない、自分は偶々運が良く二つ手に入れることが出来たがそんなことは普通起きない、それでも結局サービス終了まで一回も使わなかったのだ、ならここで使ってしまおう。

 

  指輪を一つ取り出し指にはめる。

 

「星よ我は願う、我が願望を実現にせよ」

 

  指輪が輝きその光に吸い寄せられるように風が吹く、

 アルトリアを中心に僅かな風が取り巻きその風がレイナースへと流れる。

  風は数秒でやみ元の状態にもどる、そうレイナースの顔も呪いを受ける前の元の状態に戻っていた。

 

  顔に違和感を感じたのか、いや違和感が無くなったのを不思議に思ったと言った方が正しいのかもしてない。

  レイナースは右手を顔に添える、掌を確かめるが膿は付いていない慌ててまた右頬を撫でる。

 

「ない……膿が傷が、消えてる……」

 

  言葉自体は弱々しいがその瞳には明らかな歓喜で染められている。

 

「あっ…ありがとうございますっ、私の願いを聞いて下さりありがとうございます、これ以上の喜びはありません。感謝致します」

 

  慌てて跪き感謝の言葉を繰り返す。

 

「よい、ならばこちらでの仕事もその分の誠意を見せよ」

 

「はいっ私の出来る限りのことをさせていただきます」

 

「ではな」

 

  そう言ってレイナースの部屋から離れる。

 

 

 

 

 

 

 

 




一応web版を基にしていますが多分アルベドは出します。
出した方が話を作りやすいと思うので、まあまだまだ出そうにないですけど

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