ーキャメロット城内ー
キャメロット城内を歩くアルトリア、先程レイナースと別れ円卓の部屋へと向かっている。
「フフッ」
思わず口から笑いが漏れる。
(シューティングスターまさかこれ程の力を持っているとは願ってみるものだ、まるで願望器だな都合が良すぎるいい意味で予想を裏切ってくれる、これなら一から作れたかもしない)
「同盟者に頼まなければいけないことが増えた、だがどちらにしろレイナースの話を聞いてからか」
一方与えられた部屋にいるレイナースは備え付けてあった鏡の前から中々離れられない、時々ニヤニヤしながらがら鏡に映る自分の顔を眺める、別にナルシストと言うわけではない自分の悲願が叶い元の顔を取り戻したのだ当然と言えば当然だろう。
もう何度目かわからないほど右頬を撫でて治ったという事実を確かめている。
(フフッ、これが現実…中々実感がわきませんね、でも身体が熱くなり顔から違和感が薄れるあの感覚今でも思い出せますね、身体もついでに回復されたのでしょうか随分と軽い気がします。
…それにしてもこの部屋豪華ですね)
その部屋は一人で使うには広く中にベッドに机、テーブル、椅子、姿見などなど他にもあるがそのどれもが高級感と上品な質を持った品ばかりであり、元貴族の自分でもこれほどの物は中々見たことがない、先程運ばれて来た食事も絶品であり陛下でも口にしたことがないのではと思う物もいくつかあった。
(いざ顔が治ったら何をするか色々考えてたはずなのにどれもしっくりこないわね、それにあの指輪一体どんなマジックアイテムだったのでしょうか?大魔法使いフールーダでも治せなかった傷を治すなんて、まあフールーダ様は元々治癒魔法だ得意ではありませんでしたが。
アルトリア様も感情の起伏が感じにくいだけで会話自体は普通に出来ますしそこまで価値観の相違も無さそうですね。絶対的な味方というわけではありませんが陛下と同盟を結んだ以上敵にはならないでしょう)
初めてその姿を見た時は思わず見入った、何というか自分とは正反対だと思ったのだ、その優れた容姿は人間としても女性としても完成された美でありその雰囲気に高潔さと神聖さを持っていて儚げな容姿をしながら圧倒的な存在感があった。
誇りを捨て呪い解くために生きてきた過去が余計に彼女とは反対だと誇りを拾い直してもこうはなれない、そんな嫉妬のような感情だった。
だが彼女は反転した…白く神聖な印象は黒く禍々しく変質した、彼女と比べて反対の黒だと感じていた私が白く感じるほど彼女の黒は深かった。
しかしその中には邪悪な意思は無く高潔な騎士という印象は変わっていなかった、これだけ極端に変わっても美しくあるその姿に憧れた。
(どちらにせよここまでして貰ったんですから何かお役に立ちたいものです。しばらく滞在との事ですけどこれを機にアルトリア様に仕えることは出来ないでしょうか?明日頼んでみるとしましょう)
ーキャメロット城内ー
ジルクニフが来た次の日、一室にてレイナースによる情報提供が行われていた。
「以上が特に帝国近辺に出るモンスターの強さです。勿論例外的なものもありますが大体はこのような感じです」
「なるほど、大体わかったではワイバーン程度でも結構な脅威というわけか」
「はいそうなります、王国と比べると帝国は冒険者も少ないですし、何よりキャメロットのワイバーンは通常種と比べても倍以上ありますから住民にとってはさらに脅威でしょう」
「そうだな、まあどちらにしろワイバーンでの偵察は要らなくなるしな、……知りたい情報は大体聞けたから満足だ、貴様はこれから同盟者との連絡役としてしばらく残るのだろう?」
ジルクニフには連絡が取れるようにマジックアイテムを渡してありもう片方をレイナースに持たせてある。
ジルクニフからレイナースはと言うよりはレイナースがジルクニフと連絡を取るためというのが大きいキャメロットについての報告を行うためである。
「それと私から一つよろしいでしょうか?」
「ん?なんだ?」
相変わらずアルトリアの瞳は感情を映さない、レイナースは若干戸惑いながらも口を開く。
「…この顔の呪いを解くことは私の悲願でした。
呪いを受けてから私はその事に固執して来ました、昨日言ったように帝国の四騎士になったのもその為です、実は呪いが解けたら何をしたいかなどを日記に付けるのが習慣でしたがどうもそれらをやりたいとは今は思いません。
今は呪いを解いて下さった恩を返したいと考えてます。
従者でも騎士でもなんでもいいので仕えさせて頂けませんか?」
一瞬空気が張り詰め僅かな沈黙が流れるがすぐに終わる
「………フフッ、構わない我が従者として歓迎しよう」
相変わらず感情がわからない瞳をこちらに向けているが
アルトリアは僅かに笑みを浮かべてながら答える
「…ありがとうございます」
空気だ緩み元の雰囲気に戻る。
(もう少し時間をかけるつもりだったが案外早くこちらに流れたな)
「だが同盟者はどうする?大事な四騎士とやらが欠けては困るだろう」
「それについてもお願いがあります。
立場としてはこれまで通り四騎士として陛下に従います、勿論優先順位はアルトリア様優先で動きますがもう暫くは陛下の騎士としての仕事をしたいと考えてます。
陛下には少なからず恩もありますし陛下が居なければここへ来る事も無かったでしょう。
それである程度したら陛下の元を離れこちらに戻らせて頂きたいのです、それまでには陛下にその旨を伝えておきます」
レイナースとしてもジルクニフには恩を感じており、ジルクニフのおかげで自分を裏切った者たちへの復讐も果たしている。
四騎士の中では一番忠誠心が低いとはいえ呪いが解けたから『はいさよなら』と言うほど忠誠心が無いわけではない。
「どれぐらい自由に動けるんだ?」
「ここしばらくはこちらに滞在なのでアルトリア様の指示で動けます。帝国に戻ってからは帝国内でしたらある程度の時間的な制限はありますが動けます」
「そうか…わかったそれについてはそれでいい、私としても同盟者とは溝を作りたくない今のところそちら優先でいい、……それとまだ聞きたいことがあるのではないか?」
「はい」
レイナースは朝起きてから身体に明らかに変化があったのだ、昨日は顔の呪いが解けたことの興奮と気分の高揚で気付きにくかったのだが一度興奮が冷めると身体から僅かに漏れ出す魔力に気づいた、意識して出すとそれまで感じたことのないような膨大な魔力が巡り放出される。
これほどの魔力は扱ったことは当然なく、その原因は顔の呪いを解いた時しか思い当たらない。
「明らかに魔力の質と量が変わっています。魔力の付与もしてくれたのでしょうか?」
「いや違う、そもそも顔の呪いも治癒したのとは少し違う」
「治癒ではない?」
「例えるなら魔力で呪いを塗りつぶしたような感じだ、貴様の身体に竜の因子を埋め込んだ」
「竜の因子ですか?」
「竜の性質その起源のようなものだ、どういう状態になったかと簡単に言えば竜の力を振るう事が出来る人のままでな、もっとも人間か問われると怪しいところだが竜の属性を持つ人間というのが最も適した表現だろう、竜人というわけではない竜化は出来ないはずだ」
「竜ですか…」
レイナースは自分の掌を眺めながら呟く。
「不満か?」
「いえ不満ではないと…思います、すいませんあまりのことなので中々認識が付いてこなくて…」
「確かに仕方がないことかもしれん」
「これほどの力を与えて頂き感謝します。早くこの力を使いこなしお役に立てるように頑張ります」
「しばらくは身体に慣れるのが先決だな、城の地下に訓練として使える広場がある自由に使うといい」
「ありがとうございます、では私はこれで」
「ああ」
そう言ってレイナースが退室し部屋の中はアルトリア一人となる。
時間がかからずにレイナースが手に入ったのは予想外だが手に入ったのは予定どうり、人型のNPCがいないキャメロットでは中々に貴重な存在だ、まあシューティングスターの再現性の高さが予想外でありもう少し劣化した再現度かと思っていた。
これほどの性能なら既存のNPC強化に使えばゲーム時代とは隔絶した力を持つNPCに出来るかもしれない。
「願望器もそうだが令呪みたいな使い方もできそうだ、まあ令呪のような一時的な強化に使うのはどうかと思うが選択肢が多いというのは悪くないだろう」
ひとまずシューティングスターの性能はわかったし、ある程度自由に出来る手駒も手に入ったが、それでもやはり少ない、奴隷でも買おうか?オートマターも遠隔操作出来るのは一体のみ数はあっても自動操作ではろくに会話もできない。
出来る事なら手駒を帝国各地にはなっておくのが理想だ、勿論送れるなら他の国にも送りたいがまだまだ先の話、これからもナザリックとの接触は同盟者を挟んで間接的になるだろう、あちらから接触して来るならまた話は別だが。
「そうだ、後でレイナースに新しく鎧と武器を渡してやらなければな、何がいいだろうか?どうせ使えるNPCがいないからな、確か魔力を喰わせて効力を発揮するやつがあった筈だな」
そう言ってアルトリアはアイテムを漁りだす。
ーキャメロット城地下ー
レイナースは現在キャメロット城地下に来ている、その広場で今の自分の力を確認するためだ。
「これだけ広いなら問題ないでしょう、とりあえずいつも使っているのから確かめていきましょう」
「
それは最高火力と言わないまでも使い勝手が良く元々魔力の高かった自分が使えばそれなりの威力が出た、が、そこから発せられたの木を燃やす程度の舐める火ではなく、大木をなぎ倒す程の巨大な火球、その後轟音が響く。
右手から放たれた火球は明らかに大きくそれが放たれた瞬間に危険を感じ瞬時に身構えた、轟音と共に広がる熱風を無意識に纏った魔力で遮る。危機が去り一二歩下がって我にかえる。
地面自体には傷らしきものは無いものの大きな焦げ跡が付いている
「は…ははっ、ふぅ…これはいけませんね、竜の因子とやらを甘く見ていました。これ程の力早急に使いこなさなければこれからの行動に支障をきたします。アルトリア様に無様な姿を見せるわけにはいきませんし」
その後も魔法を使い威力の調整や体を動かし身体性能を調べてみるも身体の魔力は底をつかず、明らかに人間では無理な身体性能を確認し自分という存在が人間とはかけ離れていることを改めて認識した。
「あれだけ動いても息が乱れない…凄いですこの身体、…らしくないですが高みを目指してみましょうか?あの方の元でなら目指せる気がします」
ーバハルス帝国帝城ー
「ふぅ、ようやく戻ってきたって感じですね陛下、ナザリックもそうでしたけど肩が凝りそうです」
ジルクニフが豪華な椅子に腰を下ろすのを見計らってバジウッドが話しかける。
「おい、分かっているとは思うがあそこの事は大事な手札の一枚だ、同行した者には秘密保持を徹底させろ」
「大丈夫です分かってますよ、それにしても最初と後で正反対でしたね印象が」
「確かに印象は随分変わったがおそらく奴の本質は変わっていないぞ、変わってないというより元からと言った方が正しいかもな」
黒い鎧に身を包んだ彼女の姿を思い出す、奴は自分の意思とある一定の基準を元に行動している、合理性を欠いたとしてもその範囲であれば多少手間でも手を差し伸べる。
裏切らないはずだ同盟を結ぶ限り奴は、アルトリアは約束を守る。
「でも良くレイナースの奴あそこに残りましたね拒否しそうなものですが、まあ相手はそこそこ友好でしたが」
「ああ、レイナースとしても一か八かだったのだろう、望みと危険を天秤にかけてな」
望みですか?とバジウッド言いかけた時ノックもなしに勢いよく扉が開く
「陛下お久しぶりですな、と言ってもそこまで経ってはいないですが師の元にいると珍しい物ばかりで時間が経ったように感じますな」
失礼極まりない入室をしたのはフールーダ、アインズを師として崇めている魔法使いだ
「じい帰っていたのか、どうしたんだアインズの元で魔導の探求をするのではなかったのか?」
「いえ師からは友人の部下を引き抜いては申し訳ないとの事でこちらに戻って来ました。それにここにいても師からの課題も取り組めるので問題ありません」
「そうかそれは助かるな(全く良く口が回る、これではただのスパイではないかそれもよりにもよって帝国最強の魔法使いこの上なくタチが悪い、これで余計に動きづらくなる)」
「ほほっ、お任せ下さいこれからも力になりますぞ」
「ああ、期待している」
レイナースをNPCの立ち位置で使いたい
オリキャラを出すのがあんまり好きじゃないんですよね
出来れば主人公だけがいいんですけどそれも難しいですね
オリキャラはモブ程度で済ませたいなー